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<目次>
第1章 名探偵の条件
第2章 ピエロの脱皮
第3章 探偵愛
第4章 ドリンクバー
第5章 ハードボイルドの葛藤
第6章 女探偵、現る
第7章 セカンドキャリア
第8章 依頼者A子の告白
第9章 追憶のホームズ
<内容>
著者も言うように、探偵=、西洋ならシャーロック=ホームズ、日本なら明智小五郎というところだろう。でも、実際の探偵は?新聞のチラシでは見たことはないが、駅近くに立つ看板でなら、いくつかの探偵社の広告を見たことはある。それは依頼者を募るもの。でも、実際の探偵など見たことはない。この本は、そうした人たちにインタビューしたもの。多彩な人物が現れる。体験談が面白い。失敗談はほぼ一緒。過信からばれてしまい、警察沙汰になる。ひとつ面白かったのは、依頼者へのインタビューがあること。逆に言うと、凡百な本と違うのはそこだろう。著者が探偵や探偵社の人たちに、しっかりと食い込み、信頼を得たからこそ、こんな話が効けたのだと思う。
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探偵と言われて真っ先に思いつくのは、シャーロック・ホームズだ。
依頼人が相談しにやってきて、さまざまな種類の難事件を、独特の哲学とともに、エレガントに解決する姿は、現実の探偵には、当てはまらない。
彼らが依頼されることの大半は、浮気調査や素行調査で、対象者(イチタイというらしい)が出てくるのを、じっと待っているのが、常だそう。もちろん、このことは知識の片隅にあったが、実際にほとんどの探偵業をされている方が、このイレギュラーな業務に耐えきれず、短期間で辞めていく、長く続けられる人はまれ、という事実は、文章からも真実味が伝わってくる。
読みながら、探偵の独特の言い回しの数々や、尾行するときの緊張する息遣いがダイレクトに伝わってくる。
ノンフィクションの取材がメインの本でありながら、まさしく手に汗握るような、ドキドキさせられるおもしろさは、この本を読むことでの予想外の収穫であった。
同じ「探偵」といえども、さまざまな背景を抱えた人間たちがいる。小説に出てくる探偵たちの優雅さの舞台裏を、推理小説の合間に読んでみるのも、おもしろいかもしれない。
きっと、推理小説を超える緊張感を味わうことができるだろう。
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実際の探偵にインタビューしたノンフィクション。
密室殺人や秘密結社とどんぱちやり合うような話はなく、ほぼ浮気調査の話。
どういう人が探偵になるのか詳しいインタビューをもとに丁寧に描かれている。確かに個性的な人物が多いが、どこの会社にもこのくらいの個性の持ち主や職業倫理を持つ人はいると思う。
普通の人たちが何かのきっかけに探偵という特殊な職業に就く人生の面白みを感じた。
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探偵という職業は小説の中ではとてもよく見かけるが、現実世界の探偵はどのような仕事をして、探偵になる人たちはどのような人生を歩んできたのか?最初から探偵を目指した人もいれば、たまたま得た職業が探偵だった人もいて、個々人の人生模様が色濃く表れていて興味深く、久々に読書に熱中できた。
探偵本人へのインタビューを通して、著者は「当たり前ではあるが、探偵も私たちと同じ人間であることが分かった」と感じているが、読んでみて同じ感想を持った。探偵は特殊な職業であることは間違いないが、やりがいを見出すこともあれば理不尽な目に遭うこともあるのはどの職業にも共通することではないだろうか。また長く探偵をしていると仕事に慣れて飽きがきたり、将来を思って不安になったりする様子に彼らも一人の人間なのだと強く感じた。
実際の探偵稼業は浮気調査や人探しが主な仕事になるのだろうという想像は当たっていたが、探偵の目を通して提示される、現実に生きる人の行為としてみると生々しさが一層増した。本書で取り上げられる事件の多くは浮気だが、浮気というカテゴリーは同じでも個々の案件の内容はまったく違うだけでなく、調査中に対象に気づかれて捕まってしまったことなどの個人的な体験が多く書かれているので読んでいて飽きが来なかった。探偵に浮気の調査を依頼した人の経験談も載っていて、浮気をされた人の体験は読んだことがなかったので新鮮だった。
あとがきで新型コロナの影響でみんながマスクをするようになって、浮気相手の顔を確認するのが難しくなり、デートでも外出を避けるようになったので証拠写真を撮ることが難しくなっていると記載があった。やはりコロナはあらゆるところに影響しているのだと思った一方で、探偵たちがどのように対応しているのか、オンライン化が進む中で探偵という職業が今後どう変化していくのかなどの興味もわいてきたので、著者にはまた探偵を題材とした本を書いてもらいたい。
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探偵9人の体験録。どの人も探偵学校は役に立たなかったとか行かなかったとか否定的だったのが印象的。
イチタイ、ニタイとか現場の用語、けっこう横の繋がりがあるとか知らない事が載っていて良い。
探偵業に興味があって読んでいたが段々と探偵さんの人生そのものに興味が移ってしまった。
巻末の『屋根裏の散歩者』で明智小五郎が郷田三郎に最後に言った台詞について感想を述べておられるが全く同意できる。