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本名は「ひろし」です
2023/04/27 17:52
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
菊池寛が雑誌「文藝春秋」を創刊したのが、
大正12年、1923年のことだから、
今年(2023年)は創刊100年になる。
そんなこともあってだろうか、
直木賞作家の門井慶喜さんが書いた長編小説が
『文豪、社長になる』だ。
5つの章で構成されていて、発表年月でいえば、
第二章の直木三十五との交流を描いた「貧乏神」が2021年秋で最初で、
続いて菊池寛がいかに「きくちかん」となっていったかを描いた
第一章の「寛(ひろし)と寛(かん)」が2022年夏になる。
いずれも、文藝春秋の娯楽誌「オール讀物」に掲載された。
やはり、面白いのは「「寛(ひろし)と寛(かん)」だろう。
冒頭の夏目漱石の死の場面から引き込まれれる。
小宮豊隆や久米正雄といった門人の中にあって、少し距離がある菊池寛。
いまだ名を成さず、新聞記者でしかない。
そんな菊池を援けたのが、芥川龍之介だった。
芥川は終生、菊池を本名である「ひろし」と呼び続ける。
「寛」を「かん」と読むのは通称だが、広く呼ばれていくことで、
彼は人気作家から雑誌創刊へと大きく変身していく。
後半の章では、軍部に協力したという責めをおい 、
公職追放される菊池寛。
彼が作った「文藝春秋」は彼の手を離れ、この国を代表する
総合誌になっていく。
その最後の章に登場する石井桃子や、女子高生だった向田邦子など
史実を巧みにいかした創作として
とても面白くできている。
菊池寛。
昭和23年(1948年)に亡くなるが、まだ59歳という壮年であった。
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少なくても、あと20年は長生きしてほしかった
2023/07/03 15:48
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
「銀河鉄道の父」(名作です)で直木賞を獲得した門井慶喜氏の作品、ということで読む前から期待してしまいます、「恩讐の彼方に」「無名作家の日記」といった名作を残し、芥川賞直木賞を創設した人、菊池寛、少なくても、あと20年は長生きしてほしかった、59歳は早すぎる
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文豪の「マーケッター」としての一面
2023/05/17 09:56
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投稿者:higassi - この投稿者のレビュー一覧を見る
ベストセラー作家にして文藝春秋の創業者・菊池寛を主人公とした歴史小説。文学史の知識として「父帰る」「恩讐の彼方に」といったタイトルは知っていましたが、「真珠夫人」をヒットさせたり、文藝春秋を人気雑誌にしたりというマーケッターとしての一面を初めて知りました。時代を捉えて楽しむ方にとっては難しい時代だったのかもしれず、もうちょっと戦後を生きてほしかったですね。
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投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
菊池寛が、文藝春秋の始祖というのは知らなかったです。戦後、すぐに、亡くなったとは聞いていましたけど、まだまだ活躍できたのに……。菊池寛の小説は、名作ぞろいといわれていますが、未読の方は、まずこの本から
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【史上最も愛された文豪/社長のすべて】ベストセラー作家にして、文藝春秋の創業者・菊池寛。59年の波乱万丈の人生を全力で面白がることで生き切った男の感動の物語。
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読み終わった後で、出版社見たら文藝春秋。なら、この内容仕方ないが、門井さんに些か失望。菊池寛の肉声“作者(火野葦平)が出征中であるなどは興業価値100%で、近来やや精彩を欠いていた芥川賞の単調を救い得て充分である”などとのたまい、火野さんに芥川賞。さらにペン部隊を組織して中国戦線に送り出し戦争礼賛。それが「戦争嫌いでありながら、その戦争を雑誌のためには積極的に利用した」現実主義者程度の認識で前向き評価。門井さんの軽妙なタッチ好きだけど、あまりにヨイショしすぎ!間違った人物像植え付けてしまう罪は大きい。
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文藝春秋発刊100周年で刊行されたと思われる。「忠直卿行状記」「恩讐の彼方に」「藤十郎の恋」あたりは今読んでも傑作で、本人が自分の冠賞を作るのは流石に厚顔だと思ったか、直木賞になっているがこれが菊池賞でも全然問題ない。
作家としても大家だが、企画力・編集力はそれの上をいくアイデアマン。経営は散々だが。菊池寛と文藝春秋の周辺小説だが、目新しい解釈はなく小説としては凡庸。ただ菊池を知らない人には伝記として読んでもいいかもしれない。
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文藝春秋社の創始者にして、大人気作家・菊池寛。
その生涯を明治以降の作家や
文春に関わる人びとを網羅して描く
連作短編から成る。
菊池寛と言えば、
少し前、いやもう二十年くらい前か、
「真珠夫人」がドラマ化され、大流行したっけ。
いつの時代も受け入れられる、ストーリーテラー。
ご本人の人生だって、そうとう興味深いエピソードに
満ちあふれている。
近代文学史好きとしては、
「おお、ここにこの人が」とか、
「なるほど、この出来事を、こう使うのか」とか、
意外なところで意外な人物が現われたり、
よく知られたエピソードを別の視点からきりとってみたり・・・
そういう意味では飽きない。
おもしろい。
でも、この人の歴史小説は、なんというか、残らない。
心を揺さぶられないんだなぁ・・・
家康もヴォリーズも、なんかエピソードの羅列というか。
なので、いつも投げてしまう。
読み通さなくてもいいや、だってこの人(出来事)、
一応知っているからさ・・となるのだ。
最後まで読み通せたのは「宮沢賢治の父」と、他数点。
(ほら、記憶にすら残っていない・・・)
賢治の父の場合も、本作と同じ事、
わたしの知っている文学者や事項を、どんな視点で描くのかなと、
気になったから。
歴史の人や事柄をうまく構築して、一つの物語にする、
その力に長けた作家さん。
自分の興味と合えば、おもしろいのだろう。
なので、本作は★4つということで♫
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文藝春秋さんのメルマガで応募して当たった本です。ありがとうございます。
実は菊池寛作品読んだことがありません。
文藝春秋社を立ち上げたことは史実として知っていましたが、今回はじめて物語として読んでいて、文学と戦争について考えさせられました。
菊池寛が戦争に本当は協力なんてしたくなかったのか、ほんまのことはわからへんなーとは思います。
でも、ペン部隊のこととかはドラマで見たことあって、勇んで出掛けた作家を批判的に見るか肯定的に見るかは難しいです。
ワタシは絶対に戦争反対の立場は崩してほしくないけど、あの戦争中にそういうことを言うことが出来なくなっていたことがほんまに恐いです。
菊池寛以外にたくさん作家のひとたちが出てきてたのも面白かった。
石井桃子さんに興味を持ちました。
でもこの作品のほんまの意図はわかりませんがワタシは戦争反対についてめっちゃ考えさせられました。
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さすが門井慶喜、主人公が立っています。
明治生まれで人気作を数多く書き上げつつも、新人作家の発表の場を作るべく出版会社も立ち上げた人物とは、初めて知りました。
夏目漱石、芥川龍之介、直木三十五、川端康成、小林秀雄など著名な作家、批評家が名を連ね、まるで人物交流記の様な内容でもあります。
軍の独走に反発しながらも時流に逆らえず、尻馬に乗った様な紙面を作り、その機運を煽ることにつながる活動に手を染めてしまう記述を読み、いかに戦時下の時流に逆らうことが難しいのか考えさせられました。
一緒に仕事をすることが楽しいからまた文藝春秋に戻って欲しいと言われる段は、主人公の人物像を良く表しています。
本当に特異な作家だったのだと思います。
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文藝春秋を創刊し、文藝春秋社を興して社長となった文豪・菊池寛の伝記小説。
恥ずかしながら菊池寛の名前は知っていても作品を読んだことはないし、文藝春秋との絡みも知らなかった。芥川龍之介や直木三十五との交流、それが縁で芥川賞・直木賞を創設したこともぼんやりとしか知らなかった。なかなかに破天荒な人物だったようだが、ユーモラスに描かれていて好感がもてた。
気になったのは、「海外小説を原文で読んで要約を書く」「その要約をもとにして自分の小説のストーリーをこしらえた」という箇所。えっ、盗作ってこと?
また「もう六十一なんだから」という記述はなんだろう? 59歳で亡くなったはずだが?
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軽快で心地好い読後感。菊池寛の人生を辿った物語だが、同時に出版社・文藝春秋の成り立ちが解る。この本を介して菊池寛や芥川龍之介、直木三十五たちに逢えた気がした。
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教科書に掲載されることはないだろうけど、
文学史に多大な影響を与えた菊池寛。
実際のところ、どんな人か知らないのに、
こんな人だったんだろうと思わせる人物の描き方、
さすがの一言。
一気に読めた。
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文藝春秋をつくった男、菊池寛。文豪であった彼が何故出版社をつくったのかが分かるのが本書。100年の記念の年に歴史小説として文豪小説としても上手い書き手の門井慶喜さんが紐解いていく。時系列とともに短編形式で進行していき、芥川賞、直木賞をつくった理由や戦争の中で揺れ動く心をつぶさに描いていく。魅力ある男として菊池が描かれているのが印象的。当時の文豪はかくもこうだったのかと思われるが豪快で直線的。周りを巻き込みながらグイグイ進む。まさに土台は人望かに思える。
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公教育で識字率が上がり電灯の発明で夜に余暇時間が生まれた時代。書き手を集めて雑誌を創り、文学賞に亡き友人の名を冠し…。
登場する文豪たちが生の人間として生き生きと感じられて面白かった。