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「ヘイト」に抗するアメリカ史 マジョリティを問い直す みんなのレビュー
- 兼子 歩 (編著), 貴堂 嘉之 (編著)
- 税込価格:3,080円(28pt)
- 出版社:彩流社
- 発売日:2022/04/20
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2022/05/28 19:48
投稿元:
序 「ヘイト」の構造を歴史的に問い直すために
兼子歩(明治大学准教授)
第1章 差別と「逆差別」は同じ差別なのか?
――誰が誰をどのような力で抑圧しているのかを見極める
大森一輝(北海学園大学教授)
第2章 ともに生き延びるということ
――不可視化の暴力と先住民族の抵抗
石山徳子(明治大学教授)
第3章 黒人奴隷制の歴史を問い直す ――奴隷制と人種資本主義の世界史
貴堂嘉之(一橋大学教授)
第4章 負けた戦争の記憶
――南北戦争後の南部における「失われた大義」と人種・ジェンダー・階級
兼子歩(明治大学准教授)
第5章 記憶の抑圧と歴史の書き換え ――タルサ人種虐殺を例に
坂下史子(立命館大学教授)
第6章 「ヘイト」の時代の「アメリカ・ファースト」
──排外主義への誘惑
南修平(専修大学教授)
第7章 アジア系ヘイトの歴史と現在 ――コロナ黄禍論とアジア系の体験から見るアメリカ社会
和泉真澄(同志社大学教授)
第8章 刑罰国家化時代の移民行政 ――「非合法外国人」と「外国人犯罪者」という移民像
佐原彩子(共立女子大学准教授)
第9章 辺境都市から先進都市へ
――グローバリズム時代のオレゴン州ポートランドとその歴史的背景
土田映子(北海道大学准教授)
第10章 クオータはなぜ嫌われるのか ――割当と平等をめぐるアメリカ現代史
南川文里(同志社大学教授)
第11章 ミレニアルズとZ世代 ――あらたな世代政治の誕生とアメリカ社会
梅﨑透(フェリス女学院教授)
第12章 国際人権レジームとアメリカ例外主義 ――国際人権の歴史のなかのアメリカ、そして日本
小阪裕城(釧路公立大学講師)
第13章 アメリカ人権外交の欺瞞 ――不可視化されてきたアメリカの暴力
三牧聖子(同志社大学准教授)
第14章 声を上げる理由・耳を傾ける理由 ――被爆者運動と日本社会
川口悠子(法政大学教授)
編者あとがき
貴堂嘉之(一橋大学教授)
2022/07/03 02:37
投稿元:
「今」全ての日本人が読むべき本だと思った。
内容はタイトル通り、もちろん「ヘイトに抗するアメリカ史」である。
なぜトランプ元大統領が一部のアメリカ人に熱狂的に支持されたのか?逆差別は本当に差別なのか?BLM(ブラック・ライブズ・マター)運動について、移民問題について、ヘイトはなぜこんなにも根強いのか?…などなど、ニュースでよく見る、けどなぜそんな運動が起こっているのか深くはわからない、そんな疑問だらけのアメリカ史におけるさまざまな問題を、アメリカ史に詳しい専門家たちがさまざまな視点から詳しく、分かりやすく論じる。
このさまざまな視点から「ヘイトに抗するアメリカ史」について学べるのが本書の良い点の一つである。
そして、ヘイト問題…人種差別などはアメリカなど、日本人の感覚としては遠くの別の国で起こっていることだと思いがちだ。が、そんなことはない。
日本人は差別をしていないのか?日本に蔓延る無意識の差別についても、論じられている。
そして長い歴史の中で、アメリカは日本にとって切り離せない重要な存在である。アメリカ史と日本史におけるヘイトについて同時に考えることはとても重要なことだ。
そこが全日本人に本書を読んでほしい理由である。
「今」読んでほしい理由は、本書が今年の4月に出版されたばかりで日々移り変わる歴史の最先端まで取り上げて論じられるからである。
トランプ政権の4年間についてはもちろん、現バイデン政権についてなど、本書に出てくる事例は百年以上過去のものから、ほんの最近までニュース取り上げられているものまで。幅広く考察を促してくる。
最後に本書の良い点をあげると、読みやすいということである。
教科書のつもりで書いた、ぜひこの分野を学ぶ高校生などにも読んでほしいといったメッセージがあり、非常に読者に読んでもらおう、そしてこれらの問題について考えてもらおうという強い願いが込められている。
ニュースやネットで話題になった身近な問題を取り上げており、(少なくとも私には)そんなことになっているとは知らなかった!な事実が述べられており、これは知っておかなくちゃ、と食い入るように読み込んだ。
各章の最後には、執筆者による論題にまつわる「読書案内」と「ディスカッションポイント」が載っている。読書案内により、執筆者が紹介する他の書物からさらに多くの情報を得ることができ、ディスカッションによりさらに理解を深められる。読書会を開いたり学校の授業に取り入れたりしてディスカッションすれば、とても有意義だろう。
本書においてのカギは「人種」「民族」「国籍」といった概念であり、視点であるという。
改めてこのカギを胸に、章ごとに少し要約と感想、もしくは引用を、書けるところだけ書いていこうと思う。(読んでからしばらくして書いたので記憶がかなり薄れている部分があり、また散文だが容赦願いたい。備忘録がてらなので。)
…本書を読んで思ったことは、よくネットやテレビで「日本は遅れている」というが、本当に日本だけが遅れているのだろうか?ということだ。
もちろん遅れていると思う部分はある。だが、進んでいるとされている国は本当に進んでいるのか?嫌なところに目を瞑らずに誠実に取り組んでいると言える国はどれほどあるのだろうか?と思った。
もうすぐ日本では選挙が始まる。少しでも「進んでいる」国に…シーソーが平らになる国になるために、私たちに何ができるだろう?
序 「ヘイト」の構造を歴史的に問い直すために
兼子歩(明治大学准教授)
アメリカ社会におけるマジョリティの人々は、それ相応の権力や機会やリソースを獲得する当然の資格(エンタイトルメント)があると思っている。
それが得られないとき、彼らにとって恩恵を得る資格なき者(非白人、移民や難民申請者、フェミニスト、LGBTQ、アジア諸国など)によって奪われたと思い、自分たちが「被害者」だと認識する。
このマジョリティ側が抱くエンタイトルメントの感覚は歴史的に培われたものである。その感覚の正当性を歴史的に、そして批判的に検証していく。
第1章 差別と「逆差別」は同じ差別なのか?
――誰が誰をどのような力で抑圧しているのかを見極める
大森一輝(北海学園大学教授)
権力構造ー差別される弱き立場の人々と、無意識に恩恵に預かっているマジョリティの人々ーを、シーソーで表現している。
弱い人々は実にたくさんいて、シーソーの片側は常に地面にめり込んでいる。立場が強くなるほど人数は少なくなり、シーソーのもう片方は常に上がっている。
シーソーはこの状態からなかなか変わることがてきず、下の人々は上に這い上がることができない。
さて、この前提のうえでマイノリティを助ける制度を作ることは「差別」になり得るのか?
たとえば富裕層がお金の力で大学に入ることにはそんなに批判が出ないが、マイノリティが入学できるよう枠を作ると批判が出る…
シーソーを平らにするにはどうしたらいいのだろう?
これはアメリカでも言えることだが、日本でもいまだ少なくなく起きていることだと思う。
ちなみに私が中学生の時通っていた塾の講師は、「お前は男女差別なんかされたことないだろう?」と言った。当時はなんともいえないモヤモヤだけで言語化できなかっが、今なら差別はある。と根拠を持って言えるかもしれない。
第2章 ともに生き延びるということ
――不可視化の暴力と先住民族の抵抗
石山徳子(明治大学教授)
つい去年の話、「スッキリ」という番組でアイヌ民族に対する差別発言があったという報道は、まだ記憶に新しいのではないだろうか。
私は報道で後から事情を知ったが、リアルタイムで番組を見ていた人は、どう感じたか思い出してほしい。
実際にアイヌ民族に対して「犬だ」などと差別・揶揄していた歴史があり、そのことを思い出して辛くなったという男性の声も本書には載せられている。
アメリカ史に話を移すと、アメリカやカナダなどは、元々先住民がいた所を侵略し国家を築いた歴史がある。「セトラー・コロニアリズム」、入植者植民地主義などと訳されるこの言葉。
定住した侵略者はどこにもいかず、先住民への支配と抑圧は今なお続いている。
この状況で先住民たちへの保障や贖いはどうすればいいのか。目を背けてはならない問題だ。
第3章 黒人奴隷制の歴史を問い直す ――奴隷制と人種資本主義の世界史
貴堂嘉之(一橋大学教授)
奴隷制や奴隷の歴史を紐解くのはなかなか難しい。
本章では、アメリカ合衆国の一六一九プロジェクト・奴隷制と啓蒙思想家たち・奴隷制の世界史・人種資本主義という視座・現代奴隷制への架橋、という題材を扱い理解を深めていく。
第4章 負けた戦争の記憶
――南北戦争後の南部における「失われた大義」と人種・ジェンダー・階級
兼子歩(明治大学准教授)
南北戦争の歴史について、南側の男たちの、戦争によって失われた「男らしさ」についてなどが印象に残った。
第5章 記憶の抑圧と歴史の書き換え ――タルサ人種虐殺を例に
坂下史子(立命館大学教授)
1921年のタルサ人種虐殺について、本書で初めて知り衝撃を受けた。タルサは地名で、その辺りは黒人のウォール街と呼ばれ栄えていたという。白人暴徒がそのグリーンウッド地区を襲撃し、たくさんの黒人が虐殺され、地区は焦土と化した。さらに驚くべきは、2021年にバイデン大統領が初めて暴動ではなく虐殺だと認めた点だ。
実に百年。それまで誰も虐殺とは認めなかったのだ。実際当時黒人たちを殺した白人に特に重いお咎めはなかったらしい。タルサ人種虐殺にいたるまでの背景などを本章では解説してくれている。
記憶の抑圧と歴史の書き換えーそれは現在進行形でいろいろな形で行われている。これを阻止するためには、事実を知り、忘れないで声を上げ続けることなのかもしれない。
第6章 「ヘイト」の時代の「アメリカ・ファースト」
──排外主義への誘惑
南修平(専修大学教授)
○○ファーストと言えば、私が最近(といっても割と前だが)聞いたのは都民ファーストという言葉だろうか。
○○ファーストという言葉は極めて利便性が高いとある。
なるほど、たしかにファーストと呼ばれた人たちは自分たちを特に認められた気分になって政治家にとって操りやすいものになるだろう。
本章では、アメリカ・ファーストと叫ばれた時代とその経緯について論じている。
読み終わって改めてこの○○ファーストという言葉のそれ以外に目を向けない排他的な感じに、違和を覚えた。
第7章 アジア系ヘイトの歴史と現在 ――コロナ黄禍論とアジア系の体験から見るアメリカ社会
和泉真澄(同志社大学教授)
コロナ禍社会となってもう2年ほど経つが、コロナ流行当初は、アジア人差別が欧米で苛烈化したのはまだ最近のことのように思い出せる。
トランプ元大統領がそれを差別的に流布したのも。
日本人である私もアジア系民族として、見逃せない章。
第8章 刑罰国家化時代の移民行政 ――「非合法外国人」と「外国人犯罪者」という移民像
佐原彩子(共立女子大学准教授)
名古屋出入国在留管理局に収容されていたスリランカ人のウィシュマ・サンダマリさんが死亡した事件はまだまだ記憶に新しいし、ニュースで見た時の憤りの気持ちもまだ残っている。
移民や外国人は犯罪を起こしがちである、という見��は、アメリカでも日本でも根強い。
この認識を国家レベルで見直していかないとウィシュマさんのような悲劇はたくさん繰り返されるだろう。
第9章 辺境都市から先進都市へ
――グローバリズム時代のオレゴン州ポートランドとその歴史的背景
土田映子(北海道大学准教授)
知らなかったし、あまり馴染みのない地域なのだが、オレゴン州は黒人人口がかなり低いー歴史上、黒人が排他されてきた地域らしい(少しずつ増えてはいるとのこと)。
そして黒人以上に、アジア系移民は異物的存在であったようだ。その立場から今アメリカで暮らしている彼らのことを思うと頭が下がる。
日系アメリカ人など、イメージはあるが朧なのでもっとちゃんと知っていきたいと思う。
第10章 クオータはなぜ嫌われるのか ――割当と平等をめぐるアメリカ現代史
南川文里(同志社大学教授)
まず章題を見て思ったのは、クオータって何?だった。クォーターではないらしい。
クオータとは、何らかの選抜を行う際に、マイノリティや不利な立場にある集団を対象に、一定数の割合を用意するしくみを指している。とのこと。
なるほど、イメージが掴めた。たしかにクオータは日本でも嫌われている…容易に誹謗中傷を受ける所を想像できてしまうくらいだ。
アメリカでもどうやら評判はよくないらしい。この辺りは一章の逆差別の概念と通ずるものがあるのか?
クオータにどのような印象を持っているか、どのようなクオータなら受け入れられるか、調査データと共にクオータへの感情について論じられている。
第11章 ミレニアルズとZ世代 ――あらたな世代政治の誕生とアメリカ社会
梅﨑透(フェリス女学院教授)
日本でも団塊世代やゆとり世代など、なんちゃら世代と名称があるが、アメリカにもあるらしい。
初めて知った。ベビーブーマーズ世代とかサイレント世代とか、章題にあるミレニアルズ世代とかZ世代とか(Z世代はいつのまにか日本でも呼ばれるようになったなぁいつからだっけ?)。
世代ごとの特徴や、いまこの新たな世代はアメリカで何をしようとしているのか。
少し希望が見えた、気がする。それを繋ぎ止める努力はいるよね。
第12章 国際人権レジームとアメリカ例外主義 ――国際人権の歴史のなかのアメリカ、そして日本
小阪裕城(釧路公立大学講師)
今回、本章はちょっと私には難しくて(時間もなかったので)途中リタイア。また機会を作って読みたいところ。
第13章 アメリカ人権外交の欺瞞 ――不可視化されてきたアメリカの暴力
三牧聖子(同志社大学准教授)
「あなた方に彼を助けてくれるようお願いします。あなた方に私を助けてくれるようお願いします。
あなた方に私たちを助けてくれるようお願いします。あなた方に私たちアメリカの黒人を助けてくれるようお願いします。」
冒頭のこの文章で息が止まった。
ミネアポリスの警官によって殺害されたジョージ・フロイドの弟フィロニスによる訴えらしい。
アメリカでは黒人への警官からの暴力・殺人が多いとは聞いていたが、こうして真に迫った訴えをきくと、何も知らなかったことを自覚させ���れる。
アメリカは中国ウイグル自治区について人権侵害だと訴えたが、中国からはアメリカだって人のこと言えないじゃないかダブスタだ(意訳)と返されたらしい。
どっちもどっちで嫌気がさすが、日本も外国人実習生の扱いなどを見ると、例外でないことにも嫌気がさす。(ちなみにウイグルの事に関しては批判すべきだと強く思っている。いや全部だわ。)
つまり、強引にまとめると他人事ではない。
さらにアメリカはイスラエルを支援しているが、BLM運動が高まる中、イスラエル警官がパレスチナ人を不当に殺した。
またテロとの戦いにドローンを使っているが(核なき戦いを訴えたオバマ政権時も)、そのドローンによりアフガンなどで民間人が亡くなっていて一応謝ってはいるが、止める気はないらしい。
うーむ。
第14章 声を上げる理由・耳を傾ける理由 ――被爆者運動と日本社会
川口悠子(法政大学教授)
一番読んでほしい章。
最後には、太平洋戦争時に、日本に原爆が落とされたことについて。そして原爆被害者が声を上げ続ける理由について。
しかし、原爆に関しては被害者であるが、日本人もまた、アジア圏での民間人の虐殺などを働いた罪を背負う加害者でもある。
本章で引用されていた、栗原貞子による「生ましめんかな」という原爆の悲惨さをうたった詩に衝撃を受けた。
またその詩をうたった栗原は当初被害者の立場からベトナム戦争に反対していたが、国際会議に出席した知人から「韓国の人たちや東南アジアの人たち」から「ほんとうに目の前で」、「日本にもう一度原爆が落ちればいいんだ」と言われたことを聞き、「ほんとうに衝撃を受けた」そうだ。
実際にこうやってきくと(薄々そう思われても仕方ないと思っていたので)衝撃を受けるほどじゃないけど、やはり胸にくる。読みながら申し訳ないと思った。
衝撃を受けた栗原は日本の加害性に目を向け、「軍都広島の市民として侵略戦争に協力した加害者としての自身の責任を問う」作品として「ヒロシマというとき」という詩を書いた。
この内容もまた衝撃的である。「わたしたちの汚れた手を/きよめねばならない」。この詩人の詩集あるか調べて、あったら読んでみようかな。
また日本は非核三原則を掲げながら、核兵器を搭載した米軍艦船が日本を通過することを密かに認めていたうえに核を保持しないという規約に調印していないとのこと。これは衝撃的だった。一片も予想だにしていなかった自分が愚かだと思った。詳しく事実を見ていきたいところである。
原発も3.11からそれなりに経って、結局多く稼働している現状を見ると、仕方ないにしてもこの国はなんだろう、と無力感に苛まれる。
どうしたらいいのだろう。
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