紙の本
不合理を理性でとらえるから理不尽なのか
2023/05/31 14:59
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投稿者:nekodanshaku - この投稿者のレビュー一覧を見る
2008年に起きた海難事故について調査をし、国が提示した報告書に疑義を提示したルポルタージュ。犬吠埼沖合で、突然沈没し4名死亡17名行方不明という犠牲者を出した漁船沈没事故は、私の記憶になかった。読み進めば、2001年の漁業実習船えひめ丸の潜水艦との衝突事故を思い浮かべる。本題となる漁船の事故は、事故調査委員会の残した事故原因は、波という自然災害としているが、潜水艦衝突事故の可能性が高いことがわかる。明確な結論がでないまま放置すれば、歴史の中に埋もれてしまうからこそ、本書の存在価値がある。理不尽な世の中。
電子書籍
最高の内容
2024/04/12 12:52
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投稿者:たけぞう - この投稿者のレビュー一覧を見る
事故のドキュメンタリーは初めて読みましたが、とても興味深い内容でした。亡くなられた方々へのご冥福と真相が究明される事を祈ります。
紙の本
事実を知ることの大切さを知った貴重な本
2023/10/25 10:06
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投稿者:再び本の虜に - この投稿者のレビュー一覧を見る
新聞の宣伝に引き寄せられた本は初体験。ノンフィクション作品も読んだことがなくて刻々と淡々と綴られる内容に時間を忘れさせられた本です。以後、新聞に関連記事が上がると目を通すようになりました。
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渾身のルポルタージュ
2023/07/31 07:08
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投稿者:チップ - この投稿者のレビュー一覧を見る
恥ずかしながらこの事故の事は記憶にありませんでした。
えひめ丸の事は大々的に報道されたのに使者17名の大事故にも関わらず、報道は大きくなかったように思います。
波で沈没したにしては不可解な事が多すぎる事故
著者は大変な労力と時間をかけて取材を重ねる
渾身の作品です
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デジャヴな本?
2023/09/18 12:24
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投稿者:tad - この投稿者のレビュー一覧を見る
読みはじめる前からこれはきっと潜水艦の当て逃げを追求しているんだろうなあとかきっとハワイ沖の米潜水艦とえひめ丸の事故の話もとりあげてるんだろうなと読んでいたらやっぱりそうだった。
これって海と空の違いはあるけど日航機墜落事故追求の二番煎じのような本に見えてきます。終わりかたもこの第1作がそこそこビジネスになったら続編が出るんだろうなとの思わせぶり。
絶賛されてる読者の方も多いですが、なんか同じことを何度も何度も繰り返し記述されていてくどいし、書き始めの動機がなんかネタないかなあ的なところからスタートしているような気がして、ちょっとなあと思います。
でもさんざんアメリカ映画でもとりあげてますけど、やっぱ潜水艦はヤバいよなと再認識させてくれる本ではあります、この取り上げた事故とは関係なしに。
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ジャーナリストとはかくあるべきという、お手本のような素晴らしいノンフィクション。
事件を風化させず真実を明らかにして、二度と同じような事故を起こさせないことこそが行政のやることなのにと国へ失望したが、困難に負けず思いを継ぎ続ける人たちに、改めて尊敬と畏怖の念を覚えた。
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意義はあると思うが、やはり新しい事実がわかるわけではないので、事件ノンフィクションとしては…
潜水艦との衝突を匂わせるが、その過程で、日本も実は、海外の脅威に、身近に晒されているんだなと思わせるのはよい
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2008年6月23日、千葉県銚子沖の太平洋で底曳網漁船第58寿和丸(全長50m弱、135トンの遠洋漁船)が、ほぼ凪と言ってよい状況下で沈没、17名が死亡(行方不明含む)、3名が救助されるという海難事故が発生しました。生存者からは「2度にわたる右前方からの”ドスッ”、”バキバキ”という音と衝撃(この”2度”という点が後に非常に重要になります)」、「衝撃後数分で沈没」、「投げ出された海は重油で真っ黒。救助された時は全身油まみれ(相当多量の重油が漏れ出したことになるのですが、これも非常に重要なカギとなります)」等の証言が。
通常は事故の1年以内に公表される運輸安全委員会の事故調査報告書はなぜか3年も公表が遅れ、その内容は「事故原因は”波”。漏れ出した油は20数リットル」という生存者の証言をほとんど無視した内容で、関係者曰く「あり得ない状況を組み合わせることで、どうやったら波で転覆させられるかを考えたような内容」という内容です。公表のタイミングも東日本大震災直後という不可解なものでした。生存者の一人は事故数か月後、海上保安部の職員と偶然同席した居酒屋で「あの事故の事はかん口令が敷かれている」という話を耳にします。これだけの事実だけでも国が”何か隠している”という匂いがプンプンしてきます。しかし真相に迫るに従い、浮かんできたのは国が何かを隠蔽している、どころの話ではなかったのです…。
波、クジラなどの生物との衝突、その他多くの可能性を専門家への取材を基に検証し、最後にたどり着いたのは「潜水艦との衝突」。2001年ハワイ沖でアメリカ原潜「グリーンヴィル」に衝突された「えひめ丸」の事故状況の資料を目にし、あまりに本事案に酷似している事に驚く著者。日本の近海での潜水艦との衝突事故というなら、その潜水艦はどこの国の所属か?当然疑うのは自衛隊の潜水艦です。しかし、事故当時の元海上自衛隊潜水艦隊司令官の証言はその可能性はまずないと断言。なぜなら本事案の4か月前、イージス艦「あたご」が釣り船と衝突し2名の犠牲者が出る事故が起こっており、当時の状況から事故の隠蔽は不可能(乗員全員にかん口令を敷き、事故を起こした艦を密かに修理するまでを秘匿するのは実質不可能)だからというもの。そして元司令官が語る日本近海における各国の潜水艦の活動状況は、我々の想像の範囲を大きく越えるものでした。そこで多くの状況証拠から最も可能性の高い国の名を挙げるのですが、その国名は…。
謎の海難事故の真相を追求する過程で、船舶工学、海洋汚染、海難事故、そして潜水艦運用の各エキスパートに次々と取材を敢行し、そして多くの可能性から選択肢を絞っていく過程はノンフィクションを通り越してサスペンスを読んでいる感じでした。ここ数年で読んだノンフィクションの中でも最高の部類だと感じました。期待を裏切らない1冊、是非読んでみてください。
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ものすごい執念だ。ただ誰かが動かないと捻じ曲げられた事実が正史になってしまう。最後までたどり着いてほしい。
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2008年、千葉沖で漁船が転覆、そして直ぐに沈没した。近くにいた仲間の船も異変に気づき、急いで救助に向かった。しかし結果は、救助された方は3名。収容された遺体は4名分のみ。あとの13名は行方不明で、現在も海の底に第58寿和丸と共に留まっているとされている。
どうしてこの惨事が起こったのか?救助された3人の証言で、2度の、種類の異なる、何かがぶつかり、破壊されるような大きな音がしたということと、多量の油が漏れ出て黒い海と化していたという2点の重要な事実がわかる。風も波も比較的安定していて、転覆原因とは考えにくかった。しかし、事故から3年経ってやっと公表された報告書には、原因は「波」であると記されていた。
フリージャーナリストと伊澤理江さんは、たまたま知ったこの事件が気になり、次第にのめり込んで情報収集に奔走する。その取材は、事故関係者を思う執念の長期にわたる調査で、僅かながらに知り得た情報や専門家の意見により、報告書とは別の原因を探り当てる。
この本において、一番心に残ったのは、沈没した漁船の福島にある会社、酢屋商店の社長、野崎哲さんの人柄や生きる姿勢だった。事故にあった自分の会社の大切な漁師やその家族を心から思う姿勢に心打たれた。この転覆事故から3年、次は東日本大震災が襲う。漁業を営む野崎社長にとって、度重なる試練だ。会社を立て直そうとなんとか踏ん張っていた中の更なる被害に、徒労感、絶望感は想像を絶するものだったと思う。もう心が折れてしまって当然だ。それでも、福島の漁業会長でもある野崎社長は、福島の漁師たちのために立ち向かった。
野崎社長が心を動かされた、石牟礼道子さんの詩を紹介する「花を奉る」の章は特に心に残った。
心に残った文
決定的な真実がなければ、第58寿和丸にまつわる事柄は、書くに値しないのかといえば、そうではないはずだ。たとえ公的な記録から外れていたとしても、関係者の声に耳を傾け、事実を丹念に拾っていけば、記録に残す価値があるものは、はっきりとした輪郭を伴って浮かび上がってくる。
大きな絶対的な力に何もできないとただ屈するのではなく、信念をもって立ち向かうジャーナリストと、度重なる不条理にも腐れず、「どろどろの中でも立つ」野崎社長の姿に、大いに励まされた。
そして、事故の原因を、証言に真摯に向き合い明らかにしようとするこの本が、多くの人の目に届くことが、事故に遭われた漁師さん達にとって、大いに力になると感じた。
ちょっと繰り返しの情報も多く、途中読むのが辛かったが、それも執念の取材の証ということだろう。
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2008年千葉県犬吠埼から350㎞付近で突如転覆・沈没し、17名が犠牲になった第58寿和丸事件を追った秀逸なルポルタージュ。「波による転覆」と調査報告では結論づけられたものの、生存者の証言による「黒い(油が一面に広がった)海」に疑義をもった著者が追跡取材した記録です。単なる記録ではなく、真犯人をさまざまな証拠・証言をもとに追い詰めていくミステリーのようで引き込まれます(文章も短くて読みやすい)。
「1番は旅客の事故、2番は商船、3番目に漁船の事故」と命に軽重をつけられ、情報開示を行わない「国」の不条理と闘う姿には著者を応援したくなります。
第58寿和丸を所有していた「酢屋商店」は福島県・小名浜をベースとしていたことから、2011年の福島原発の影響を受けてその後も悪戦苦闘。「絶対善も絶対悪もない」と言い、「不条理」に立ち向かう著者と酢屋商店・野崎社長には心から敬意を表したいと思いました。
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衝撃。知らんかった。つか、全くこの事件が記憶にない。
潜水艦事故といえばえひめ丸、あと、最近のそうりゅうかと思ってたが、実は実に沢山ある。
十七人がなくなった。
そうして、運輸安全委員会の報告書は、全く生存者の発言を顧みないものだ。
まだ、後ろに隠蔽工作があってと言うなら救われるが、どうにも、少ないエビデンスから結論を導くために、原因不明、と言う結論を避けるために、こう言う原因だった沈むこともあるよね、だったら、こう言うことがあって、こう言うことがあったんじゃないかなあ、という、桶屋が儲かったからには風が吹いていなければならない、と言うような展開が伺える。
しかも、それを隠蔽するためなのか、「守秘義務」を振り翳して何も見せないってのは、民主主義においてあり得ない。この官僚感は、残念ながら痛ましい死者まで出した、財務省の失言隠蔽にもつながる。
現在進行形で裁判が進んでいるようで、一筋の希望はあるが、所詮裁判官も官僚様であるのであまり過大な期待はしてない。結果は追いかけようと思う。
本の構成としては、この事件の真実を追いたいのか、関係者の翻弄される人生を描きたいのか、クソみたいな国の対応を批判したいのか、やや、曖昧な印象があった。
むしろ、もう少し章を増やして分厚くしても良かったかもしれない。
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第一作とのことだが、筆力に驚く。堅実な調査と実証が大事であること。しかしやはりノンフィクションは事実と誤解してはならない。
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この、漁船転覆について、やはり記憶が無くて、大震災もあるだろうが、日々多くの事件事故があるあまりに、埋もれてしまっているんだな!と感じた。
しかし、日本の国とは、誰の為に存在しているのか?この深海に、沈んでいる船を、確認したら、ある程度、少しでも、事実がわかるであろうに‥‥‥
誰もが、自分の事として考えたら、ともかく引き上げる事ができずとも確認すること位出来たのではないか?
世界の多くの国に、支援したり、第二次世界大戦後の、問題で、支援金を出したりと、多額の、お金は、ここに使ったって、良いのではないか?と、本当に、疑問でしかない。
まだ、解明は、続いている、希望は、そこにあると、思いたい。
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2008年にこの船舶事故があった
のもこの本を読んで知った。
詳しく事故の生存者3人の証言を
再現した内容は、言葉にならない程
恐ろしく真っ黒な海に沈んで行く
寿和丸を目の前で見ている様だ。
国を相手に戦う事がいかに壁が高く
秘密保持と言う国の方針を変える
事は本当に雲を掴む様な話だ。
事故からまた震災と酢屋商店の社長
の苦悩もまた、どちらも国を相手に
また高い壁を登らなければ、壁の
向こうにある真相には辿り着けない。
この寿和丸の事故をより多くの人々が
知り1日でも早く新たな真実が分かる
事を祈り、亡くなった方々の無念が
晴れる様祈るばかりだ。