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紙の本

本屋に集まる勝手で優しい常連たち

2022/08/23 12:05

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:M77 - この投稿者のレビュー一覧を見る

面白かった。下北沢の書店「フィクショネス」の常連の久美ちゃんの物語を店主でもある作者が語る。

彼女は明るく屈託のない女の子だったが、とある事情から奈良の田舎へ引っ込んでしまい、これまた店の常連でひねくれた元美青年の由良龍臣の導きで帰ってくる。
しかし由良自身も何かに導かれているようにも思える。彼がどんなにひねくれた事をしようとしても、ポンコツな常連たちのお節介もあって良い方へ転がっていってしまうのだ。
どの登場人物も勝手なことを言ってばかりで口調も雑だが、そこが良いのだ。

偉そうなことを言う作者を奥さん桃子が叱りつける台詞が小気味よい。
久美ちゃんと新宮くんがゆっくり恐る恐る幸せに近づいていく様子にしみじみする。
ヒッピーみたいで軽そうなのに謎めいているピンキーも、こだわりとつつしみのあるロリコンのキタノヒロシも、フィクショネスには欠かせない存在。
卑劣な計画を建てても何が成功で何が失敗なのか他人には分かりづらい由良も憎めない。
偏屈を通り越して奇人な獅子虎など最高だ。
みんな大好きだ。

ちなみにフィクショネスは実際に藤谷治が経営していた書店のようですが、2014年7月22日に閉店。
占いライターをしていたのは奥さんではなく作者自身だったようです。
「文学の教室」は現在も続いているみたいですね。

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