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投稿者:AI - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦前のロシアと日本、アイヌという難しいテーマを扱っていながら、登場人物一人一人の人生観や想いが伝わってくる時代小説。覚えにくい名前の登場人物が入れ替わり立ち替わり登場して、お互いの人間関係がやや分かりにくかった。
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【祖国を奪われたものたちの苦悩と再生】樺太で生まれたアイヌ、ヤヨマネクフは故郷を奪われたポーランド人や、若き日の金田一京助と出会い、自らの生きる意味を見出す。
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読んだ、というか文字の奥底に潜む、それこそ熱源にやられてしまったかのように、読み耽ってしまった。駅でも歩きスマホならぬ、歩き熱源してしまったほどに。
アイヌ?ポーランド?読む前はその接点に??だらけだったけど、読み進めると、なるほど、その両者を結びつけた時点で勝ちというか、秀逸な視点だったと思わされる。
私たち日本人、というか和人には名前に馴染みのあるアイヌについて、何も知らなかったことに恥ずかしささえ覚えるが、よくもここまで調べ上げて書けるものだと呆れるほどに感心する。
先入観で全編重苦しい話かと思っていたら、登場人物たちの会話は前作でも感じられた独特の軽妙さ、茶目っ気がある。重いテーマが課せられていても、当事者たちは意外とあっけらかんとしている。それだけに事が起こると、現実の重さがのしかかり、樺太・サハリンのギンとした冷感に呼応するドラマが押し寄せる。
二度あることは三度ある。三作目ものんびりと期待したい。
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信念を持った人たちが、歴史に翻弄されながらも自らのアイデンティティを見つけるためにもがく様を描いた、とにかく"熱い"小説です。北海道、樺太、東京、南極と舞台がダイナミックに変わる物語なかで、対比的に当初おぼろげだった登場人物の信念が固まって行くのが気持ちいいです。
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圧倒的な記述。アイヌを瑞々しく描いている。
アイヌは北海道と思いがちだが、実際には現在のロシア(樺太)にも住んでおり、実際小説の中ではロシア軍との交流(実際には利用される訳だが)も描かれており、アイヌ民族として「国境」に意味がないことがわかる。
日本に夜同化政策もなかなか酷いもので、そんな中でも必死で生き抜くアイヌの人たち。
アイヌの琴の音を聴きたくなる。youtubeでいろいろ探したけど素朴で素敵な音色。
よくぞここまで取材して、ある意味記録としての価値も高いのではないかと思います。
熱、を感じる小説でした。
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アイヌ、ギリヤーク、日本人、ロシア人、ポーランド人、それぞれに命があり、それぞれに言葉があり、それぞれに文化がある。だけど、それぞれの「国」ってどこだろう。
住んでいるところが自分の国か?同じ言葉を話すものが住むところが国か?同じ国に別の言葉を話す人々がいるなら、そこは誰の国か?
生まれ育った場所。親がいて家族がいて、友がいて。だけどそこがある日無くなったら、突然そこを追い出されたら、その理不尽さに抗うことが正義か、飲み込まれなじみ失っていくのは悪か。
人が始めた争いは、人が終わらせることができる。だけどそれが「国」という単位になり、個々の顔が見えなくなったとき、それは人のチカラでは抑えることのできないものとなり、全てを奪い焼き尽くすまで続くことになる。何のために…理由も目的もわからないままただ人と人が憎しみ合い傷つけあう。「お国のため」?じゃぁ、国は人を守ってくれるのか。
生まれ育ったところで、愛する人と幸せに暮らしたい、ただそれだけなのに。そのあまりの困難さを引き起こす「国」という存在の無慈悲さに寒気がする。
今、私は無性に知りたい。
アイヌのこと、サハリン樺太のこと、日本のこと、ロシアのこと、ポーランドのこと、そして戦争のこと。
私が今まで気付かずにいたかもしれない出会い。それを、この先誰かがきちんと受け取るために自分の言葉で伝えたいから。
だれも、だれのことも滅ぼすことなどできない。失うことも奪われることもない。それぞれの文化を受け止め理解しようと努める。生きている限り生きていく。
人類の尊厳のために。
40年の時を経てつながれた縁。
「もしあなたと私たちの子孫が出会うことがあれば、それがこの場にいる私たちの出会いのような、幸せなものでありますように」
この言葉が全てである。
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史実をもとにしたフィクションで登場人物の多くが実在した。北海道の北の縦長の島で、風土などよく知られていない樺太が舞台。ここでのアイヌ、和人、ポーランド人、ロシア人たちのドラマが描かれる。民族が滅びる危機感を感じた主人公の思いが伝わる。アイヌについて学びたくなった。
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素晴らしい物語だった。「史実に基づくフィクション」というが史実も本作と同じくらい熱を帯びていたのではないかという気持ち。
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秋山香乃さんの「氏真、寂たり」とこの作品が、これ以上のものを読まなければ、今年最高の作品。
こんなに素晴らしい作品をありがとうと言いたい。
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すごかった。まさに熱源だ。
故郷とはなんだろう。祖国とはなんだろう。
国とは。
文明を名乗りながら、蹂躙するように蝕んで。
それでも人を意味するアイヌの人たちは生きていたんだ。
アイヌという言葉を知っていても、その実態をなにも知らなかった。
いま、彼らの子孫はどこでどうやって暮らしてるのかな。
琴は弾けているのか、どんな言葉を話すのか。
樺太(サハリン)の歴史を少しでも身近に感じられた。
「もしあなたと私たちの子孫が出会うことがあれば、それがこの場にいる私たちの出会いのような、幸せなものでありますように。」
この言葉にすべてが詰まっている気がした。それこそ、熱の源が。
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勝手に「南の『宝島』、北の『熱源』」に認定。
国家に翻弄され、故郷がなくなることに抗い続け、生きる意味を見出していく人たちの物語。
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日本人に迫害されるアイヌと、ロシアに支配されるポーランド、明治時代の樺太を舞台に二人の男性の熱い生涯を描いた長編小説。
平和に暮らしていたはずが、住む場所を追われ、自分たち民族の文化を蔑まれ否定されるアイヌの人びと。隣国の強国に脅かされ、代わる代わる支配され続けるポーランド。
個人のみならず、民族や国ごと呑み込まれ、アイデンティティを揺るがされることの苦しみが、それでも立ち上がろうとする熱源となる。彼らの熱が一直線に伝わってくる作品だ。
巻頭の人物一覧に、金田一京助、白瀬矗と見知った名前があったが、中心となる二人をはじめ実在の人物たちの話であることは、読後に知った。
終盤ストーリーがやや停滞して散漫に感じたのは、史実に忠実にあろうとするためだったのだろう。そう考えると、いっそのことモデルを参考にしながらもフィクションとして仕立てた「物語」を読んでみたかった。
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文明とは、国とは何か。生きるとはどういうことか。歴史をもとに実在した人物を描いているが、この作品は歴史を描くというよりは、そこで生きた人、その一人一人を、その熱源を描いた作品なのだと思う。
その熱に触れると考えてしまう…私は今、生きているといえるのか?そして思い知る…その熱が伝わることそれ自体が、生きている証でもあることを。
そして終盤の台詞へとつながる。
「あたしもあんたも、まだ生きてる。なら、できることがある。」
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直木賞候補のときに読んでいたら、読んでいる途中に直木賞受賞。
その発表を聞いた後に、夢中になって読了。
沖縄人としては、アイヌの歴史を勉強しなくてはいけないと感じた1冊。
とても熱い物語で感動した。
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全く知識がなかったわたしだけれど、ただただ引き込まれた。樺太で生きた、交わった人たち。
みんなただ、生まれた国で生きたいだけ。
でも時代が、それを阻む。一個人では太刀打ちできない理不尽。
その中で、それでも強く熱く生きた人たち。
だからこそ、最後は泣けてしまった…。
生きるしかないんだな。とにかく。それでも。それが、こうして今に繋がってる。
ふと、彼らは「今」を見たら、どう感じるのだろう、と思ったり。