紙の本
女として枠の中で生きるのは楽なのだろうか
2022/05/24 10:29
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投稿者:nekodanshaku - この投稿者のレビュー一覧を見る
人は枠にはめられて生活をすることに安堵するのか。江戸後半期、歌舞伎を知らない武家の娘が女形歌舞伎役者の元に嫁ぎ、女形の女房として、女として、二人の生き方に考えを巡らせる。女形の女房という枠を乗り越えないようにしながら女として、女形の夫に接することにより、二人の人生が揺らぐ。夫婦のあり方を問うつもりはないだろうが、こういう生き方の中に、女の情念みたいなものが、ひたひたと漂うような気がした。面白い物語を読むことができた。
紙の本
女形とは?
2022/05/17 17:23
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投稿者:名取の姫小松 - この投稿者のレビュー一覧を見る
江戸時代、役者は千両稼げようとも、身分は河原者と下に見られていた。芸の為の肥やしで遊びも、人の観察も欠かせない。
武家の娘の志乃は女形の燕弥の妻となる。儒学や女大学、武道を身に付けてきた志乃は、女性よりも女性らしく振る舞う夫に戸惑いながら、暮らしに馴染もうと努力する。
夫の仕事に嘴を挟まないのが武士の妻、の、はずが、夫が扮するお姫様役の仕草を仕込むために、いつの間にか使われている。
嘘かまことか、いいように踊らされているのか、判然としないまま、志乃は役者の女房の姿を描こうとする。
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えー!舞台も設定もキャラクタも魅力的なのに、この結末は、ないわー。現実(?)問題として実際のところ、「狐憑き上等」で実家と縁切りしといて、故郷の出羽から遠く離れた江戸の芝居町で、下級武士の娘がどうやって生きていくっつーのよ?
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板の上と板の下。演じる愛と真の恋。
女より美しい女形に惚れこんだ女房の、激しく閑かな純愛に身もだえた。
武家の娘から歌舞伎役者の妻へ。なれない暮らし、薄れる自分の存在意義。それでも夫を女形としての夫を愛しぬく女の矜持。
『化け者心中』でわしづかみされた心が熱く冷たい炎であぶられた気がする。
蝉谷めぐみ、この進化から目が離せない。
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前半の展開や人間関係が後半に生きてくるという期待は必ずしも満足のいくものではありませんでしたが、時代小説の新人作家さんとしては今後に期待できる作品でした。
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ドラマにできそう。
志乃さんは、大河ドラマで篤姫やってた時の北川景子、燕弥は志尊淳さんのイメージ。
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何故毎回、こうも心の臓を突いてくるような女の性のかなしみを書きだせるのか…。
時は文政、夫婦となった一人の女形と一人の女の恋物語。
歌舞伎に描かれる武家の姫様たちが浮き彫りにするのは、如何様にも変わる、純粋で身勝手な、男と女の愛し合った姿なのだ。
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下級武士の娘の志乃が、歌舞伎の女形の燕弥の元へ嫁ぐ。夫のために尽くし、夫を理解しようと務めるがうまく噛み合わないことだらけ。お富、お才という歌舞伎役者の妻も登場し、彼女らの夫とのあり方もそれぞれ違う。彼女らのとの付き合いを通しながら「歌舞伎役者の妻」に近づこうとするがこれがまた思うようにはならず。
「〇〇の妻」などと形に入ろうとうると楽な面もあるかもしれませんが、窮屈になるかもしれない。みんなそれぞれ、夫婦のあり方は違う。しかし芸の道の妻は大変なんだな・・・。
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武家の女である志乃の、女形である燕弥に正面から向き合っているのに引きこまれた。それぞれの章で演目が違いそれに合わせて性格まで変わってしまう女以上の女の燕弥さんに振り回されつつも、燕弥の女房としてどのように生きるべきかを悩み通して、ある結論に至っていく過程が強く凛々しく面白かった
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武家の娘志乃は歌舞伎の女形燕弥の女房になる。
が、平生から女の格好をして女として振る舞う夫とどうして暮していったらいいのかわからず、困り果てていた。武家の娘として厳しく躾られてきた志乃は世間知らずで、歌舞伎の世界も役者がどのようなものかもわからない。妻の一挙手一投足を針で刺すような目で見る夫に疲れ果てていた志乃は、燕弥が自分に求めていたものは何かに気づいて…。
芸に生きる燕弥と、役者ではなく一人の男として向き合って欲しいと思う志乃とのすれ違い。だがやがて少しずつ近づいていく心。それが燕弥が演じる姫君たちの物語と絡み合って描かれていて面白い。
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父親に刷り込まれた武家の女としての生き方しか知らない志乃が、あらゆることを芸のために吸い取ろうとしている売り出し中の若手女形・燕弥と夫婦になっての物語は、時姫で始まり、雪姫、八重垣姫を経て、再び時姫で閉じて、そしてあっけない幕切れ。
志乃の思う女房のあり様と燕弥の思惑はずれているのに、それぞれが少しずつ変化するさまを、つやのある表現や文章のリズム感で楽しく読んだ。
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志乃は若女形、燕弥(えんや)に嫁す。
父が決めた相手であるならば、何も訊かず添えばいい。
それが武家の娘としての習い。
しかし、女形として生きる燕弥との生活は戸惑うことばかり。
知りたくはない、知ってはいけないと思っていた芝居のあれこれを
奥役、善吉から聞かされる。
少しずつ、志乃の腹に女房としての覚悟が据わってくる。
第二章『清姫』
お富、お才の役者の女房の心意気。
志乃と燕弥が交わす言葉の一つひとつがおもしろい。
この時代、男も女も粋だね。
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女房が“おんな”なのは当たり前だが、ならばこのタイトルはどういう意味なのか?
文政の世。武家の娘である志乃は、父親の勧める縁談に従い嫁いだ。嫁いだ相手は歌舞伎役者の女形で、舞台のみならず日常生活でも女として生きているのだった……。
なかなか話に乗れず苦戦したが、読み進むにつれ面白さがわかってくる。そして「幕引」を読み終えたあと、再び冒頭の「呼込」を読んで、深くため息をついた。
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図書館より。
さらりと。
化け物心中を読んで、気になったので。
独特。でも、惹き付けられる。
そんか作風かな。
好みは割れそう。
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嫁いだ相手が女形という事情が特別だったとはいえ役者の女房が苦労するのは当たり前の話で、本作の真骨頂は江戸時代の芝居小屋の内外の有り様を描き切ったところにある。早大の卒論テーマ「文化文政時代の歌舞伎」が昇華した賜物か。