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夫の通夜、妻の前に現れた若い女の幽霊。彼女との出会いが、かつての夫婦の日々を甦らせ、奇跡を呼ぶ。(「白蟻女」)やさしさが息づいていた時代。人の思いと郷愁が胸を打つ。人情の作家が心から描きたかった感動の物語2篇。この物語を貫くあたたかな眼差しは本物だ!
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短編と中編の2つのお話からなる作品。
短編の「遺言」は、娘に遺言を遺すのに、レコードに吹き込むというアイデア。あまり録音時間がないのに、近所の人達の愚痴をこぼすばかりでなかなか本題に入らないんだけど、その話が面白くて笑える。そしてようやく本題に入った最後、まさかの告白に、ちょっと心を打たれた遺言でした。
中編の「白蟻女」は、ストーリー自体は面白いけど、語る側の視点が知らない間に変わっていたり、過去を巡っている中で、見ているだけなのはずなのに、過去の自分になって話していたり、切り替えのタイミングがよくわからなくて、そのせいか、最後も府に落ちませんでした。描写がごちゃごちゃしていて、面白さが半減してしまった印象を持ちました。
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出会えてよかった一冊。ちょうど連日ゆっくりできない時期に購入。数日かけてすこしずつ読んだけれど、読んでいない間も気がついたらずっと夫婦と白蟻女のことを考えていた。
いちばん胸をうたれたのは長男の智之が生まれたときの病室での義父母や父母・夫たちとの会話の記憶と白蟻女とのやりとり。とても心にぐさっときた。
この作品を読めて本当によかった。ごちゃごちゃしたこととっぱらってシンプルに人間の在り方を考えさせられる。読み終えてから表紙を見ると涙がでてしまう。
短編の「遺言」も短いながらとても濃く心にしみてくる。ぽん菓子食べたい。
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余命いくばくもない老いた母が、娘・咲子に残す遺言をレコード盤に吹き込むことにしたが、脱線に脱線を重ねご近所の悪口をさんざんまくし立てるばかり。レコードの録音時間はあとわずか、母が本当に娘に伝えたかったこととは・・・・・・「遺言」
70歳を目前に癌で亡くなった夫。その通夜の晩、妻・恵子の枕元に現れた若い女の幽霊。恵子が密かに”白蟻女”と呼んでいたその女は何故いま、恵子の元に現れたのか。
「思い出をめちゃめちゃにしてやる」と白蟻女が咆哮した途端、何故か恵子は新婚旅行の日に戻っていた。恵子と白蟻女が辿るどこかユーモラスな回想の旅。それは、かつての夫婦の懐かしい日々を甦らせる、優しくも苦い旅だった。そして、旅の果てに恵子が遭遇する奇跡とは・・・・・・「白蟻女」
最初の短編からすでに調子が狂う。これは本当に赤松さんの作品なのか?「ボダ子」「女童」で自らを主人公に胸糞悪い男や女の姿をこれでもかと描いてきた赤松さんが、初めて書いた真っ白な物語。
過去を遡る旅とか奇跡とかいうと苦手なファンタジーっぽいけど、この設定にはすんなり入っていけた。
周りの激しい反対を押し切り農家に嫁いだ恵子の覚悟、初めての稲刈りの感動、長男出産のあたりは順調な日々。そこにバイパス建設の話が持ち上がり、大金を得るや耕すことを忘れていく夫、あぶく銭を手にした夫婦を待ち受ける不幸・・・・・・。ありがちな展開に胸が塞ぐ。
それだけに、終盤の展開には胸がすく思い。そして、奇跡を目にするラスト。読後は今までの赤松さんの作品では決して感じられなかった、爽快な気分に包まれました。
胸糞悪いのばかり書いていたら、ときどきこういうのを書きたくなるのでしょうか。これからもこの路線で行くのか?それは赤松さんには望まないけどね・・・
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遺言と、表題作の二篇。白蟻女は、グロさも抑えられてて人間の生きる営みが描かれてて切なくなった。読み終わった後、家族との残りの日々を大切にしたいとつくづく思った。
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ほのぼのグロなし家族もの。
概ね読みやすい。
以下ネタバレあり
◯引っかかったところ
遺言でそんなこと吹き込んでどうしようというのかこの婆さんは。
墓まで持ってけ。
私だったら遺骨ごと粗大ゴミに出す。
バブルの頃に大金を手に入れるのと
孫の代まで農協に借金して大きな農地を維持するのと
どちらが幸せだったか。
どちらにしても酒と金と人情弱いこの男、詐欺契約に引っかかりやすそう。
親が早めに死んで、嫁さんががっつり家計を握って、本人がそれに納得してれば、まあ大丈夫じゃないかな。
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11月-14。4.0点。
短編・中編ひとつずつ。この作家の作品は全て読んでいるが、こういうのも書けるんだーと、素直な驚き。
表題作は、荒唐無稽な感じのスタートだが、どんどん引き込まれてあっという間に読んだ。面白く、ホロッとさせる。
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長年連れ添った夫が先立っていった。
お通夜の夜、夫と隣り合う妻の枕元に現れたのは、白蟻女だった。
40年前に自宅の居間に乗り込み、シロアリ駆除の殺虫剤を服毒して自殺した女。
だから、白蟻女。
白蟻女は夫の不倫相手の水商売の女だった。
彼女がは、夫との思いでを無茶苦茶にしてやると言い出す。
夢の中で気が付くと、40年前の風景がそこにはあった。
都会の娘だった私が農家の長男に嫁いだころの私。
高度経済成長期が次第に夫を蝕んでいく。
何が正解だったのか、
何を間違えたのか。
本当の幸せは何だったのかを、ある農家の妻の視点と、水商売の女の視点から人生を振り返る。
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42これまでの作風と大きく違って、何やら初期の頃の浅田次郎を思い出した。こういう作風も読みたいなあ。
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香ばしいとうもろこしご飯みたいな一冊。人間の嫌なところと良いところがどちらもしっかり出てて滋味深いし、痴情を扱う作品ながらどこかコミカルで最後までサクサク読めるのも好印象。不器用な登場人物たちに感情移入もしやすいからか、彼らが報われたあとのほんのりとした甘みが、心のどこかにそっと残る。でも余韻が消えて冷静に考えてみるとお父さんやっぱり屑だわと思い直すのも面白い。