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赤松ワールド入門編に最適。将来、赤松研究書が出た日には初期必読書となるだろう。これまでに出版された「藻屑蟹」「鯖」「ボダ子」「らんちう」の原型的な出来事がそこかしこに簡潔に描写される。そして描写「されなかった」であろう詳細がこれからの作品で展開されることを思う。おそるべし。
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変わった雰囲気の文章です。
除染作業まですることになった現場の雰囲気、仲間となる人たちの育ちを感じさせる描写など、なかなか壮絶なことが淡々と書かれています。
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東日本震災後の復興特需に群がる人間が描かれた「藻屑蟹」「ボダ子」は、あくまで小説だった。
本書は、復興特需に乗っかろうとして、乗り損ねて住所不定無職となった筆者の随筆である。
かつてバブル時代にはゴルフコースのコンサルタントとして120人の従業員を率いていたが、バブルとともに会社は弾けた。
再起をかけて乗り込んだ東日本震災後の東北だったが、そこでは日雇いの土木作業員に揉まれる日々だった。
復興ビジネスの裏表を知り尽くし、そして最後には限界に気づく。
気が付いた時には下流国民へ。
まもなく震災から9年、日本という国自体の下への流れが止まらない。
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ショッキングな現実。作者の経験は特殊ではなく、時代を先行しただけ。これから日本はこんないきあたりばったりな現場だらけの国になるんだろうな。
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池袋で元通産省のキャリア官僚が、予約していたレストランの時間に遅れそうだという下らない理由で、幼い女の子とその母親を無慈悲にも轢き殺したが、特に逮捕もされずのうのうと楽しく生きている。
この事件をきっかけとして、いわゆる「上級国民」とそれ以外の国民の差が問題となっている。この本はそんな上級国民以外の民のルポである。この著者も以前はゴルフ場管理会社(欧米のゴルフコースに比べ、日本の管理がいかに低レベルかも面白く書かれているが、それはまた別の話…)を経営し、社員150人を使い、年収も2000万以上だったらしいが、そんな状況も経済環境の変動や、今回のシン・コロナ騒動などの前ではあっけなく崩壊する。一握りの大富豪や経済変動など問題にもならない人種以外は上級ではないと考えられる。
それにしても土木の世界は色々あるなぁ。大手ゼネコンを頂点とするヒエラルキーもすごい。あとは災害復興の現状。特にイチエフがらみは補償も復興も莫大な金が動いており、利権等凄いことになっている。復興予算を食らう反社の偽装土木会社。
補償の面でも、吉原から高級ソープ嬢が福島の補償金受領者から毟り取ろうと、地元の歓楽街に出張しており、そんなハイクラス嬢は田舎臭い地元嬢に比べ価格が遥かに高額なため、地元民は指を咥えて見ているしかない。多額の補償を受けた者だけが遊べる。これは嫉妬感情を強め、避難民と地元民の軋轢は広がるばかり。
この国で現実に進行中の実態。なんともやりきれない話だ。
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もともと会社経営で羽振りがよかった著者が食い扶持を失って福島へ、土方に混じって働くことになる。土方たちの単細胞ぶり、そのくせ競争心が高いのでみんなでスマホゲームに熱中する、スマホゲームやらないと怒るなど。性格的におかしいのもいて、いじめられるが耐える、家族に仕送りするためのカネが必要なので。
最後は自分が責任者の立場になったときにひどい業者に一杯食わされて、真面目な仕事仲間のことも見捨てて放り出してトンズラするに至る。著者がひどい人というのではなく、カネが欲しいゆえに無理をすると危ない橋を渡らざるをえず、そのうちにそんな状況に追い込まれてしまうというか、そういう世界が福島界隈にはあるよということ。
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03月-09。3.0点。
赤松利市本人の半生記。
「鯖」を読んだとき「ナンじゃこりゃ」と思ってから、全て読んでいる。凄い人生を歩んでいたんだな。
ある著作にも、同様の内容があった。モデルは著者本人だったんだなと再認識。
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赤松さんの作家デビュー前の壮絶な被災地生活。
逃げれば良いのに抜け出せない、そんな状況がしかと伝わってきます。凄い本でした。
私の同級生も派遣会社に就職後、未経験にも拘らず即、現場監督就任。入れ墨の入った方々をビビりながら指揮していたようで、ホント滅茶苦茶な状況だったようです。
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著者の経歴が書いてあった
ゴルフ場の管理、アメリカやイギリスではそんなに優遇されるのかとびっくりした。
寄せ集めの作業員、底辺の人はそのレベルなのかと思った。まぁ私も底辺で下級国民だけれども
六文銭の男が気になった
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震災後の除染作業等を行った方の赤裸々な話。
現実を知り、参考にはなったが文章として心に響くものは無かった。
苦役列車の方が文章として迫ってくるものがあった。
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著者の土木建設会社勤務時代を中心に自身の体験を率直にかつ平易な文で記した自伝的作品。
まず、震災の復興作業に集まった作業員達の粗暴さと無教養さに驚くと同時に、土木作業の技術と適性なコミュニケーション能力の両方を備えていなければまともな職場で働くことはできないのだなと感じた。また、国の除染事業も美味しいだけではなく多くの利権が絡み合う中で、パイプを持たないもの達はいかにその匂いを嗅ぎ分けるのかが大事かがひしひしと伝わってきた。
経済も何もかもが下降するこの国で、自由競争社会の荒波に放り出された我々の明日は下級国民Aかもしれない。
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人というものはいろんな重み付けで測られるものではあるが、その場のハッタリや腕力だけが物をいう世界があって、本書は間違ってそんなところに中年を過ぎてから入り込んでしまった男の悲喜劇。無論やられっぱなしではなく、筆者なりの打算や世渡りも描かれるが、読者からするとどうにも「取らぬ狸の〜」と感じてしまい、救いのない話の中で貴重なユーモアとして効果を発揮している。