投稿元:
レビューを見る
建築家山本理顕の責任編集による刊行物。
第一号のテーマは『コミュニティ』となる。
本書前半は多方面の有識者との対談や論評等を通して、
『コミュニティ』や『コミュニティをつくる権利』
を深掘りして探っていく。
戦後の住宅様式として定着した「1住宅=1家族」
それは家族のプライバシーは守られる一方で、
地域として脆弱になっているのではないか?
家族がもっと地域と共にあるべきではないか?
地域コミュニティのあり方を昔から問題意識に置く
山本理顕なりの切口でまとめられている。
本書中盤以降は、山本理顕が手がけてきた大学建築を
紐解きながら大学建築論を展開したり、
名古屋造形大学(山本理顕設計)の紹介もされる。
また、生活と経済が混在したコミュニティを表彰する
『LOCAL REPUBLIC AWARD』の取組みも
受賞作品と共に掲載されている。
戦後「1住宅=1家族」の住宅様式を批判し、
地域社会と接続する住み方や器、また、
自立した地域の循環システムをつくることを
『地域社会圏』といった計画論として展開してきた
山本理顕が『LOCAL REPUBLIC AWARD』という
対外的にまちを評価して地域を支援するのも
これからのコミュニティや地域のあり方に問題意識
を置いて活動していることがよくわかる。
前半の対談等は内容を噛み砕くのに時間かかったが、
中盤〜終盤は建築やまち事例の紹介もあり、
比較的さくさく読めた。
山本理顕の考えるコミュニティのあり方について、
納得いくところいかないところがあったけれど、
自分の考えを整理する上でも面白い本だった。