紙の本
息を潜めるようにくらしている人たち
2024/01/01 00:38
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投稿者:kochimi - この投稿者のレビュー一覧を見る
封じ込められたような世界の中で
息を潜めるようにくらしている人たちの
繋がり方の色々を描いたような物語。
雰囲気も文章もなんか好きです。
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投稿者:テラちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
沖縄の郷土資料館で整理の仕事を手伝っている未名子が主人公。ウエブで世界の人々にクイズを出す奇妙なバイトもしているうち、家の庭に宮古馬が迷い込んでくる。この宮古馬を飼いならし、乗りこなす訓練をする未名子を通し、太平洋戦争下、激戦が繰り広げられた沖縄の歴史や、平和を考えさせていく。宮古馬が沖縄県の天然記念物に指定されたのは随分前だが、未名子が乗り、街中を歩き回る「幻の馬」をヒコーキと名付けたのは、歴史をベースにしたからだろうか。昭和初期、沖縄競馬で活躍した名馬が確か、ヒコーキ号だった。ただ、未名子の家の庭に現れた馬が、足を折りたたんでうずくまっていたというのは、許されるのか。普通、馬は寝る時でも四肢で立っており、足を畳んだら……宮古馬は例外なのか、「幻」だから良いのか、それとも一種のファンタジーと受け取るのか。
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タイトルから歴史小説と思って読んだら、違うかった。
不穏な仕事から、スパイ小説か推理小説かと思い始めたら、やはり違うかった。
沖縄戦のこと、琉球のことを思う。
どこかで、孤独と暮らしている人のことを思う。
いくつか謎が謎解きされないままなのだけど、謎のままのほうがよいなと思ったり。
不思議な雰囲気を持つ小説。
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沖縄で孤独に暮らす主人公の少し現実離れした生活。郷土資料館の古い記録の整理、オンラインで繋がる孤独な状況に置かれた人との会話、台風下で迷い込んだ宮古馬との出会い、いずれも彼女の孤独を寂しいものにはしていない。独りで何かに向き合うときの集中力や冷静であることの重要性を淡々と示されたような気がする。
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孤独とつながり。断絶と連結。
すごくゆったりとした空気感で進んでいく物語で、掴みどころのない読後感が残るけど、「ものすごく分かる」わけでもなく「全然わからない」わけでもない。深ーいっていいたいけどそこまで読み解けた訳でもなく、文学って感じ。
(なんだこの感想は。)
通信で繋がる彼らと最後に交わしたクイズの意味か、いつかわかればいいな。
良い本でした。
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途切れ途切れ読んだため、内容が上手く把握できなかった。沖縄の悲惨な過去とある女性2人の生き方をフューチャーした話。なんだか強い意志を感じた。それが宮古馬との関わりがまた絶妙だった。
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受賞作ということで読みました。面白く読みましたが、これからというところで終わってしまうような読後感。(話自体は完結してるのですが、これから面白くなりそうな感じでした。)次の作品が楽しみな作家さんでした。
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芥川賞受賞作で、同じ富山の作家さんということで、買ってみましたが、いまいち何を伝えたいのか分かりませんでした。特に前半…もうちょっとグッっとくるものを詰めてくれたらなぁと…なんかぼんやりとしか伝わらなかった…私の理解力が、無かったのだろうが、これで芥川賞なのかと少し残念
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ストーリーは少々唐突な向きもあったけど、沖縄の歴史や今の風景描写、孤独の中で過ごす人たちの会話が濃密に描かれていた。
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孤独こそ生きる力だろうか。
この物語の主人公たちは皆、社会や集団、或いは国家からの断絶を抱えている。
さらに多くの無知、無教養、反知性が主人公たちを取り巻く。
アイデンティティの拡散状態であると言ってもいいかもしれない。
思えば沖縄という土地も葛藤に満ちたアイデンティティだろうと思う。
そしてその葛藤を与え続けているのは私も含む多くの日本人であって、しかし根本的な解決を目指すには意志も信頼も環境も国際関係もなにもかもが足りない。
この物語は沖縄の葛藤が主役ではない。しかし、沖縄だからこそ描かれうる重要な舞台装置でもあることがひしひしと伝わってくる。
アイデンティティが拡散しているからこそ、それを発見・再発見するために記憶が必要となる。
その記憶は史料や知識といった具体物から浮かび上がる。
主人公が多くの時間を過ごした資料館然り。
そして資料館の開設者たる順もまた、戦後という日本のアイデンティティが曖昧となった時代の女性であり、彼女自身のアイデンティティも多くの危機に見舞われていたことが読み取れる。
主人公の未名子も、彼女自身のことが語られることが極端に少ない。もはや皆無と言っても差し支えないのではないか。
従って彼女自身の自我同一性即ちアイデンティティも空虚だ。
これでどうして主人公に感情移入できよう。
しかし、孤独に生きて、拡散したアイデンティティのままに、それは空虚な存在であるからこの物語の重要な存在だ。
そして、沖縄古来馬。
馬好きとしてはもう少しお馬さんや馬具(頭絡とか)の描写が曖昧だったのが残念ではある。そもそもお馬さんは身体を横たえることはほとんどないし、体高の低い古来馬に鎧もなく馬術未経験者がスルッと乗れる筈がないのだが、そんなのはこの物語をなんら毀損するものではない。
未名子が得たはじめての友人、相棒、ピア、そしてアイデンティティなのかもしれない。
アイデンティティを得て、物語が始まりそうな予感の中、物語が終わる。
しかしそれは唐突だったり、不完全燃焼な物語である訳ではない。
未だに名のない子が、アイデンティティを得たという大団円であるように、心が飛翔する。
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"真実はその瞬間から過去のものになる。ただそれであっても、ある時点でだけ真実だとされている事柄が、情報として必要になる日が来ないとだれがいい切れるんだろう"
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何をどう描いているのか描きたいのか、何を伝えたいのか、主人公の未名子は一体何をしたいのか、結局なんだったんだろう?と、話の内容が理解できない上に、盛り上がりもないまま終わってしまいました。
未名子は自分の合っていると思った仕事をいきなり辞め、宮古馬をガマに移動させ、そして馬に乗って町を歩いて、一体何をしたかったをんだろう?どう生きていくつもりになったんだろう?そもそもこの宮古馬は、何故迷い混んだんだろう、何のためだったんだろう?この馬を登場させる意味もわからなかったし、全く理解不能だった。
その突然辞めた、オンライン通話でクイズを出題するという仕事も、不思議過ぎて想像しずらいし、1冊の小説・物語の上で、何を意味したかったのだろう?
文章は難しくないのに1つ1つがめちゃくちゃわかりにくい。それが芥川賞作品ってこと?
この作品が特有なのか、芥川賞作品はこんな感じなのか?
ともあれこの作品を理解できる読解力は私にはなかった。
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連続と断絶、様々な断絶を含みつつも世の中は連続的に存在する。いや、断絶は連続の中に存在するからこそ断絶なのであって単独で存在した場合、それは一つの事実であって断絶にはなり得ないのか。
断絶にも様々な形がある。政治的な事や重過ぎる愛、人質。戦争や台風による強制的な断絶、自ら望んだ断絶、さらには理解できないものへの拒絶。
この物語で語られるのは、様々な断絶とそれを乗り越える力。そもそも完全な断絶なんてありえないという気付きから決意を持って自分で未来に向かって歩き出すヒコーキに乗った未名子の姿が清々しい。
舞台の沖縄はまさに断絶と連続の歴史を象徴する存在。テーマから舞台を選んだというよりも、沖縄からテーマを切り出したのだろうと思われるくらいに物語の内容に寄り添い、程よい演出となっている。
全体的に静かで派手さはないが、純文学らしい深みを感じるいい作品でした。
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こよくもこんな仕事思いつくなぁ、という感想。作家としてのアンテナがあるからこそ、人が思いつかないような作品が書けるのでしょうね。主人公が記録(沖縄私的資料館)に関わるボランティアと世界のどこかと繋がるクイズが対照的です。図らずもコロナ禍でのリモート会議時代にマッチしています。そして馬。
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現実とファンタジーが自然と入り混じる不思議な世界を垣間見ました。
個人的に、沖縄を舞台にした物語はどこか夢の中というか、神話的で靄がかっているというか、私の好きな意味で現実離れしている設定がしっくりくる気がします。
ちょうど「うんたまぎるー」を見たこともあって、余計そう感じたのかもしれない。
アート作品(それも映像)を見ている気持ちになりました。そのもの自体、力強さや美しさも備えていながら、背景には祈りや痛みや暴力がある。
沖縄の歴史は途切れていて、いまある建物なども人々の記憶をもとに「再現」されたもの、という趣旨のことが書いてあり、衝撃を受ける。