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がさつで口の悪い叔父が一家を引っ掻き回すホームコメディのように幕は開き、やがて推理小説か幻想小説のような展開に。その先に広がる退廃的で絢爛としたもう一つの世界。合間に描写される料理のおいしそうなこと。
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噎せ返るほど濃密でありながら透徹した文章だった。巻末解説の、敗北した男たちと逞しい女たちが云々という段が本編にそぐわない古臭く陳腐なクリシェでどうにも白けた。
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ちょっと読んでは、言葉の意味を、漢字の読み方を、画像を検索するので、ちっとも進まないけど楽しい
おまけに突然ストーリーに爆弾ぶち込んでくるので、目が点になり、意識が遠くにさまようことになる。
読書って楽しいを再確認した。
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空晶氏の多才の絢爛と国際的モテぶりが凄すぎて笑った。巻末、島内氏の解説中に引用された左東子の歌に誤字あり、こちらも老眼で自信がないので、思わずアレッ、と85頁まで確かめに行ってしまった。
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茶道家元、華道家元、菓子匠、僧侶、精神科医、建築家など、ある秘密を共有する12人。そのうちの一人が死亡し、これを怪しむ精神科医の娘が、その秘密に迫る。手に汗握るサスペンスというよりは、ゆっくり流れる時間の中で魑魅魍魎の手練れが虚々実々の駆け引きを行うもので、犬神家とか八つ墓村的なじっとりしたミステリー。和歌のような言葉遣いと高い教養を感じる会話が散りばめられ、臨場感あふれる一冊。
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1974年の塚本邦雄による代表作の復刊本。京都の名家である飾磨(しかま)家当主・天道、妻・須弥、その弟・淡輪空晶、長男・正午、長女・沙果子を中心として、これも劣らぬ茶道の名家である貴船家の当主・七曜、妻・左東子、長女・未雉子。その親戚筋にあたる最上家の長男・晴明とその妻あさぎ、次男・立春。綺羅綺羅しい名をもつこれら美男美女たちの間で繰り広げられる秘密と愛欲と殺人の物語は、古めかしい旧仮名・旧漢字で綴られて古典趣味をいっそう盛り上げる。その中心に置かれているのは、山深く十二神将に守護された九曜魔法陣の形をした秘密の花苑だ。
ミステリ仕立てとはいいながら登場人物の交わす会話や服装、茶菓子さえもが膨大な古典からの引用に彩られており、塚本邦雄の生まれ育った知的土壌の分厚さに圧倒される思い。とても衒学趣味に浸ってその世界を楽しむとはいえぬわが身の貧しさを悲しむしかない。したがって中国の魔法陣や、作中歌の謎解き、元本としての源氏物語などを指摘する中野美代子と島内景二の解説はありがたかった。
島内景二氏はこの女たちを排除した男たち同士の愛欲をめぐる小説において、本当に世界を動かしているのは女たちだと論じる。その論に同意するかどうかはともかくとして、飾磨家の人々の親しく知己に富んだ会話を第1章から見せておきながら、その裏で父親と叔父が紡ぐ愛欲を、そして容赦なく秘密を暴き出してみせる娘に対し「そのようなお前が煩わしい」と父親が言ってのける場面を描く塚本が、戦後の異性愛と民主主義にもとづくリベラルな「家庭」規範にいかほどの価値も置いていないどころか侮蔑を露わにしているのは事実であり、だから本書そのものが異端に属するのである。
その毒をどこまで堪能するかはともかくとして、核心に至る迷宮的文章を心地よく味わえるくらいの教養を身に着けてからふたたび方陣花苑を訪れればより艶やかな色を見せてくれるのかもしれないが、そうなるまでには自分の寿命が足りないような気もする。
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歌人の方が書かれた小説
題名で買ってしまった
1974年刊行
難しい漢字、使わない言葉が出てくるので調べながら読む事になる。その為、読むテンポは悪くなった。
建築士事務所で働く長男、宝石デザイナーの長女、精神病理学者の父と良妻賢母の母、そして居候の叔父で暮らす飾磨家は一見して幸せで裕福な家庭に見える!
そんな飾磨家、長女の沙果子が思いを寄せる最上立春が中国で出張中のはずが不穏な動きあり!?
ヘロイン中毒で死亡する若者
ケシの花を育てる結社
名家のしがらみ
色んなものが纏わりつく、粘り気のある物語・・・
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旧仮名遣いで雰囲気たっぷり。馴染のない言葉は前後の文脈でなんとなく想像しながら読んだが、それでも十分楽しめた。飾磨家の娘・沙果子の恋人が急死。その真相を追うに従い、綴られる外聞の悪そうな人間関係。不穏な罌粟(ケシ)の存在。男性だけの世界に浸ろうとする父や叔父。すべてお見通しかもしれない母。ちょっぴり謎を残して、匂わせる感じが尚よし。沙果子と正午の兄妹は、年を取っても陽の差す方にいて欲しい。
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これもとにかく読んでほしい…!!
第三章がちょっと高度な教養バトルの様相を呈するので本当になんの話かさっぱりわからないいんですが、そこを乗り越えたら第四章は初っ端から義兄弟タイム始まるので悲鳴を上げてください…
姉の夫の精神科医×寺の元住職で風来坊のハイパー教養人の義弟
12歳差のこの義兄弟がまあ最高なんですよ…
姉夫婦の母家の別棟に義弟が住んでいるんですが、家族が留守になるとこの別棟でね、色々しているんですよ…読んで確かめてください…私はよすぎて変な笑いが洩れました…
秘密結社、芥子農園、それに絡む殺人とお話自体もミステリで大変面白いです!
とにかく第三章を頑張って乗り越えてください…
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中井英夫にハマってた頃、「短歌研究」や「日本短歌」の編集長だった中井に並んでよくその名を見かけた。現代短歌の巨星、塚本邦雄。寺山修司らとともに前衛短歌運動を行い、短歌を現代に蘇らせた歌人である。この人の短歌は全然違う。
その塚本邦雄が遺したミステリ「十二神将変」。三十一文字の短い言葉に、沢山の意味を閉じ込める魔術師ゆえにこの文章の言語感覚に陶酔したい。
まさに中井英夫の「虚無への供物」にも似た絢爛豪華な文体、悪く言えばまだるっこしい傑作である。「虚無への供物」を彩る花が薔薇なら、「十二神将変」は罌粟だ。中井英夫がダメな方はこれもだめでしょう。
魔法陣を象った九星花苑で急死した最上立春。死因はヘロイン。その傍らに十二神将の一体が置かれ。サンスクリット学者、精神病理学者、茶道家、菓子司、浮世離れな面々の人間関係、力関係。男世界、女世界、絡み合う男女関係。
立春と女性たちとの忍ぶ恋、時に同性愛の薫りもさせながら、いきなりラストで犯人が明かされる。
ミステリと言っても探偵小説ではない。犯人を当てようとするのは無駄だ。探偵や警察が出てくるわけではない。立春は開始早々で死ぬが、殺人だと騒がれもせず、淡々と話は進む。ミステリだと言われなければ何も気づかないで最後にへえ~と思うだけだろう。
ラストの短歌が素晴らしい。紹介したいけどネタバレになるので書けません。それがいろいろな意味を持つ。さすが巨星の短歌なのです!