紙の本
怪異と一緒に
2023/03/16 22:27
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投稿者:るう - この投稿者のレビュー一覧を見る
無理に怪異の正体を暴かない、追い出さない。
そんなスタンスの作品。
「待ち伏せの岩」
怪異である窓辺の女よりも青野のしつこさ・執着のほうが恐ろしかった。
あのままだったら青野が破滅的な何かをしでかしたと思う。
「火えん」
世の中には誰に対しても不快な事しか言わない人がいるが、その人が姑となれば最悪だろう。
ましてや夫の死後に介護をするとなれば。
死んでからも続くその縁に何かの形で折り合いをつける、尾端さんの提案に読者として救われた。
「歪む家」
冷たい家庭で育った女性が作るドールハウスで起こる怪異。
これでこの人は歪みきった家庭から解放されると確信できた。
「誰が袖」
何があったのか、それはもうわからない。暴れる怪異に尾端さんも苦労させらた。
二度目のプロポーズを、そう言ってもらえる女性は幸せになります!
「骸の浜」
浜の家の近所の人たちが嫌だなあ。
それでも真琴さんが新しい一歩に踏み出せて良かった。
「茨姫」
山岸凉子作品ばり。毒母に引き裂かれた姉妹。
毒母が長女に注いだのは愛情ではない。理想の娘を作ろうという歪んだ欲だったと思う。それに潰された長女とやっと姉と向き合える妹。
この作品が一番気に入っている。
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小野さんの作品は文字を追う感覚とかはなくて、気付けば話の箱の中というか話に顔を突っ込んでいる感じです。
短編集ですが、どれもソレらに対して勧善懲悪!悪霊退散!みたいな話ではなくて、例えば植物でも使い様によれば薬にもなるし毒にもなるのがあって、棲み分けというか、そういう対処の話が個人的に好ましく感じます。またその世界観が漆原さんの装丁にも合っているなぁと思いました。
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今回も楽しませていただきました。(なんで今まで感想UPするのをわすれていたのだろうか?)
怪異との同居がテーマのこの作品はやはり安心して読めますね(*^^*)
考え方はいろいろだし、そこに工夫をして何とかなるのであれば、手を入れるというのは日本人の考え方だったと思います。
無理なさらずに連載を続けていただきたいですね。
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営繕屋の尾端さんはあまり活躍しなかったけど相変わらず静かなホラーがゾッとした。父娘、嫁姑、母娘など刺々しい人間関係が苦しくも内容に引き込まれる一冊。
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怪を退治しない。同居する。
そういうスタンスが、このコロナ禍にあってちょっと特別な意味合いを持つ。
何だかわからないものが一番怖い。だけれど、わからないままでも同居はできる。ただ、できるかどうかはそこに暮らす人間次第。このことが示唆するところは深い。
ともすると怪談の語り手は、種明かしと退治までを語ってしまいたくなる。でも、それが怪談をとても興醒めなものにしてしまう。伊勢物語の「芥川」みたいに。
わからないものはわからない。わからないまま同居しているものが山ほどあって不思議じゃない。
謎をクリーンにして退治して、万事安全安心に暮らしたいという暴力的な欲望が跋扈するコロナ禍にあって、むしろこの怪と日常の地続き感をサラッと描くこのシリーズが、小野不由美先生の怪談の真骨頂だと思う。
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怪異が当たり前の前提としてある城下町のアレやコレ。全てに不条理さのない解決策がある安心感あるご、私は怖いものが見たい。
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CL 2022.9.16-2022.9.18
今までで一番怖さが優しくなったような。
尾端の結末の付け方も今までよりソフト。
ホラーだけど読後感が爽やか。
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「家」には家族が付きもので、家族は幸せの象徴だ。
だが同時に、一つの場所に暮らす人間同士の鬱屈とした空気も孕む。
そしてそれは家に伝っていく。
それを作中の言葉を借りるなら「魔が差す」というのだろう。
魔が差した家には怪異が潜む。その怪異が家族の鬱屈を写し出す。
そうしてやっと表面に出てきた空気を外の人間が換えると、家と魔と家族は新しい空気をまとって、また暮らして行ける。
全編に妖しさと湿った昏さと、優しさがあった。
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怪談だけど原因も由来も明らかにならないし、お祓いもないところが好きだし、それが魅力だと思う。
ただ現象があって、落とし所を見つけて、共に暮らしていく。理解できない、よく分からないものと共存していく。それって怪異に限った話じゃなく人間でも同じだよなぁと、共存について思いを巡らせてしまった。
誰が袖の読後感がとてもいい。
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全6話の短編からなら小野不由美さんの怪談作品第3弾。
「待ち伏せの岩」:想像で美化して望んだ相手が化け物だった時の衝撃。衝撃という言葉ではすまない。
「火焔」:死んでまで尽くした嫁をいびる姑。世の嫁姑が読んだら苦い顔しか出ない話。
「歪む家」:好きなのに思い通りにいかない苦悩、好きだったのに最初の気持ちと乖離していく自身への失望。平和な光景が徐々に歪んでいく描写が上手い。
「誰が袖」:曰く付きの骨董品に一族で抵抗する。どうしようもないことにいかにあらがうかが問われる。
「骸の浜」:先祖代々の家の役割を継ぐのか、継がないのか問題。行くも行かぬも本人の意志次第。
「茨姫」:姉妹格差。兄弟姉妹がいる人は経験ずみのあるある話。目をかけられる側も目をかけられない側も苦しいのもあるある。
今回も日常の中にそろそろと入り込んで浸食していく描写が絶妙で怖かった。尾端はいわゆるリフォーム屋さんで怖い話に持っていけるネタがそろそろないんじゃないかと思っていたが、様々な角度から怪異が襲って来る上に自分にももしかしたらが想像出来る話もありゾクゾクを味わえた。尾端の安定感は相変わらずだがもう少し出番を多めにして欲しい。
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今回は尾端の活躍は目覚ましくないものの、三作目の今作はシリーズの中でも一番優しく前向き気持ちになれた話ばかり。
どの話も怪異・不可思議なものはそのまま。生きてるこちらがそれに沿うように、は一・二作目と変わらずだが、生きてるこちらが沿うように、気持ちも前向き切り替えているのが強く感じ、それがとても魅力的。
各話の登場人物は一人一人、少しずつ後ろ向きな考えの持ち主。しかし、家と家に纏わる怪異に触れて、それにしっかり対峙していこうとしてからは、前向きなって進んでいる。
ホラーなのに前向きな良い気分になれる作品だった。
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待ち伏せの岩は解決してないじゃないか!
誰が袖は代々続く、男児にまつわる怪異ってことで同じ著者の「過ぎる17の春」を思い出した。
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前二作と比べて、だいぶ作風が変わった。
つまらないとはいわないが、少し残念。
前までは良い意味で淡々としていた世界観が、一気に温度を持ったものになってしまったかのよう。
純粋に「家」(箱としての)を題材にしていたはずなのに、今作は、もっと内面に沿った「家」(居場所)を描いた作品のようで、このシリーズに求めているのはそこじゃない。
これであれば、営繕かるかやシリーズでなくても読めるし、小野不由美でなくても書ける、と思ってしまった。
尾端のキャラにも、違和感を感じた。
積極的に怪異の構造を説明するイメージは、これまでなかったのだが…。
あまりに前に出過ぎていて、困惑した。
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修繕で怪異を優しく包む短編連作シリーズ三作目
今巻が一番好きでした
前半じわじわと凄く怖いのに、尾端さんが出てくると怪異にあっている当事者たちの気持ちがほぐれて、共存に一歩踏み出せる
暖かな気持ちになれました
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シリーズ3作目。
古い街並みを残す城下町が舞台のじっとりウェットな怖さ…しかし結末は意外とあっさりでドライ。
短編なのでサクッと読めるけれど、内容はしっかりしていてちゃんと恐くておもしろかったです。
【営繕】とは家の新築、増築、改築、修繕という意味で、フリーの大工さんといったところでしょうか。
家にまつわる怪異現象を排除するのではなく折り合いをつける、営繕屋の視点で解決していくまでのアプローチが斬新です。
とても秀逸なジャパニーズホラーだと思います。
漫画版も出版されていて、そちらも読んでみたい。