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【いかにこの国を守るのか?】日本に必要なのは自ら国を守り、国民を守る体制整備だ。第一線の研究者が討議を重ねた、国民全体で安全保障を考える画期的な提言。
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以下、本書より。
【成熟した政軍関係へ向けて】
日本が近代化をして、明治政府が陸軍と海軍を成立させてから間もなく150年が経過しようとしている。
その前半は、「軍による安全」に過剰に傾斜し、その後半は「軍からの安全」に過剰に傾斜してきた。
また、「日本型政軍関係」において、戦前も戦後も、国民は十分な役割を担うことはなかった。
周辺的な地位に、自らを追いやってきたのである。
日本の平和主義は、そのような軍事問題を忌避することによって成り立ってきた。
しかし、それは真の平和主義とは言えないであろう。
軍事問題を学ばず、語らないだけでは、平和は実現しないからである。
かつてイギリスの軍人であり、ロンドン大学キングス・カレッジにおける戦争研究の創始者の一人であるベイジル・リデル = ハートは、平和を手にするためには戦争を学ばなければならないと論じていた。
それは、健康を手にするためには病気を学ばなければならないことと似ている。
健康を学んでも、健康にはなれない。
病気の原因を学ぶことか不可欠なのだ。
だとすれば、戦争の原因を考え、軍事問題を理解することが、日本が真の平和国家に発展する上での不可欠な基礎となるであろう。
そのためにも、日本において従来の「日本型政軍関係」をアップデートして、新しい時代に相応しいものへと成熟させていかなければならない。
その方向へと前進していく上で、本書がその出発点となってもらえれば、これに勝る喜びはない。(細谷雄一)
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日本の安全保障の問題の核心にあるものが政軍関係として問題提起している。戦前、戦後、そして他国の政軍関係を比較し、日本の政軍関係の問題点をあぶり出し、安全保障のおおもとに関して国民的な議論の端緒とすべしといった本。
日本の安全保障のアキレス腱は戦略ではなく統治(ステートクラフト)にある。軍からの安全に加え、軍による安全と政治からの安全を考えなければならないのがこれからの日本。戦前は政治指導者は軍の暴走を止めることができず、戦後は軍事から目を背けており、望ましい政軍関係の模索は「隠された論争」となっていた。
ワシントンからもロンドンからも140度離れていたために変革への危機感が厳選への遡行となっていた。西南戦争終結後に政軍の分離が進み、政治からの安全が強められた。戦後輸入されたシビリアンコントロールの概念はネガティブコントロールに偏っていたが、自衛隊を問題解決の手段として活用するためのポジティブコントロールを考える必要がある。王の海軍、議会の陸軍のイギリスや、民主化とともに軍を統制しようと取り組んでいるもののあまり進まないインドネシアの政軍関係を比較する。
陸戦と海戦だけだった半世紀前とは違い、宇宙サイバー電磁波と考えなければならないことは多いので、ちゃんとしたシビリアンコントロールをとなれば国民は大変だこりゃ。