紙の本
差別は過去の出来事ではない
2022/12/21 09:32
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投稿者:mybookshelf - この投稿者のレビュー一覧を見る
二人の作者が二つの立場から語られることがこの本の魅力の一つである。人種差別と聞くと、少し昔のことのように思ってしまうかもしれないが、今でもこんなにも日常に溢れているというのを、目の当たりにする。この本を、読んでどう感じるかディスカッションしたい一冊となった。
紙の本
『オール・アメリカン・ボーイズ』
2021/02/08 19:39
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投稿者:百書繚乱 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ドラッグストアで万引きの疑いをかけられた黒人の高校生ラシャドは、白人の若い警察官ポールに問答無用の暴行を受け手錠をかけられてしまう
偶然その場面を目撃した白人の高校生クインは、暴行した警察官が親友グッゾの兄であることに気づき、その場から逃げてしまう
大怪我をして入院したラシャドの無実を信じ、警察の人種差別に抗議するデモを計画する仲間たち
親友の兄ポールに心を気づかいつつも、差別から目をそらすことができずデモに参加するか悩むクイン
《気づかないふりをしたり、見えないふりをしたり、つまりはそれが差別なんじゃないか。》
金曜夜の逮捕劇から1週間
抗議のうねりは大きく広がり、装甲車の囲む街でデモが始まった
BMT(ブラック・ライブズ・マター)をテーマに、黒人の高校生ラシャドを黒人作家のレノルズが、白人の高校生クインを白人作家のカイリーが担当し、それぞれの視点で事件を交互に語り、アメリカ社会の現実と若者の葛藤をていねいに綴ってゆく
原作は2015年刊の“All American Boys”
ニューヨーク・タイムズ紙のベストセラー、多様性の価値を表現したYA小説・児童書を対象とするウォルター・ディーン・マイヤーズ賞、優れたYA小説に贈られるアメリア・エリザベス・ウォールデン賞を受賞した衝撃作の邦訳、2020年12月刊
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2月はBHM・ブラックヒストリーマンスだったので積読になっていたこの本を読みました。ヤングアダルトということでなんとなく読むのを後回しにしてしまっていたのですがとにかく素晴らしい一冊でした。
男性作家の作品を女性翻訳者が手掛ける、または女性作家の本を男性翻訳者が訳した文芸作品に名作は無い、というのが長年の読書経験から得た自分の持論なのですが、この翻訳者の方の仕事は素晴らしかったです。正直、最初はちょっとこれ受け付けないかなぁと思って読み進めていたのですが、黒人の若い男の子の会話やノリやカルチャーが本当にとても上手く表現されていてとてもリアルでした。そのおかげでこの物語の核心である暴力や差別などもリアルなものとして感じられました。英文で読んでもこんな感動は無かったと思います。この翻訳者さんの次回作は発売日にリアルタイムで読もうと思いました。
BLM運動、日本ではなんでもいいから反日反米したい左巻きの人達と中国人が結託していたのが分かりやすくバレていて盛り上がりもなく冷笑しかされませんでしたね。でもアメリカに住んでいたことがある人なら誰でも分かると思うのですが、アメリカの警官って本当にひどいんですよ。日系コミュニティはホームレスのいない唯一の人種コミュニティという事である程度の知識層の人達からは日本人もリスペクトを受けますが、白人警官には通用しません。他人事ではないんです。まして奴隷だった黒人には本当に何してもいいと思っている、これは警官だけではなく、カレンと呼ばれるババアでも知られる通り白人全体にある。日本人で言えば、都心で関西弁喋ってる奴はとにかく職質して全員殺してもいい、みたいなノリですよ…自分も嫌な思いしたことあります、そういう意味でもNYやLAに住んでいたことのある知り合いにこの本を勧めました。
おじいちゃんやおばあちゃんの作家が書いた本や古典以外の新刊の翻訳書が年々手に入らない時代になってきているのが本当にさみしいです。このようなカルチャーを知ることができる新刊が沢山翻訳される事とこのような素晴らしい翻訳者の仕事が増える事を願っています。
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多様な国家アメリカについて、日本でも黒人差別が話題になることはしばしばあるが、身近な事として捉えることが出来ない人が大半ではないだろうか。日本においても差別というものは存在していると思うが、この本に書かれている通り、何もしない事も差別の一端を担っているかもしれないという事を理解すべき。
一人一人がなせる事は小さな事かもしれないが、小さな事の積み重ねが大きなうねりとなり、世の中を変えるなんてことはざらにある。
この世に生を受けたからには、何かを成す事を求められていると思う。歴史に名を残すほどの偉業を成し遂げるというのとは違っても、家族、友人、仲間に支えられ、時には支え、お互いに力を合わせてよりよい人生を送る事が出来ると幸せだ。
異国の物語としてではなく、日本も人口減少社会を迎える中、コロナにより少し沈静化しているが多様な人々が一緒の空間で過ごすことが増えるだろう。また働き方改革という名の下、ワーケーションという言葉も浸透しつつある中、異国で暮らすというスタイルを選ぶ人も増えるだろう。そんな方々は差別を受ける側に回るかもしれない。受容性の高い、相手を受け入れる度量のある人間に少しでも近付けるように心掛けることで、世の中の前向きな変化に貢献できるといいな。
より良い世の中への一歩としてこの本を紹介したいです。
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「自分は差別主義なんかじゃないって、みんながそう思っているっていうのが、まさに問題なんだ。気づかないふりをしたり、見えなりふりをしたり、つまりはそれが差別なんじゃないか。」
「不正が行われているときに中立であろうとするならば、抑圧する側に立つのを選んだことになる。」
結局ポールはどう判決がくだされたのか…
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黒人差別に関する小説だが、高校生目線で描かれているのでとても読みやすく、あっという間に読み終わった。
黒人差別という問題を黒人社会と白人社会の2つ面から描かれていて、個人的にはとても新鮮だった(ニュースなどで目聞きする話は基本的に黒人目線での差別の実態に関することが多いが、白人社会の反応はあんり報道されていない印象)。
主人公は白人と黒人の高校生ということもあり、いい意味で社会に染まっておらず、「差別」を体感したことがない。二人は同じような生活をしていたが、事件後の二人を取り巻く環境の変化が対照的に描かれている。周囲の環境の変化に葛藤する姿はとても感情移入しやすい。
差別はダメとこの世の人は全員わかっているし、世の中をよくしたいという気持ちはみんな共通なのに、差別はなくならない、、、、差別とは目に見えない構造上の根深い問題であることを実感できる作品だった。
特にあとがきのタイトルの意味に関する記述も面白いので是非最後まで読んで欲しい。
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ラシャドは米国の黒人高校生。金曜日の夜のパーティーでいかした女の子と仲良くなりたいと考える普通の男子だった。学校を終え、パーティーへ行く前にポテトチップスとガムを買おうといつも行く雑貨屋に立ち寄った。そこでポテチの袋を手にバックパックの中の携帯を取り出そうとかがんだところへ、後ろにいた白人のおばさんが倒れこんできた。そのとたん、店にいた警官が飛んできて万引きの現行犯として逮捕されてしまう。有無を言わせず手錠をかけ、殴りつけ、店の外へ引きずり出し道路に激しく打ち付ける。手錠のままラシャドは病院に運び込まれる。鼻の骨と肋骨を骨折し、肺に血がたまっており、そのまま入院することになる。理不尽な扱いに兄のスプーニーは、ネットに現場の映像がないかを探す。案の定誰かが撮った映像があり、無抵抗のラシャドを執拗に押さえつける警官がいた。スプーニーがマスコミにその映像を拡散したことから、事件は町中の話題になる。事件のあった金曜日から翌週の日曜日までの10日間を、黒人側のラシャドと白人側のクインの双方から語る。
ラシャドはいわば被害者側として、同じ学校に通うクインは偶然現場を目撃した立場で。著者もラシャド側は黒人作家のレイノルズが、クインの章を白人のカイリーが書いている。BLM問題が日本でも取り上げられるようになったが、その傷は双方に深く刻まれれていることがよくわかる。
BML問題に黙っていることは、差別に加担していることであると訴える。言うは易し、そのさなかに当事者として放り込まれた少年たちや、彼らの周囲の家族・教師そのほかのたくさんの人たちは、自分たちの今までを真摯に振り返る。その過程が書かれていることで、最後のデモのシーンが印象付けられる。
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黒人作家レノルズと白人作家カイリーが、それぞれラシャドとクインというふたりの主人公の視点から交互に話をすすめていく作品。原著は2015年。BLMのきっかけになる事件が全米各地で起きたころに書かれた作品で、レノルズに関していえば、2019年に日本で出版された『エレベーター』や『ゴースト』よりも先に書かれている。
物語自体は、ラシャドが身に覚えのない万引きを疑われて警官から過度な暴行を受け、それを目撃していた白人少年クインは、その警官がふだんから親切にしてもらっている近所のお兄さんだと知って思い悩み……という、ある意味図式的な展開。でも、少年たちふたりと、その学校や友人たちの状況がとてもリアルに描きこまれているので、こういうことは至る所で起きているのだろうと納得できた。
ラシャドの父さんの告白が衝撃。隠しつづけて、息子達にたいしては強くて正しい父親を演じてきたことを、かなぐりすてたのは勇気ある行動だった。そしてラシャドと看護師さんや、病院の売店のおばさん、そして例の白人の女の人とのやりとりやなんかは、ジェイソン・レノルズの面目躍如で、こういうふうに頼れる大人が登場するのはとてもいい。
警官のポールに関していえば、「いい人」でも暴力的になりうるし、それが「正義」だと信じこんでいれば、いくらでも正当化しようとするというのが、こわい。ここ最近のニュースやSNSで、そういう人たちをたくさん見るし。どうすりゃいいんだろうね。
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アメリカの分断と差別、それを乗り越えようとする人々を描く。著者が黒人と白人で、それぞれの苦悩と差別を乗り越えようとするのがリアルに感じられる。
主人公が高校生、将来のことや好きな人のことなど、高校生らしい話題が出てくる場面は気軽で読みやすく、親しみやすい。翻訳も読みやすい。
2020年のアメリカの事件とMLBの運動を思い起こさせますが、原著は2013年、2014年の事件を受けて描かれ、2015年に出版されたものです。
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黒人差別の象徴になってしまった高校生と、講義の声をあげようと決意するまでの友人たちの話。
大坂なおみさんの抗議マスクを思い出しました。「これは私たちの問題」という言葉が印象的でした。
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差別がある社会に生きる「わたしたち」を浮き彫りにしていく小説。黒人と白人という二人の視点人物から、同じ街・同じ高校・同じ事件を描いていく1週間という構成が効いています。アメリカの地方都市が舞台ですが、日本にも重なる物語。
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この本を読んでみて、黒人差別によってアメリカで起こっていること/きたことが、見えてきました。
人種差別が、わたしにとってあまり身近ではなかったので、知れるきっかけになり、この本に出会えて良かったと思っています。
わたしは、1787年に制定された合衆国憲法に、白人一人に対して黒人は5分の3人とかぞえるとする条項があった、というのがかなりショッキングでした。
憲法で差別が正当化されていたというのも、
5分の3人っていうのも。
でも、人種に関係なく、それに抗議する声もちゃんとあったというのが救いに思える。
黒人に対する差別だけじゃなくて、他にも様々な差別が存在しているように思うので、
差別せず加担しないで生きられたらいいな。
20210419
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状況や心情の丁寧な描写に説得力のある作品。
人種問題そのものよりも、人種問題の存在する世界で人の心や姿勢がいかにあるべきかを問われた印象。
物事は事実と真実に基づいて判断されるべきで、その点において、当事者でない遠い異国の者が差別を語るのは細心の注意が必要だと思うので、沈黙や中立は差別主義者への荷担と言うのはやや乱暴で一概に同意できない。
が、公権力の過剰暴力には断固反対できるので、デモがそこに焦点を絞った点は個人的な読後感として良かった。
問題の根はウチソト意識にあると思う。
「信じる」ことの危うさを感じる。
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BLMの根っこにあるアメリカの社会背景がずっしりと心に残った。黒人の少年の目線だけでなく、白人の少年の視点からもそれぞれ一人称で描かれた小説。引き込まれて一気に読了。
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抵抗しない、口答えしない、黙って手を上げたまま、言われたとおりにする
これが、黒人が安全でいるために、親から子へ伝えられる言葉だと書かれていました。こんなことを教えないといけないなんて・・・
黒人の子が万引きを疑われ、居合わせた警官に拘束された。
身動きができない状態で殴られ、地面に叩きつけられ、重傷を負う。
その子は、チームメイトの友だち。
殴った警官は、頼りにしてる優しい近所のお兄さん。
なんでこんなことに!?
人種差別を感じていなかった子どもたちの間でも混乱が広がり・・・
黒人の子ラシャドのパートを黒人作家が
白人の子クインのパートを白人作家が描くことで
それぞれの家庭の実態まで伝わってきます。
幾度となく繰り返されるこの問題を、肌で感じられるストーリーでした。