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[墨田区図書館]
表題から大まかな話(発達障害を持つ筆者がIT社長として成功している状況、もしくは成り立ちなど、自伝的もしくは中高年性などに向けてのメッセージ的書籍)は推測出来てはいたが、いくら概要が分かっていても、やはり個々のリアルな話を聞くとその世界観や経験はその人それぞれで、読み聞するたびに新たな価値観と経験をもらい受ける。
この方は自身が発達障害かもしれないという認識なく、ただただ生きづらい学生生活、その後の転職を繰り返したけれど、ちょうど当時発展していったITというジャンルでその力と苦手だった人と向き合う、関われることが出来るようになった。
マイコンピュータ……恐らく同世代でも知っていて触っていた人はいたんだろうけれど、生憎と私にとってのパソコンは95から。3.1は単語を聞いた記憶はあるが、実物は見たことなく、パソコンとして知った時には既に現在のパソコンの形だった。強いて言えば当時は各家庭への固定ネットワーク回線をプロバイダ契約で引くことでしかメルアドゲットをする手段がほぼなかったことぐらい??
多少はITの世界を知っている身としては、途中からのシステム開発のあたりにとても強く共感することが出来た。その前に最初の会社で陥ったブラック企業のくだりもよくわかった(笑)実際私も当時会社での寝泊まりとか始発で一旦帰宅しての再出社など、よくやっていたのも今となってはいい思い出だが、新たなシステムを構築する際に、ユーザー側が自分の理想とするシステム要件を立ち上げてくることはほぼ稀で、その言葉通りにシステムを作ると、たとえ完璧にシナリオ通りに作れた(それもまたあり得ないが…苦笑)としても、結局は使いづらいシステムだったり、ユーザー側の二転三転する要求に振り回されてよくわからない追加仕様が出来上がっていたりする。データ連携など内部に絡んだ要件や仕様に関しては開発側が優秀であれば気づいたり逆提案することもできるが、最終的にはユーザーの仕事とやりたいこと、というか、やれるといいなということが実際の行動に即して洗い出されないと、必要な機能を備えていても使いづらい、使えないシステムが往々にして出来上がってしまう。
性格だったのか、経験だったのか、いずれにせよこの筆者が現在成功者の一人としてこのような本が書けるまでに至ったのは、時代の運、出会った人の運、持ち込まれた仕事のジャンル、種々のものがあるだろうけれど、「本気で人の役に立つために(p.104)」と思えて、実践出来たことが大きいと思う。
本を読んでいる間は基本的に筆者に感情移入して読んでいたが、親としてうっすらと"その立場だったらどうしたのか"、も考えてはいた。筆者への介入や筆者との衝突がなかったわけではないが、筆者自身が大らかにほおっておかれた的な発言をするほど自分が放置できていたかは大きな疑問だ。成功した暁だからこそ認められ、良しとされる結果だったかもしれないけれど、近年この手の本を読むたびに、外(親)からの立場として、身をつまされる思いもする。