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『味くらべ』で読んだ「大根役者」が面白かったので、御薬園同心シリーズ3冊借りてきました。
今は小石川植物園(御薬園および養生所跡)となっている幕府御薬園。そこに同心として勤める水上草介が、御薬園界隈で起きる事件や揉め事を本草学の知識を活かして解決していく連作短編。
と書くと頼りがいのある頼もしい人間のように見えますが、園丁たちからはのんびりした性格から「水草さま」と面と向かって呼ばれる始末(そう言われてもまったく気にしないのが草介のいいところ)
それでもそののんびりなところにホッとすると言われ、たまに物事の核心を突く発言もして、鈍いのだか何なんだか。
まあ、物事に動じない優しい性格なのは間違いない。剣術はできなくても心根が強い。そういうところが千歳さんの心を動かしたんでしょうね。
若衆髷の千歳さん、登場したときは『剣客商売』の三冬さまを思い出しました。
(三冬さま、大好きなのでちょっと嬉しかった)
各話の事件がどう解決するか読むのも面白かったですが、出てくる植物の蘊蓄も興味深かった。印象に残っているのは2作目『桃のひこばえ』の「相思の花」。
彼岸花は、花のあるときに葉はなく、葉のあるときに花はない。そのため「葉見ず、花見ず」と呼ばれているとかで、それを親子の情に重ねる草介の言葉にじーんとしました。彼岸花のイメージが変わったなぁー。
出てくる人たちもクセがあって面白い人たちばかりで、そんな人々と出会い、たくさんの出来事を通して草介が成長していく良いシリーズでした。