電子書籍
本屋大賞!
2021/05/25 12:28
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Sota - この投稿者のレビュー一覧を見る
を受賞したということで、興味を持ったので、読んでみました。
好みから言えば、あまり好きなテイストでは無いです。
ただ、残り2/3くらいからは、ストーリーに引き込まれて、一気に読みました。
読後感は、人それぞれかな、と思いますが、私はあまり良くなかったです。
でも、暫く、引きずりました。
自然描写が多く、興味のある人には面白いでしょう。
紙の本
過酷な現実の中に無垢な少女
2023/08/29 06:36
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
美しい自然の中でけなげに生きるヒロイン、大人たちの身勝手さに憤りを感じます。事件は後半の法廷劇へと収れんしていきますが、社会へのメッセージは一貫していました。
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物語は過去と未来を交互に、かつ人の視点を変えて進んで行き、段々とリンクしていくような手法となっています。
主人公の「湿地の少女」カイアは周囲から異端の目で見られていますが、そんな中強く生きていく姿に、何度も手を差し伸べたい気持ちになりました。
ラストは衝撃でしたが、最後まで自分の生き方を貫いたカイアはとても素敵でした。
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翻訳本は長ったらしいイメージと分厚さから積極的には読みませんでした。
この本も本屋大賞の翻訳部門1位だからという理由からでした。
結果、いつの間にか引き込まれていました。
それに顛末も私の予想とは違っていてびっくり。
主人公のカイアは家族や兄弟に去られ続けます。
色々な人に裏切られ悲しみながらも状況を右から左へ受け流し必死に生きます。
その強さは彼女オリジナルだったと言えます。
ただ同時に弱さもあります。
彼女は動物でもあると同時に「人間」だから。
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「ザリガニの鳴くところ」 ディーリア・オーエンズ著を一気読みしました。
「全米500万部突破、2019年アメリカでいちばん売れた本」と、帯が仰々しすぎて、なんかなーと思いましたが、@仲野徹先生ご推薦の小説と言うことで、読み始めましたが、無茶苦茶面白い本で、2日間で一気読みしました。
6歳で家族に見捨てられ、1人で湿地の小屋で生きてきた、「湿地の少女」に、殺人事件の疑いがかけられるというミステリー。作者は動物学者で、70歳ではじめて書いた小説だそう。ミステリーとしても一級品だと思いますが、作者の動物学者としてのバックグラウンドが遺憾なく発揮されていて、人物描写も重厚。小説全体のテーマは孤独と愛情で、とても自分に響きました。
僕は、こうやって一気読みする小説には、特定の曲の記憶が紐付いていることが多いです。たとえば、カズオイシグロの「忘れられた巨人」には、Back numberのSISTERが紐付いています。ベストって言う小説ではないんだけど、曲とともに、読んでいる自分が思い出せるような小説。
「ザリガニの鳴くところ」も、そういった記憶に残る小説です。紐付いている曲はエドシーランの「Perfect」。
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面白いし続きが気になってページをめくる手が止まらなかったことは確かだけど、分かりやすすぎて全てが丸く収まりすぎて出来すぎていた。
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Audibleにて聴了。
「湿地の少女」の幼少時代からの残酷な運命が過去として語られ、並行して現代で起きた殺人事件の捜査が進む。本が進むに連れて、並行していた時間は徐々に近づき、真相に辿り着くという構造!
ナレーションが素晴らしく、耳を通して湿地に潜り込んでいるような感覚があった。とても良かった。
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毎度外国文学を読むときは、拭いきれない翻訳クサさを警戒し、鼻をスンスン言わせながら重箱のすみをつつき倒すんですが……気づけば自分とカイアの境目がわからなくなっているという。
訳を挟んで尚、それを一切感じさせないどころか、この少女の物語が持つ静かで凄まじい引力に抗えない……。
社会制度の中に明確な人種差別が残る時代に、ホワイト・トラッシュとしての差別を受けるカイア。プア・ホワイトという蔑称と同義なんですね。その辺の歴史的背景も学ばないとなあ。
自身がゴリゴリの差別社会に身を置いているジャンピンやメイベルに支えてもらわなければ生きていられなかった、人としてギリギリの生活。
だけど、そこも含めた「湿地の少女」が持ついろんな側面がこの物語の引力の根源。
食べていくのがやっとの生活にも関わらず、湿地に抱かれ湿地を慈しむ彼女の日常は、森や動物に愛されるディズニープリンセスのような空気すら感じる。
不思議とそういった矛盾が調和していく世界観によって、文字通り読書の沼に引きずり込まれる。
カイアの生い立ちと事件の章が、西暦を付されつつ交互に展開される構成も、考察熱を高めます。
ページを追うごとににじり寄る時間軸に変な焦りを覚えつつも「最後の1ページをめくるときに、この少女が幸せであってくれ〜!」と、ページめくりたいんだかめくりたくないんだか、ある種混乱に満ちた読書体験。
湿地っていうものをよく知らず、彼女のおっしゃる通り沼地との差すらわからずに読み始めた冒頭。
しかし読み終わってみれば、カイアの目を通して過ごした湿地の世界は本当に美しかった。
あの法廷にカイアを想い集まった人々の存在は、この世界の彩度を飛躍的に引き上げてくれたと思うんです。読者的には。
でもこの物語の奥深さは、生い立ちをなぞり、ある程度は同じ視点に立てていたと感じていたことへの根本的な裏切り。
真相とカイアの言動描写から考えると、差別と無関心と自己防衛に心を引きちぎられながらも彼女の心を守ってきた湿地の存在は、彼女にとって外因によっては揺るがない牢乎たるものだったんでしょうね。
とりあえずなんともいえない読後感に浸りながら、トウモロコシ粉をAmazonでポチり、映画館に向かいたいと思います。
果たして可視化された世界が妄想の湿地を超えられるのか……。
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親や兄弟に見捨てられ、差別を受け、孤独の中に生きた一人の女性の一代記。犯人探しや裁判の場面はあるが、ミステリーに分類される作品では決してない。
住まいのある湿地周辺の自然を愛し、幼いときは収入源となる貝の漁場として、成長してからは自然を題材とした研究成果を出版する研究対象として、自然が彼女を助けてくれた。少ないながらも周囲に理解者がいたところもよかった。
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この小説で描かれる湿地帯には行ったことがないが、その湿度や温度が感じられる文章で好感度高い。私も鳥の羽根つい拾ってしまう方なので、カイアが描いた図鑑が実在するなら是非見てみたいなぁと感じた。
殺人事件の結末については当然のオチだと思うので、ミステリー感をもとめる方には不向きかも。
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1952年のアメリカで6歳だった少女のことを思う。
家族に捨てられ、湿地にたった一人暮らす少女の毎日を、文字が読めず裸足で暮らす少女の孤独を、麻袋いっぱいの貝を掘ってお金を得る生活を思う。
差別や偏見の中で手を差し伸べてくれる人がいること。だけどその手をうかうかと握れない現実に打ちのめされる。
自分とは何一つ重ならない想像するしかないその人生の壮絶さ。けれど彼女の人生は彼女自身が自らの手で開き続けていた。差別も貧困も裏切りも、何も彼女のことを貶めることはできなかったのだ。孤高の人生の、その気高さに心が打ち震える。
これは湿地に住む一人の少女の物語である。
でも何十年、何百年もの間、私たちが直面してきた「現実」そのものでもある。
読みながら何度も怒りに震えもしたけれど、でも私はこの物語を読んで泣いたりはしない。涙は何も変えることはできないから。何かを変えるのは自分のこの手だけだと、教えられたから。
社会小説であり、生物学小説であり、恋愛小説であり、ミステリでもあるこの小説は、だれがどのように読んでも満足するに違いない。自然の描写はとくに素晴らしくて、さまざまな情景が目に浮かんでくる。湿地の風やもさもさしたトウモロコシの粥やボートに当たる波の飛沫さえも感じられる。
翻訳小説が苦手な人にもぜひ読んでもらいたい。
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二つの小説がひとつに縒りあわされている格好になっている。一つは一九六九年に沼地で起きた一人の男の死の謎を追うミステリ仕立ての小説。もう一つは、その十七年前の一九五二年に始まる稀有な生き方を強いられた一人の女性の人生を追った物語である。
アメリカ東海岸、ノース・カロライナ州の海岸沿いには湿地帯が広がっている。水路が入り組むその辺りは開発が進んでおらず、もともとは逃亡奴隷や人生をしくじって流れ着いた貧乏白人たちが、粗末な小屋を建てて生活する土地となっていた。彼らはホワイト・トラッシュと呼ばれ、唯一の市街地であるバークリー・コーヴの住民から差別を受けていた。ただ、湿地は多様な生物が棲む豊かな土地でもあり、魚介類が豊富で、その気になれば自活できる環境にあった。
主人公のカイアは両親と兄姉とともに潟湖とオークの森に隔てられた海沿いの土地に建つ小さな小屋に住んでいた。貧しい暮らしではあったが、優しい母や兄のジョディに守られて六歳までは健やかに育った。一九五二年八月のある朝、母が家を出て行った。父親は酒を飲んでは暴力をふるう男で、残された兄や姉は次々と家を出て行き、二度と帰ってこなかった。いちばん年の近い兄のジョディも、出て行ってしまうとカイアは一人になった。
父に定職はなく、戦争で足を負傷したため障害年金で生活していた。もともとは広大な綿畑を持つ富裕な一家に生まれたが、大恐慌が起き、ゾウムシに綿がやられ、借金を負い、家を失った。学校をやめて働き出したが、何をやっても長続きしない。妻の実家は製靴工場を経営しており、そこで働き夜学に通うも、酒に溺れて退校処分となる。心機一転まき直しのため、湿地に建つ小屋へ家族で引っ越し、出直すはずだったが結局は酒浸りというのがこれまでの経緯。救いようのない男だ。
ぷいと家を出ると何日も帰ってこない父は頼りにならず、カイアは記憶に頼り、トウモロコシ粥を作り、菜園のカブの葉をゆでて飢えをしのぐ。少しずつ家事もできるようになると、父もカイアを見直し、素面の父とボートに乗って魚を釣る平穏な日々も持てるようになった。そんなある日、母からの便りを読んだ父は手紙を焼き捨て、怒って家を出て行ってしまう。一人ぼっちになったカイアの孤独な生活が始まる。
帯に「2019年アメリカで一番売れた本」とある。ベスト・セラーというのは、ふだん本を読まない人がこぞって読むからベスト・セラーになるのだ、という。だから、設定はいささか極端なものになりがちだ。年端もいかない少女が、人里離れた湿地の小屋に一人きりで生きていくのだ。学齢が来ても、親のいない少女は学校に行かない。家に迎えに来た女性に連れて行かれた学校で「湿地の少女」とからかわれ、二度と行かなくなる。少女の友だちは小屋近くにある海辺に集まるカモメだけだ。
父親の置いていった金が途絶えると、貝を掘って袋に詰め、ボートで顔見知りの黒人の店に行き、物々交換でガソリンや食料品を手に入れる。ジャンピンという黒人は酷い差別を受けていたが、カイアに優しく、妻のメイベルは服やその他の品々をカイアのために都合してくれた��する。もう一人、テイトという少年との出会いがカイアの人生の転機となる。テイトはジョディの友だちでカイアを知っていた。鳥の羽の交換を通じ、二人は仲良くなる。カイアはテイトに読み書きを教わることになる。
乾いた大地が水を吸い込むように、文字を知ったことでカイアの知識欲に火がつく。もともと、貝殻や鳥の羽を集めるのが好きだったカイアは、それらを図鑑で調べ、名前や採集場所その他を記載するようになる。テイトは学校の教科書の他にも詩集やナチュラリストの書いた本をカイアに与え、カイアは自分の見知っていた物についてぐんぐん知識を吸収していく。それらはやがて、テイトの手を通じ、出版社に送られて本にされることになる。
二人は惹かれあっていたが、カイアに死んだ妹の面影を見ていたテイトは最後の一線を越えることなく、大学に入るため湿地を去った。再び一人になったカイアは、もう立派な女になっていた。そんなカイアに目を留めたのがバークリー・コーヴの商店主の息子で、フットボールの花形選手でもあったチェイスだ。二人は急速に関係を深めるが、結婚を約束しながら、チェイスは町一番の美女と結婚してしまう。
沼地に建つ火の見櫓から転落して死んでいたのはチェイスだった。不思議なことに足跡も指紋もないことから、保安官は殺人を疑う。チェイスが死ぬ少し前にカイアと争っているところが目撃されており、保安官はカイアを逮捕する。しかし、カイアはその夜、出版社の人間と会うため、別の町にいてアリバイがあった。後半は、カイアの弁護士と検察側の法廷劇となる。敏腕弁護士によって次々と証言の不備が暴かれていくのは痛快だが、カイアは差別されていて陪審員の出す評決は予断を許さない。
謎の提出で幕が開いた物語は、謎解きで幕を閉じる。そういう意味では通常のミステリのようだが、そうとも言い切れない。ホタルやザリガニをはじめとする湿地の多様な自然、種の保存の為になされる生物の行為、生命を維持するための動物の本能の持つ残酷さ。湿地の中でひとり生きる女の孤独。閉ざされた集団の持つ差別性。孤独な人間の中に育つ、他者との間に一線を画す心情。様々なものが多種多様な色糸で織りなされ、描き出された一枚の大きなタペストリーを思わせる一篇である。
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重厚な北米文学。
本当に本当に、すごい物語。
まるでレミゼラブルのような、或いは赤毛のアンを全巻通したような読後感。
貧困、被差別人種、麻薬中毒者、傷病軍人・・・社会的弱者や落伍者を隠すのは未開拓の湿地、沼地だった。
行政が行き届かぬ未開の沼地。
或いは、見てみぬふりをされてきた土地と人々、と言うべきだろうか。
そんな湿地帯から少し離れた街には「文明」社会がある。
しかし、その「文明」社会には有色人種差別、偏見と搾取、反知性に満ちている。
社会福祉の理想も現実的な支援の手も届かない。
それは沼地が支援を拒むのか、文明社会の人間が手を差し伸べないからなのか、答えは出ない。
物語の主人公カイアも貧困と被虐待家庭に生まれた白人の貧困層だった。
食事、衣服、教育どころか基本的な保護と安全でさえ享受できずギリギリの状態で育ち、やがて周囲から保護者はひとり残らず去ってゆく。
p.293『辛いのは、幾度もの拒絶によって自分の人生が決められてきたという現実なのだ。』
そして、この孤独で知性的な女性をある者は嘲笑し、ある者は搾取し、ある者は遠目に見てみぬふりをする。
抑圧、偏見、苦痛、孤独、そして罪と劫罰。
文明社会には何があっただろうか。
およそ彼女が触れる文明社会の住民たちの多くは偏見と搾取に溢れ、その様は冷酷で反知性的である。
そして、彼ら彼女らには多くの隣人・友人、「家族」に囲まれている。
その一方で彼女は言葉を持ち、自然があり、科学を有した。彼女のあり方は知性的でさえある。
そして、彼女は完璧に孤独である。
孤独の中で、いくつかの優しさ、善良さに出会う事ができたのは彼女の僥倖でもある。
沼地という過酷な大地と文明社会という冷酷さ。
これら過酷で冷酷な湿地帯だからこそ、優しさや善良さもまた育まれるのかもしれない。
この物語で何を得る事ができるのだろう。
これはひとりの女性の育ちの物語であり、知性と反知性の物語であり、文明と未開というナラティブなフィールドワークであり、どこまでも孤独の物語である。
知性的かつ善良に、過酷な沼地で孤独に暮らすように生きるか。
反知性的かつ冷酷に、偏見と搾取に溢れた文明社会で大勢と一緒に暮らすように生きるか。
湿地の少女は生き方を迫るようだ。
P.155『できるだけ遠くまで行ってごらんなさいーずっと向こうの、ザリガニの鳴くところまで』
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読み進むほどに、のめり込んだが、読後はあまりよくない。
結局、自然に溶け込みすぎて、生物の本能に従うしかなかったのかと思うと虚しさが込み上げてきた。
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テレビで映画の宣伝CFで「ザリガニの鳴くところ」ってタイトル見て焦りました。もう映画化されたんだ…読もう読もうでここまで開いてなかった本です。「読んでから見るか、見てから読むか」世代としては、映画見る見ない別にして、映画評とかSNSのタイムラインとかで書評以上の情報触れちゃったら読む気しなくなるように思もえ慌てて開いた次第です。本書をミステリーとする書評もあったのであんまり周辺情報入れたくなかったし。もちろん主人公に関わる人物の死は大きなこの物語の駆動装置であることは確かですが、しかし、もっと謎解き以外の感情が激しく揺さぶられました。沼地と陸地、心と体、子供と大人、女の子と女性、生物と人間、カラードとホワイト、白人の中での境界線、男と女、孤独と社会、愛と欲望、母と娘、父と娘、言葉と視覚、科学と詩、カイア・クラークとアマンダ・ハミルトン…いろんなボーダーを自力で生き延びる少女の物語です。ずっと動物学者として湿地の保全活動をしてきた作者にしか紡ぐことの出来ない唯一無比の小説。そういうと、この本自体が豊饒な生命の場である湿地であるように思えてきました。あまりに満足したのでもう映画見なくて大丈夫ですが、でも見れば登場する鳥たちの羽根の美しさを体感出来るような気がして揺れてます。