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この23巻には、長いあとがきがある。
すべて読み終えた今、磐音の物語を読んでいたときの心持ちとだいぶ変わってしまって、ただ呆然としている。
そのあとがきは、カバーの著者紹介で少し触れてあるスペインの闘牛についてと、それを追いかけていた佐伯さんの話だ。
実はずっと気になっていて知りたいと思っていたので、やっと謎が解けたようでうれしい。
時代小説であるこの居眠り磐音シリーズがなぜ生まれたのか、なぜこんなにも人情にあふれた人たちばかりが登場して、読んでいてこんなにも気持ちのいい物語が生まれるのかがわかった。
この物語には、佐伯さんのすべてが包括されているのだと思った。
今後の「居眠り磐音」の味わいが、なおいっそう深まりそう。
さて、本23巻では、大頭与力笹塚孫一が、6年前から因縁のある事件を追う。
江戸を留守にしている磐音の代わりに、品川柳次郎を巻き込みつつ。
そして後半はおめでた続き。
安永7年の新年のお祝いに加え、佐々木道場のおめでたやら今津屋のおめでたやら、あちこちでうれしくて目まぐるしいほど。
でもねぇ、めでたいことではあるんだけど、ちょっと寂しいのよねぇ……。
はぁ、切ないなぁ。
何はともあれ、佐々木玲圓がにたりと笑えば何かが起こる。
その「にたり」にシビれちゃうわたくしでございます。