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最終章での、個人主義下で一人一人が一生懸命息をしようと動き続ける論理は実感するところもあり、このままじゃ疲弊するよな…とも思った。ケインズの見方を学びたいと思ったが、この本だけでわかった気にはならない方がいいと思った。欲求と欲望の違い、それらの連動性、個人個人の欲求と欲望の配置の違い・・・自分の欲望を見つけなきゃと焦らずとも欲求と連動しているものかと捉えると、そう焦るもんでも無い気がする。人生長いし焦らずじっくり刻んで生きたい。
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紛れもない怪作であり著者の縦横無尽な知性を見せつけられるが、注意して取捨選択すべきポイントも少なくない。
1. 欲望に対する自動ブレーキが中世社会に埋め込まれていたのは事実に近いだろうが、それが意図的に設計されたものであるかのように捉える必然性は無いはず。
2. 近現代を「資本主義の暴走に呑まれた不幸な時代」、それ以前を「調和が保たれていた古き良き時代」と捉えているように見える。しかし暴力も貧困も疫病も今の何倍も身近にあった時代が、果たして今よりも幸せであったかどうかは難しい問題である。
3. 随所に出てくるアナロジーは確かに理解の助けになるが、囲碁のあたりなどはさすがに無理がある。イメージとして伝えたいことは理解できるが、論理の対応が無いので腑に落ちない。
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経済学の各トピックについてはすでに理解している部分もあったが、独特のアナロジーやトピック間の関連付けとストーリー性の部分に多くの新規性があり、十分に楽しむことができた。たしかにこのレベルについては経済学のバックグラウンドに関わらず全ての教養人が理解すべきと言える。ただ、理解のために単純化している部分も多いため、理解した"つもり"で終わらないためにさらなる情報収集が必要と思われる。
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早くも2021年読んだ本の中でベスト。
日々の仕事や今後の事業の方向性を考える上で、ミクロの時点で物事を考えてしまいがちだったが、この本を通してマクロの観点から考えることの重要性を再認識できた。
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こういう物理学の手法で経済学を見るのはとても新鮮。合ってるかわかりませんが、東洋哲学者が経済を語ってるような印象。第1章と最終章は特におもしろかったです。
新自由主義による行き過ぎの指摘は同意します。縮退の話は目から鱗でした。ただし、最後にあった解決策にはいまいち賛同しかねる部分がありました。(本人もやや自信がなさそうではあった)
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知人が高評価をつけていたため、図書館にて借りて読んでみた。
第一章 資本主義はなぜ止まれないのか
第二章 農業経済はなぜ敗退するのか
第三章 インフレとデフレのメカニズム
ここまではまだ初心者の私でも大変理解しやすかったが、それ以降の章は一読だけでは理解が難しかった
↓以下忘備録のためほぼネタバレ↓
第一章要約
・貯蓄と言う行為は、本質的に経済社会貧血か超高血圧の二者択一を強いる性格を持っている。
・投資と貯蓄が一致すると言う条件が満たされないと、経済はバランスをとって走り続けることができない。
・資本主義経済は本質的に「空気より重い乗り物」であって、連続的に設備投資を行って行かねばならず、それが突然完全に停止したならば、経済は浮力の5分の1程度を失って落下してしまう。
第三章要約
.インフレと言う現象は、基本的には物資と貨幣の対応バランスが崩れることで起こるものであり、そのメカニズムをスマートに直観化するには、逆ピラミッド型図形をイメージするのが最も早い。
.ただ、それは必ずしも造幣局が紙幣乱発をしたことで起こるものばかりではなく、むしろその多くはサーキットが広くなっていく過程で生じたボトルネックが全体に波及していくと言うのに似たメカニズムによる。そのため一般に好景気の状態はインフレを発生させやすい。
現代社会が資本主義はもはや手放せなくなっている理由は、ほぼ次の3つに要約できる。
①軍事力維持の基盤としての資本主義(旧英国型)、②人々に未来の夢を出るための資本主義(米国型) ③資本主義から身を守るための資本主義(日本型)
インフレ環境の下では一般的に、
.資産家階層(もっとも金持ちととその資産で生活=機動性鈍い)は損をする
.企業家階層(2番目に金持ちとと借金をし=起動性高い)は得をする
.労働者階層(もっと貧乏=機動性鈍い)は損をする
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面白い!第1章が特に秀逸で読む価値あり。
・人が貯蓄をするから、銀行を介して投資しないと経済が保たれない。消費の20パーセントはこの分。
金利があるから、経済は大きくし続けなければならない。20パーセント分、投資をするから規模拡大する。→資本主義は止まれない!
・低所得者を経済的に救済することが、結局は社会全体の利益になる!消費性向が高いから。ケインズ経済学的考え方。イスラム金融の喜捨は、この役割を果たしている。
・ビットコインの致命的な弱点は、金本位制と同じく、簡単に量の増減ができないこと。それゆえに自分自身の価値の増減で総額を調整するしかなく、そこにビットコインに対する期待感や投機性などによる実態経済とは乖離した売り買いが加わることでボラティリティが大きくなってしまう。
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経済は大学の授業で挫折してちんぷんかんぷんみたいな人向け、驚くほどばっちり分かるようになると聞いて、半信半疑で買ってみたものの積んだままにしていた本。読んでみたら本当にするする読めてちゃんと分かるようになるからびっくりした。
今までニュース等で金利だの何だのの要素だけ聞いても、経済全体においてどういう意義があって影響するのか分からないのでちっとも頭に残らなかったが、この本はそういった理解の枠組みを与えてくれることに重点があるので「あれはこういう意味だったのか…」と腑に落ちることがいっぱい。私は数字に弱いんだけど、可能な限り数字が出てこないか単純化してあるようになっており配慮を感じる。あたたかい。ありがたい。
歴史における経済の移り変わり、その原因が分かるようになるのが大きく、見通しがすごくすっきりする。そして最後に資本主義の行きついた場所、袋小路に見えるその先についての論考があってそれが非常に面白い。
長い歴史の中で人類が、自由と平等の名の下に伝統的価値観を破壊してきたことで、資本主義が暴走することを許し、精神までも取り返しのつかない段階まで蝕まれる「縮退によるコラプサー」状態に陥っていて、孤立し空虚さを抱えている、という分析。似たような話は哲学や思想系では読んできたが、碁石のモデル化など、経済や物理の視点から分析・表現するとこんな風になるのかと新鮮な驚きがあった。ローマ帝国の成り行きの話あたりは、自分でも確かに世界史の授業を受けながら「これって現代の状況がなぞっているのでは」と思っていた記憶があり、すごく納得。
縮退から脱出するためのエンジンとしての「大きな物語」をどう作っていくのかという話については、著者は「物理・数学レベルから設計された大きな思想」というものの登場を想定というか希望しているけれど、それが現実に登場するかはかなり怪しい気がする。少なくとも、著者の想定するようなインテリ主導というのは現状考えづらいように思う。
ちょっと前にネグリが提唱していた帝国論のマルチチュードなんかは、本人たちはそういった壮大な広がりを夢見ていたように思うのだが、結局限られた界隈の「竹製の手製ロケット」であった。昨今のアメリカのポリコレ関係や欧州の移民にまつわる問題、社会的分断を鑑みてもリベラルインテリ層と「それ以外」の乖離は絶望的に見えるのだ。
現状の資本主義秩序を打破するための世界的な影響力・実行力という面で考えると、今一番成功しているのはイスラム国ではないかと思ってしまうくらいだが、当然普遍的な広がりは(今は)考えられない。
この本で言うブロックチェーンの話みたいになるが、大きな物語はもはや意義はあっても運用は現実的ではなくて、結局そのような夢を見つつ「小さな物語」をなんとか保護してたくさん運用していくことに注力する方が希望がある気がする。物語は個人個人の中で確立してしまえば、無理に成長する必要はないのだし、ごくごく小さな家族の繋がりのようなもの、浸食されにくい極小の繋がりをめいめいがきちんと掴み、握れるようにするための取り組みが必要なんじゃないかと思う。
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端的に経済学のオーバービューが記載されており、内容も非常に分かりやすくなるよう工夫されているので満足。
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色々と面白い切り口というか、話はあるんだけど、
いかんせん貨幣感がアウトかなぁ。
ブロックチェーンのとこは単純に勉強になる。
オーディブルで聞き流しならまぁアリ。。
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経済に関する事柄が多方面から非常にコンパクトにまとまっている良書
個人的には6章と8章が読み応え◎
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ー 実はこれは一種の縮退なのである。つまり長期的願望というものは、人間の願望が社会の中を大きく回って結果的に自分に戻ってくるため、デリケートな生態系に似ているが、それに対して短期的願望は、そんな複雑な経路を全部ショートカットして強引に直接望みをかなえようとする。つまりこれは先ほどの構図と全く同じなのであり、そのため社会の中で短期的願望の割合が増大することは、生態系としての劣化であることには多くの方が賛同されるのではないか。
そしてこれを踏まえてあらためて広く見直すと、現代の資本主義経済がいかにそれに依存しているかがよくわかる。つまり多くの場所で、人々の願望にどんどん短期的に応えることによって、そこでの勝者が繁栄すると共に、以前より多くの富が引き出されているのである。
つまり現代社会の富は、単に巨大企業自身が活発化しているというより、昔の時代からの伝統や習慣で長期的に整っていた社会生活のシステムが、壊れて縮退する過程でしばしば生まれており、むしろ後者がメインとなって経済社会では富が引き出されているのである。 ー
面白い!
資本主義は何故止まれないのか、そしてその先に何があるのか、という大きな物語で経済学を解説していて面白い。
経済学となっているが、むしろ人類史を経済の側面から説明した論考に近い。だから面白いし、頭にすっと入ってくる。
「退縮してコラプサー化していく」世界と経済の大問題を、いろいろな側面から考えていかないといけないな。
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応用物理学者の長沼伸一郎さんが、現代経済学の直観理解のための解説をまとめた一冊。資本主義とは、グローバル経済とは、仮想通貨とは何か、といった、現代社会・現代経済を理解したい方には、とても良い一冊。もともと経済学には強い関心を持っているが、これほどわかりやすい本はなかった。まさに「直観的」。鉄道の発明と普及が戦争を大規模化・グローバル化させたことと、銀行の発明と普及が資本主義を大規模化・グローバル化させたという比喩などは、まさに本質をついた解説。特に印象的なのは「縮退」という考え方。短期的欲望と長期的願望が競合するとき、人々は短期的欲望を優先しがちであり、経過として経済の規模としては維持もしくは僅かでも成長しつつ、社会やコミュニティが多様性を失い、格差が生まれ、文明としては退化する。これ、ビジネス・サービス・商品開発の世界でも起こり得るし、実際に起こっていることでもあると思うので、起業家や経営者の方は再認識・再検討が必要と感じた。
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難しめだが、論理展開が綺麗でとても読みやすい。
中盤までは歴史の変遷を経済的側面から振り返り、モノの価値や貨幣の価値がどのように移り変わってきたかが記述されている。余談だが、世界史で学んだ要所も振り返ることができるという意味でも面白い。
後半は資本主義に関する著者の考察が展開されている。
縮退という概念は初めて知ったが、近代から現代までであらゆる観点で当てはまることがあり、大変興味深い。
短期的な願望が長期的な願望や理想につながると錯覚して奮闘する人々とその実態は納得させられた。
是非様々な方に読んでもらいたい。
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理系が経済学の中で呼吸をするため、だけでなく、
社会に投げ込まれた理系の手本となる本。
マクロ経済学を含めた現代経済的の説明だけでなく、
鉄道やつるべの例えなど、
よく考えられたアナロジーになるほどが止まらない。
特に、縮退とコラプサーについては驚いた。
伝統文化を資源とみるなど、展望がひらけた。
鉄道の例え
資本主義のスピード
インフレと大きな政府
商業経済と産業経済
銀行券と貨幣の増殖
金本位制、国際通貨、仮想通貨
縮退とコラプサー