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ぬるくてゆるくて軽くて。
でも、この常温、常態を保つにはものすごく胆力と覚悟がいるんだろうな、と感じた。
楽しくても辛くても鼻歌でちゃうんだよ、と云うひとにおすすめの歌集。
[流れ込むように電車にのるときに入り口付近にたまりたくなる]
[お賽銭箱に十円を入れてみて空気をつたわっていくいい音]
[冬のなか立体的に見えてくるきみとビスケットを選びたい]
[今年だな去年じゃなくて エレベーター気づいたときに十階に着く]
[1月が何回も来てほこりのようにかさなる友達のエピソード]
[年が明ける 配信サービスのせいでむしろあかるいTSUTAYAへ向かう]
[あらゆることがノーオフェンスでやってくる かがむと猫が近づいてくる]
[仕事にいく途中に柿の木があって実がなっているいつ見たときも]
[言わないと伝わらないということが不思議なような天井がつづく]
[カートリッジを替えたみたいに金髪がきれいになっている朝の人]
[翅があるのにはやく走っている虫はうけると思う 九月は熱い]
[その夜のラゾーナの三階からのながめはさびしかったから覚える]
[暗くしてパソコン画面を特別な四角だと思って映画見る]
[二百年生きるペースで生きていく 玄関に階段がある家]
[電車の中がなんだか変でうずくまった話をしっかり受けとめる]
歌集は一番最後から読む癖があるので、引用歌が本の後半に集中してます。
図書館で借りたのですが、手元に置きたい。
追記
あと、何となく、オダジョーの声で朗読してもらいたい…。