紙の本
おっさん版「ぼくはホワイトでイエロー」
2020/08/29 16:40
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投稿者:チップ - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本人がイギリスの労働者階級と聞いてイメージする姿とはちょっと違ったグローバル化して複雑化した現在の姿を描いたエッセイ
AI化して職業を失うのは中間ホワイトカラーだと思うのだけど、労働者階級は「AIで仕事がなくなるから学歴をつけなければいけない」と教育に熱心だというのは意外
イギリスのNHS(国民保険サービス)に対する思いは日本人にも参考になる。
もし日本にいたら不妊治療を受けられなくて、ツレアイのガンも治療できなかっただろう。
と著者は書いているが、高額な不妊治療は難しかったかもしれないが、ツレアイのガンはもっと早く気軽に診察をうけて自分で払える負担額で治療できたように思う。
無料のイギリスと中負担・中福祉の日本の医療制度はどちらが良いのだと考えてしまった。
紙の本
この本は、筑摩書房の井口かおりさんの「ブレイディさん、おっさんを書いてください」という唐突な提案から始まったものだった。
2020/08/17 20:42
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投稿者:オオハシ - この投稿者のレビュー一覧を見る
楽しかった! 勉強になった!!
自分もいわゆるジェネレーションXということで40も越えていわゆる「おっさん」のカテゴリに入ることになるのだが(個人的にはあまり認めたくない)ここで出てくるおっさんたちは少し上の世代でベビー・ブーマー世代なんだそうだが、英国の様々な事情の中、おっさんたちがイキイキ生きている。 それぞれのおっさんのそれぞの人生があり、それをみかこさんが絶妙な切り口でカラーでいきいきと伝わるように描いてくださっている。
実は友人から薦められて「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」を読んでえらい感動して、こないだ本屋にいったら今度は「おっさん」編があるというのだから、パンクなみかこさんが今度は「おっさん」をどう表現していくか超楽しみで読ませていただきました。 ほんとに多様な人がいて多様な人生があって、それでも「みんな生きている」というところからスタートする本の躍動感、素敵です。
僕も酒好きなんで、最終章の「最後はだいじなだいじな酒の話」ときて、 『その理由は簡単だ。 筆者が酒飲みだからである。』 というところのオチもあるけど(そもそも、酒を飲むということじたいが不健康でアンクールな習慣であり、むかしの人間のやる古臭いことだというイメージで捉えられていることは、例えば毎晩飲んでいる母親のことを見ている、わが息子の冷ややかな目つきを見てもわかる)、
ほんとにUKを20年以上生きてきて、その現場の多様性というか歴史の流れというか、そういう生々しい感覚を手触り感たっぷりレポートしてくださっている。 こんどイングランドに行くと言っていた知り合いがいるのでぜひこれも紹介しよう。
強いて言ったら、僕は英国ミュージックにそんなには詳しくないので、詳しい人だったら、もっともっと楽しめたんだろうな、とちょっぴり思う。 また、みかこさんの本、探して読もう。
いつもの引用抜粋、悩んだが、結局以下にすることにした。(あとがきより)
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P251
この本は、筑摩書房の井口かおりさんの「ブレイディさん、おっさんを書いてください」という唐突な提案から始まったものだった。 編集者さんからの提案はいろいろあれど、これはちょっと意表を突くものだったので、なんか圧倒されて気がついたら書き始めていた。『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』で青竹のようにフレッシュな少年たちについて書きながら、そのまったく同じ時期に、人生の苦汁をたっぷり吸い過ぎてメンマのようになったおっさんたちについて書く作業は、複眼的に英国について考える機会になった。二冊の本は同じコインの両面である。
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紙の本
苦しくも生き生き
2020/06/25 10:09
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
イングランド南部の労働者階級の暮らしぶりを、鮮やかに捉えていました。行政サービスの縮小など、今の日本の生きづらさにも繋がるものがあります。
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ぼくイエ、が伸び盛りの青竹の様な少年のはなしに対して、こちらは人生の苦汁をたっぷり含んだシナチクの様になった大人の話。爽やかな話ばかりではないが、ペーソスに溢れ、そして社会を分断する様々な事象への冷徹な目配りも忘れない。思わず笑い、しんみりし、熟考を要したよい読書体験を味わわせていただきました。
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著者があとがきで
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『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』で青竹のようにフレッシュな少年たちにつおて書きながら、そのまったく同じ時期に、人生の苦汁をたっぷり吸い過ぎてメンマのようになったおっさんたちについて書く作業は、複眼的に英国について考える機会になった。二冊の本は同じコインの両面である。
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と語る一冊。
本書を通して問題となるのはブレグジット。最初はブレグジットが何かすらわかってなかったけど(恥)、イギリスのEU離脱のことだった。
本書で描かれるおっさんたちは、当たり前に日本人のおっさんたちとは全然違う。はっちゃけていて、気がよくて、それでいて政治に真剣だ。日本人のおっさんたちが、政治について真剣に議論して苦悩してる姿って、あんまり見る機会がない。
あとNHSって全然知らなかったけど、不妊治療も無料で受けられると知って驚いた。それが緊縮財政で「この人は、じわじわNHSに殺されるつもりなんだろうか」と著者が不安を覚える程、今は機能していないらしい。
そうか、ブレイディさんはこういう本を書く人だったのか。「ほんと、何度言っても言い過ぎることはないほど、緊縮財政というやつは罪つくりなのだ」というのが一貫しての主張だった。
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前作の“.....ちょっとブルー”と同時期のブレグジット時代のおっさん達の話。切なく哀感漂う話が多いがおっさん達は自分好きの楽しい人達である。
色々あるけど、頑張ってきた人達。
各章にワイルドサイドを歩け……等の歌詞が使われている。聞き直したくなる
『ハマータウンの野郎ども』も筑摩書房からでてますね。
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英国の労働者階級のおじさん達の話。
内容はやや面白かったけど、感覚としては、内輪ネタで盛り上がっている友人達の中に混じってしまい、とても居心地が悪かった…というような感じ。様々な人物が登場するが、その登場の仕方にまとまりがないので、その都度前に戻って、登場人物紹介のページを確認しなければならなかった。各章に出てくる歌の歌詞もあまりピンとこなかった。
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『ぼくイエ』で私たちに「無知であること」をたたきつけたカッコいいかあちゃんの連れ合いや、近所のおっさんやおばさんの人生はとても賑やかでカラフルで楽しくて、そしてちょっと悲しい。
若者でも老人でもなく、エリートでも最貧困層でもない。いわゆる労働者層としてイギリスのブライトンで暮らす彼らへの、愛に溢れるエッセイ。
日本の地方都市とは全く違う暮らしぶり。へぇー、とか、ほぉー、とかいちいち感心したりネットで調べたりしながら読みました。
「家族」とか「仕事」とか「政治」とか、そのひとつひとつが自分の生活圏内のそれと違っていて興味の塊になってしまいました。
ベビーブーマー世代のおっさんたちが、一生懸命働いて、目いっぱいお酒を飲んで、家族や友達とバカンスを楽しむその生活もうらやましくもあるけれど、一番うらやましいのは「仕事」を介さない付き合いがきちんと存在することでしょうか。
日本のおっさんたちは、仕事関係以外の友だちってあまりいないかもしれない。おばさんにしてみたらもっといないでしょう。そういう仲間との付き合いがあるから彼らの日々がとても鮮やかなのですね。
いろんなことに失敗して、家族を失ったり、仕事を失ったりしながらも、しぶとくたくましく今日も友だちと酒を飲んでるおっさん、おばさんのいきのいい人生から、ワイルドさを少しおすそ分けしてもらった気分です。
いやぁ、人生っていろいろあるから楽しいんですね。死ぬまで生きるぞ!
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ブレグジットや緊縮財政をキーワードに、イギリスの所謂労働者階級の人達のリアルな生活を、軽妙なタッチの文章で描かれてるので、結構ヘビーな状況に思えるのだが、別に悲壮感が漂ってる訳ではなく、イギリスらしいパンク精神で戦ってる感じで、むしろ彼らの行動や考えがコミカルにみえてくる。
No futureな先行きに、特に光明を見出してる訳ではないけど、逞しさを感じる。
けど、日本も他人事じゃないんだよな。
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英国には行ったこともないこともあり、なかなかピンとこない内容。
日本では、詳しく報道しないので、EU離脱決定の理由を知りたいと思い読んだのだが、難しかった。
いろんなオッサンの話は面白かった。
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PR誌「ちくま」に連載していてずっと楽しみに読んでいたのが本になった。ブレグジットに熱狂しPCなにそれみたいな旧弊なおっさん世代の友人知人の来し方と現在の交流のていねいな描写にふれることで、自分(の世代)とはなにかと相容れない過去や言動がある人物といえどもいっしょうけんめい生きているのだと伝わってきて、善悪や優劣を簡単に極めつけることができなくなる。世代間やで争っているときではなく、世代を問わずそれぞれに困っていることをみんなでなんとかしなくてはいけないのだな、という気持ちになってくる。
「ちくま」2017年12月号〜2019年11月号に掲載されたものが第1章、第2章は書き下ろしで「解説編:現代英国の世代、階級、そしてやっぱり酒事情」、英国の世代や階級については勉強になった。特に世代は「ベビーブーマー」「ジェネレーションX、Y(ミレニアル世代)、Z」などが日本の団塊、団塊ジュニアなどとは微妙にずれていることがわかった。
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前作「ぼくはイエロー~」の子供の話から一転、今作はイギリスのおっさんについて語ったフレイディみかこさんの最新エッセイ。主に労働者階級に該当する(と思われる)おじさんに焦点を当てた作品となっているので、日本人がもっているイギリス人紳士のイメージとはちょっとかけ離れた内容となっている。おじさんたちはブレクジット・移民問題・医療問題など、イギリスの抱えるさまざまな社会問題に巻き込まれつつも、なんだかんだで人生を楽しんでいるように見えるのはイギリスという国民性なのかなと思った。
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「サッチャーの前の時代まで純粋なベガーていなかった」など、なるほどな、と思わせてくれる面白い意見がたくさん詰まっている本。
現地に根を張り生活をしている筆者が書く本作は、英国の暮らし振りだけでなく、それに世情や周囲のリアルな声が絡められ、興味深く読み進められた。
違う意見を持った人々も英国には多く居るだろうが、一般的なイギリスのおじさんおばさんの考えが読めて面白かった。この本を読んだ後にロンドンのパブで聞き耳をたてたら面白いだろうな。
息子さんが成長したら、彼の意見や本書の書評を聞いてみたい。
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ベビーブーマー世代の愛すべきおっさん達の身の上話を、エピソード形式で紹介していく本。巻末では緊縮政策に端を発する現代イギリスの問題について、軽やかに解説してくれる。EU離脱問題をはじめ、団塊世代とミレニアム世代の分断など、現代日本にも通ずるような話がたくさんあり、近代史の勉強にもなった。日本の現状も踏まえて、もう一度しっかり読み直したい。
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イギリスでは医療を受けるためにこんなにも苦労があるのかとびっくり。おっさんたちの悲喜交交をしんみりしつつ、明るく紹介するエッセイのようでした。知らない社会を気軽に垣間見ることができました。