紙の本
文化人類学っておもしろい
2021/07/26 16:55
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:dsukesan - この投稿者のレビュー一覧を見る
ポッドキャストを元にした対談集なので、とても読み易いけど、内容は濃くて面白い!
文化人類学の物の見方も概要が分かり、かつ仕事や人間に対する見方を崩してくれる良書。これだけ、枠組みが違う世界があるということを知れて、ホッとするとともに嬉しさが込み上げてくる。文化人類学って、固定観念や規範を打ち破り、豊穣な世界を知り享受して、自分も楽になれる、新たな価値創造にも寄与する知的活動なのかもと思った。言葉が合っているかが分からないけれども、反骨とアナキズムに繋がるフラットな視座と思考に繋がるのかもしれない。そうして揺れながら見る見方の先に地域通貨やら、コミュニティやら、社会保障、セイフティネットのデザインといった社会のあり方、生き方、サステナビリティにつながる話も出て来るから面白い。
本当、ニマニマの止まらぬ読書体験。それは、自分の社会にある規範だけが絶対じゃ無いというところに、自由と笑があるアホになれるゆとりを感じられて安心を感じたからだと思う。
其れにしても、自分はこうした多様性の話が好きだと言うのに、他方で武士道とかそういうものも大好きでこだわっていて、ともすると他人に押し付けがちな自分とは何なのだろうと、大いに自己矛盾を感じたりもした。
続編もポッドキャストで企画されている様なので、聞いてみつつ、続刊が出たら購入したい。
以下、この本を読んで面白いと思った事柄をメモする。
・不確実な社会、環境、人間観に対して、自主自律しつつ繋がる人間関係が気持ち良い。『胃が違う』として、相手が自分の思い通りにならないことを仕方ないと受け入れつつ、関係は切れないという関係性は理想的。
・現代資本主義経済下での専門性の特化に対する『一つのことをする奴ら』という揶揄には、自分にも刺さり面白い。
・ルールを決めて、皆んなで守るのではなく、裏切られることも含めて都度判断していくバイタリティ。
・ルールに縛られることが少なさそうな社会を構成しているブッシュマンの自然資源コモンズの管理は、どの様にサステナブルなのか、調べてみたい。マタギとか、ネイティブ・アメリカンの様な狩における信仰などの形での保全ルールは無いのか?
・価値観や規範を他者と比較して、相対化することが文化人類学の醍醐味の一つと知る。この相対化というのは、南直哉の本で書かれていた、視野狭窄を避ける言う仏道の効用にも繋がると思った。
・確実性を前提とすると、努力が一貫して積み上がる右肩上がりの成長モデルが出来上がり、アカウンタビリティーと一貫性が重要視されて、それが保たれずに脱落すると死んでしまうというのは過酷で、日本社会にはそうした過酷さがあるということ。
・文化人類学の手法 エスノグラフィとデザイン思考が相性が良く、ビジネスや行政でも使えるとのこと。不確実な中で手探りでプロジェクトを進める手法として紹介されており、是非身につけたい。
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なかなかに刺激的な「読み物」でした(内容はポッドキャストの文字起こしですが)。主に働くこと、生活すること、生きることに、新たな視点が得られるかと。なるほど、そういう見方もあるね、というレベルではなく、私らの西洋的価値観(しかも日本は中途半端なそれ)ってはて?と根本的に考えるきっかけになりそう。
ただ巻頭の対談はあまりに唐突な内容で、巻末につけた方がよくないか?と思った次第。
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なんか別の地域の人を知ることで新しい知見を得るというよりは、昔のステレオタイプの日本人はそういう考え方してるのかという方が私にはなるほどねーって感じる部分が少なくなかった
おま環の思い込みが激しい人が学ぶほど、コントラストがくっきり浮かび上がってていいのかもしれない
あと向こうから見る日本も参考になる
巻頭対談には共感
葬式とか親族とかのほうが公って感覚ちょっとわかるなぁ
なんでもしみんながそうなっちゃったらみたいな100-0思考が生まれるんだろう?という風に思ってたけど、そうじゃなくて、新しいことが来たら古いことはやめるものだという思考があるんだなと知った
ブッシュマンのほうに結構共感するな、日本人だけど。
私たちって日本人の意見だとくくらないでほしいわwこれが数年前の本だとはw
それでもそんな人たちがここまで考え方を改めざるをえなくなっていると考えれば、すごいことだし希望が生まれる
ページ数が下部の内側にあるの気持ち悪いw
空気や水がないと生きていけないことに、ばかみたいな話という前置きがつくことが不思議だ
AIやロボットをハードウェアやプログラムと考えたうえで人間に類似した存在って見なす感覚が全くわからなかった
AIやロボをハードウェアやプログラムと見ていないとか、人間の活動の一部分だけを切り取って見てるのだとか、そういうのはわかるし、ドラえもんが実際にいるのならわからなくはないけど
AIと人類学以降は知らない歴史もあったりして考えさせられました
レシピが変わったことなんてほとんど忘れて意識していないと言うけど、こっちはレシピがエッセイのようなものだったことを見たことないから知らないわけで、やっぱり記録を残すことって大事だなって思う。今ある文化は歴史の積み重ねだっていう
家庭料理で裏ごししたい人はしてるから自由じゃないの?選ぶべきって言い方が不自由にさせてるだけで、丁寧に料理を作るもよし、めんどくさいなら省略するもよし。主食を迷うなら主食がなくたっていい。
揚げ物は油の後処理がめんどいから揚げ焼きにデザインされてった話じゃないの?
OLにそんな歴史があるんだなぁ
ブラック企業ってブラックリスト企業なんだ
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読書会に向けてKindleで読了
ひとつのことをする奴らとか公と私が逆転とか
働くことの価値観がとても揺らぐ経験ができる本
他にもガスが浸透してレシピができたとか
自動販売機がロボットと呼ばれていたとか
へーと思うことがたくさん
久しぶりにKindleで活字を読んだが
Kindleだと気になるところに
付箋?をマークしていける
気になるところがたくさんで
Kindle向きの本
ときどき読み返して価値観を揺らがせたい
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ポッドキャストを元にした対談集なので、とても読み易いけど、内容は濃くて面白い!
文化人類学の物の見方も概要が分かり、かつ仕事や人間に対する見方を崩してくれる良書。これだけ、枠組みが違う世界があるということを知れて、ホッとするとともに嬉しさが込み上げてくる。文化人類学って、固定観念や規範を打ち破り、豊穣な世界を知り享受して、自分も楽になれる、新たな価値創造にも寄与する知的活動なのかもと思った。言葉が合っているかが分からないけれども、反骨とアナキズムに繋がるフラットな視座と思考に繋がるのかもしれない。そうして揺れながら見る見方の先に地域通貨やら、コミュニティやら、社会保障、セイフティネットのデザインといった社会のあり方、生き方、サステナビリティにつながる話も出て来るから面白い。
本当、ニマニマの止まらぬ読書体験。それは、自分の社会にある規範だけが絶対じゃ無いというところに、自由と笑があるアホになれるゆとりを感じられて安心を感じたからだと思う。
其れにしても、自分はこうした多様性の話が好きだと言うのに、他方で武士道とかそういうものも大好きでこだわっていて、ともすると他人に押し付けがちな自分とは何なのだろうと、大いに自己矛盾を感じたりもした。
続編もポッドキャストで企画されている様なので、聞いてみつつ、続刊が出たら購入したい。
以下、この本を読んで面白いと思った事柄をメモする。
・不確実な社会、環境、人間観に対して、自主自律しつつ繋がる人間関係が気持ち良い。『胃が違う』として、相手が自分の思い通りにならないことを仕方ないと受け入れつつ、関係は切れないという関係性は理想的。
・現代資本主義経済下での専門性の特化に対する『一つのことをする奴ら』という揶揄には、自分にも刺さり面白い。
・ルールを決めて、皆んなで守るのではなく、裏切られることも含めて都度判断していくバイタリティ。
・ルールに縛られることが少なさそうな社会を構成しているブッシュマンの自然資源コモンズの管理は、どの様にサステナブルなのか、調べてみたい。マタギとか、ネイティブ・アメリカンの様な狩における信仰などの形での保全ルールは無いのか?
・価値観や規範を他者と比較して、相対化することが文化人類学の醍醐味の一つと知る。この相対化というのは、南直哉の本で書かれていた、視野狭窄を避ける言う仏道の効用にも繋がると思った。
・確実性を前提とすると、努力が一貫して積み上がる右肩上がりの成長モデルが出来上がり、アカウンタビリティーと一貫性が重要視されて、それが保たれずに脱落すると死んでしまうというのは過酷で、日本社会にはそうした過酷さがあるということ。
・文化人類学の手法 エスノグラフィとデザイン思考が相性が良く、ビジネスや行政でも使えるとのこと。不確実な中で手探りでプロジェクトを進める手法として紹介されており、是非身につけたい。
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面白かった〜〜!!!!!
元がポッドキャストということもあって、比較的平易な言葉で様々な民族の文化を垣間見ることができました。人類学という分野に本格的に興味が湧いてきて、巻末の選書リストなど端から登録してしまった。中には既に持っている本や既読の本もあって、自分の興味はもともとこういった分野だったのかという気づきもありました。
人類学者の皆さまが繰り返し述べていましたが、我々とは全く違う環境に住まう人々の文化は、私たちが当たり前のものと認識し、故にその枠組みの中で窮屈な苦しい思いをすることも多々ある"常識"や"価値観"が根本から揺らいで、そもそもなぜこれは当たり前なのか?なぜそれが正しいとされているのか?というラディカルな疑問を抱かせてくれます。
「普通に考えて」「普通の感覚だったら」とか、よく職場で聞きますが、そういう「普通」に対して疑念を抱くことなく隷属し、「普通」からずれた考えや行動を自身と切り離して蔑視する態度には慣れたくないですね。そして、それを強要するよう集団からは距離を取りたいですね。
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対談本。内容自体は『「その日暮らし」の人類学』と『うしろめたさの人類学』を合わせた感じだが、「働く」ということに焦点を当てている。対談本は少し読む気が失せるが、読み始めたらスルスル読めた。自分が今いる世界が絶対だと思いこんで、悶々としてしまうことが時々あるが、人類学の本はそこを揉み解してくれる。
単純に日本社会はだめでXXXの社会は良い、という話にはならない。お金とは違う尺度があるのは良いと思う。しかし貝殻を沢山集めて配ったりする人が尊敬され、そうでない人は「シンプルマン」と呼ばれてバカにされたりする話が出てきたけど、私は多分シンプルマンだ。しんどい。どの社会にも固有の生き辛さがあるのだと改めて思った。
ここ数年、釣った魚や野草を採って食べたり、潮干狩りしたりといったことをやっているが、第2話の「ひとつのことをするやつら」には重なる部分を感じた。もちろんこれで生活することは不可能で、趣味としてやっている。しかし、生活の一部だけ狩猟採集に依存している点で、賃金労働と狩猟採集を並列に置くブッシュマンと大差ないと言えるかもしれない。こんなところに共通点を見出すとは思わなかった。
個人の考えや意思を大切にする人達の話も出てきて意外に感じた。近代的価値観から離れた世界では、個人に対する社会圧力が大きいのではないかと勝手に想像していた。「胃が違う」という言葉で個々人の違いを受け入れる話があったが、「なんかやる気しない」とか「めんどくさい」の、社会に通用する定型の言い訳があるのはいいことだ。近代社会では言い訳を自分で臨機応変に考えなければならいのでめんどくさい。かつては「天狗のしわざじゃ!」とでも言っておけば済んだのに。今は「低気圧のせいで体調が・・・」くらいがせいぜいだ。
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パプアニューギニア、エチオピア、香港、フランス等でフィールドワークしている人類学者達と仕事と自由を巡った対談集。
不安定な社会や立場にある人々が明日はどうなるか分からないことを前提に、どのように生きていくのかが様々な事例を引き合いに出して、その行動、発言等から、民族ごとの価値観や日本人との違い等の話が展開される。
ここで語られるどの地域や民族であっても、助け合いのコミュニティがあり、なんとかしていく知恵や工夫、そしてもっと自由に生きている人々の姿が描き出されている。
ただ、ここで語られている人々は、明日がどうなるか分からない不安定さがあるから、他人にも頼るし、時に騙すこともあるようで。
この社会で自分が生きるのは大変そうと思うが、ルールを守り、相手を信頼できる社会にいるせいか。でも、時にしんどい時は、不義理したくもなるけど、それは息苦しくもなる。
日本はきっちりとした制度やルール、サービスがあり、それを活用できれば、他人に頼らなくても生きていけるようになっている。だが、それは、ひどく孤立し、コミュニティから切り離された状態が作られているのではないかと考えさせられた。
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・仕事→プライベート、共同体や家庭→パブリック という考え方
(パプアニューギニア トーライの貝殻貨幣"タブ")
・ルールが決まっていない、狩猟採集もするし賃金労働もする、その場その場での揺れ動く民主主義(相手が子供であってもやりたい、やりたくないの意思が尊重される)
(アフリカ カラハリ砂漠のブッシュマン)
・「市場は小さな者たちの自由を保障してくれる制度である」→平等性
・共助のネットワークへの信頼感→リスクを取ることができる自由
(モン族)
・「仕事」→仕事だかよくわからないものも含む(棋士の例)→AIには単純には代替できない
・仕事も遊びのように→遊びも仕事のようになってくる、余暇が納得感のあるもの・他人に評価されるものになってくる
(小アジのムニエル)
・研究対象の客観的記述は不可能、『自分が異質な存在として入ることで起きる出来事を介して、相手の行動の背後にあるものを理解しようとする』
・ビジネス文脈における「文化人類学」→『市場の見方や先入観そのものをリフレーム』
・ルールを守ることをやめる→ルールを守らない人を許す社会をつくる
・働く→社会関係を広げるため
・「一貫性」が重要な社会→「『過去の自分がこれまで努力してきたんだからいまさらやめられない」』⇄ブッシュマンの不確実性
(トークセッション)
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文化人類学者が語る、それぞれのフィールドで体験した、世界中の知られざる人びとのさまざまな「働き方」。それは、わたしたちが知っている「働き方」となんて違っているのだろう!それは逆に、私たちの働き方を照らし、「わたしたちはなんて不自由な働き方をしているのだろう。」と気付かされます。すべての働く人に読んでほしい一冊です。
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ポッドキャストの文字起こしらしい。確かにそんな雰囲気がある。
働き方について対談形式に語られているのをまとめている。読みやすくついつい枠に囚われて考えてしまう。「普通」から逃れられなくなったときこの本を読むとリセットできるかも。
読みやすかったけどまた時間が経った時再読したらより感化される気がした。
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働くことの意味や自分の知らない働き方を知りたくて読んでみた 仕事を「公」ではなく「私」的な活動と捉えるトーライの人々、対等な関係を築くためにあえて約束や責任を100%果たさないというタンザニア商人の考え方や誰もが複数の仕事をするブッシュマン。全て過去の歴史ではなく現代の話というのに驚いた。
日本でもアメリカ的な自己責任論の色がどんどん濃くなっている気がする。人生の責任は個人にあり各々がスキルを高めるなり計画的に貯蓄することが大事。より多くお金を稼ぐ人がすごいとされている。でも世界を見ると現代でも共同体に属す人が助け合って生きていて、子供を育てることや老人の面倒を見ること周囲の人を助けている共同体へ貢献することが偉いという考えの人がたくさんいるのだと学んだ。