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紙の本

遺作となった連作短編集

2020/11/20 18:14

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:遊糸 - この投稿者のレビュー一覧を見る

帯の惹句が心に沁みる。
「自分が何処の
 何者であるかは、先祖たちに起こった厄災を
 我身内に負うことではないのか」

「雛の春」昨年(2019年)の立春で始まり
(当時のインフルエンザの流行は、
 今年(2020年)のCOVID-19に重なって見えてしまう)
「われもまた天に」では改元の祝いのあった連休のころを綴り
「雨あがりの出立」は梅雨のさなか接した訃報
そして
「遺稿」は、九月に大きな災害をもたらした台風を描く。

幾度目かの入院・手術や
衰えいく我が身を
あるいは
近親者の訃報によって呼び覚まされる
亡くなった人々への思いが綴られていく。
未完の「遺稿」だが、
これはこれで、完結しているようにも思える。

恬淡にも見えるが、文体は屹立し、
読むほどに胸に沁みいった。
言葉の選び方も見事という他はない。
(自分などが述べるのは、僭越で汗顔の至りであるが)

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2021/03/01 01:08

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