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一応「絵本」という分類らしいが、読んだ印象としては「挿絵の豊富な掌編」だった。
もとのストーリーは大昔に読んだし、映画化された「スモーク」も観たが、細部は忘れてて「ええ話やったなぁ」という印象だけ残っていた。あらためて読んで、やっぱりええ話でした。
ポール・オースターらしい話で、語り口がいちいち良い。普通のことを書いていても、言葉選びが良い。語られていない隙間をいろいろ考えてしまう。柴田元幸氏の翻訳の力もあるのだろう。
オーギー・レンがおばあちゃんの家に行って、一度食べ物を買いに外へ出るのだが、そのときおばあちゃんは何を思っていたかな。ウソと分かっていながら、それでも、「帰ってきてくれないかもしれない」と思っていたんじゃないか。そう考えると、なんかもう余計に胸が締め付けられる。
タダジュン氏の絵は、一見怖い。ユーモアと哀愁があるが、版画と思われるそのタッチと色合いは、一瞬怖い話かと思ってしまうくらい。ダークさとポップさの両方を持つ感じ。
なにしろ、クリスマスの話なのに、表紙はほとんど真っ黒だから。
蛇足だが、これを再読したことで、映画版「スモーク」の宣伝写真が優れていると感じた。
(おそらくDVDとかの正式な表紙はマッチと煙がクリスマスツリーのように重なり合っているイラストだが、それではなく)ハーヴェイ・カイテルとおばあちゃんが抱き合って頬を寄せ合っているあのシーンだ。
あの写真というかシーンだけで、このストーリーの感情的なピークを表しているように思う。いやが上にもエモい。
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言葉選びがいい。
嘘か本当かは問題じゃない。そこに優しさがあれば。
原文を読んでみたくなりました。
映画もあるとのこと(『スモーク』)。
一方、挿絵はミスマッチな気も。。
存在感が強く、暗さとポップさの入り混じった不気味さが文章の印象にかぶさってきた。
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映画「スモーク」が好きなので、原作を読んだ。
登場人物たちの人生のある瞬間を切り取ったような短くてシンプルな展開で、「クリスマスストーリーお約束のちょっといい話」だけど、甘くなり過ぎないのが心地よい。
作り込まれた設定があり、登場人物たちの背景や、終幕のその後に想いを巡らせたくなるような、温もりと豊かさの詰まった物語。好きだ。
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クリスマスになると思い出す映画『スモーク』の挿話
全部が本当ともウソともつかない、オーギー・レンの素敵なクリスマスのお話
大好きなポール・オースターの、大好き作品
版画も幻想的で好き
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_大切なのはそのことだけだ。誰か一人でも信じる人間がいるかぎり、本当でない物語などありはしないのだ。_
作家が通う、葉巻店の男オーギーとの出会い。
彼の不思議に惹かれる写真。
そして、オーギーが写真を撮るきっかけになった?
クリスマスストーリー。
ニューヨークの下町の、きらびやかではない暮らしぶりが地味に浮かび上がるかっこいい短編でした。
ポール・オースター、いいですねぇ。
柴田元幸さんの訳も!
「彼はフードつきの青いトレーナーを着た風変わりな小男であり…」
っていう一文、わりと冒頭のほうにあるのですが、凄く心地よいリズムを感じました。
これが、
彼は青いパーカーを着た小男。。
だったら、ちっとも惹かれないですもんねぇ!
去年のクリスマス前に、猫町倶楽部のオンライン読者会で、柴田元幸さんの読書会がありました。
先生が訳されたクリスマスストーリーを2編、前もって参加者にファイルで送ってくださっていて、私たちはそれを読んでの読書会でした。
その時のひとつが『オーギー・レンのクリスマス・ストーリー』でした。もうひとつはウィリアム・バロウズ。
その時の走り書きに、たぶん柴田先生が仰ったこと、
「ディケンズのクリスマス・キャロル以降、クリスマスといったらいい話が多いんじゃないか?」
みたいな事が書いてありました。
この作品はいい話っぽいけど、湿っぽくはない下町臭があります。
オーギーが語るクリスマスの話は、そもそも作りばなしなのか?真実なのかが分からない、
物語の中にいくつも物語があるような。。
オーギーが毎朝7時きっかりに交差点の全く同じ眺めを撮り続けた不思議な写真が、何を意味するのか。
オーギーってただ者ではないのかしら?
作家よりよっぽど深みある日々を生きているように見えてしまったり…
とっても短い話しなのに、魅力に溢れています。
映画化されたの頷けますね。
(ハーヴェイ・カイテル主演「スモーク」)
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少し前TVの番組の中て紹介されていて興味を持った本。読み終わってこのストーリーは嘘か本当か疑問が残るところだが、確かにクリスマスの一場面だなぁと思いました。妖精も天使も現れないけれどこのお婆さんにとってはひとときの幸せな時間だったんだと思いました。「大切なのはそのことだけだ。誰か一人でも信じる人間がいるかぎり、本当でない物語などありはしないのだ。」だからやはりクリスマスストーリーとして。
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「私はこの話をオーギー・レンから聞いた」の出だしからポール・オースター全開!という感じでたまらない。クリスマス・ストーリーなのにじわじわ不穏なタダジュンさんの版画も最高。
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ポール オースター (著), 柴田 元幸 (著), タダ ジュン (著)
「オーギー・レンのクリスマス・ストーリー」
柴田元幸(訳)+タダジュン(絵)による絵本
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「『クリスマス・ストーリー』という言葉そのものが不快な連想を伴っている。お涙頂戴の、甘ったるい、嘘でかためた代物があふれ出てくる感じ」
作中でポールオースターが?そう嘯く。因みに私は甘ったるいクリスマスストーリーが大好きだ。
「私」(ポールオースター?)が出版社にクリスマスストーリーを頼まれて前述のようにぼやきながら、そんな話書けないよと葉巻屋の主人オーギー・レンに話すと、オーギーが自分の体験を話し出した、という体になってなる。
店のものをポケットに詰めて逃げ出した万引き少年を追いかけたオーギーは犯人が財布を落としたところで追いかけるのをやめた。その財布には名前やダウンタウンの住所の書いてある運転免許証や家族写真が入っていた。貧しい少年が気の毒になって、オーギーは財布を店の引出しの中に入れたまま何もしないでいた。
クリスマスの日に、オーギーは何もすることがないので少年の住所を訪ねてみた。するとそこには目の悪い年寄りの女がいて、少年の名前を告げると女はオーギーのことを少年と勘違いして…。
これはクリスマスの日の話なので、クリスマスストーリーではあるが、冒頭に書いた言葉のように甘ったるい話にはなっていない。
オーギーは老婆の家で少年を演じたうえで誰も使っていないカメラを持ち出してしまう。翌年の春に、後ろめたくなって返しに行くと既にその家には別の人が住んでいた。おそらく老婆は亡くなったのだろう。
イノセントな話ではない。人はそれぞれ違うことを求め、違うことを考え、違う人生を生きている。少年、オーギー、老婆それぞれがその時望んだものが違うのだがそれでも3人のある日の人生が交差する。でもその関わりに2度目はない。甘ったるい奇跡も起こらない。特に優しい気持ちにもならない。老婆が本当にオーギーを少年と勘違いしていたのか、フリをしていたのかわからない。誰かが幸福を感じていたら救いなのだがそれもわからない。語り手がオーギーである以上、彼の気持ちしかわからない。そこに嘘はない。ポール・オースター、実は苦手な作家である。
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挿絵と相まって、不思議な雰囲気でまとまったショートストーリー。
世の中何が本当で、何が嘘か分からないもの。その切取りの一部が物語になるんだな。
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とてもすてきな本。
この映画で流れていた曲がこの間ラジオで流れてきて、あの歌だと分かってうれしかった。
タダさんの個展に行って原画をみてとてもよかった。
いただいた本。
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映画「スモーク」の原作になった短編。
映画はとてもよかったと記憶していけど、原作がこんなに短かったとは。
出自が気になって調べたら、もともとはポール・オースターがクリスマスの日に発行される新聞のために描き下ろした短編で(本編にも書かれてる)、本としてはいろいろな版が出版されているみたい。国内版がこれというわけですね。
「誰か一人でも信じる人間がいるかぎり、本当でない物語などありはしないのだ。」
というわけで、最後煙に巻かれたような終わり方だけど、盲目の老婆とのふれあいの話、主人公(オースターと思っていい)とオーギーの友情とカメラの話、主人公がクリスマス・ストーリーを書く話と、この短い中でいい話が重層的になっている。
こんなところにもオースターのすごさを感じます。
タダジュンさんのイラスト(版画?)もモノクロで味があって個性的な世界観がとてもいいです。
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絵本みたいだった。
独特な絵。
図書館で借りたが、1700円もは高いと思う。
そんなに.....そこまで....。
書評した主人公、それを見たオーギー・レン。
芸術、仲間意識。
クリスマスストーリーの短篇を書くのに、困っていた主人公、オーギー・レンの話。万引きされたこと、毎日同じところの写真を撮る。
彼は時間を撮っているのだ。
そこに映る人々の一生を想像してみる。
毎日同じところ、同じ時間でも、全く同じにはならない、面白そうではある。
↑これで思い出したのは、アメリっていう映画。
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善と悪、嘘と現実の混じった世界は、単純明快な子供の世界とは違う大人の世界を想像させます。それでもクリスマスという日がそんな世界を温かく包んでくれる話でした。ストーリーの所々に入る挿絵が雰囲気に合っていて、とても素敵な作品だと思います。
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とても不思議なお話だったなあ
おばあさんに最後に良い思い出を作ってあげれて良かったかもしれないし、それは実際起こらなかったことかもしれないし。不思議な感じ。
誰か1人でも信じる人がいる限り、本当でない物語などありはしないのだ。
相手が演じていることを理解して自分を演じる。事実を話してない、嘘かもしれないと思っても、話し手のそれなりの意図があってそれを汲み取って返答する。そこから現れる不確実性が面白かった。