紙の本
小川洋子先生ワールド
2023/03/15 09:00
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投稿者:マンゴスチン - この投稿者のレビュー一覧を見る
表紙に一目惚れして買った。
全六篇の短編集。好きだったのは『元迷子係の黒目』と『巨人の接待』。
良くも悪くも描写のの解像度が高く、綺麗なのにシュールさも加わり不思議な文章に感じるのが心地良い。
ネタバレなしの感想が難しい。解説は必ず読むべき。
紙の本
語られることのない物語たち
2022/10/15 03:34
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投稿者:une femme - この投稿者のレビュー一覧を見る
気付かれない場所にある物語、他人に語られることのない個人の秘密のような物語を、拾い集めたような短編集。
童話のような非現実的な世界と日常的な世界が絶妙な具合に混ざり合い成立している、主人公らの時間。
注目されることのないところにある物語は、実は、とても人間らしい、豊かで、なくてはならない、形なきものなのだと、何か、安心する気持ちになる。
(ただ、未完成な雰囲気の作品があり、少し残念。)
紙の本
何だろう
2022/09/08 16:58
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投稿者:とめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
老女と孫娘の話をはじめ、助けを必要とするたった一人のための仕事を、著者の優しさと思いやりの宇宙で包み込んだ短編集。ほのぼの。
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いつもの小川さんらしく、登場人物たちには名前がなくて殊更注目されるような人物ではないんだろうなと思っても、登場人物たちの仕事はぴったりとその世界に収まっている。
代わりがおらず、万が一他の人がその仕事をすればそれは取り返しがつかないほど全く違うかたちにその世界を変えてしまうんだろうなというくらいに。それに、変わってしまった世界になると前のことなどすぐ忘れられてしまうだろう。
そんな些細な人の一瞬を切り取る小川さんの目線は優しい。薄っすらと漂う狂気や、抑え込まれないグロテスクも、この尊さはなくならない。さすが小川さんだ。
普段、自分のしている仕事は代わりがきくと思っていて、仕事のためにはそれが良いんだろうけど(不測の事態があっても続く、とかで)、時折こんな仕事が羨ましくなります。登場人物たちの働き方にはプライドがあるし。
「ダイアナとバーバラ」「黒子羊はどこへ」「巨人の接待」が特に好きでした。
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おそらくどの解説を読んでもしっくりこない気がする。
どう足掻いても捉えることができない霧のような小説。
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小川さんの作品の特徴である、どこか品が良くて、
どこかグロテスクな感じが含んだ、短編集です。
この作品たちの主人公たちは、自分の与えられた
仕事を全うするのですが、その仕事の中で、自分の
中で、ある秘密というか、忘れられない過去が含み
として、語られている。表題作の「約束された移動」今作は、ホテルの客室清掃員が、1年に一度必ず泊まる、ハリウッド俳優との2人だけのある秘密を描いているのですが、秘密を抱えた人たちのどこか寂しいが、秘密を抱えた人たちだからこそ通じ合える関係性をどうか感じてほしいです。
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「大事なのはね……」
「そこにいるけど、いないも同じ、という雰囲気を出すことなんだ」
小川洋子先生の作品、小学生の頃に『薬指の標本』を読んで以来ずっと好き。
こんなに美しくてグロテスクな小説を紡ぐ作家が他にいるでしょうか?
小川洋子先生の物語は、「我々は主人公たちのことを何一つ知らない」という実感のもと結ばれるのが良い。
他人のことなどわからない。
それは小説の中でも同じ。
我々はただの傍観者。
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繊細でちぐはぐで欠損があり美しい小川洋子の物語を共有するには言葉を紡ぐしかないのだなあと強く感じる1冊。これをどうやって映像化する?
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6編の短編それぞれに、独特の世界観があり小川ワールドに引き込まれた。映像なしに文章だけで、異次元空間を体験できた。
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ハリウッド俳優Bの泊まった部屋からは、決まって一冊の本が抜き取られていた。Bからの無言の合図を受け取る客室係・・・「約束された移動」。ダイアナ妃に魅了され、ダイアナ妃の服に真似た服を手作りし身にまとうバーバラと孫娘を描く・・・「ダイアナとバーバラ」。今日こそプロポーズをしようと出掛けた先で、見知らぬ老女に右腕をつかまれ、占領されたまま移動する羽目になった僕・・・「寄生」など、“移動する"物語6篇、傑作短篇集。
先日小川洋子さんのエッセイが面白かったのと、装丁が美しくて手に取りました。小説は初めて。
すごい独特だなと思った。フィクションだとすぐに分かるファンタジーな世界観なのに、ぞっとするほどリアルな描写もあったりして、そのアンバランスさが魅力なのかな。ちょっと怖さもあって、私にはまだ早かったかも。分かったような分からないような宙ぶらりんで読み終えてしまった。筆者としてはそれでいいのかもしれないけど、どこがと説明できない何かが歯に挟まった気持ち悪さみたいなものが残っている。バーバラの話が一番ほっとする終わり方だった。
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ため息出る。。
「約束された移動」は、大きな人生のうねりだけではなく。
不特定多数のうちのたったひとり、
自分だけに差し出される手によって(しかしそれさえも錯覚なのだけど)
あらゆる移動は約束され、人々は自分の還る場所に還ってゆける。
喪ったものを少しの間だけ愛でて、そっと閉じて、また還る。今は無くても、愛でていた事実について、あなたと私が証人になる。
『薬指の標本』でも思ったけどそんな描き方をしているかんじがする
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小川ワールド全開。
不思議で残酷で懐かしくて愛おしくて切なくて。
絵本を読んでいるような小説。
素晴らしすぎです。
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小説の中でだけ展開される優しい世界。
ファンタジーといえばそうなんだろうけど、読んでいるときはそう感じさせない。けれど本を閉じるとその感覚は失われる。ま、小説なんだから当然なんだけど、それにしても上手いよね。
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穏やかで静かに進んでいるような雰囲気なのに、不気味さや不穏も存在している。
移動に関わる様々なプロフェッショナルたちの思考が新鮮で、深く考えされられます。
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「約束された移動」「ダイアナとバーバラ」「元迷子係の黒目」「寄生」「黒子羊はどこへ」「巨人の接待」“移動する”物語、六篇。
ここに収められている作品に登場する老人たちの、穏やかな立ち居振る舞い、言葉づかい、仕事ぶり、そして、熱帯魚、子羊、小鳥、子供たちとのふれあい、そのどれもすべてが美しい。
それらは、人目につかず、ひっそりとした佇まいなのだけれど、普通と違ってどこかずれてしまっている、その哀しさがまた美しいと思える。
一旦この物語に足を踏み入れてしまうと、読み終わるのがもったいないとさえ思ってしまう。
濃密で不思議な魅力のある、独特な世界。