紙の本
アンソロジーの醍醐味
2021/11/22 13:50
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投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
商品説明に、コナン・ドイルから西村京太郎まで、とあるが、さらに水木大海までというべきか、現代の中堅・若手まで網羅している。
西村京太郎氏の『南神威島』目当てで購入したが、戦争が影を落とす皆川博子氏の『疫病船』や、今回の新型コロナ禍を扱った水木大海氏のゾクっとする『二週間後の未来』など、興味深い作品と出合えた。
お目当ての作品だけでなく、思いがけない名作に出合えるのも、こうしたアンソロジーのたのしみである。もちろん、コナン・ドイル、エドガー・アランポオら外国勢のよく知られたミステリーも、こうして並べて読むと、伝染病(感染症)と人類の歴史を刻む貴重な記録だと、実感させてくれる。
編者の解説も分かりやすかった。
紙の本
いつの時代にもウイルスが
2021/05/19 14:49
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
ホームズ物の中でも異色作「瀕死の探偵」では、未知のウイルスよりもデマの方が恐ろしいことを痛感します。水生大海の最新作では、ポストコロナの文学を見据えていました。
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・千街晶之編「伝染る恐怖 感染ミステリー傑作選」(宝島社文庫)は書名通りの内容である。古くはポオ、コナ ン・ドイルに始まり、現在のコロナ禍を扱つた作品までの計8編を収める。海外4編、国内4編といふのはバランスを考へたものか、 この種の作品はあまりなくて必然的にかうなつたのか。後者であれば続編も期待できないことになる。個人的には、かういふアンソロジーは海外編と国内編に分けた方が良いと思ふ。更に、できることならば時代的背景にも気を配つてほしい。このアンソロジーでは海外作品が何か違ふやうに思はれる。時代的な問題があらう。ポオ「赤死病の仮面」がいささか違ふのは当然として、とはいふものの、 実はこれが最もそれらしい作品と思へたりもする。マーキーは経歴不詳とある。「空室」はこの書名にはふさはしくない。これは現在の緊迫した状況からは考へられないほどののどかな作品である。
・これに対して、国内は西村京太郎「南神威島」、皆川博子「疫病船」、梓崎優「叫び」、水生大海「二週間後の未來」の4遍を収める。皆川作は復員船の物語、個人的にはおもしろくない。水生作は現在のコロナ禍の作、リモート会議が出てきたりする。その他、現在の状況にふさはしさうな内容である。しかし、個人的にはおもしろくない。緊迫感がないといふか、青酸カリ殺人事件のやうだが、 どこか間が抜けて見える。ところが西村作と梓崎作にそんなところはない。扱ふ内容もあらう。ともに言はば現代のゴシック小説であらうか。隔絶された場所で起きる感染症がらみの事件である。西村の南神威島は「九州南端から沖縄へ向って弓形に伸びる神威列島の中の一つの島」(132頁)であるが、「この島だけが、まるで他の島から仲間外れにされたように、南東へ二百五十キロも離れた洋上に、ポツンと浮かんでい」(同前)る、そんな島が舞台である。その島の風俗、風習とそこに赴任する若き医師のカルチャーショックが主題であらうか。物語は結果的に殺人事件だつたのであらう。血清で救ふべき人間を自分にしたのである。医師は自分以外は知らないと思つてゐた。しかし、知られてゐたのである。「おタキは、神さまにお仕えする巫女です。おタキは、先生が病気にかかったことを知っていました。だから、勿論、神様も」(193頁)知つてゐた。それでも何も言はなかつた。「全て神さまのおぼしめしです。」(同前)以後2年間、島が病気から守られたのだからと言ふ。予想される結末ではあつても軽くない。1969年発表、古いといへば古い。現在もかういふ島が残つてゐるとは思へないが、昔はかういふ島もあつたのだと思はせる。私はこの人を名前だけでしか知らない。初めて読んだ。かういふ作品を書く人ならば売れるだらうと思ふ。梓崎「叫び」はアマゾン奥地の「わずか五十名弱の小さな部落」(253頁)が舞台、ここでエボラ出血熱が発生する。その時、主人公と案内人の医師はいかに動くかといふ物語である。ただし、ほとんどがエボラ出血熱に感染したが、「首を掻き切られて死ん」(257頁)だ遺体もあつたことから殺人事件となり、これまたゴシック小説となつていく。感染症の場合、舞台を限られた範囲にするか、どこまでも広がりかね���い都会にするかで内容も変はつてこよう。その意味で、ゴシック風にしてしまへば扱ひ易くなるといふことかもしれない。ポオもまたゴシックであらう。梓崎は今から10年ほど前の作品である。新しくもないが古くもない。日本の推理小説の類を全く知らない私は、かういふ小説を書ける人がゐるのだと驚いたものである。もしかしたらこれが私の最大の収穫であつたかもしれない。
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感染症と一口に言ってもいろんな種類があるし、そしてその物語への取り入れ方も謎もそれぞれ。現実でも感染症が幅を利かせていてうんざりだけれど、この本は楽しめます。
皆川博子「疫病船」と梓崎優「叫び」は再読だけれど好きな作品。どちらもどうしようもなく悲痛な物語で、胸に刺さります。エドガー・アラン・ポオ「赤死病の仮面」は定番中の定番ですが。恐ろしくもあるけれど、美麗な印象もあってこれも好きな作品です。
アーサー・コナン・ドイル「瀕死の探偵」はまさかこんな作品があったとは! ホームズ物はまだあまり読めていないので。こんなとんでもない事態の話があったのか、と。大丈夫なのだろうと思いながらどきどきして読んでしまいました。
水生大海「二週間後の未来」はまさしく今のこの時代を描いた物語。なるほど、と思わされます。そしてこのラスト……どうなっているのかな。この選択には悩みそうです。
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アラン・ポオの作品、初めて読んだかも?怖かったな。
ホームズは相変わらずぶっ飛んでいて面白い。
「二週間後の未来」。コロナ禍の現況とシンクロしていて、没入感があった。不気味な展開。
解説に載っている感染症関連のミステリーがどれも面白そうで、テンションがあがった。
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【収録作品】「赤死病の仮面」エドガー・アラン・ポー 訳/松村達雄/「瀕死の探偵」アーサー・コナン・ドイル 訳/深町眞理子/「悪疫の伝播者」R.オースティン・フリーマン 訳/佐藤祥三/「空室」C.H.マーキー 訳/伴大矩/「南神威島」西村京太郎/「疫病船」皆川博子/「叫び」梓崎優/「二週間後の未来」水生大海
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エドガー・アラン・ポーから2020年までの感染症を扱ったミステリー集。
西村京太郎『南神威島』が印象深かった。
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マーキー「空室」、アーサー・コナン・ドイル「瀕死の探偵」、皆川博子「疫病船」の順で心に残った作品。戦災や疫病など緊急事態の中で人はどうなるのか?どのように考え行動するのか、それこそ、その時にその人の人間性がわかるのではないか。どの短編でも葛藤が描かれている。
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COVID-19への対応で大揺れの世の中で、感染症とかかわりのあるミステリーの佳作7編を収録したもの。水生大海氏の「二週間後の未来」は、2020年に書かれたもので、大変リアル。西村京太郎氏の「南神威島」が特に面白かった。
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古今東西の感染症を扱ったミステリ8選。
初めて読んだ作家もあって、それはそれで興味深かったが、ドイルの『瀕死の探偵』とかベタだし、ポーの『赤死病の仮面』って、ミステリですか? という突っ込み所はあったかなぁ。
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名前は知ってるけど読んだことはない作家さんが多くて、一気に読めるお得感がありました。
海外のミステリは、あまり合わないのか、ちょっとペースダウンしましたが、コナンくんの好きなホームズってこういう人だったのかと。
まさかのタイミングでホームズが読めてよかったです。
個人的には水生大海さんの『二週間後の未来』がおもしろかったです。
新型ウイルスの流行でリモートワークになり、計画していた殺人が実行不可能になるという話。
まさにここ数年の日本ですよね。
オンライン会議とか自宅でできる副業とか、リモートトラブルとか。
なんだかとてもリアルで、ぞくっときました。