紙の本
危機感欠如の恐ろしさ
2020/09/10 21:45
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:つばめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者は新型コロナウイルス感染症に関連した日々の動向をツイートとして発信している。本書は1月18日から5月25日にかけてツイートを中心として取りまとめられたドキュメンタリーである。著者が取材やSNSを通じて情報収集した武漢での新型コロナウイルスの惨状、危機管理能力の欠落を露呈させた厚生労働省・官邸の動向、台湾のコロナウイルス完全制御作戦など臨場感あふれる内容であり、日本政府の危機管理能力の欠如に対する著者のいらだちがひしひしと伝わってくる。特に印象に残った内容の一例は次のとおりである。◆武漢が閉鎖されて三日後の1月下旬厚労省は「新型コロナウイルスに関するQ&A」を公表。その内容の一部として、<中国からの全ての航空便、客船において、入国時に健康カードの配布や、体調不良の場合及び解熱剤と咳止めを服薬している場合に検疫官に自己申告していただくよう呼びかけを行っています>とある。このような性善説にたった対応が有効であると厚労省・厚労大臣は考えていたわけである。ぜひとも日本に入国したい中国人が正直に申告するであろうか?◆中国の病原菌を扱う研究所の管理状況はかなり杜撰であり、一部には新型コロナウイルスが武漢の研究所から漏れ出した可能性を指摘しているが、全くこれを否定するだけの根拠もないようである。空恐ろしきことである。
読後感は決して愉快な内容ではないが、日本の危機管理能力の現状を認識するうえで、ぜひとも一読をお勧めする。
ただし、日本のコロナウイルスによる人口比の死者数が欧米に比較して1/10から1/100という少なさについて、海外メディアが日本人の規範意識・衛生意識の高さなどを理由にしていると紹介、著者もこれに同意している。これを否定するものではないが、日本の被害が軽微であったのは、欧米で流行したウィルスと比較して日本で流行したウィルスの毒性が低かったとの説もある。著者の取材能力を駆使して、このあたりの状況についても更なる掘り下げがあったらと思った。
投稿元:
レビューを見る
中国湖北省武漢市の病院に勤める医師らのグループチャットにSARS患者が発生していると流れた2019年12月30日から2020年5月末までの、新型コロナウイルスによる感染症にまつわる情報を整理し、著者独自の取材・発信と考察を加えたノンフィクション。
感染症というテーマの特性上、現場で発生したことはもちろん、国家の特性(各国の危機管理能力、国民性など)、国家・国際社会(国賓、WHO、オリンピックなど)の動き、歴史的な考察(SARSの教訓、中国にP4ラボを導入した際の懸念など)ととにかく幅広い領域に踏み込んでいます。
幅広すぎて一つ一つをここであげることはできませんが、恥ずかしながら、こんな大事なことを自分は知らなかったのかと気付かされたことでだけでも、「武漢市閉鎖前にはすでに500万人が市外に脱出していた」「日本の当初の中国からの水際対応はなんと、アンケートによる自己申請」「救出を待つ在外邦人を日本の力で実際に帰国させた初めてのケースとなった」...など、数多くありました。
そして何より本書から学ばせていただいたことは、危機管理対応とは何なのかの具体事案です。平時の組織では危機に対応できず、危機管理専門体制が必要というのは当然であり知識はあったのですが、具体的にそれはどんなものなのかが、本書には記されています。
後世に残る貴重な記録でもあります。
投稿元:
レビューを見る
非常に内容の濃い本です。世界中を震撼させているコロナ禍について、中国・武漢から発生した1年近く前から約半年間の2020年5月末までの、世界そして日本の対応についてがかなり詳細に記されています。ツイッターの抜粋も、当時の危機感や緊張感が伝わりました。特に日本と中国・アメリカ・台湾などの国と国家間の状況が詳細に描かれていたのがよかったです。日本の政治的判断不足/施策混乱、中国では習近平体制強化となることと言及されています。本当だと恐ろしい。注目していきたいです。
投稿元:
レビューを見る
新型コロナに対する政府、霞が関の対応の甘さや平和ボケっぷり、それからコロナが蔓延し始めた段階での武漢の様子などを詳細に知ることができた。
この度のコロナ対応で安倍政権の危機管理の甘さにコアな支持層が失望したと言うのは確かだと思う。給付金の当初のケチりようも財務省の圧力があるにせよ腹立たしかった。しかし、桜とか言ってる野党しかないのはもっと残念かも。
ただ結果論としては死者数、死亡率は奇跡的に低く抑えられた。確かな原因はわからないが日本の衛生観念や医療現場の底力のおかげではなかろうか。
これからもっと強毒なウィルスが出てきた場合など日本は然るべき対応ができるのかは一抹の不安がある。自分も行政側の人間になるため、どの分野を担当するかはわからないが、国民のためという使命は忘れないようにしたい。
投稿元:
レビューを見る
現状を見ると取材はこれが精一杯なのかな。
それでも日本で大々的に取り上げられる3月以前の事は自分も無知で危機感が足りなかったから、そこら辺を知る事が出来ただけでも充分だった。
中国の隠蔽体質、傲慢さに比べ、日本政府は何と弱気で危機管理能力が足りないのだろう。
コロナの発生は天災でもパンデミックに至ったのは人災に他ならない。
投稿元:
レビューを見る
今回の新型コロナ騒動について、ノンフィクション作家の門田隆将氏が早期から中国発信のネット情報を拾い上げてTwitterで情報発信していたが、本書はその内容と経緯を一冊の本にまとめたものになる。
ジャーナリストらしい嗅覚の良さで深刻になる前からTwitterという形でうまく噛んでいた。専門家ではないので、躊躇するところもあるかとは思うが、今回に関しては専門家が正しいのかどうかもよくわからない。情報や統計に関するセンスが非常に問われた事態だったと思う。
中国陰謀説に関する言及にはもう少し公平さを感じさせる書き方もあるように思うが、中国政府の居丈高な対応と日本政府の無策さは十分わかる。アベノマスクやGoToキャンペーンは素人目にも底の浅い施策で、どうして止められないのか不思議でもある(止める方が簡単なようにさえ思う)。十万円給付の経緯(公明党の暗躍)も少し裏のところまで書かれている(十万円給付は、個人的には不必要な人にも手間をかけて配ることになり、反対ではある)。もちろん、欧州やアメリカがうまく対処できているわけでもないが、各国の特色があらためてよくわかる。
著者が持ち上げる台湾の対処はやはり素晴らしいと思う。
Twitterで上げた自身のつぶやきを軸に構成するというのは新しいスタイルで、いつでも有効かと言われるとそうではないと思うが、それはそれで新しいやり方だと思う。
投稿元:
レビューを見る
2020年1月から5月にかけての記録。武漢でのパンデミック拡大→都市封鎖から始まり、欧米各国が様々な措置をとるなかで迷走を続けた日本政府の無策っぷり。にもかかわらず、その後の国民総自粛によって日本のコロナ管理が欧米諸国とは比較ならない大成功を収めている状況までを時系列で整理している。
後半に出てくる中国の状況の紹介が興味深い。コロナが契機となり、完全な監視社会が完成し、市民たちは諦めを含めて許容しているという。また、米国に対する反発心や、中国に対する愛国心はむしろ強まっているという。
この本が書かれたのは5月末、出版されたのは6月末。そこからわずか数ヶ月でコロナの状況はさらに変化している。ドイツを筆頭に欧州の押さえ込みがある程度すすむ中で米国では抑制が効かず、BLM運動の余波としての暴動略奪も発生。冬を迎えたオーストラリアで再び厳格なロックダウンが実施されている。そして、コロナに対する考え方の違いは、人々の宗教政治信条にも影響を与え、社会の分断が顕在化している地域や国もある。
経済活動や社会活動あり方が根本的に変わっていく中で、コロナという疾病管理だけではなく、もしかすると国と国の関係性も大きく動くことになりそうだ。だからこそ「日本の国家としての舵取りは大丈夫かよ!」というのが著者のメッセージ。ページは割かれていないが「日本はアメリカと中国の間で、どのあたりの立ち位置を確保するべきか」という大きな命題を突きつける。
本としてはまとまりがなく終わるけれど、2020年夏を象徴する読書だった。(10連休初日に葉山で読了。)
投稿元:
レビューを見る
コロナ禍を時系列に整理ができました。初動につまづいたのは、習近平訪日とオリンピックを優先する思考にありますが、敵(=コロナ)の実力がわからないのにみくびり、威勢の良いことを言ってしまう(=コロナは風邪と同じ)日本人の習い性が大きいと感じました。リーダーに国民の命を守るという使命感が薄まっているのでしょう。思考停止のように棒立ちになっています。厚労省は元より省益しか無さそうです。第二波に際しても国会を閉じてしまう政治家。デジタル化の致命的な遅れ。この国の劣化を見させられるのは辛いことです。本書は取材が乏しく、既知の情報をまとめた体で、新しい知見はありませんでした。
投稿元:
レビューを見る
内容紹介 (Amazonより)
この"怪物"がすべてを暴いた――。
本書は「この星を支配し続ける人類を脅かす最大の敵はウイルスである」というノーベル生理学・医学賞受賞者ジョシュア・レダーバーグの言葉から始まる。
読み進むにつれ、読者の胸にその意味が迫ってくるだろう。武漢でいち早く“謎の肺炎"をキャッチした二人の医師の運命、翻弄される武漢市民、動き出す共産党の規律検査委員会、そして警察の公安部門。彼らはなぜ肺炎の発生を隠そうとしたのか。
筆者は現地の状況をつぶさに分析しながら、その秘密を暴いていく。武漢に派遣された現役の中国人医師が明かす医療最前線は驚愕の連続だった。暗中模索の中、信じられない方法で医師たちは謎の病と戦った。中国人を救った「5種類の薬品」とは何か。なぜ中国はこの病を克服できたのか。すべてが筆者のペンによって明らかにされていく。
一方、後手、後手にまわる日本と、いち早く的確な対策で国民の命を救った台湾――両者の根本姿勢の違いは、時間が経過するにつれ、信じがたい「差」となって現われてくる。官邸・厚労省はなぜ国民の期待を裏切ったのか。筆者は、政府の足枷となった2つの"障害物"の正体に淡々と迫る。
迷走する安倍政権は緊急経済対策でも国民の期待に応えられなかった。苛立った日本最大の圧力団体の“絶対権力者"が動き、あり得ない逆転劇が起こったことを日本のジャーナリズムは全く報じなかった。その裏舞台が初めて白日の下に晒される。
その時々の筆者自身のツイッターを散りばめ、読者を同じ時間にいざないながら謎を解いていく新しい形のノンフィクション。日本人はなぜこれほどの政策失敗の中でも生き抜くことができたのか。コロナ襲来の「現実」と未来への「教訓」にまで踏み込んだコロナ本の決定版。
●中国人現役医師が明かす驚愕の医療最前線
●中国人の命を救った「5つの薬品」
●武漢病毒研究所、恐るべき杜撰体質
●中国共産党員が解説する弾圧と隠蔽、全情報
●国民が知らなかった官邸・厚労省の裏切り
●総理も愕然、創価学会“絶対権力者"の逆襲
●危険すぎるトヨタの中国への技術供
著者の本は以前、『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日』を読んで とてもよく調べてあり良かったので読んでみることに...
当初、ネットでいろいろ検索して読んだことがある内容もあり 思い出しながら読みました。
知らなかったことの方が多く とても勉強になりました。
私はとても心配性の方なので 最悪なことを想定しがちです。それ以上は悪くならない、後は平行線か良くなるしかないところから出発しようと考えてしまう方です。
だから、あの春節直前の頃は著者と同じように なぜ中国全土からの入国禁止措置を取らないのかと思っていました。
読み終えて いろんなことが絡んでいるのだな...と思いましたが だから今こうなってしまっている、違う措置を取っていれば また違う今になっていたのだろうけど もう今となってはこれからどうなるのかと これからのことを考えるほかないのかと...
たくさん���便利なモノが溢れていますが イヤな世の中になりつつあるようで不安ですね...
読み終えて 中国に対する見方が少し変わりました。
投稿元:
レビューを見る
コロナ禍において、日本が世界がどういう状況で対策を取りどういう状況になったか、時系列でまとめられているので、整理して理解が出来る。報道だけでは分からないことまで、良く調べていると思います。ツイッターの抜粋も、当時の危機感や緊張感が伝わりました。
投稿元:
レビューを見る
100年に一度と言われる新型コロナウイルス禍にあって、はからずも暴露されることになった日本の危機管能力の欠如。著者は、それを憂え、また、中国の体制維持のための弾圧、情報統制、隠蔽などの実態にも目を向け、様々なツィートを発信し、警鐘を乱打してきた。本書では、武漢での患者発生に遡り、中国人入国をなかなか停止できなかった日本政府、それに比して素早かった台湾による完全制御、武漢病毒研究所の驚くべき杜撰な体質などをつぶさにリポートし、解説、批判する。巻末には年表も添付され、世界におけるコロナの感染推移や各国の対応状況の振り返りができるようになっている。以下に主な内容をビックアップ。
・1月18日、米国はCDC(疾病対策センター)が乗り出し、武漢からの直行便等の乗客を別の部屋へ移すなど対策を講じ始める。
・1月21日、日本では武漢からの航空機内で体調に関する簡単な質問票を配布し、自己申告に任せた。
・1月23日、台湾は武漢との間の団体観光客の往来禁止を発表
・1月22日、北朝鮮は中国からの観光客の受け入れを全面停止
・武漢では発生当初、「人から人への感染」を認めなかったため、医療スタッフに十分な感染防止用の医療用防護服やマスクさえも配られなかった。
・1月23日に武漢が封鎖されたが、この時点で、約500万人が武漢から脱出、既にウイルスは中国全土に広がっていた。
・2月初めから世界134か国が中国全土からの入国禁止措置を実施する中、日本は2月1日、武漢を含む湖北省からの入国を拒否、中国全土からの入国を禁止しなかった。
・日本とは対照的に17年前のSARSの経験を生かした台湾は早めの水際対策を取り、それが奏功した。台湾では「まず実行」し、「後で修正」し、人びとがそれに「従う」というスピード感重視の点で日本と決定的な違いがある。
・習近平の来日を控え、中国側から「おお事にしないでほしい」と要請があり、多くの中国寄りや親中派の政治家がそれを飲んだ。
・中国依存の日本企業は衝撃を受けたが、武漢に工場があるホンダ、日産に対し、トヨタは武漢に工場がなく、直撃は免れた。
・日本には高い使命感と責任感を持った医療従事者が存在し、医療機関においては、世界でもCTスキャンを最も多く保有、医療水準は世界トップ
・日本にも縦割りでない感染症に係るアメリカのCDCに倣った組織や感染症危機管理監を設置すべき。
投稿元:
レビューを見る
今年流行した新型コロナウイルスにまつわる国内、国外の内情、実情を知る上で、また今後どう向き合うのかについても考える機会となった"参考書"的な書物。
投稿元:
レビューを見る
疫病2020
まぁよくもコレだけ情報を集めたもんだと思います。コロナウイルスが取り沙汰され始めた頃、世界中の誰もこんな事になるなんて想像していなかったでしょう。それでも危機管理意識が有ったか無かったかで、こうも違うもんかと思い知らされた。何で台湾みたいに出来なかった?色々と事情があるのは分かる。けれど日本の政府がここまでダメだなんて思いもよらんかった…正直そんな気持ちでした。だから大東亜戦争当時の政府や軍部がどれ程ダメだったか…もよく分かった気がする。これではアカンよね!誰もがそう思ったろ、誰もがそう感じたよね。だからこそ、知る必要があると思う。何がどんな風に起こってどう進んだのか。しっかり知って置いて知識として蓄積しておく事。その為にはとても良い書籍でした。中国で何が起こっていたのか/台湾の動き/国内の動静…どれも興味深かった。「武官病毒研究所」からの各章は衝撃的でした。中国という国に憤りも覚えるが、中国的思考にも驚きを感じた。確かに理解できなくもない…スゲェ面白かったです。でもこれから何を準備して、どう行動していく必要があるのか…考える指標にもなった。良い本読んだ。そう思う。
投稿元:
レビューを見る
日本の政治家も役人たちも「新型コロナウイルス」の脅威に如何せん無知すぎ、対策の遅れについては情けないほどだ。そんなコロナ禍の状況を作者の門田氏は、自らのツイッターでその都度書き込み、提示してきた。今回そのツイッターを個別に紹介し、この「疫病」の真の姿を暴いた。
投稿元:
レビューを見る
コロナが日本では収まってきているので、なぜ日本でパンデミックにならなかったのかを突っ込んで欲しかった。
武漢の研究所の記述は読み応えがあった。