紙の本
識者の危機感
2021/12/31 12:31
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぴー - この投稿者のレビュー一覧を見る
26名の識者が、日本を取り巻く息苦しさについて解説している本です。
日本を取り巻く状況は変わってきているのに、日本人の思考回路はついていけていないように感じます。
今一度しっかり考え直してみたいと思います。
紙の本
編集部の志を感じる
2021/10/13 20:45
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
2020年10月に明らかになった、日本学術会議任命拒否問題を受け、集英社の新書編集部が編んだ、各界の26人の声。
研究者やジャーナリスト、小説家・・・さまざまな分野で活躍している人たちが、それぞれにこの問題を通して「自由」の危機について語っている。
まえがきに、編者が「これらの論考は、共鳴し、調和する部分がある一方で、破調を含むところがあります。それらはあえて残しました。そこにこそ、目を向けるべき重要な視点が含まれているように思われるからです」と書いているように、全体に統一感があるわけでも、唯一のメッセージがあるわけでもない。
ただ同じ問題を語っても、語り手の属性や立場でこんなにも広がりがあるのか・・・と考えさせられる。
研究者の方々が、それぞれの専門分野を切り口に書いておられることはごもっともな内容で、日本の大学・研究機関や研究者の置かれている状況もよく分かり、総論を理解する上で、大変役に立った。
個人的に興味深かったのは、文化人の方々の論考。
漫画家のヤマザキマリさんはイタリアの視点から、この問題を照射していたし、『日没』の桐野夏生さんは、この作品で書いていたように、上からの言論統制ではなく、ネット上での告発によって首を絞められるような、現代社会の恐怖をつづっていた。メディアが発言すべきことを言わず、「私のような個人に本来自分たちが言うべきことを代弁させている」とか「メディアは自分たちは中立の立場を装って私のように物を言う人間をあたかも人身御供のように差し出しているのではないか」とかいう指摘にはうなずくばかり。
村山由佳さんは、学術会議問題についてSNSで発言したときに、「びっくりするほど攻撃的なコメントやメッセージも多く寄せられた」体験とそれに対する思いを、率直につづっていて、とても共感できた。そして「水はいきなり煮え湯にならない」と、作家らしい言葉で警鐘を鳴らしていた。
ほかにもいろいろ心に引っ掛かったり、共鳴したりする内容があった。多様な意見があるので、総論では理解できても各論では「?」というものもあった。
それでも、いまこの時期にこういう本を編もうとした集英社新書編集部の熱意や志が伝わってくる一冊だ。敬意を表したい。
紙の本
dual-use technology
2021/09/08 22:54
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投稿者:6EQUJ5 - この投稿者のレビュー一覧を見る
2020年10月の菅首相(当時)による日本学術会議の会員任命拒否問題を中心とした、学問の自由に関する論考集。「そんなこともあったな」で済むか、「考えてみればあの頃から」と将来に禍根を残すか、結構キョーフです。
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投稿者:名無し - この投稿者のレビュー一覧を見る
は? 本当に「自由の危機」としたい状況を作っているのは、あなた方がそれを打開する能力がないからですよ。むしろリベラルの方が言論の自由を奪っている。騒ぐだけなら誰でもできるんですよ。
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第二章 文化芸術の自由は誰のためにあるのか
から読み始めました
「芸術」の周辺にいらっしゃる
人たちの 肌感覚による発言が
そのままストレートに伝わってきます
いつの世でも
どの国でも
「弾圧」「排除」は
ピンポイントで行われる
危うい この国では
よほど意識しておかなければ
いつのまにやら 加害者側に取り残されている
ことになってしまうことが多いように思う
本書を(肯定的に)読んでいる人たちとは
どこかで しっかり つながっておきたい
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まず著者群の面子を見て、少なくとも既知の名前において、それぞれの発信することばを追いかけている人が多いことを確認。演繹的に、その他の著者についても、かけ離れた立場にはないであろうと判断。あわよくば、今後の人生指針になり得る存在と出会えることも期待。前置き長いけど、そんな考えの下、発売前から気にかけていた本書。日本学術会議任命拒否問題についても、どこかでちゃんと読まなきゃと思っていたけど、その欲求も本書で満たされた。中曽根時代から綿々と受け継がれて今に至るってのも、何とも根深くて嫌な感じ。そのあたりまで遡って、ちゃんと勉強しなきゃ。あとは、己でさえままならない自由の取り扱いを、更に次世代に伝えることの困難も、改めて実感。自分も不断の努力を続けることにしか、それに対する答えはないですわな。
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今から3年前2019年、当時の首相による日本学術会議の会員任命拒否問題は、政府による自由・学術・教育に対する介入であると大変な危機感をつのらせることになった出来事でしたが、自分の周りでこの件について同じようなことを考えていたり意見を交換したりということがあったのは、小学校教員である友人ただ一人との間でした。
そこにあるものの不穏さを感じ取った人が自分の周りにはあまりにも少なかった、と思います。
それから現在までを振り返ってみるとたった3年の間に自由というものがとても堅苦しく緊張の伴うものになってしまっており今なお進行形であると感じます。
気づいたら周りから固められてて自分は奇特な意見を述べる少数派になってる…という状況がたまに起きるようになり、うかうかと思ってることを言いづらくなりました。(例えばマイナンバーカードを持つことについてとか…)
組織の中でできる活動として、教育に関するおかしな介入や締め付けに抵抗している友人の姿を目の当たりにすると、自分も黙っていてはいけないと思うものの一個人でどんな風に「おかしいぞ!」とか「ふざけたことしてんじゃないよ」と世の中に問えばいいのか、問えるのかと無力感が正直あります。
大きな声を発することができなくても、周りがみんな朱くなっても自分が白だと思ったら白という意見を曲げない強さをせめて維持し続けたいと思います。
本書は、これからまた数年過ぎたところから本書が著された当時を振り返る、そしてその時の現実・現状を見直すという、考え続けるための一つの標となる一冊だと思います。
編集部によるあとがきにも勇気をもらいました。今後もこのような良書を出版し続けてほしいです。
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まず、いまの総理大臣の名前がどうしても読めない。何度も、まえがきのふりがなを確認している。本書には入っていない中島岳志さんからの情報で、首相の人となりについてはある程度知っていた。だから、日本学術会議については、やはりそういうことをするのかと思った。本書を読んで驚いたのは、そのことを大して問題であると思っていない一般市民が多いということ。原発の事故のときもそうだった。その危険性は誰でも知っているものと思っていたら、そうでもなかった。自分の感覚は少しずれているのかもしれない(良い方にであると信じているが)。SNSでだれをフォローしているかで、入ってくる情報が全然違ってくるわけだから、まあ、ずれるのは仕方ない。本書には26人の方の考えが集められているのだけれど、まあ、それほど大きくずれた考えがあるわけではない。ただ、海外に住んでいて(現在あるいは過去に)その海外の状況が良くて日本は良くないという発言がいくつかあった。そこはなんかちょっと違うような気がしている。民主主義が遅れているとか、未熟であるとか、それはそうかもしれないが、それで何とかなっているのは日本だからとも言える。私の中にはどうにもこうにも梅棹理論があって、ヨーロッパも日本も平行進化をしてきたという思いがある。だから、明治維新以降、日本が西洋を追いかけてきたという書き方がされていると、それは違うんじゃないかと思ってしまう。で、堤未果さんの著書は読まずじまいなのだが、1人だけ、ドイツやアメリカの状況を良いものとはとらえていなかった。なるほど、それはそうだろうなあと思えた。まあ、どこにいても、文句を言う人間はいる。どこにいても、現状を受け入れる人もいる。いろいろいてまあいいのだろうか。内田先生は最後にひとりなんだか違う本のようだったけれど、まあ勉強にはなった。(橋爪・大澤「アメリカ」にそんなこと書いてあったかな。わりとちゃんと読んだのにな。)自由と平等を両立させるには、いろいろと折り合いをつけないといけないのだろうなあ。でも、それが実現できていた社会が古代ギリシャにあったと柄谷さんの本で読んだような気もする・・・。それから、やまとことばには自由に該当することばがなかったとのこと。そういう観念が江戸時代まではなかったと。それは不自由でなかったからではないのかな。というか、あきらめなのか、そういうものだと考えていたのだろうか。自然災害が多い日本は、他の国に比べれば、起こったことをそのまま受け入れるという心の持ち方をしている人は多いのだろうなあ。それって、遺伝するものなのかあ?
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初めて読む方の文章が新鮮で特に印象に残った。山田和樹さん、永井愛さん等。既によく読んでいる方の名前につられて本を手に取り、新しい方のご研究などに興味が広がっていくのがうれしい。
この本を読んで逆に「自由」という言葉を簡単に定義し使うことが難しくなったが。
自由を手放したくないし、奪われそうなら戦う!新たな自由をつかみ取りたい!そして次の世代に手渡したい。
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一部ネットで嫌われてそうな論客たちからのメッセージ集。みなさん、日本から少しずつ自由が奪われていると危惧している。
ある一面の行動・発言が切り取られて批判されることが多い方々だが、その考えに直に触れると、国の在り方や自由について真剣に考えているのが分かる。
例えば表現の不自由展に携わった津田大介氏。近年、アートの世界では政権の意向に沿った展示しかできなくなってきたと言う。意向に反せば、補助金が下りないなど不自由を強いられるそうだ。
詳しく知らないが、おそらく、この展示は慰安婦像などを展示するのが目的ではなく、賛否両論のものを公の場で示すこと自体が目的だったのではないか。こうした国の動きに対する挑戦というか。
個人的には反日思想の展示など不愉快だし、する必要はないと思うが、一方で表現に規制がかかる危うさには怖さを感じる。こうした規制を許せば今後、反日的なものでなくとも、政府や権力者が、言論や表現に制約をかけられる世界になっていくわけだから。
アートの世界だけでなく、科学技術なども国の意向に沿わなければ補助金がなくなり、活動できなくなってしまう模様だ。それは果たして国民にとって健全な、豊かなことなのだろうか。賛否両論のものに対して全員が自由に発言できる世界、何事にも反対意見を出して議論できる社会、多面的に物事を考えられる世の中、そうしたものを守らなければ。などと思いました。
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26名による日本学術会議任命拒否問題に端を発した、自由への権力の介入に関しての論考集。息苦しさの正体にはさまざまな形での!自由を禁じようとする動きがあったことに改めて気がつく。
それぞれの立場で見た自由への介入は、幅広いものがあり、私たちの生活がじょじょに狭められてきていることが分かる。
誰かの問題なのではなく、自分の問題として、さまざまなやり口で介入しようとしてくる権力にはNOを突きつけたい。
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「知る」ことで「知らない」では感じられなかった物事が立体的に色彩を持って立ち上がってくる。
ニュースを見て感想を抱くだけといった姿勢では流れに逆らうことはできないが、思考し行動することは人を新たな場所へ連れて行ってくれる。
本書では各分野の著名人が各々の視点から考えを述べており、他人の視点、思考、背景等を感じながら読み進められるという点で対話的な(厳密には違うが)一冊になっている。
自由を重んじる立場の方々の考えに多く触れることができて心地良さすら覚えるが、逆に反論する立場の人の意見にも触れたい気持ちになった。
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忖度か、同調圧力か、権力の逸脱か。最近、表現の自由が失われつつある風潮がある。26人の研究者、作家、芸術家、ジャーナリストが自由について考察し、声をあげる。