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どうもこの作者とは相性が良くないようである。
読み終わって想起したのは飯嶋和一だった。
物語ることが、他の目的の手段になっているな、と。
違う言い方をすれば、作者が読者ではなく作者自身に奉仕しているな、と。
商業作家的には、なんであれ商業作品に仕上げていれば文句を言われる筋合いもないのではあるが、個人的には成功しているとは言いがたい。
大森さんが星4つなのが不思議だが、そこはそれ政治的な配慮もあるのだろう。(そもそも、これをSF枠に含めていいのか、という話もあるはずだが)
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塚本監督の野火のイメージもありつつだったんで、
東南アジアの暗いイメージが漂うストーリーなのかなと思っていたら、
チェイスあり、不思議コンビあり、恋愛あり、荒唐無稽アクションありと、意外にハリウッド的なエンタメ小説になっていた。
ただ、ラストはちゃんとテーマの伏線を回収していた。
荒唐無稽で訳わからんと言う人もいるかもだけど、
個人的には重いテーマをシリアスに扱わなかったのは良いと思った。本当にこういう詩人がいたんだなと。引用の詩は泣ける。
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読んでて、「カブールの園」と共通した点があるなと思ったのですが、どちらも、戦争が引き起こしたものをテーマにしているのではないかと思いました。
前者は、日系アメリカ人でしたが、今作は、日本人が単身、フィリピンに渡り、「竹内浩三」の足跡を探ることで、これまで、意味が無かったであろう自らの人生の意義を見出だす話です。
私自身、竹内浩三の存在を初めて知り、その詩の内容(ちなみに、作品のタイトルは、浩三の詩「骨のうたう」の中の一編)は、すごく人間らしい弱さや、戦争におけるやりきれなさを感じて、興味深かったのですが、物語に、上手く絡んでないというか、最後の方に、戦時中の記憶のようなものが出るところ以外は、終始、主人公「ヒロ」の、やや御都合主義の、ライトな冒険ものストーリーに感じられてしまったのが、残念でした。
物語自体は、面白いといえば、面白いし、他の登場人物も悪くない。ですが、やはり、上手く行き過ぎてる感じが、ちょっと気になる。読んでいて、フィリピンが舞台とは思えないような感覚に、何度も陥りました。表紙の密林のような、自然描写が少ないせいか、何でだろう? みたいに思ってしまい、その違和感がずうっと気になりました。
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冒険小説と呼ぶにはあまりにも淡白ではあるが、フィリピンの過去と現在がドキュメンタリーのように描かれている。
過去とは太平洋戦争時代、敗残の日本兵が彷徨い死んでいった様が描かれ、現在ではISとの戦いや財閥の支配が描かれていた。
エンターテイメントではあるが、8月に読むには相応しい内容だったと思う。
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戦没詩人のルソンでの最期の謎がもっと描かれているのかと思っていたが…。幽閉された日本人やら花嫁争奪と思っていなかった方向へ。エンタメ感が想定外に強かった。
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冒険小説をあまり読み慣れていないが、次々と展開するストーリーに引き込まれた。
それとは別に、竹内浩三という詩人とその詩を教えてもらえたのが大きな収穫だった。
その詩とこの小説によって、フィリピン戦線、それによって亡くなられたフィリピンの人々、日本兵について思いを馳せられた。忘れないように知り続けなければならないとの思いを強くした。
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77軽妙でありつつ硬派なストーリーでしたが、長編にもかかわらず途中での破綻もなく、一気に読みました。異教徒の親友と愛する人が共に幸せでありますよう祈りたくなりました。自作に大いに期待です。
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この作者の本を今まで何冊か読んだが、海外が舞台という点は共通していても、みんな語り口が違っていてびっくりする。今回はフィリピンが舞台で、第二次世界大戦当時の日本軍の所業と、最近のイスラム過激派の闘争とが並行して語られ、戦争反対のメッセージが強く現れている。占いに左右されたりするあたり、ちょっと行き当たりばったりな物語展開のようにも見えるが、それぞれの登場人物の行動原理がはっきりしているので、読んでいて違和感は感じなかった。魅力的な人物も多く、私としては、トレジャーハンターのマリてお嬢様が主役で別の本を書いて欲しい。
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ハードボイルドを想定していたら意外と強いエンタメ、というかコメディ風味。
どこかツギハギの印象を受けてしまって、どちらかに特化した方が集中できた気がする。
ラスト50ページの臨場感と荒廃感は読み応えありでした。
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竹内ノートを追う冒険小説かと思いきや、ハードボイルドになったり、急展開で恋愛小説になったり、宗教問題になったり、華僑の財閥が汚職したり…随分とっ散らかったまとまりのない小説なんだけど、宮内さんの文章だから読めてしまうねんなぁ。
こんなとっ散らかりまくりやのに、最後の50Pでああいう散らかし方してくれるから油断ならん。戦争を選ぶ政治が最低だが、戦争を継続する政治も最低なのだということ。
とはいえ、ウクライナのゼレンスキーは現状戦わないと、国が地獄になるのが分かっての戦争選択だろうし…難しいよなぁ…ってこれは、本作と関係ない気持ち
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作者の作品を出来る限り出た順番に読んできて、作者はいろいろなスタイルに挑戦している?試している?好きなもの書いてたら結果こうなっている?みたいに感じてました。この作品、一作の中が、めちゃくちゃな展開で、ハードボイルドなのか、恋愛小説なのか、どストレートの純文学なのか、わからない作品なんですが、不思議に素直に読めて、作者がわのブレとかは全然感じませんでした。一読者の勝手な感想ですが…。これが、宮内悠介スタイルになるのかな、と勝手に期待してます。次は「黄色い夜」かな。こんなスタイルの本書ける人は他にいない!
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フィリピンでは、かつて戦争の激戦地として、多くの命が失われた。
日本軍でルソン島で戦死した詩人・竹内浩三。
彼の詩に感銘を受けたTVディレクターの主人公は、本当の戦争をテーマに番組を作りたい思いを抱いているが、なかなか認めてもらえない。
仕事をやめ、一人フィリピンに旅に出て、竹内浩三の足跡をたどり始める。
謎の西洋人男女に襲われたり、山岳民族イフガオの娘に救われたり、
とんでもない事件に次々見舞われ、挙句に、拉致され、赤ちゃんの世話までするという、冒険に次ぐ冒険。
フィリピンの歴史、戦争、日本軍、宗教が少し理解できたような。