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ハックルベリー・フィンについては、特に思い入れはなく、本編を読めばそれでもういいです、っていう状態だったのですが、この本、柴田氏の新刊なのに図書館で誰も借りていないのを見て、「あれっ? じゃあ私が借りちゃうよ!」と思って借りてきた。
ヘミングウェイが「今日のアメリカ文学はすべてマーク・トウェインのこの本から出ている」と絶賛したというのも、「えっ、そこまでグレートな本ですか?! マジで? どこらへんが!?」って感じで、(おそらく私が文学の体系に疎いからだと思うが)まったくその偉大さはピンと来ず、この「ハックルベリーについての本」にも、正直、そんなに食指は動かされず。
でも、予想に反してかなり楽しんで読んだ。なかなか良書です。
特に、ジム視点で書かれた数年後の後日談「リヴァーズ」(ジョン・キーン著)は、私には衝撃だった。
めちゃくちゃおもしろかったけど、若干、「いいのか?こんなん書いて・・・」とか思ってしまった。ただの一読者なのに、読み終わった後、なぜか本家に対する謎の罪悪感を覚えた。
短い小説なのに、強烈な印象で、すごく後に引く。
これはすごい。
ハックを読んだ時、「白人から見た黒人」の描写に当時の社会通念や見せかけの真実というものが非常に端的に(意図的に?)描き出されていて、その時代に実際に生きた多くの黒人たちの苦しみを思ってわずかに小骨のひっかかりみたいなものを感じたが、その小さな疼きに、冷めた大人の声で水をぶっかけられた感じかなぁ。この著者は黒人だろうと思ったが、やはりそうだった。
ほかの人の文章もぜんぶ興味深かったが、スティーヴ・エリクソンの文章だけは、ちょっと真意が私には量りかねた。
「南北戦争が奴隷制をめぐる戦争だったことをいまも何百万もの白人アメリカ人が認めようとしない今日」というのはどういう意味で書いているんだろう。今も差別や格差はなくなっていないということかしら・・・原文を読んでもよく理解できなかった。なんの補完情報もついていなかったが、どういう趣旨で書かれたものなのか、何に発表された文章なのかくらいは書いてほしかったかな?
『冒けんに入らなかった冒けん』は、入らなかったなら、別にあえて読まなくてもいいんだけどなぁ、という感じで読んだが、しかしこれも意外に楽しんで読んだ。世界共通の「男子小学生的マインド」が描かれていて、なんか、笑えて力が抜けた。