紙の本
生命科学と音楽の哲学
2023/08/12 05:45
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:tad - この投稿者のレビュー一覧を見る
同時進行で「僕は満月」も読んでいるのですが、教授の博学ぶりに脱帽です。どこでそんなに勉強したの?という感じです。話の中身は多少難しいところもありますが、いちいち腹に落ちる対談内容です。
英語学習者なら一度は経験しますよね、right とprivilege の違い。
投稿元:
レビューを見る
図書館で借りて読んだ。
あれ?どこかでこんな話聞いたことがあるなと思ったら、大部分がNHKEテレ『SWITCH インタビュー達人達』の対談で話されていた内容に、未放送分を追加して収録されたものだった。
番組で難しい話をされているなと思ったけれど、こうして文字で内容を追っていても、なかなか。
ピュシス(自然)とロゴス(人の脳内から生まれる理のようなもの)についてー。
音楽家と生物学者、それぞれに築いてきたものは違うし、音楽と生物学のお互いの世界の話をしていても、どこか同じところに考えが帰結するようなお二人のお話は、とても興味深かった。
生命の動的平衡とは、絶え間ない合成と分解を行うことであり、合成よりも分解、まずは壊すことが絶えず優先される、というお話のくだりが特に面白かった。
投稿元:
レビューを見る
生命学者と音楽家との共通の課題、ピュシスとロゴスの対立、相克についての考えは昔からの命題とも言える。自然界はもちろんノイズの重要性についてや音楽の1回性については深く納得。科学の再現性と比べていて、再現できないことエラーの意味についても進化という点で面白い。
今西錦司先生の「直線的ではなくジグザグに進んできた」という言葉も心に残る。
投稿元:
レビューを見る
坂本龍一さんと福岡伸一さんの対談本。 ロゴスとピュシス(論理と本来の自然)がテーマ。 対談番組の内容をまとめたもので2人の上質で深い対話はいろいろ勉強になった。その世界の第一人者は、思索のレベルが違う。お互いの見解を尊重しながら、自分の意見を述べる。 知らないことは知らないと言える。 自分の知識の中で。例え話を使いながら理解する。人の話を聞いて、自分のものにする方法がすごく勉強になった。 色々と対談集を読んできたが、この本はとても面白かった。
この本の出版の翌日に坂本龍一さんが亡くなった。彼はこの世界がどう変わっていくかを知りたがっていた。 彼にとっては無念だったかもしれない。
投稿元:
レビューを見る
もう、面白くて面白くて。
ピュシス(自然)からノイズを排除し、ロゴス(言語)化することで定理を見つけ、人間は発展してきた
だけど自然をあるがままで受け入れようという視点。ロゴスを究めた2人だから見える景色
そして話は「死について」に至る…
投稿元:
レビューを見る
20年来の付き合いという両者による対談集。
コロナ禍以降、教授の死後、直後の出版だが、対談の行われたのは2017年のこと。序文と巻末の対談はコロナが発生してからのようだけど。
いずれにせよ、音楽、アート、哲学、科学など、多方面に造詣の深い二人が、あらゆるものがデータ化、見える化され、「認識の牢屋」(福岡)に閉じ込められていく現代に、自由闊達な動き、フローといった、生命の本来あるべき予測不能な姿への揺り戻しを模索するような対談だ。
それを、ロゴス(言葉、理論)とピュシス(自然)との対立として考察を重ねて行く。
が、話は、それだけに固執したものではなく、それこそ生命の本質であるかのように、様々な話題に触れ、揺れ動きながら、たゆたっていく。秩序を欲してしまう人間の性に抗って、もっと囚われない、自由な魂の躍動を模索していく。
「一番身近な自然は、海や山ではなく自分自身の身体だ」(坂本)
これが、なによりのメッセージだろう。我々の命そのものがピュシス(自然)なのだ。そして、
「ピュシスである自分自身に、ピュシスをコントロールしようとするロゴスが侵入してこないよう、気をつけなければいけません」(福岡)
と警鐘を鳴らす。
これは、いま正に、猛烈な勢いで発達している、AIのことを危惧してのことだ。AI=ロゴス的テクノロジーは、万全ではない。情報処理が高速化、効率化され、労働が軽減されるという表面的なメリットは大きいに違いない。しかし、そのロゴスが、人間の内面、生命に向かってくることを想定しておくべきと注意を促す。
楽しく、高尚な、リラックスした対話の中にも、生命に関わる、大切で重い問いかけが含まれている。
投稿元:
レビューを見る
生まれて、壊れる。壊れて、生まれる。留まらない蓄積しない流動的かつ常に新しい生命や音楽のありようを考えました。再現や予測、監視が馴染まない領域の話でした。
投稿元:
レビューを見る
坂本龍一さん、福岡伸一さん、お二方ともファンなので、気持ちよく読み終えた。
「本から」
自然(ピュシス)の豊かを回復する
壊すことから生まれる
ー音楽と生命の共通点
円環する音楽、循環する生命
投稿元:
レビューを見る
科学 地から 図を取り出す
ノイズ から コントロールへ
人間は意味のある情報を受け取ろうとする 秩序
自分は自然の側 一番身近な自然
宇宙と星座(線形的思考でロゴス化)
音楽と楽譜(構造的な時間の区切り)
作ることより壊すこと エントロピーの増大
音楽の円環
楽譜を書く人 演奏する人 聴く人
ロゴス対ピュシス
非線形的で時間軸がなく順序が管理されていない音楽(永遠に繰り返しが起きない)
山は登ってみないとつ次の山は見えない (今西錦司)
投稿元:
レビューを見る
「教授」と「ハカセ」の人生論。音楽、アート、哲学、科学など、多方面で造詣の深い二人が対話を重ねた末にたどり着いたもの。ロゴスとピシュスの対立。今の社会や人間はロゴスに傾きすぎているが、そもそも人間の存在そのものはピシュス。ピシュスを取り戻すことが必要だね。自然への回帰と畏怖。こうなっちゃったからにはすごく難しいけれど、それでもピシュスの方にバランスをもっていけるように生きられたら。「人は死ぬことで次の世代に場所を譲る」。なるほど。教授も生を全うして新しい人たちに譲ったんだな。
投稿元:
レビューを見る
後半の、ハカセの「壊すのが上回ることで進化の坂道を微妙なバランスで上がる」というイメージはなるほど。ふだんいろいろ考えている人どうしの会話は示唆深い。
投稿元:
レビューを見る
ロゴスの中に生きている自分たちは本来はピュシスの存在で、それを忘れてはいけないということが全体を通して述べられていた印象。やはり西洋のように自分の思ったように周りをコントロールするような考え方ではうまくいかないことも多くなってくるのだと思う。受け入れつつ共存していくような考え方は、どのようなことにも生かされると思う。
投稿元:
レビューを見る
なんとも魅力的なテーマではないか。本書はNHKの「SWITCHインタビュー」をもとにつくられている。この放送は記憶にないのでおそらく見逃している。そして、本書もまた、坂本龍一が亡くなるということがなければ、見逃していたのかもしれない。新聞広告で見つけ、めずらしく妻にも頼まれ、Amazonで注文しようとするも在庫切れ。書店で探すが見つからず、店頭の端末で検索すると在庫わずか、もう一度探すが見つからず、他の新書を手にレジに向かうと、目の前に追悼コーナー、そこに2冊だけ残っていた。真っ白で美しい表紙であるが、もしそれが黒ずんででもいればきっと購入は見送った。しかしそうはならなかった。ということで、ロゴスとピュシスなのだ。それが一貫して流れるテーマである。前半は坂本パートであり、音楽の話が続く。スティーヴ・ライヒやフィリップ・グラスの名前も出てきた。若いころ僕も何度も聴いた。だが生物に話がからめとられていく。ユクスキュルや今西錦司や河合雅雄も登場する。このあたりまでは妻も読めるだろうか。しかし後半、福岡パートでは、生命科学中心に話が進む。シュレーディンガーやプリゴジンも登場する。ベルクソンの弧の話など、僕もかなり苦戦してしまった。福岡さんは動的平衡を理論化しようとしている。ロゴスを使ってピュシスを説明しようとする。それが科学の方法であるからやむを得ない。が、ピュシスをピュシスのまま感じることが大切なのではなかったか。楽譜やDNAというロゴスで音楽や生命というピュシスを作り上げていく。しかしそのロゴスを使っている脳はピュシスそのものではないのか。人間として表現しコミュニケーションをとっていくには共通のロゴスを使うしかないが、ピュシスそのものを大切にする心を忘れないようにしていきたい。坂本龍一さんのご冥福をお祈りします。そして、神宮外苑の自然が守られることを願っています。
投稿元:
レビューを見る
ロゴスとビュシス(自然)の違いから、譜面という音楽の再現性を星座というロゴスで宇宙を限られた視点でまた見てしまう思考のフレームなどから語り始め、音楽と生命について語り合う対談。動的平衡という概念を掴むにもいいし、晩年の坂本龍一さんがどういう概念で音楽に対峙していたかのヒントにもなる。とても興味深い対談。
投稿元:
レビューを見る
メモ→ https://twitter.com/nobushiromasaki/status/1647164654014324736?s=46&t=z75bb9jRqQkzTbvnO6hSdw