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国立科学博物館在籍、モグラ博士:川田伸一郎先生が執筆された標本愛溢れる一冊。私は恥ずかしながら、標本≠剥製という感覚だったが、そうではなくあらゆる研究論文を作成するのに必要な研究材料なのだと知った。そしてその作成作業は「スポーツ」と同等、体力勝負。標本対象が出てくれば出張先でも休日でも死体集めに明け暮れる日々。さまざまな研究を支えているのが、このような地道な作業のお陰という気がする。
「命の尊さ」は生きている動物を見ているだけじゃわからない。不慮の事故や病気で死亡してしまった個体も引き取る中で、「そうならないための」今後に活かせる調査ができるかもしれない。「タヌキの死体に学べ」というエッセイが一番心に響いた。
浅野文彦さんのイラストがエッセイに彩りを添えている。内容もさることながら、エッセイに沿った鮮やかで繊細なイラストの魅力も、この一冊に大いに貢献していると思う。
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著者は国立科学博物館で専門であるモグラの研究をしながら、館で収蔵している主に哺乳類の標本の作成をしている人で、雑誌「ソトコト」の博物館での標本収集の日常を綴った連載コラムをまとめたもの。
内容は気軽に読める軽いものだけど、著者の真摯な科学に対する態度と熱意を感じる。
漫画の「へんなものみっけ!」と併せて読みたい。
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著者は、国立科学博物館の研究主幹。 標本作りが仕事であり、ライフワークでもある。 この本は、雑誌のエッセイをまとめたもので、前半は標本作りの現場の話、後半は標本にまつわる研究や著者の意見など。 後半部分の方が面白かった。 標本作りは、生物研究の基礎となる仕事だ。著者はモグラ研究が主な業務だが、大型哺乳類から海洋生物まで標本作りを手がけている。死体から生物の姿を再現し、色々な比較を行って気付きを与える。 大変やりがいのある仕事だ。 この先の生物の変化進化を見る上でも役立つ。長い歴史を見据えている感じがした。
本人はバカと謙遜するが、これはプロと言い換えてもいいと思う。 こういう仕事をされている方もいるんだなと思った。
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素敵なイラストにとても読みやすい文章と長さ。あっという間に読めた。面白かった。
今後もし動物の死体を目にすることがあったら、「いい標本にしてもらえますように」と思うだろう。日本が世界の名だたる自然史博物館の標本数に追いつけるよう川田さんには頑張って欲しいものである。
これからソトコトを読もうと思うし、「標本バカ2」も期待。
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博物館にとって、大事で必要な「もの」な標本。
これに関わる研究者の、摩訶不思議な日常のエッセイ的コラム。
第一章 標本バカも楽じゃない
第二章 事件は現場で起きている
第三章 標本に学べ 第四章 標本バカの主張
第五章 偉大なる標本バカたち
各章末に標本バカのこぼれ話。
カラーイラスト1ページとコラム3~5ページでの構成。
雑誌「ソトコト」での連載コラムをまとめた一冊。
国立科学博物館での著者の大事な仕事は、標本作製。
洗って、剥いて、処理して、除去して、詰めて、毛皮鞣して、
縫って、保管or展示。もちろん研究もあるし、家族もいます。
大変・・・いや、標本集めが趣味だから、家族を標本好きに
洗脳しちゃうし、テニス肘になるほどメスや包丁を振るい、
標本作製はスポーツだと、のたまう標本バカなのです。
なんたって哺乳類標本10万点コレクションが夢だから~。
モグラ研究が専門だけど、東奔西走、象もマッコウクジラも
解体して、標本化に尽力する姿は涙ぐましい・・・嬉しいのか。
それだけではない。様々な知識をも提供してくれます。
肋骨の数の話、アニメに登場する動物の歯の間違い、
仮剥製は研究用に、本剥製は展示・鑑賞用、等々。
東西の先達たる標本バカについて。オーストンに繋がる話も。
そして、何と言ってもイラストの秀逸さ。
見事に文章とリンクし、ユーモアまで溢れています。
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国立科学博物館で日々標本を作製するモグラ博士のエッセイ。浅野文彦氏のイラストも絶妙。
標本作製にまつわるエピソードを中心に生物学を描く。動物の死体があれば他の予定を変えてでも駆けつけ標本にする。標本数の増加こそ研究につながる、腱鞘炎にも負けない。
一般人とはかなり異なる学者の視点が面白い。宮崎駿アニメに出てくるヤギに前歯があるのがおかしいことを指摘している。
最終章は「偉大なる標本バカたち」。過去の偉大な研究者たちを描く。こちらのテーマだけで一冊書けそう。おおいに膨らませていただきたい。
軽妙な文と素晴らしいイラストのバランスが絶妙。
雑誌「ソトコト」に連載のコラム。
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著者は国立科学博物館で陸生哺乳類全般の唯一の担当者である。おまけに両生は虫類は管理者がいないのでそちらまで兼任しているという。実はこの国立科学博物館の標本を使って仕事をしたことがあるのだが、アシスタントがいるとはいえこの大量の標本群を一人で担当するなど、日本の博物館の貧しさがわかる。扱うのはネズミやコウモリのような小さな生き物から、パワーショベルを使って操作するアフリカゾウやキリンやマッコウクジラのまである。時には腱鞘炎になり、メスで大怪我をすることもある肉体労働である。
同じ種の標本をなぜ何千も集める必要があるかというと、例えば種内の個体のばらつきを調べ、近縁種との差を調べるには、統計的に有効な数のサンプルが必要である。またたくさんの標本を見れば、同種であってもけっこう特別な形態変化を起こすことがあるのがよくわかる。形態の識別点を検討するのにも重要である。また生物の分類はしばしば変わるし、昔記録された種が、誤同定と思われるときに、その個体の標本が残っていれば、今の技術なら乾燥標本からもけっこうDNAサンプル採集などもできる。
標本にはそういった個々の情報を残すために標本番号がついている。国立科学博物館の哺乳類標本は現存するのは100番からで、それよりも前は行方不明となっている。100番がニホンオオカミなのは、キリ番が好きなのは生物学者も同様と見える。もっとも10000番が北海道産ヒメネズミ、20000番に至っては東京のクマネズミというのは、この頃の担当者はキリ番に興味が無かったと見える。30000番はパンダのフェイフェイである。そして著者がこの仕事を引き継いだときは33000番台の後半だったのがこの本を書いている時点で68115番だという。著者がこの仕事にかける熱が伝わってくる。ちなみに50000番はミズラモグラであるが、この標本を元に著者はShin-ichiro Kawada, “Morphological Review of the Japanese Mountain Mole (Eulipotyphla, Talpidae) with the Proposal of a New Genus,” Mammal Study, Volume 41, Issue 4, Mammal Society of Japan, 2016, Pages 191-205.という論文で、それまでアジアモグラ属とされていたこのモグラを独立属、すなわちミズラモグラ属Oreoscaptorとしている。著者にとって記念すべき標本である。
スケッチの大切さを述べているところが、とても共感が持てる。携帯カメラが優秀になった今、中学高校の生物の授業でどのくらいスケッチに重点が置かれているのだろうか。描こうと思えば、丁寧に隅々まで観察する必要がでてくるのに。いや私も携帯カメラはしょっちゅう使うけれど。
標本になる前の資料を入れておく冷凍庫が壊れたら・・・2000㍑の槽にホルマリン10%溶液をつくろうとしていて、栓がしっかり閉まっていなかったら・・・昔の標本瓶は蓋と本体の接合部分が磨りガラスになっていてワセリンを塗ってあったけれど月日がたつと開かなくなって・・・生物をするものとして状況がよくわかる、あるあるな失敗に思わずわらわないではいられない。ってホルマリンガスは御免被りたいけれど。
そして生物に携わるものとして、アニメ(や漫画や本)の間違いに思わず突っ込みたくなってしまう気持ちもよくわかる。
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めちゃめちゃ面白かった!
特典ノベルティついてました(バカ本替え歌歌詞カード)
挿絵も素晴らしいので画集的な面もあります。
講演もとても面白いPh.D川田先生が雑誌連載されているコラムをまとめたもの。剥製作りの話ばっかりではないですが、剥製や標本や、その他色々な話がたっぷりと読めまして、とても満足度高いです。非常に興味深いことが多数。行ったことある場所とか、あるある話がたっぷりで、個人的に興奮度高いです。読んでてめっちゃ盛り上がる。私自身超雑魚レベルですが標本剥製を作成するということもあり、尊敬している剥製界のビッグスターの話が読めるというのはとても良いですね。
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博物館で動物を研究する川田さん。
専門はモグラだそうだ。
(先生のお名前、存じ上げず・・・)
確かに、モグラがテーマの章では生き生きとしていらっしゃる。
大きなアフリカゾウ、キリン、ウミガメなどの解体は
費用も労力も掛かる。
そのほかの動物の作業工程もギュギュと一冊に詰め込まれ
読者の元へ届けられる。
なんとありがたいことだろう。
中日新聞のインタビューで
「動物園で死んだ個体を標本にする話を書く場合は、
動物園名を伏せて不利益が生じないよう努力している」とか。
ますます、川田伸一郎先生から目が離せない。
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国立科学博物館所属の著者による標本四方山話。
挿絵が大変魅力的で、あとがきで著者が言うように画集として見ても面白いです。
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おもしろかった~!!
博物館勤務の動物研究者・川田伸一郎さんの(標本)エッセイ。
雑誌の「ソトコト」に連載されていたそうです。
キョンの死体を拾いに行く話とか笑った~
標本作りのノウハウ(?)や制作の苦労話や失敗談から
標本へのアツイ愛、標本へのあふれる情熱!などなど…
川田さん節で濃厚に語ってて、私が次に標本を見る機会があれば「ほうほう…」と見入ってしまいそう。
で、この本
イラストが素晴らしい!!
川田さんの文章にぴったりの浅野文彦さんのセンスあるイラストがもう本当に素晴らしい!
海亀の剥製話につけられたパズルな海亀やら
モグラ化する薩摩芋とか
緻密で繊細、それでいてくすっと笑えるポイントがすごい。私、浅野文彦さんのイラスト好きだわ~。
イラストを見るだけでもワクワクするこの本
読めばもうホルマリン標本を楽しめること間違いなし。
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学生時代に所属していたサークルでは、動物の死体を拾ったら解剖するから教えてくれ、とか、サークル部屋の冷蔵庫に拾った死体が入っていたこともあった。
そんなことを思い出させる、標本にまつわる様々なエッセイ。軽妙な話題を通して、標本とは何か、その価値について考えさせられる。
『へんなもの、みっけ!』でも博物館が舞台なだけに標本の話はよく出てくるけど、その実際、という形で楽しめるし、『キリン解剖記』の郡司芽久さんとも話題がリンクする。
エッセイの内容に即した挿絵もタッチが様々で楽しい。
それにしても国立科学博物館の研究者宛に「チュパカブラの同定について」という件名のメールが届くのか・・・そんな刺激的な職場にちょと憧れたりもする。
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【中央図書館リクエスト購入図書】
☆信州大学附属図書館の所蔵はこちらです☆
https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BC0289923X
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以前モグラの本を読んでいた。
ジブリもディズニーも偶蹄目ウシ・ヤギの上の歯。
馬と違い物をかじることはできない。
脳だし、歯ブラシや耳かき活躍。
象からキリン、クジラまで。
UMA、皮膚病のタヌキ
毛のない動物のはく製は難しい。
乾燥して人のミイラみたいになる。
好きな骨がある。(数学者の好きな数字、みたい)
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一気に読みました。道路で轢かれてしまった動物も貴重な標本になり得る事がわかって、これから遺体の見方も、全く違うと思う。正直、抵抗は拭えないが、標本づくりの現場を見学してみたい衝動に駆られる。2月生まれの博物学者のコラムは、とても好きだ。なぜなら、自分も2月生まれだから。ましてや、私の娘は川田さんと誕生日一緒で、勝手に親近感が湧いた。