紙の本
終結への道
2022/08/08 17:41
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投稿者:かずさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦争・紛争はどのようにして終結して行ったかを終結の論理面と20世紀に起きた戦争の終結過程を歴史的事実に沿って述べている。戦争の「根本的解決」と「妥協的和平」の均衡点や犠牲の大小。軍事的優位性・劣勢、国内外の情勢の影響。と単に武力だけで終結が決まるとは限らない。当事者間の政治的判断も大きな要素。太平洋戦争時のアメリカと日本の終結交渉はやはり興味深かった。ウクライナとロシアの戦いもどの様な終結を迎えるのか。日本の安全保障にも影響があると思う。
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的確な文章(教科書的?)
2021/09/06 02:03
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投稿者:広島の中日ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
第一・第二世界大戦や朝鮮戦争など、過去に起こった戦争をいくつか振り返り、それぞれの戦争がどう集結したのかを的確かつ冷静な目で著者がまとめた1冊です。
文章に重みを感じます。少々文章が固い感があり、「これって高校世界史の教科書?」と錯覚する著書かもしれません。
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優勢勢力側の「将来の危険」と「現在の犠牲」をめぐるシーソーゲームを通じ、戦争終結形態は「紛争原因の根本的解決」と「妥協的和平」のジレンマのなかで決まるという切り口で、20世紀以降の第一次世界大戦からイラク戦争までの戦争終結過程を分析。
いかに戦争を防ぐかではなく、始まってしまった戦争をいかに収拾するかという本書の観点は新鮮であり、「紛争原因の根本的解決と妥協的和平のジレンマ」という観点にも説得力があった。取り上げられている各戦争がどうやって終結したかということについても、よくわかっていないことが多かったので、勉強になった。
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『どくとるマンボウ航海記』前夜、白い巨塔の片隅で怪気炎を上げるマンボウ氏の新人医師時代。新たに武田泰淳との対談「文学と狂気」を増補。〈解説〉なだいなだ
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"戦争は始めるのは簡単だが、終わらせるのは極めて難しい" 古代ローマの歴史家サルスティウスの『ユグルタ戦争』である登場人物の言として記されているものだが、同じような言葉は最近良く用いられている。
本書は、戦争の終結に焦点を当てた研究で、著者の依拠する分析枠組みに基づき、具体の戦争について論じたものである。
その枠組みとは、『紛争原因の根本的解決と妥協的和平のジレンマ」というもので、優勢な側が「現在の犠牲の低減」と「将来の危険の除去」のいずれを重視するかによって、戦争終結の形態が変わってくるというものである。
そして、20世紀の戦争を題材として、終結に至る当事国の動き、相互反応等の史実を具体的に描いた上で、まとめ的な考察が示される。
選ばれた戦争は、次のとおり。
1 第一次世界大戦
2 第二次世界大戦の対イタリア、ドイツ
3 第二次世界大戦の対日本
4 朝鮮戦争
5 ベトナム戦争
6 湾岸戦争、アフガニスタン戦争、イラク戦争
これまでも、個々の史実としては知っていたことが多いのだが、各当事国の意思形成過程が具体的に記述され、また味方国同士の間での利害対立、相手国の意思表示を受けての誤解や楽観視など、生々しく記述がされている。
本書の分析では、戦争を終結させ得る優勢な側から捉えている訳だが、相手あってのことなので当然敗者の側にも焦点が当てられる。日本に係る戦争終結の章は、後付けかもしれないが、読んでいてやるせない気持ちで一杯になった。情勢に対する誤解、誤読、"損切り"する勇気のなさ。戦争は極限的な状況かもしれないが、国家として、果たして大丈夫と言えるだろうか。
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・戦争終結の基本的理念は「出口戦略」。いかにして終わらせるか。
・戦争当事者の抱える「将来の危険」と「現在の犠牲」のバランスをどうとるかとそのジレンマ。
これらのことにより、優勢勢力も劣勢勢力も、得られるものや失われるものが異なってくる。
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二十世紀の戦争の戦争終結を「紛争原因の根本的解決」と「妥協的和平」を両極に置き分析する。
根本的解決をしたからと言って戦後長く平和が保たれる訳ではない所が難しい。第一次世界大戦ではドイツへの過度とも言える懲罰がやがてナチスの台頭に繋がる。
一方、妥協的和平であったとしてもベトナム戦争の様に戦場となった国家が安定と成長を成し遂げる場合もある。アメリカが一方的に蹂躙し退却した余りに不条理な戦争ではあるが。
後は李承晩の頑迷さ。
出版後の事ではあるが、今のアフガニスタン情勢の変化について著書の考えを聞いて見たい。根本的解決をしたはずだがアメリカが撤退すると瞬く間にタリバンが政権を奪回した。国際政治の主導グループにイスラムがいない事によるゆがみなのか。
パルネット 本と珈琲 ベルマージュ堺店にて購入。
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「将来の危険」と「現在の犠牲」を検討しつつ、戦争終結形態へと落着する。それが「根本的解決」になるのか「妥協的解決」になるのかは検討過程がどちらに寄ったものであったかで決まる。
2度の世界大戦、朝鮮・ベトナム・湾岸・アフガニスタン戦争から戦争の終結過程を分析する。鋭い分析に「なるほど」と思いつつ、国家間戦争はもう生じないであろう今後の紛争解決は、さらに難しくなっているよね。
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結論から言うと「戦争遂行能力の高い側」が出口を考えないと戦争は終わらないということ。2022年8月現在のウクライナ侵攻では、やはり集結へのイニシアティブは、残念な事実として、ロシアにあるという現実。理念よりもリアリズムの大切さを学んだ。
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「戦争なんてしなければいいのに」と感情的に考えてしまうが、
現場では何を考えているのか知ることができる良書。
以下読書メモ。
戦争がいかに終結するのかは
「紛争原因の根本的解決と妥協的和平のジレンマ」という視点から考えられる。
それは、優勢勢力側が「将来の危険」と「現在の犠牲」のどちらをより重視するかで決まる。
「紛争原因の根本的解決」の極に近いのが、
両世界大戦、アフガニスタン戦争、イラク戦争。
「将来の危険」の方が大きいと考えられたから。
「妥協的和平」の極に近いのが
朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争。
「現在の犠牲」が多大となることを恐れたから。
劣勢勢力側は、自分達が守ろうとしている価値が犠牲に見合うものなのかの判断が必要。パワーバランスを変える可能性が乏しいなら、損切りを選択する勇気も必要。
日本の安保のことにも言及がなされている。
日米同盟側が優勢で「将来の危険」が極めて大きいなら相手政府の打倒が追求されるが、自衛隊の専守防衛の原則から外れないか。
「将来の危険」にとらわれ「現在の犠牲」が大きくなる子はないか。
日米で認識がズレたらどうなるのか。
日米側が劣勢なら、パワーバランスを変化させるのか、損切りによって収拾させるかの決断が必要になる。
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22/06/19
戦況がずっと流れているのも滅入るが、戦況の把握は必要だということが悲しくもよくわかる
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終戦休戦停戦の事例がまとまっているのは良かった。将来の危険と現在の犠牲のトレードオフという切り口なのだが、そこへの肉付けがもっと先があるのかな
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ロシアの一方的なウクライナへの侵略を機に読んでみた。紛争原因の根本的解決と妥協的和平のジレンマという視点は新鮮だった。ウクライナ紛争の例で言えば、どちらも将来の危険が大きすぎて停戦合意は容易でないことが予想できる。
ただ今一つ納得感がないのはどうしてだろう。何というか、こういった打算的な計算だけで戦争の成り行きが決まるとも思えない。戦争には大義が必要であり、もちろん当事国双方ともに彼らなりの大義があるのだが、国際社会からみてどちらに理があるのかで戦争の終わり方も変わってくるように思う。
このあたりを先行研究を含めてもう少し丁寧に解説してほしかった。
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戦争はいかに終結するのかという問いに対し、紛争原因の根本的解決と妥協的和平のジレンマという視角が提示されている。すなわち、将来の危険と現在の犠牲とのトレードオフの中で、均衡的に戦争終結の形が決まるというものである。この観点から過去の6つの戦争を整理し、戦争終結の統一的な理解を試みている。問い立て自体が面白いし、緻密な事例の整理と分析により、パワーのみが戦争終結の形を決めるわけではないことなど、得られている示唆も興味深い。
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中央公論「目利き49人が選ぶ2021年に私のオススメ選書」20224掲載 評者:鈴木一人(東大公共政策大学院教授,国際政治経済学,中東問題)