紙の本
文学って深いですね
2020/05/07 17:50
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投稿者:バニコ - この投稿者のレビュー一覧を見る
いわゆる入門書というのは、概して正確性や分野の広範性をいくらか犠牲にすることで、理論の単純化を図っている。本書もこうした例にたがわず、少なからず曖昧な点や欠落した部分があることは否めないと、著者自身も「あとがき」の項で述べている。もちろん、私は専門家ではないので、この本についてあれこれ批評することは控えたいが、こうした本を通して、文学を少しでも身近に感じることができる生徒が増えるのではないだろうか。今後の評価に大いに期待したい。
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授業で学生に紹介しようと思って読みはじめたのだが、邦訳されていない書籍も数多く案内されていて、結果的に自分自身の勉強になった。この手の入門書としては、とてもわかりやすく、良書だと思う。
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こういう本はよく読むのだが、障害学批評やエコクリティシズムなど、比較的最近の理論も紹介されているのがよかった。平易な説明なので初学者でも読みやすいはず。
しかし気になる点は多い。まず、桃太郎を題材に文学理論を紹介、というコンセプトだが、桃太郎がうまくハマっていない理論もある。大抵、こういう概説書は、各理論に適した例を持ってくる。著者は、そうした例を読んだことがない読者にも実践例を見せたい、という意図から桃太郎を選んだのであって、それは共感できるのだが、結局足枷になってしまっている印象は拭えない。
また、これはこの本に限ったことではないが、理論の説明が怪しい箇所もある。わざわざ例を挙げるのも手間なので控えるが、「構築」とか「構造」を説明するあたりは、やや不信感を募らせる。結局は自分で原典に当たるしかないのであって、導入は導入でしかない。
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文学を批評するには、まず構造を知る。二項対立。そこに潜む上下関係を見つける。資本主義、フェミニズム、文化をそこに見出す。
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やさしい文学批評ガイド本。
各種の文学批評を観光ガイド、テーマパーク遊覧のように概観する一冊です。多くの前提知識を求めない平明な記述、各批評を貫いて「桃太郎」を試料とした例示、要点(頁上部)と著者・作品・語彙の注釈(頁左部)を備えた紙面構成など、入門者向けの手厚い配慮が全篇に施されています。
その名を見聞きしたことはあっても、業績や意味までは知る機会の少ない思想家たち(マルクス、フロイト、レヴィ=ストロース、デリダ等々)や概念(二項対立、脱構築、精神分析、等々)の文学理論上の位置づけを読み手に説いたうえで、光源によってモノの見え方や印象が大きく異なるように、各種の批評によって同じ文学の捉え方がどれほど変わるものかを教えてくれます。
通読したうえでとりわけ印象に残った点として、本書を読む限りは、その成り立ちも含めて文学とその批評が支配関係に深く根差したものであることが挙げられます。
総じて私個人は大変有用な著書だと感じましたが、タイトルとあとがきにも著される通りあくまで入門者を対象とした書籍であるため、読者によっては既知の情報しかない場合や、物足りない部分、焦点や精度に不満が表れる嫌いもあるかもしれません。
以下は参考までに、各章で目についたキーワードなどを羅列してみます。
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第1章 文学って何?
文学の定義をめぐって/文学部誕生の由来
第2章 なぜ今、文学を学ぶ必要があるのか?
高まる、文学が養うとある思考力の重要性
第3章 文学批評の基本
客観と主観
第4章 桃太郎はヒーローなのか?
――構造主義批評と脱構築批評
二項対立、デリダ、レヴィ=ストロース、バルト
第5章 桃太郎はなぜ鬼ヶ島に行ったのか?
――精神分析批評
フロイト、ラカン、無意識、超自我
第6章 『桃太郎』は政治小説だった?
――マルクス主義批評
労働疎外論、史的唯物論、リアリズム
第7章 なぜ桃太郎は男なのか?
――フェミニズム批評
フロイト批判、本質主義批判、クィア批評
第8章 鬼とはいったい何者なのか?
ポストコロニアル批評、オリエンタリズム、サイード
第9章 私たちと桃太郎
――カルチュラル・スタディーズ
大衆文化、コード化、バルト
第10章 桃太郎研究の未来、そして文学研究の未来
――障害学批評、エコクリティシズム批評、人文情報学批評
統計学、人間中心主義、デジタル技術、フーコー
第11章 文学批評の実例
――アルベール・カミュ『異邦人』研究
文学理論をもとに「問い」を立てる
マクルーハン
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文学について知りたいけど入門書レベルでも難解だと思っていた私にとってピッタリな本でした。
平易な文章で文芸批評で使われる哲学や思想について解説してくれる。
読後は無性に近代文学を読みたくなりました。
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優しくわかりやすい文学評論入門書です。
人が作った作品をあれこれ研究するのって、なんなの?意味あるの?って私自身、大学の頃は思ってました。
正しいことは一つという考えが知らず知らずあったのでしょう。
物語にある虚構性は、嘘や幻とはイコールにならない。
虚構性の中にも、ホンモノがあり、社会で起きていることを明らかにすることができたり、ひとりの人間の心のうちを理解することができたり、差別意識に気づくきっかけになったりする。
そして、深く読もうとすることは、批判的な読み方になるから、ものごとをいろいろな角度から考えたり、自分の頭を使って考えたり、新しい価値観を得ることができたり、一人ひとりの人間性の成長にも繋がるように思います。
この本を読めば、一つの作品が持つ重層性や、多角性に気づくための視点が得られます。
ただストーリー性を面白がる以上に、作品の持つ価値を読者が作り上げていくのは楽しいことです。
文学部や国語の先生といったその道を専門とする人だけではなく、もっと物語を深く読んでみたい人にもおすすめできる。
それと、この本の考えは、物語性のあるメディアであれば、どの作品でも応用できると思います。
英語や漫画やアニメといった媒体を深く読むためのヒントにもなるでしょう。
最後のあたりにあるコラムで、読書で使っている力についても、改めて考えることができた。