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大恐慌後から1960年代までの「組織の時代」,1970年代から2000年代後半(大不況)までの「取引の時代」,それ以降の「ネットワークの時代」。それぞれの時代を代表する人物として,アドルフ・バーリ,マイケル・ジェンセン,リード・ホフマンが取り上げられ,彼らの経歴や考えとともに,それぞれの時代が説明された。
それぞれの時代の概要は次のような感じ。力を持った大企業を大きな政府がいかにコントロールするかが重視された「組織の時代」。企業の所有者である株主の力を取り戻し,株主の意向が最も良く反映されるのは市場であるという認識の「取引の時代」。インターネットのつながりにより新興企業がイノベーションを起こし大企業を中心とした資本主義を壊していく「ネットワークの時代」。
本書の最後では,上記のように変遷してきたアメリカが取りうる(取りえた)別の選択肢が提示される。それが多元主義。アーサー・ベントリーという社会学者が取り上げられた。人間は必ずグループを形成するという原理から,複数の利益者集団が権利を分散する形が理想型という主張。しかし,ベントリーの主張は1960年代には忘れ去られた。
現在,「ネットワークの時代」と位置付けられており,GAFAやマイクロソフトといった巨大IT企業が市場で力を持っている。そうした中で,著者が期待を寄せる多元主義,複数の利益団体による権力の分散が実現できるかどうか,そのあたりが気になる。
「組織」「取引」「ネットワーク」でアメリカ経済史を振り返る著者の発想がすごいと思った。また,サイドストーリーとして,時代の変化に振り回されたシカゴのシカゴローン地区の住民たち(中間層)の生活の話が所々に入れられていた。個人的にはそういう話をもっと読みたかった。