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投稿者:かい - この投稿者のレビュー一覧を見る
YouTubeと映画は対極にあるようで、同じ映像作品であることは変わりない。だが、ここまで解剖されると圧巻
紙の本
白版も面白かったです!
2021/05/30 08:53
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投稿者:なっとう - この投稿者のレビュー一覧を見る
作家生活10周年記念2部作の黒版「正欲」がすごく好きだったので、白版も是非!ということで読了。
「正欲」よりも読みやすいかな?こちらの方が人を選ばない作品かと思いました。
私自身も創ったり、発信したりして過ごしている身なので、共感できる部分や、突き刺さる言葉がとても多かったです。
その分、すごく励まされました。
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浅沼さんが欲しいと言っていた「問い」をくれるのが、まさに朝井さんの作品だと私は思う。
朝井さんのこの作品も、いつものように抽象的な文章のやりとりがうまく噛み砕けず難しいと思ってしまった。でも、それがいい。
「どんなレンズで、どんな技術で撮ったところで、この両目で捉えた鮮やかさを上回ることはないのだと思い知り、地団駄を踏みたくなる。この美しさはカメラにしか収めておけないのに、だからこそ見たままの鮮やかさを少なからず削り取ってしまうカメラのことを、ひどく憎らしく感じる。」
このカメラに対する鉱の捉え方がまさに私と同じだと思った。
一眼レフでもスマートフォンでも、必要以上に美しく加工されている写真は何となく好きではない。それは自分の目で見える景色が全てだと思い込んでいるから。自分の目がこの世で一番性能の良いカメラで、決して容量が大きくないフォルダが脳だと思う。
動員数が少ない映画の質、視聴数が多い動画の質。
勝ち負けや数値で白黒決まる世界で生きる人、白黒変わる価値基準に耐えられなかった人。
映画班を存続させたい気持ち、映画館を無くしたくない気持ち。
あるものがないように、ないものがあるように。
状態と中身。
問いと答え。
綺麗な星形を描くこと、自分で星形を定義すること。
様々な対比がされていたが、どちらが良くてどちらが悪いということではなくて、そもそも比べられないものなんだと思い知らされた。
お互いに影響し合わないなんて絶対無理だから、どんな結論であれ、この世界とどう向き合うのか自分なりの答えを出して、ブレずに堂々と生きていける人になりたい。
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読んでてすごく疲れた、いい意味で。何者に似た感じが沸々と出てます。なんだろ、すごくみんなが真っ直ぐにとてもいいことを言っている気がするんだけど、どうもしっくり来ない。が、何者との違いな気がする。共感する場面が少ないのかな。それはわたしがスター性のない、夢とかもさほど強くない平凡だからかもしれないけど。嫉妬心とか変な執着とかどす黒い感情に共感できても、どこかしっくり来なかった、気がする。そう、なんかふわふわもわもわし続ける一冊だったな。それが全員嫌じゃない。朝井くん、ほんと多彩だなぁ。
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大学生の頃に賞を取り、尚吾は師事している映画監督の会社へ入り、絋は以前映画で撮った被写体のボクサーのいるジムのYouTubeチャンネルの撮影を任される事に…
尚吾は映画と言う物に対して凄く拘りを持つが故に視野が狭くなっているのに対して、紘は簡単に観てもらえるネット配信の品質に疑問を持っていた。どれが正しくてどれが不正解だとは思わないけど、自分のウエイトをどこに置くかがとても重要な気がしました。
そして、尚吾の彼女の千紗も師事していたシェフが店を移り、模索していている姿が尚吾と重なって、別れるかヒヤヒヤしましたが、別れなくて良かった!
青春だけどちょっとビターなラストでした。
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朝井リョウさんの現代の特に若者が違和感を持っているだろう問題を捉える力は凄いなと感心。
YouTuberと映画監督の卵と言う全く異なる道を選んだ新卒の主人公2人の悩みと葛藤。
バズれば誰でもすぐスターになれる世界と、金と時間をかけても最悪花開かないかもしれない映画の世界。
色んな物を作って発信するコンテンツが増えた今の世の中で、こっちの方が優れてる、劣ってると違う土俵の物を並べて叩き合う。
きっとその先には人として大事な何かを失ってしまう。
これからは自分のしている事がどれだけ良いかという事をちゃんと言える人になるのが大切になってくる。
終始胸を打つ言葉で溢れていた。
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考えなくちゃいけないことが多すぎる
全部忘れる気がして怖い
それでいて印象的で強烈な時代への価値観や考え方だけ、さも自分のものにしてしまいそうで怖い
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斜陽産業とかオワコンとか、自分がかかわっている世界についてそういう風に言われること、それを完全に否定できないこと。
今まで通りでは成り立っていかないその中でどう生き延びていくか考えること、そういうあれこれが若い視点で描かれる。
その世界にあこがれて、その世界で生きていくことを夢見てもがく二人。学生時代に映画祭でグランプリを取る、という「栄光」を背負い、そこからどう進んでいくか、を試される日々。
伝統的な手法を守る名監督の下でまっすぐ進み続けようとする尚吾と、時代が求めるものに合わせYouTubeでの表現に進んでいく紘。それぞれの背景や生活環境、そして求めるもの信じるもの、の対比が、二人の現在を浮き上がらせる。
「学生から就職」の夢と現実と葛藤という流れは朝井リョウらしくリアル。今回もYouTubeやオンラインサロンの現状をからめて「古き良き時代」と「新時代」のコンテンツ変化が古いアタマで読んでもわかりやすい。
ただ、読み応え、という点では少し物足りなさを感じる。長く残る(残したい)往年のスター、名監督、名画座、そういう古き良きものと消費され回転していく新しいものたちをもう少しくっきりと描いて欲しかった気もする。
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昔ながらの質の高い映画作りを目指す尚吾と、感覚的に自分の美しいと思う瞬間をカメラに収める紘。大学時代に共同監督として有名な映画賞を受賞した2人が、有名映画監督の弟子とYouTubeでの動画配信という、全く別の道を歩み始める…。まず、この設定が熱い。熱すぎる。
そして二人は別々の道で頭角を表していき、互いに比べ合い嫉妬し合いながらも、自分の作るべき作品や、作品の質は何をもって測られるのかという問いを深めていく。二人がその問いに、どんな答えを見つけたのか是非その目で確かめていただきたい。
いろんなコンテンツで溢れた現代。
例えばアニメばかり見ている人からすると、小説なんかはつまらないと感じるのかもしれない。
逆に小説ばかり読んでいる人からすれば、アニメなんかはつまらないと感じるのかもしれない。
違う分野に対して、自分の分野と比較して誰もが物申したくなる。しかしそんな比較や物申すなんてことは至極無駄なことなのである。
比較などする必要はない。だって今は、誰しもが自分の好きなものや綺麗だと思うことを、素直に裸の気持ちで表現して伝えられる時代なのだから。
大は小を兼ねない。
自分が思う最高や正解なんて、とある特定の世界の中の頂点に過ぎない。いろんな種類の人が、いろんな種類の欲を満たすためにコンテンツを消費していく。その欲に、どっちが大きいだのどっちが小さいだの、優劣はつけられないのだ。
消費者は、自分に合ったコンテンツを選ぶ。
創作者は、自分の考える最高を描く。
それでいいのだ。たったそれだけのことなのだと、そう思わせてくれるお話だった。
私はこの小説に出会えてよかった。そう思います。
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若い方にはぐさっと心に刺さるのではないかと思った作品でした。今を生きている時に感じる「違和感」が、この作品にはふんだんに盛り込まれていました。次々と出てくる心の葛藤が、朝井さんの昔から思っていたのではと思うくらい、丁寧で繊細で共感しました。
朝井さんの「何者」の次のステージを読んでいるようでした。朝井さんならではの表現力が冴え渡って印象深く残りました。
物語の始まりは、二人の監督で作った作品が、新人の登竜門と呼ばれる映画祭でグランプリを獲ったところからです。この流れだと、「今」に至る過程を描くのかなと思いきや、ここからがスタートラインとなっています。
二人は、その後別々の道を歩みます。
一人は憧れていた監督に所属する会社に、もう一人はどこも就職しないまま、実家に戻り平凡な日々を過ごしていました。ある時、大学の時に撮ったボクサーから自分が所属するジムの紹介映像を頼まれることに。これを機にYouTubeでの活動が始まります。
お互い映像としての仕事をするのですが、次第に自分の考えと周りの人との考えに違和感が生まれます。
自分はこうしたいけど、相手は違うことを指示する。世間ではこう求められているけど、自分は違う。
など何が正解なのか、自分はどうしていきたいか様々な疑問や佳境にいながら、どう選択していくのか描かれています。
この作品では、いろんな「比較」が登場します。何かと比較することで、嫉妬や羨ましいといった気持ちが発生してしまいます。そういった感情が二人の歩む道筋とリンクし、読み進めるたびに「その気持ちわかる」や「それは違うな」とさせてくれます。
映像の世界に限らず、様々な業界でも同様な違和感や悩みがあるかと思います。
自分はこう思うんだけど、なかなか実現できない。そういった葛藤をどう発散していくのか。別のところで発散するのか。今の時代、選択肢は無限にあるかと思います。
自分がどう行動するのか、常に積極的に行動することで段々と実現していくのではないかと思いました。
やっぱり心や仕事の支えは「人」だと思いました。考えをぶつけたり、思いを共有して行動に移す存在があってこそ、実現できる。
他と比較して勝ち負けを判断するのではなく、色んな種類があるんだという考えで今を生きようと思いました。自分に合った選択肢を選んだり、無ければ作ったりと前に進んでいきたいです。
一生懸命に密かにでもいいから、頑張っていれば、どこかで見てくれている人がいる。そう教えてくれました。
ラストはハッピーかバッドかどっちもつかずでしたが、現実と生きている感覚があり、今後どう発展していくのか楽しみになりました。
この作品、映像化しそうな感じがしました。
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インパクト重視で再生回数が全てのような現代に感じる違和感が言葉でしっかりと表現されている。小説だからセリフとなっているが、作者が普段考えていることなのだろうなと思い、その毒付き加減も面白い。バズるという言葉に引っ掛かるものが少しでもあれば読む価値あり。
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先日、仕事上で知り合った同年代のフジテレビの従業員の方が「まさかこんなことになるとは思わなかった」と言っていた。
就職活動当時、東京の有名私大の学生は、中には東大一橋東工大もいたかもしれないが、面白そうだし、給料もいいし、とにかくフジテレビは受けとこうかって感じで、河田町に履歴書出しに並んだものだった。生損保、総合商社も含め、他の会社は、情報誌の葉書一枚投函すれば基本エントリーできたのにも関わらず。
それが、今では他の系列の後塵を拝し、その上テレビ局ごと、人気ランキングから消えている。
メディアがどんどん変わる、その速度、分岐先が増してきているのは確かなことだと思う。
その最中にいる、主人公達の声を、瑞々しく掬い上げている本だと感じた。
小説家を主人公として登場させるより、映画監督にずらしてこの作品を作ったのは、その方が、筆者と主人公にいい距離ができて、書きやすかったのかな、とかとも思った。西川美和さんの永い言い訳、は逆に主人公が小説家だったし。
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今を生きる若者ならではのストーリー。歴史や文化を大切にしたい気持ち、ニーズに応え常に新しいことに挑戦したい気持ちの両方とも共感した。
自分をクリエイターを目指す以上、超えなくてはいけない壁であるが、何が正しいかを突き詰めるわけでもない。自分らしい考えを自分も確定させたいと思った。
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鋭利すぎるほど鋭利に時代を批評する、さすが朝井リョウと言わずにいられない一冊。SNSを筆頭にインターネット上であらゆるものが刹那的に消費されていく時代に我々はどう生きるべきなのか?どの登場人物の選択も決して肯定も否定もしてくれない。ある意味で性格の悪い着地。明快な答えではなく著者からの問いが重く残る。
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読み終わって、この本のテーマについて、さらにそこから派生して色んなことを考えさせる本ってなかなかないように思う。
それは現代社会をテーマにしていて、かつ鋭い洞察力で語られていることによって自分の経験と結びつけやすいからだろうか?