投稿元:
レビューを見る
東ドイツ出身、敬虔なキリスト教、女性、科学者としてのキャリアといった多彩なルーツは、メルケルの人格形成に大きく寄与しており、政治家としてのあり方や実際の政策にも大きく影響している。中でも東ドイツ出身であること、牧師の父の存在は中でも大きい。
著者はかなりメルケル寄りということで、ある程度バイアスがかかっていることは注意が必要。ただ彼女はフランス出身のジャーナリストという背景から、違った視点もあって読み応えがある。
投稿元:
レビューを見る
面白かった。
最近、眼のために、あえて時間を区切って読んでいたら、
読了の今朝、メルケルの後任が決まる、ドイツの総選挙の
見通しが報道されていた。
案の定、どの政党も、過半数に足らず、
連立政権への道を模索することになるだろうと。
政治的問題に疎く、さしたる関心も無いのだが、
本書、フランス人女性ジャーナリストの書く評伝を通し、この16年の西側情勢を再び見た思いでいる。
メルケルという東ドイツの物理学者であった、国家元首と掃除する人物として、著者は英国エリザベス女王を挙げる。「揺るぎない存在感」「モラルと政治のよりどころ」「統一と安定とミン主義の保証人の二人」と。
そこに、メルケル長期政権の所以があるのだろう。
「50年後の歴史書に、どう書かれたいか?」の問いに「彼女は労をいとわなかった」と答えたというメルケル。
それが全てだ。
投稿元:
レビューを見る
“「私は虚栄心の強い方ではありません。男性の虚栄心を利用するのがうまいのです」”(p.160)
“アンゲラ・メルケルは身なりに構うことには心底うんざりしている。(中略)メルケルはファッション誌をぱらぱらめくったり、きれいな服の女性を見たりするのは好きだが、わが身に生かそうとは思わないのだ。ある雑誌のカメラマンに、「十年前に撮影した時と同じデザインの服を着ていらっしゃいますね」と言われたので、「私はドイツ国民に尽くすために選ばれたので、モデルになるためではありません!」と答えたものである。”(p.172)
投稿元:
レビューを見る
なぜ彼女は国民の、そして世界のMutti(母)にまでなったのか?
題名:C'était Merkel
訳:それはメルケルだった
1954年当時の西ドイツ、ハンブルクにて生まれその後東ドイツに移住。61年にベルリンの壁がつくられ、多感な少女時代を冷戦真っ只中のドイツで過ごした。
また、首相となっても庶民に交じり庶民と同じように買い物をし、特別豪華な場所で暮らすのではなく普通の生活をおくり、国民のMutti(母)と呼ばれるようになった。
その彼女の生まれから政界引退までの半生を、彼女ゆかりの人物達のインタビューをもとに語っていく。
この本の著者が同じドイツ人のジャーナリストではなく、フランス・パリ生まれのジャーナリストがであることにも意味があると思う。
読んでいくと、彼女が引退するのを惜しむ各国の首相や要人たちの言葉がたくさん出てくる。
それほどに彼女は自国の国民だけでなく、他国からも信頼、愛されていたのだとわかる。
2011年のG20の会期中にあったユーロ危機の話題に関して、オバマに詰め寄られたりその他の首相や国民から非難されようとも、銀行の独立性のため憲法を遵守しようとする、そんな彼女の政治的価値観は、冷戦という激動の時代、特にその中心であるドイツで過ごしたことが大きいだろう。
何よりも国民のことを第一に考え冷静、慎重である彼女。時にはそれを緩慢だと言われたりもするが、東京震災後すぐに自国の原子力発電を廃止するなど迅速な面もある。
また、苦悩も書かれている。メルケルは最初バラク・オバマのことが好きではなかったことや、トランプ大統領就任、その後の政策に対して。フランスとフランスの4人の大統領、ロシア、プーチン大統領との関係。その他いろいろ・・・そんな裏話的なこともわかるのは面白い。
特にオバマに関してはホワイトハウスを去る前にわざわざベルリンにメルケルを訪ねてメッセージを残したのだそう。
裏話といえばメルケルという性は元夫(一人目)の性であり、現夫の性は「ザウアー」とのこと。
そんな事情を知らなかった人は間違えて夫のザウアーにたいしてメルケルと呼んでしまうという面白エピソードも書かれている。
そんな自国民だけでなく世界から愛されていた彼女が引退してしまった今後、世界はどうなっていくのだろうか。
投稿元:
レビューを見る
物理学者だった彼女が、政治家を志した過程は今少しよくわからなかったけど、頭脳明晰で、誰もが一目置く存在であることや、私利私欲とは無縁であることがよくわかった。決して万能の人ではないが、目の前のことに誠実に取り組む姿勢は真似しようと思えば出来ること。これからはその挙動が注目されることもないのだろうが、心ゆくまでやりたいことを楽しんでいただきたい。
投稿元:
レビューを見る
16年間の長きにわたってドイツの首相を務め、昨年政界を引退したメルケルさんの評伝本。 著者はフランスのジャーナリスト。
メルケルさんは東ドイツに生まれ、物理学者への道を歩んでいたが、ベルリンの壁崩壊後のドイツ統合を機に政治を目指す。 物理学者らしい論理的な思考と、人間関係の抜群の調整力で頭角を現し2006年に首相になる。 任期16年の間には、リーマンショックや原発問題、ギリシャ危機、移民問題、ポピュリズムの台頭など様々な問題があったが、うまく乗り切り任期を全うする。東ドイツ出身の女性で離婚経験有り等、自由主義社会の政治家から見ると大きなハンデと思われたが、彼女はそれを利点として考えていたように見える。 決断の遅さがウィークポイントだが、逆にそれが良かったこともある。彼女の一貫した政治姿勢が信頼を得ているのだろう。 メルケルさんについてはほとんど知らなかったけれど、この本を読んで、イギリスのサッチャー首相と並ぶ素晴らしい女性政治家だと思った。
ちなみに彼女が首相の間に、日本では小泉首相から岸田首相まで8人も政治家が変わった。 長かった故安倍首相でも任期は9年。 その2倍近くの長きにわたって首相であり、また任期途中で投げ出すこともなかった。 メルケルさんに比べると、日本の政治家はともかく、アメリカの大統領でさえも小粒な政治家に見えてしまった。
投稿元:
レビューを見る
16年間ドイツを率いてきたアンゲラ・メルケルの評伝。ギリシャ危機、英国のEU離脱、難民問題、コロナパンデミックなど様々な問題に対峙したメルケルについて、生い立ち、周囲の人への取材をもとにその人物像を記している。東ドイツ出身、牧師の娘という生い立ちもあり、穏健、慎ましい、対話を重視し一致を探っていく、熟考を重ねる(そのため決断が遅め)と評される女性に成長し、素晴らしい指導者としてドイツ、EUだけでなく世界を率いた。メルケルは自身のことをどのように書かれたいか尋ねられ『彼女は労をいとわなかった』と答えた。本作は取材に基づくものなので彼女の表面的な部分しか記せないのは仕方ないが、上記の言葉は本当に真摯に仕事に向き合ってきたという自負が窺える。自分も足もとをしっかりみて一歩ずつ進んでいきたいと思った。
投稿元:
レビューを見る
自他ともに認める「メルケル・ファン」のフランス人女性によるメルケルの評伝。メルケルの評伝としてはこれよりも後に出たハンガリー出身のジャーナリストによる本の方が話題になっているようだが、その本よりも先にこちらを読みたかった。なぜかというと、評伝・伝記というのは当たり前だが誰がどんな視点で書いたかというのが重要で、好意を持っている人が書いているものほど読みやすいからだ。
本書の最初と最後には「アンゲラ・メルケルがいなくなれば寂しくなるだろう」という言葉が繰り返し現れる。著者の態度はこれに尽きる。メルケルの足跡をたどれば、彼女がいわゆる『スーパーウーマン』タイプではなかったことはすぐに知れる。しかし同時に、分をわきまえ、倫理観をしっかり持ち、自分の強みを自覚して、それらを総動員することにより物事を前に進めることのできる人物であるということもわかる。筆者はそんなメルケルに心からの賞賛を送っており、その勇退を惜しむ気持ちに満ちた本なのである。
また、この本はヨーロッパのこの30年の現代史をドイツを中心にコンパクトにおさらいできる本でもある。今のウクライナ情勢ひとつとっても、日本から見ているだけでは実感できにくいヨーロッパの事情と背景を知ることができる。トランプ元大統領は、自分がいればプーチンはウクライナに攻め込まなかったと言ったそうだが、それよりもメルケルがいれば事情はまた違ったであろうと思わずにはいられない。東側の論理を肌で知っている彼女であればプーチン大統領は交渉の仕方をまた変えたのではないだろうか。侵攻前にマクロン仏大統領がプーチンと何度も会談していたが、あの場にメルケルがいれば……というのは歴史では言っても仕方ないことではあるのだが。
ともあれ、傑出した女性リーダーの本を読んだ、というよりも、抑制ある素晴らしい仕事人の本を読んだ、という印象の残る一冊であった。
残念なのは、メルケルのような人を好きな日本人は多いと思うが、メルケルの方は今の日本政界や日本社会を特に評価しないだろうと思われる点だ。ドイツと日本の風潮は似ているところがあると感じる。真面目で抑制的で勤勉だが悪いように出ると排他的で男尊女卑的で抑圧的。メルケルが苦労した部分をさらに煮詰めたような社会である日本に興味も関心もないだろう。
投稿元:
レビューを見る
フランス人ジャーナリストから見たドイツ首相。メルケルが東ドイツ出身ということも物理学専攻だったことも知らなかった。近しい人への取材をもとに構成されており、親しみを感じる人柄であるものの、著者の取材をなかなか受けてもらえなかったのが意外。
投稿元:
レビューを見る
フランス人ジャーナリストによるメルケルの評伝。大統領制であるがゆえ強いリーダーが望まれるフランスと議院内閣制による合議を重んじるドイツ政治の対比が面白い。
こんにちのウクライナ戦争はメルケルが続投していたら防げていたかもしれないという意見がある一方、メルケルが脱原発に舵を切ったためにエネルギーのロシア依存が進みロシアの強硬姿勢を生んだという意見もあり評価は定まらないが、プーチンがウクライナを狙っていたのはメルケル在任中の時から変わらないということは本書からもよくわかる。そして東ドイツ出身であるがゆえ西側諸国のどの首脳よりもEUと民主主義の価値を理解しているのはメルケルであった、ということもよくわかった。
投稿元:
レビューを見る
2022年8月
メルケルさんの半生に迫った本。有名な人、有名でない人、名前を出してくれる人、出さない人、いろんな方に取材していて、読み応えありだった。訳文は読みやすかったが、いかんせん無知でヨーロッパの歴代首脳たちとのエピソードは読んでいて時間軸が混乱しがち。政治家の名前をググりながら読んだ。
東ドイツの全体主義的な世界から西ヨーロッパの自由主義に解き放たれた才能ある女性のサクセスストーリーではあるはずなのだが、読後感としては愚直に任務を実行する辛抱強い人間の物語だった。
投稿元:
レビューを見る
評伝は巨人であればあるほど対象ではなく書き手の政治歴史観が問われるとはよく言ったものでヴェイユ賞受賞の元ルモンドの女性記者の本書はひたすら尊敬とエピソードを並べるだけで全然あかん。
投稿元:
レビューを見る
たまたまテレビでメルケル特集を見て、メルケルという人をもっと知りたいと思い手に取った本。
東ドイツ出身・科学者・女性という誰とも似ていないバックグラウンドを持つこと、論理的かつ慎重で、きっちり仕事をこなす性格であること、静かな野心を持ちコールやシュレーダーを追い落としてきたことなど、興味深く読むことができた。
在任16年の間にリーマンショック、ギリシャの財政破綻、ブレグジット、難民問題、新型コロナなど重大問題が多数あり、対峙した他国のリーダーも錚々たる顔ぶれで、よく任期を全うしたものだと素直に尊敬の気持ちが湧いてきた。
投稿元:
レビューを見る
フランス人ジャーナリストが、異国の宰相にここまで徹底的に取材して、ここまでの本に仕上げるなんて…。もちろん全てが成功だったわけではないが、それでもメルケルさんに16年も率いてもらったドイツを羨ましく思う。
もし、まだメルケルさんが在職だったら、このロシアとウクライナとの戦争は、何か変わっていただろうか…。