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これからの図書館を考えていくうえでの議論がまとめられたヒント集。「未来の図書館研究所」で毎年行われているシンポジウムの3回分、「図書館のインパクト評価の方法と手順」の項目3ページほどの所収がある。
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永田治樹著『公共図書館を育てる』(青弓社)
2021年10月発行
2022.12.6読了
日本の図書館は市町村単位で設置されており、小規模なものが多く、体力がない。そのため、蔵書数が少なく、蔵書の重複も多くて、非効率な運営となっている。今後は規模の経済を働かせていくことも検討課題になるのではないかと感じた。例えば、非来館型サービスの電子図書館は、現在、市町村単位で乱立しているが、本来は都道府県単位で一つの電子図書館があればそれで事足りるはずだと思う。
また、図書館運営を図書館内部の問題として片付けるのではなく、どのように社会を変革させられたかで評価する太田剛氏の考え方にはなるほどと思った。本を地元の書店から購入したり、装備を福祉施設に依頼したりするなど。
こうしたことを実現していくためには図書館の評価の在り方自体を変えていかなければならないだろう。貸出冊数という数字を追うよりも、図書館が学習や調査研究をどのように支援しているのか、当該コミュニティをどのように支えているのか、経済効果などにどのような影響を与えているのかといったインパクト評価を重視するべきだ。
図書館の規模を大きくし、予算と人員を整備して、社会にアピールできる存在にならなくてはいけない。
【目次】
まえがき
第1章 未来の図書館のエコシステム
1 公共図書館が抱える問題
2 アラップ社のレポート「未来の図書館」
3 未来の図書館のエコシステム
4 問題整理と未来の図書館への指針
第2章 これからの公共図書館を考えるために
1 法人(財団)立図書館という公共図書館
2 デンマークのオープンライブラリー
3 オランダの公共図書館の課金制
第3章 日本の公共図書館をどう育てるか――システム規模を考える
1 公共図書館は十分にあるのか
2 公共図書館はどれくらいの住民に浸透しているか
3 住民は、公共図書館サービスをどのように受け止めているのだろうか
4 人々が頼りにできるコレクションが確保されているのか
5 二つの都市の図書館システム比較
6 システム規模の見直し
第4章 図書館とコミュニティ――イギリス公共図書館の展開
1 「市民的」公共図書館の展開
2 コミュニティの亀裂と新しいコミュニティ・アプローチ
3 二十一世紀を迎えたイギリス公共図書館
第5章 図書館での技術動向・予測――「ホライズン・レポート図書館版」
1 図書館の技術動向・予測
2 「ホライズン・レポート」の立場
3 科学技術の採用を加速する動き
4 科学技術の採用を妨げる課題
5 科学技術の重要な進展
6 「図書館版」のテーマの交替
第6章 未来の図書館に関する提言
1 第一回:図書館のゆくえ――今をとらえ、未来につなげる(二〇一六年十月十七日開催)
2 第二回:図書館とソーシャルイノベーション――二〇一七年十月十一日開催
3 第三回:図書館とサステナビリティ――二〇一八年十一月二日開催
第7章 オーフス公共図書館からヘルシンキ市新中央図書館へ――公共図書館の新しい表情
1 図書館のルネサンスと都市間競争
2 二つの公共図書館への訪問
3 オーフス公共図書館
4 ヘルシンキ市新中央図書館
資料 「図書館のインパクト評価の方法と手順 ISO 16439:2014」
あとがき
【お詫びと訂正】
本書に以下の誤りがありました。
72ページ:表5「東京23特別区とニューヨーク市の公共図書館の構成」3段目、東京23特別区の面積
【誤】619平方メートル
【正】627.53平方キロメートル
72ページ:同表3段目、ニューヨーク市の面積
【誤】784平方メートル
【正】784平方キロメートル
92ページ:表7「コミュニティ図書館の類型」最下段中央、モデル2bの事例
【誤】ノースハンプシャー
【正】ノーサンプトンシャー
URL:https://id.ndl.go.jp/bib/031723323
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近年、関係予算の削減等により衰退傾向がみられる公共図書館の今後の在り方について論じている。
既存の論文やシンポジウムの記録の寄せ集めということもあり、あまりすっと入ってくる感じではなかったが、「未来の図書館のエコシステム」の考え方、デンマークのオープンライブラリーの取組、幕別町等での図書館を中心に据えたまちづくりの事例など、公共図書館の可能性を拓くヒントが散りばめられていた。
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これからの図書館の在り方を考察している論文や記事を編纂した一冊です。
人件費を中心とした財源不足による図書館サービスの変化を案ずる立場から書かれていて、感情的な記述が多くあるという印象を受けました。
国内と海外の図書館におけるケーススタディや比較は大変参考になりますが、日本の図書館に何を取り入れると良いかは議論の余地がありそうです。
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仕事柄、タイトルが気になって借りてみた。
幕別町と紫波町の話は衝撃だった。
「近所の本屋で買えるかまで調べてこそ本のレファレンスでは」とか「何冊借りられたかではなく、図書館でどうエリア価値を高められるか」とか。
デンマークのオープンライブラリも、使えるところを最大限利用するという意味で衝撃を受けた。
サービスって、当然自分たち以外の人たちにすること。
だから、専門知識は前提として、その価値観だけにとらわれてはいけない。
サービス対象は、専門家じゃない。
”みんな”のことを見ていかないと。
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太田氏と岡崎氏の提言が参考になった。機械的に本を並べてもいきいきしない。図書館が運営費を稼いでも良いのではないか。確かにそうだ。
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図書館が大きく変わろうとしているようだ。
理由は、新自由主義的な、公共のものにお金をかけない時代背景や、印刷された情報(本)以外にオンライン上での情報がどんどん増えて、情報源が多様化したこと、とか。
図書館は、貴重な資料や多様な情報を収集、公開するだけではなくて、コミュニティの中心となるんですよ、という話。
ただ、税金で運営されて金食い虫になるんじゃなくて、自分から価値を創り出したり、収入を確保したりもしなくてはいけない。
印象的だったのは第6章の岡崎正信氏の「オガールプラザ」。
何もない空き地をなんとかしてくれと町に言われ、図書館に全く興味のない人が図書館を建てた。
図書館では貸スタジオやマーケットなど人を集める工夫をし、その横に商業テナントを備えて図書館の集客力をフルに生かす。
図書館の経営課題などと思うと「図書館を変える」と考えてしまうが、そうではなく、「図書館で変わる。地域が変わる。」と地域を主語にする。
この目の付け所に感銘を受けた。
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図書館は敷居の高いものではなくて、会合を開いたり、暇つぶしに来たり、もっと日常の中にある存在になったらいいな
海外の例をそのまま日本に適用するのは難しいと思うけれど、興味のない人がもっと来る場所になったり、地元のお店を活性化するきっかけになるのは素晴らしいことだと思う
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図書館をただ本を貸すところに留めておくのは非常にもったいない。国内、海外の事例から図書館には様々な可能性があることがわかった。
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こういう本を学生の時に読みたかった。書店で手に取った時『ニューヨーク公共図書館』を思い出して何気なく買ってみたが、図書館のアクセス性、ついてはUDについての記述があったり、日本の地方都市の図書館経営の話、まちづくりの話など、興味深い内容満載の本だった。