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<目次>
第1章 邪馬台国はどこにあったのか
第2章 秀吉は亀甲船に敗れたのか
第3章 日本海海戦でなぜ完勝できたのか
終章 「翡翠」から「大和」へ
<内容>
造船の専門家による「サイエンス日本史」第2弾。そんなに変な説を立てていないので、安心して読める(第1弾の秀吉の「中国大返し」はすごかったけど…)。とはいえ、第1章も第2章も煮え切れない説に終わっている。科学者として、証拠がないのだから「そこまで」なのだけど…。
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この本の著者の第一弾を2年程前に読みましたが、今年の5月頃に本屋でその第二弾を見つけてすぐに読んだ記憶があります。レビューを書くまでに時間が経過してしまいました。
最近は歴史の研究が進んでいるようで、様々な角度から有名な事件を考え直すことができるようですね。事件を左右したことをサイエンスで解き明かす、素晴らしい作業だと思います。このような本に巡り会えて読める私は幸せだと思います。
以下は気になったポイントです。
・日本人とは、大陸と日本海を隔てるだけの近しさでありながら、日本海によって大陸の人々とは異なる特徴を身につけた民族であり、日本の歴史とは、そんな日本人が大陸とどう関わってきたかという歴史でもある(p5)
・3世紀になると翡翠は、朝鮮半島の鉄と交換するための主要な交易品となっていた、そのころの日本では、いくつかの有力な氏族が連合して大きなまとまりを持つ原初の国が成立していた(p19)弥生時代の日本はまだ鉄を生産できず主に鉄の道を通して朝鮮半島から運ばれて翡翠と交換していた(p63)
・航行中の揺れは、揺れの固有周期による、この周期が長いほど揺れが少なく乗り心地はよくなるが、揺れ周期と復元力は相反していて横復元力は小さくなる(p42)・邪馬台国が近畿の場合、関門海峡を通って瀬戸内海を航行する瀬戸内コースとなる、この場合には、投馬国は音が似ていることから、備後の鞆(広島県福山市)が有力である(p78)
・弥生時代の日本の人口は59万人とされているので、当時の人口の半分近くが邪馬台国に住んでいたことになる(p91)
・皆既日食と神話から推定すると、卑弥呼は247年に九州で没した、魏志倭人伝の皇帝からは、参院ルートで近畿に入った可能性が高い、邪馬台国は最初は九州にあり、卑弥呼の死後に東上して近畿の纏向勢力を併合したのではないか(p96)
・英国の海洋進出はスペイン、オランダ、ポルトガルの交易船を海賊船が襲うことから始まる、海賊投資家と言われたエリザベス1世は、当時の有名な海賊フランシス・ドレークにナイトの称号を与え、海賊たちは英国海軍に昇格する、英国の略奪行為にスペインは1588年無敵艦隊を出撃させたがアルマダの海戦で負ける(p100)
・ポルトガル商船の乗員が持っていた鉄砲を種子島時尭は2丁の鉄砲を2000両(現在の1億5000ー2億円)で購入した。鉄砲伝来からわずか8年で日本には30万丁の鉄砲があった(p102)
・玉鋼の製法により、刀の部分に粘土を塗り焼き入れすることで刀の部分や外側は純度の低い硬鉄で、内部と背の部分は純度が高い軟鉄でできているという、世界でも珍しい二重構造の刀剣が作られた、これにより細身で軽量でありながら、強靭という二つの長所を兼ね備えた日本刀は、接近戦では世界最強の武器と言われた。鎌倉時代の元寇の役では、蒙古軍を恐怖に陥れて蒙古撃退の一翼を買った(p106)
・16世紀初頭にスペインが大帝国を築くことができたのも、世界共通の国際通貨になっていた銀(���ルー、メキシコ)を手に入れていたため。銀産出の主役は、日本へ移った。島根の石見銀山、但馬の生野銀山、佐渡の銀山である(p113)
・秀吉は1592年にフィリピンを征服したスペインの総督に対して服属を要求している、そして行ったのが朝鮮出兵、文禄の役であった。秀吉の目的は、朝鮮の制服ではなく、スペインが明に手出しする前に明に攻め込むことで、東洋には日本という強国があることを見せつけるためであったという意見もある(p114)
・日本がロシア艦隊に完勝できたのは、東郷ターンによる丁字戦法の成功だっとは考えにくい、バルチック艦隊は石炭の洋上補給を強いられて疲弊、砲撃訓練は不足、石炭の過剰積載のまま決戦に突入、船底に貝や海藻が大量に付着、摩擦抵抗が大幅に増加していた、戦闘能力は日本の艦隊の2分の1程度であった(p215)
2022年5月28日読了
2022年10月10日作成
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歴史上の定説だったり、見解が分かれているものを、科学で読み解いていく『日本史サイエンス』の第2弾。歴史の専門家とは異なるアプローチによる解釈は新鮮だ。
著者は船の専門家だけに、船が関係している歴史の検証は特に精緻かつ深い。
ただし、サイエンスだけではないのも本シリーズの魅力。
「戦国時代の日本の鉄砲保有数は世界一」「江戸時代の日本人は数学の能力も高かった」「(日露戦争は)本格的な装甲を施した鋼製船を主力とする艦隊どうしが大砲を撃ちあった初めての大海戦」……。つい話したくなるような歴史上の蘊蓄も満載だ。
科学はちょっと苦手という向きでも十分楽しめる一冊。
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日本史をサイエンス、特に船の視点から分析した一冊。
前回に引き続き、今までにない視点で面白かった。
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技術者視点で日本史を解き直す。ブルーバックスならではの素晴らしい視点。好調につき第二弾!
前著は事の他好評だったらしい。早速の第二弾。
今回のテーマは邪馬台国、秀吉の朝鮮出兵、日本海海戦。
前著に引き続き、造船技術者だった筆者の技術的な視点から歴史の謎を解き直す企画。
邪馬台国については当時の船の状況や潮流の複雑な瀬戸内海より日本海航路の方が容易に航海できたことなど具体的に実証していく。
朝鮮出兵については日韓双方まだまだ研究は少ないが亀甲船と日本の補給の状況について定説に疑問を投げかける。
日本海海戦では奇跡の大勝利を日露の艦船の構成などから再検証する。
ブルーバックスから歴史書、というところが実に面白い。知的好奇心大満足の一冊であることは間違いない。
これだから止められない。講談社ブルーバックス万歳!
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今作も興味深く読めた。知らない歴史的事実(世界一の鉄砲保有など)も多い。
著者が言う、基礎研究だけでない、独特な「ものづくり」文化が日本の強み、という結びのことは重い。
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前作に引き続き、船の専門家が歴史の謎に迫る本。今回は邪馬台国がどこにあったのか、秀吉と亀甲船、日本海海戦。
日本海の翡翠と鉄の交易、卑弥呼が没した時の日食による分析、桃太郎伝説と百済の王子・温羅、対馬海流から但馬経由で近畿説。亀甲船のリアルな図面からCGで復元。東郷ターンからの丁字戦法は航跡を見ると並走で戦法が成功したとは言えないこと、バルチック艦隊はフジツボなど海洋生物が大量に付着していたのと石炭の過剰搭載で速力が大きく低下していて戦闘力は連合艦隊の半分ほどであったこと。
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邪馬台国の位置を日食の記載で読み解く話があるのは知っていましたが、そこに現在の時間とずれがあるとは全く知りませんでした。
また、日本海海戦での勝利に生物問題が絡んでいたとは…
歴史とサイエンス、一見真逆の方向を向いているように見えて密接な関係があるのですね。
まだ読み終えてはいませんが、とても興味深い内容だと感じました。
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日本海海戦の分析は、目の前の戦術より、そこに至る過程の重要さでまあよかったが、あと二つがいまいちかな。
結局、邪馬台国の位置はわからんし、朝鮮出兵は基本的な知識がなさすぎて。
思いつきで終わったかな、今回は。
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昔の出来事を現代の科学知識でもって事の真相を究明しようという本。今回は邪馬台国・秀吉の朝鮮出兵・日本海海戦。
日本海海戦は軍神東郷元帥の丁字戦法により勝利したとされている。しかしそもそも丁字になっているかどうかも微妙であり、勝因は別にあるという。まず石炭。当時の巨大戦艦がどれほど大量の石炭を消費するか。露の軍艦は日本に来るまで日英同盟のせいで寄港できる港が限られ、ありとあらゆる場所に石炭を積んでおり、その大量の石炭積載作業で水兵は疲弊。訓練もできず練度が悪かった。過積載とフジツボ等の付着により速度は上がらず。対する日本は開戦前に石炭を海中に投棄するなど地の利が大きかったことを上げている。25センチ以上の口径による命中率が日本0.1露0.035という差。日本は艦橋で測距儀と計算尺で方位と距離を出して各砲に伝えるといった管理手法も進歩していた。
日本のモノづくり技術のすばらしさは、西洋伝来の鉄砲を入手後1年で複製を作れるほど昔から高かった。そのような力が先の大戦敗戦後23年で世界第二位のGNPとなった大きな理由だろう。しかし2010年にGDPで中国に抜かれ、2028年にはインドに抜かれる予測。この低迷を著者は日本が科学の基礎研究を軽視していることも大きな要因だと書いている。
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前作が結構面白かったので新作も図書館で借りて読了。ご自身の強みは船舶の知識というところを踏み外さない安定の展開で、びっくりするような説は出てこない代わりにトンデモまではいかないのも前回ご同様。今回のお題は邪馬台国、秀吉朝鮮出兵、日本海海戦東郷ターン、の三つである。
まず、邪馬台国は糸魚川の翡翠の話が導入だったので邪馬台国北信越説が出てくるのかと思ったが結論は無難なところに着地していた。日本海回りというのも特に目新しいわけではなく、瀬戸内ルート否定の根拠も若干弱いように思う。百舌鳥・古市古墳群へのアクセスは瀬戸内航路だったとも言われているし、この辺の検証を期待したい。
秀吉の朝鮮出兵は、最近はやりのスペインとの関係を含むグルーバル視点が導入されているが、やはりもっと他の要因が複雑に絡み合い、秀吉の判断力の衰えとか周りの忖度とかもないまぜになっての出兵だったと思う。もちろん一因としては面白いのだが……。亀甲船の考察も「実在したようだ」レベルで、不完全燃焼感がある。
それらに比べると、東郷ターンの実際の有効性の検証は面白かった。丁字戦法という単純な陣形だけで勝敗が決まるというのは直感的に眉唾な感じがするので、長距離航行における兵站や海生生物の付着の問題など、船の専門家ならではの説明が入るのがやはりこの著者の醍醐味だと思う。
総じてまあそこそこ面白かった……と思う。第三弾がでて読むかどうかは微妙。
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前作が斬新なアプローチで非常に興味深くかかっただけに期待したが、今作は今一つ。著者の専門である船舶工学に寄せすぎの記述に少し無理を感じた。
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天照大神の神話と魏書の東夷伝、皆既日食と史書の分析で糸魚川の翡翠と半島の鉄が古代船で交易されていた時代の卑弥呼の邪馬台国は九州と大和のどちらにあったのか、大和説に近いが結論はまだである。天文学や船舶工学で科学的に分析する視点は新鮮であるが、この時代のことはまだまだ解明の余地が多く、考古学の可能性は大きい。
秀吉の朝鮮出兵は戦争独特の過剰表現の記録によりデフオルメされ、目的や結果が判然とせず曖昧のままその後の政治に利用されてきた。まだその事実を研究し解明する余地は大きく、グローバルな視点も重要である。
次に日本海海戦の日本艦隊勝利の実態を船舶工学の視点から検証する。ロシア艦隊側から見ると途中寄港もできず半年に及ぶ航海による戦艦の機能低下(船底のフジツボ、燃料石炭量の多さ等)と船員の疲弊下での決戦であり、迎え撃つ日本側に有利であった。T字戦法と東郷元帥の神話を生み、その後の軍国主義・侵略戦争傾斜への起点となる。
歴史というのは権力者が起こった事のある部分を切り取って都合良く再構成し利用するためのものなのであろうか。古い教科書や固定観念に捉われずもっと柔軟に考える必要があることを痛感。
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前巻に引き続き邪馬台国の位置、秀吉の朝鮮出兵、日本海海戦について。歴史的な考察としては普通だと思うが、著者の専門である船や水運についてとなると俄然面白くなり、リアリティを感じられる。思うに、船の専門家である著者が歴史的考察をするのではなく、歴史の専門家が胸襟を開いて著者のような様々なジャンルの専門家の意見を取り入れなければならないのではないだろうか。
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数十年前に歴史専攻の会社の先輩が歴史は文学でなく科学だ、と言っていたが、まさに理系技術者が書いた歴史分析本として世に放たれた本。リアリティのある歴史本として傑作だ。