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日本版序文 「財政赤字」こそ、コロナショックを脱する唯一の道である
序章 バンパーステッカーの衝撃
第一章 家計と比べない
第二章 インフレに注目せよ
第三章 国家の債務(という虚像)
第四章 あちらの赤字はこちらの黒字
第五章 貿易の「勝者」
第六章 公的給付を受ける権利
第七章 本当に解決すべき「赤字」
第八章 すべての国民のための経済を実現する
謝辞
解説井上智洋
原注
索引
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「政府の支払能力は無限だが、経済の生産能力は有限だ。」(p.326)
通貨を自ら発行できる政府は、いくらでも支払うことができる。だから財政赤字を心配する必要はない、政府はもっと支出せよ、と話が続くMMT。
そこまではなんとなく聞いていて、心配なのは赤字ではなくインフレだ、というのだが、いまいちピンと来ていなかったのだが、本書後半の6-9章を読んで、理解が進んだ。
「インフレ」観を転換する必要がある。
金が余ることをインフレだと思っていると、不用意に金を世に出すことはどうしても恐ろしい。しかし、金に見合うだけのサービスや財などの実物資源が足りなくなることがインフレなのだ。同じことを裏側から見ているだけだと思うかもしれないが、意味するところはずいぶん違う。経済が成長して実物資源を生産する能力が高まれば、枠が広がってインフレは起こりにくくなる。ケチっていて、経済を成長させていかないと、インフレにすぐに到達してしまう。
どうすれば必要な資金を賄えるか、ではなく、どうすれば必要な資源を確保できるか、こそが問題なのだ。
その意味で、日本の人口減は本当にやばい。日本円経済圏の規模を確保することは本当に重要だ。
JGP、政府による就業保証プログラムも魅力的だ。
ただし、今の日本のように、政治がもっぱら利権誘導として作動している限りは、このような政策を取ることはできないだろう。
「ケアエコノミーの実現」(p.318)のような大きな共通然たる目標を掲げて邁進するような政治を期待したい。
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通貨主権がある国は、中央銀行が貨幣を創造できる。
MMTは政策として採用するものではない。制度的取り決めを示すもの。
政府雇用プログラムについては、政策として採用するもの。
財政赤字は、国民の財産形成のために必要なもの。
ラーナーの「機能的財政論」
財政赤字は支出過剰の証拠ではなく、インフレが支出過剰の証拠。財政赤字は、民間部門の貯蓄を増やし、むしろ民間投資を呼び込むクラウドイン効果がある。
家計と異なり、政府は通貨の発行体である。
アルゼンチンは固定相場を維持しようとしたから破綻した。ベネスエラは他国通貨建ての国債を発行したので破綻した。イタリア、ギリシャはユーロの通貨主権がないため危機に陥った。
『ソフトカレンシーエコノミクス』ウォーレンモズラー。命取りに無邪気な七つの嘘。
税金が存在するのは、通貨への需要を満たすため。
税金の目的は、必要なものを生産させるため。税金のために円を稼ぐ必要があるため、働く=生産する。
資金を出すだけならインフレを起こす。物価上昇につながらないために、税金で需要を押さえる。所得の再配分のため。特定の行動を助長したり抑制するため。
国債は、金利付きの通貨。国民の利殖のために発行している。国債の発行は、政府の支出を賄うためではなく金利を維持するため。
過剰な支出の証拠はインフレ。インフレになりそうなら支出をやめる。
低インフレに悩んでいる。
コストプッシュ型、需要プル型インフレ。
コストプッシュ型は、「影響力の行使」によって連鎖して起きる。
フリードマンの貨幣数量説。自然失業率以下にしようとするとインフレになる。自然失業率は後付けの理論。
インフレ非加速的失業率と同じ。
インフレにならないのに失業率が下がるのは、自然失業率がもっと低いから、と解釈されることが多いが、間違い。
ラーナーは、ペイゴー原則は不要とした。税金は購買力を抑える重要な手段。
失業対策は、政府の就業保証プログラムによるべき。物価の安定にも寄与する。インフレ抑制にも寄与する。賃金を設定できるから。失業期間が長い求職者の発生を予防できる。
杖一振りで借金を帳消しにすることは、同時に国債も帳消しになる。
アメリカは、アメリカ国債を大量に持っている中国に牛耳られているか。中国の選択肢は、どのドル資産をもつか、だけ。
通貨の発行者ではないイタリアギリシャスペイン、各州、などはあてはまらない。
日銀がすべての国債を買い入れたとしても、何も変わらない。
マネタイズすれば、ジンバブエ、ワイマール帝国、ベネズエラのようにハイパーインフレになるのでは?
国債の代わりに現金をもつことになっただけ。利子がなくなった。現金が増えても、モノを買おうとしなければインフレにならない。資産量は変わらない。
アメリカは1835年に無借金になった。と同時に最悪の景気後退に突入した。長期にわたって財政黒字が続くと、経済は行き詰る。
国債が消滅すると、金利調整の手段を失う。
財政赤字は国��の富と貯蓄を増やす。
財政赤字はクラウディングアウトを起こすか。
すべての支出には行き先がある。財政赤字は国民の貯蓄になるから、貸し出すお金は足りなくならない。
逆に、財政黒字は、民間の赤字だから、クラウディングアウトになる。
民間の資金需要が増えてきた時にどうなるか。
政府の国債発行は、借入れではなく、支出=民間の貯蓄。政府の国債発行=借り入れは、無駄になくなることはなく、必ず消費される。
日銀は、イールドカーブコントロールで10年物国債をゼロ近くに引き下げている。
ロシアとアルゼンチンは、米ドルにペッグさせた固定レートだったため、破綻。重要なのは通貨体制。
貿易赤字は悪くない。雇用が海外に奪われることが悪い。ならば就業保障プログラムを行えばいいのではないか。雇用があるなら、自由貿易の敵にはならないし、貿易戦争は存在しないことになる。
金本位制の時代は、貿易黒字は金準備を増やす手段だった。金準備の流出を防ぐため金利を上げると景気が悪くなる。金本位が終わっても思考は残っている。
不換紙幣を発行していて、外国通貨建て債務がない国は通貨主権が大きい。自国通貨をペッグする、外国通貨建て債務が多い、などの国は通貨主権が弱い。ドルの確保に苦労してIMFから借り入れることになる。
アメリカの財政赤字は、家計の貯蓄を賄うだけでなく、世界各国のドル準備を賄うために必要。
ドルの返済のために自国通貨を売ってドルを買うと、自国通貨の下落⇒輸入物価の高騰、国内の不景気、につながる。
投資家のパニックによる資金引き上げだけでなく、発展途上国の主要産業である一次産品の暴落でも同じ危機を生む。
ボルガーの金利引き上げで、ドルが値上がりし外貨建て債務が急増して借り入れコストが増えるという悪循環に陥った。
解決策は南南貿易協定=途上国同士が補完的な産業を育成する。必需品を輸入に頼らない国づくり。資金取引の規制を強化するべき。
p207
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MMTについては様々なところで聞いていた。コロナの問題が深刻化する中、財政赤字はどうなるのか?消費税の取り扱いはどうなるのか?東北大震災以降のような復興税は必要になるのか?コロナ復興税のような形が必要なのか?いろいろな疑問に対してこのように明確に回答をしてくれる本に出会ってびっくりしている。このエムエムティー理論は正しいのかどうか?本当にインフレにならないのか?赤字は問題ではなく、インフレだけが制約条件になる?いずれにしてももう少しこの理論について学習してみたい気がする。
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通貨主権国ではインフレの起こらない限り通貨を発行して国民を助けることができるという現代貨幣理論( MMT )について書かれている。各自治体や家計とは異なり、通貨主権国の支出を税金によって賄う必要はない。通貨発行の制限は財政赤字ではなく、あくまでインフレであるということが記されている。日本はデフレの状態であり、 MMT を適用すればまだまだ国民を助けるような財政政策をとることができると思われる。財政赤字は悪だという従来の考え方に縛られている政治家たちにこの理論が浸透し、国民のために積極的な財政支援を実施してもらいたい。経済についての有用な書であるが、同じような主張が繰り返し書かれ過ぎていて少ししつこいと感じたため星 3 つ。
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近年、MMT(現代貨幣理論)という言葉を新聞や雑誌等で見かけるようになった。本書はそのMMTの旗振り役の一人、ステファニー・ケルトンによる一般向けのMMT解説書である。一般向けとはいうものの、私は経済学を学んだことはなく、大学の教養授業でさえも受講したことがない。そんなわけで、半分ほどしか理解できてないと思うが、とても刺激的な本だった。
誤解を恐れず、本書の内容をかいつまんで言うならば、財政赤字で国庫が破綻することはない、社会保障が破綻することもない、なぜなら政府は通貨の発行体だからだ、ということに尽きる。足らないなら刷ればいい、というわけだ。コペルニクス的な理論と言える。必然的に、国の赤字は国民の借金だとか、後世にツケを払わせるというのはMMT的にはあり得ない。政治家の嘘、ないし誤解である。コロナ禍にあって各国の財政支出は天文学的な数値になっている。しかし、MMTに立つならば、財政赤字による支援策こそが危機を乗り切る手段となる。
もちろん、MMTにも限界はある。いくらでも赤字を出していいということではない。注意すべきはインフレである。インフレは支出が過剰という証左になる。逆にいうならば、インフレどころかデフレ気味な状態が続く日本は、むしろ支出が不足していることになる。またどこに支出するのかというのも注意が必要となる。ひとつの目安は、医療、教育、インフラ等、実体的な財やサービスを継続できるようにすることである。
ただし、全ての国にそれが可能というわけではない。アメリカのように自国の通貨主権を持っていることが条件である。通貨主権のない国やEUのような共通通貨圏には当てはまらない。当然ながら日本は強い通貨主権を持つ。MMTが適応される国である。本書では、目も眩むような赤字を出し続けながらも国が破綻しない例として日本のことが頻繁に取り上げられる。
経済学に無知なので、なかなか理解はできないが、ただ妙に説得力があった。さらに本書はアメリカの抱える様々な問題点(かなりシビアである)、温暖化等、世界的な課題にも論が進む。グローバル社会にあって、ある国がMMT政策を採ることで周囲に与える影響についてはもう少し知りたいと思う。
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MMTの基本的概念が非常にわかりやすくまとめられていた。他国通貨やその他の財との交換比率が固定されていない不換通貨を自ら発行でき、かつ、他国通貨建てでの巨額債務がない国は、高度な通貨主権を有しているといえ、こうした国の中央政府は、財政的制約(財政は均衡すべきという制約)から解放され、社会の生産資源と生産能力の範囲内で財政政策を決定できる自由度を有している。アメリカも日本もイギリスも、ニクソンショック(米ドルが金との兌換を停止)でブレトンウッズ体制(広義の金本位性)が終了した時から、通貨主権国として財政政策において高い自由度を有するようになったが、政策決定者の認識は改まっておらず、景気後退局面にあっても財政均衡の軛から逃れられず、国民の雇用と所得を守るための十分な施策を行わずに、国民に貧困や生活不安という苦痛を与え続けている。
通貨主権国の中央政府は、支出の前に自国通貨を調達する必要などない。財政支出によって社会に新たに流通することになった自国通貨を、税金として回収するかどうか、財政支出によって取引相手方の銀行預金を通じて増加する市中銀行の準備預金を国債発行という手段で消滅させて金利を維持するかどうか、というオプションを有しているだけで、税金も国債発行も、政府支出の必要条件ではない。
こうした前提で、MMTは、政府が失業者に自動的に仕事を与える「就業保証制度」の創設を主張する。政府支出による雇用で、仕事の内容は地域コミュニティが地域の事情に応じて決定する仕組みとする。こうすることで、雇用と所得の安定による経済変動の抑制のほか、社会課題の解決、仕事に従事し続けることによる再就職容易性の向上といった効果が期待できる。
こうした認識の変革は、究極的に有権者からの支持を必要とする政治家の側から行うことは困難であり、有権者から認識を正していくことで、これに適合した政治家が選ばれ、適切な判断基準の下での政策決定つながっていくものである。
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MMTの概要と全体像について分かりやすく纏められている。平易な表現で数式モデル等も使っていないため、理解しやすい。
近年注目されて、何かと話題にのぼるMMTについて解像度が上がった。従来の主流経済学の考え方とは真逆を地で行く論理だが、個人的に論理が破綻している点は見つけられなかった。
これに対してどこに懐疑点があり、どのような反論があり得るのかについて今後は調べたい。
MMTとは何かを知りたい人にとってはお勧め。良書。
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MMT信者の存在を理解できる。それほどMMTは強烈。Like A コペルニクス的転回
財政赤字とは税金とのバランスで考えることが大事で額ではない。お金が市場に出回る理由を考えればわかる。お金は政府が生み出し、税金で良い感じに回収するのだ。通貨発行権をもつ政府は(税金+借金)→支出ではなく、支出→(税金+借金)なのだ。国債は赤字ではなく金利付きの日本円(米ドル)なのだ。国債の総額は政府が国民のために市場に流通させたお金なのだ。
じゃあなぜ税金が存在するのか?それは良い感じに国民に働いてもらうため/通貨に需要を持たせるためだ。(本中では、子供たちに家事をしてもらうのに(世間的には一切価値のない)著者の名刺を使った例が示される)
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1番わかりやすくて具体的です。
あとは物語としてどう認識を変化させるか。
それが最も困難であり、言語化できる天才の出現が待たれます。
黄色い円と緑の円 じゃ誰もついてこないでしょ
また定番の政府雇用プログラム
地域コミュニティでの雇用創出、財源は政府からの拠出
とても素晴らしいですが、どの著者の作品を見ても具体性に乏しく、こちらも天才の出現が待たれます。
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え?財政赤字って気にしなくてよかったの?と目からウロコの本。
家計と財政は違うのだ、貨幣を発行できるのなら、破綻はしないのだ、とのこと。
言われてみればそうかなと思いつつ、ほんとかなと疑う気持ちも。
少なくとも、財政支出の話題のたびに気が重くなっていたので、そうではないものの見方があることを知れたのは良かった。
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通貨を発行している国は、いくら赤字を出しても財政破綻なんかしませんよ。
簡単に言うと、本書の趣旨はそういうことです。
このような学説を「限界貨幣理論(MMT)」と呼びます。
もっとも、同じような主張をする経済学者は昔からいました。
ただ近年、ずいぶんと注目を集めるようになりました。
そんな虫のいい話があるのかしらん。
眉に唾をたっぷり塗って読みました。
唾は8割方、取れました。
著者の主張は明快です。
たとえば、「政府と家計を比べない」というもの。
国の財政を家計と比べる議論をよく見かけます。
国の財政赤字は、家計で例えると、こんなに莫大な借金があるということ云々。
しかし、国(日本や米国など)はれっきとした通貨の発行体です。
つまり、通貨の「発行者」と「利用者」を同一に見るのはナンセンスだということ。
「通貨主権を持つことは、その国が財源の心配をせず、国民の安全と幸福を最優先できることを意味する。」
と著者は主張します。
一般に、国は税金を集めて、足りない分は借金をして、支出をしていると捉えられています。
だが、事情は「逆」なのだと著者は説きます。
「通貨を発行する政府が求めるのは金銭ではなく、実体のあるものだ。欲しいのは税金ではなく、私たちの時間である。国民に国家のために何かを生産させるために、政府は税金などの金銭的負担を課す。」
ちょっと目からウロコではないでしょうか。
少なくとも、私はこれまで、そんなふうに考えたことはありませんでした。
「国の財政赤字は、国民の富と貯蓄を増やす」という主張も、ハッとさせられるものがありました。
「財政赤字は悪」という話に慣れ親しんだ自分にとっては新鮮ですが、理屈は単純。
「政府部門の収支+非政府部門の収支=ゼロ」
という、常に真である会計等式があるからです。
たとえば、国が国内で100ドルを使ったが、税金としては90ドルしか回収しなかった。
この差が「財政赤字」と呼ばれます。
しかし、この差はだれかの「黒字」になっています。
「問題は政治家が片目で世界を見ていることだ。財政赤字は見えているのに、反対側にある同額の黒字は見えていない。」
と著者。
なるほど、分かりやすい。
本書を読むと、これまで見聞きした財政赤字の話がまさに「神話」のように思えてきます。
ただし、MMTとて万能ではありません。
たとえば、インフレです。
財政支出が増大すれば、インフレになるリスクが高まります。
2、3%程度の健全なインフレならいいですが、ハイパーインフレになればそれこそ国は危機的状況に陥ります。
MMTも財政赤字よりインフレに注目すべきだとして、財政支出のキーポイントに挙げています。
ただ、ひとたびインフレになれば、コントロールできるのでしょうか。
その点が甚だ心配です。
MMTが今後どこまで浸透するか、この理論を踏まえた財政運営にかじを切る国は現れるのか。
注目していきたいと思います。
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・政府の借金はインフレをもたらさない限り問題ではない
・即ち自国通貨を持つ国にとって政府支出が過剰かどうかを判断するバロメータは、赤字国債の残高ではなく、インフレの程度である
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MMT(現代貨幣理論)を正しく理解するための決定版とも言える一冊。お金を刷りまくっても大丈夫というような、この一見怪しい理論に対して、きちんと限界を示した上で、理論の限定的な正しさを示す。読むと、世界観が変わる。
本書をもとにして、自分なりに考えてみた。極端な例で考えるのが分かりやすいので、敢えて、想定として、人口3人の国家で。国民は、農家、大工、工具屋。MMTに基づき、金配り。全員に財政支出で1兆円ずつ。内需だけならただのインフレ。
次に、大工の仕事がなくなった場合。みんなの家を建て終わり、失業したとする。国が財政支出で工事を大工に発注。大工が職を得て、GDP増。
更に、全員失業状態では。つまり、ベーシックインカムだが、失業者に金を配っても産業がなくては、使いようがない。
結局、重要なのは、貨幣流通量ではなくて、潜在的な労働余力なのだ。これを活用する範囲において、MMTは有効だが、これを上回れば、インフレになる。
これに関し、本書に名言を発見した。
財政赤字が小さすぎる証拠は失業率。大きすぎる証拠(過剰支出)は、インフレ。つまり、失業者が多く、余力を持て余した状態なら、財政赤字が足りない。もっと金をばら撒いて良い。しかし、インフレ、物価高騰し始めたら、ばら撒きすぎ。
多少のインフレには害がないと思われており、経済成長においては好ましいと考えられている。しかし、物価がほとんどの人の収入を上回る速度で上昇し始めると、多くの人の購買力が低下する。その状態を放置すれば、実質的に生活水準が低下していく。失業者が増えないレベルで賃上げを伴いながらの、ギリギリのインフレが重要。
世界の主要国の多くは、10年以上、低インフレの解消に必死に取り組んできた。インフレ率が低すぎると言う問題であり、日本、アメリカ、ヨーロッパ諸国は公式に2%というのが適正なインフレ率とし、アメリカのFRBや日本銀行、欧州中央銀行はこのインフレ率を目標にしてきた。しかし、安定的に2%を達成できたところはない。特に苦しんでいるのは日本で、デフレへの対応に迫られていた。漸くインフレに動き始めている。こうした大局を理解するためにも、有意義な読書となった。