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端的に「あまり面白くなかった」というのが正直なところ。
温暖化が現状の予想を上回って進行した想定の2084年、干魃と火災、洪水、あるいは戦争など、影響をテーマごとに分けて、それぞれインタビューを載せているというスタンスで、その構成自体はそそられるのだが、読んでいるうちに何かが明らかになる、というようなストーリー性のあるものではなく、本当にただの口述記録なので単調さを感じる。特に干魃、海面上昇のような現代からでもある程度予想の付く内容はほぼ読み飛ばしてしまった。ただ一方で、水不足の結果、水資源が戦争の火種になる、というような、あまり意識していなかった話が印象に残るのは確か。
問題はいまいちリアリティを感じないこと。水不足、農業衰退などで国連が機能不全に陥り、結果各地でガンガン核兵器を飛ばすようになるというのはさすがにどうなのか。また、温暖化を止められなかった理由を、科学軽視、科学縮小、科学を否定する政治家の台頭という点と、原発を推進せず石炭火力発電を使い続けたから、という点の2つに集約したのも、うーん。2020年前後でも温暖化陰謀論は存在するし、トランプの一時代はあったが、それが世界的に多数派を獲得するほど科学忌避が進行するような状況には思えない。「過去の世代は、なぜ将来を見越して温暖化対策をしなかったのか?」という筋立ての本なのに、未来に大きな負の遺産を残す原発を推進するよう提言するのも矛盾じゃないかと思う。多数にインタビューした本のはずなのに、著者のイデオロギーは割と強く感じる。
随所随所で面白くはあるし、真面目に受け取らねばならない内容も多いが、全体としてはしらけてしまったな、という感想に落ち着く。