紙の本
いさぎよい程に
2023/05/25 22:33
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投稿者:ya - この投稿者のレビュー一覧を見る
己をさらけ出す内容にため息がとまらない。
彼女の言うマッチョで妥協の固まりのような愚鈍な自分は、こういう繊細すぎてさらけ出される鋭敏な感性知性に満ちたそれでいて自分にも世界にも捨てきれない期待と執着(絶望や失望感はそれ故じゃないだろうか)、多忙や年齢もあいまった鬱や絶望感に、はるか昔その年ごろは自分もそうだったななどと遠く共感しつつ、僭越ながらそんな作者がとても心配になる。だったら読むなよそうゆうの求めるなよと言われてしまいそうだが。どうかお体大切にと祈りつつ、いくつかの作品をついつい読んでます。
作者と真逆で世間やテレビから心をほぼ遮断し、読者三昧で自律神経の調子のよい今の自分にとっては、読みやすいけど考えさせられ、しょっちゅう心が立ち止まりつつ、普段あえて使ってない思考を動かすストレッチになったような気がします。
紙の本
ひきこまれてしまった。
2023/06/07 00:08
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ら君 - この投稿者のレビュー一覧を見る
自分の中の暗くて辛くて深いところへずぶずぶと入り込んでいく。大多数の人は見ないようにして、自分をだましだましやり過ごしているはず。
読んでいて辛くなり本を置いてしまいたくなりそうなものだが、なぜかそうはならずひきこまれて息もつかずに読み終えた。
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生きづらい世界をどうにかこうにか生きている、そんな金原さんの小説よりもむき出しの言葉で綴られるエッセイ。
その徹底的な自己分析のほとんどは自己否定的なものであるから金原さんにとって書くというのはめちゃくちゃ辛いことなのでは、と思うのと同時に書くことなしでは生きられなかったというのも伝わる。
金原さんの強い言葉、それで構成される文章が大好きです
何回も読むことになると思います
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慣れない新生活に四苦八苦!
時間が作れるようになったものの、お酒を飲んでしまうとあっという間に使い物にならなくなるので、「レビューを描こう!」と思い至った今日は、夜ごはんのおとものお酒は我慢して、レビューを描きながら酒を飲むという荒業に出る。金原さんなら許してくれるだろう。
文庫を心待ちにしていた作品。
大好きな金原ひとみさんのエッセイだ。
作品は、物語のように語られ、進んでゆく。
P27「私はなぜこんなにも、変化を望みながら変化を恐れているのだろう。今のままでいいと言ってくれる人がいて、それを望んでくれる人もいる。でももう限界のような気がした」
P87「皆私のことを嫌いになる。いつか見捨てられる。この確信がいつから芽生えたのか分からない。この歳まで誰かにいじめられたり手ひどく裏切られたり見捨てられたこともない。それなのにこの確信があるのは、私自身が自分を嫌いで、見捨てたいと願っているからなのだろうか。今周りにいる人々は、常に自分を好きでいてくれる人ばかりだ。それなのに生きていることに激しい罪悪感がある」
P108「皆が『ここだ』と思える場所を持っているのかどうかなんて分からない。それでも十五回経てきた『ここじゃない』は、これからも『ここだ』が見つからない予想に繋がり、別に安住の地など求めていないしという投げやりな態度にしか辿り着かない」
P212「ずっと泣きそうだった。辛かった。寂しかった。幸せだった。この乖離の中にしか自分は存在できなかった」
金原さんの心の中にある悲しみや孤独の蠢き。わたしの中にもそれらはずっと存在してて、でもその中に、常にずっと入り浸っているわけじゃない。絡めとられては、現実や日常にぐっと引っ張り上げられる。紛らわされる。
自分のことをこれでいい、って思う自分と、自分なんか嫌い、って思う自分が混在している。
極端で不器用なわたしは、きっとこのまま生きていくしかない。
金原さんのプライベートの様子が見られたのはファンとしてはすごく嬉しく、その描写が気になってわたしもカブトムシの交尾の動画を検索して、その様子をじっと見つめた。自分でも引くほどに。
だめだ、ちょっと酔っ払ったな…
おやすみなさい…
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金原ひとみさんの作品は一通り読んでいますが、小説よりもこちらのエッセイが1番好きです。私は「パリ暮らし」と聞くだけで手放しに憧れてしまう一般人ですが、金原ひとみさんのパリでの生活は砂を噛みながらもがいているような印象を受け、憧れが強まるというよりもリアルな海外暮らしを肌で感じて息苦しくなりました。
辛いことを、辛いって書いて終わりにせず、血が滲むような筆致で日々を書き綴るところはやっぱり「書ける人」なんだなーとつくづく。純粋にかっこよかったです。
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小説のようなエッセイ。
大切に読みたくて夜寝る前に1章ずつ噛み締めるように読んだ。
人間はいくつも依存先をもって生きていくもんだと心療内科の先生に言われたことがある。
金原さんの場合は消滅欲求が幼少期の頃からあって、アルコール、小説、恋愛、ピアス、タトゥーなど様々な依存先を求めてここまで生きてきたんだなと読んでいて痛々しい気持ちになりつつ、少しの安堵感も覚えた。
緩やかに鬱で緩やかに睡眠障害でそれらに対処するには依存先に頼ることで、対処療法と分かっていながらも生きていこうとする金原さんは繊細のようでやっぱり強い。
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ストロング缶(合法だけど、危険なドラッグといえる)が好きで、死なないために音楽を聴き、死なないために小説を書く金原さんの、パリに始まり、東京を経てまたパリに戻るエッセイ。
金原さんは心やさしい方だ。
傷つけたくないという思いが、また誰かを傷つけ引きつけ、自分自身を傷つけていくことにすら、辛く思い苦しんでしまうほど。
そんな金原さんの素を惜しげもなく曝け出している。
そして文章は流麗で読みやすい。だから、ダイレクトに心の繊細な部分を抉ってくる。エッセイなのに…。
そのせいか読んでいて辛い部分があると、自衛本能で解離を起こしてしまうのだろう、なかなか頭に入らずぼーっと読んでしまった。
読めたり、読めなかったり、の繰り返し感。
一気に読めるタイプのエッセイではない。
ま、悲壮感一辺倒でもないんだけど。
解説の平野啓一郎さんがおっしゃるように小説として受け止めた方が良いのかもしれない。
それにしても…
ー 「飲んだ後の帰り道は連絡しちゃいけない人に連絡しちゃう時間帯だから気をつけな」(P138)
←そのとおりだな、これ笑。
そういう失敗、誰でもあるでしょ?
♪Fire Cracker/ELLEGARDEN (2006)
「フェス」に登場する、金原さんが好き過ぎて好きであることを公言できないバンドとはエルレなのだというので
からの
♪カブトムシ/aiko(1999)
作中にカブトムシの交尾の話が出てくるけど、僕は昔からこの曲聴くと、どうしても交尾を連想してしまってました。これは交尾の歌なんだ、と思ってました。
ごめんなさい笑
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彼女の生きづらさは彼女だけのものだし、きっと僕よりずっと苦しいんだと思うけれど、確かにある僕の生きづらさと彼女の生きづらさが本質的な部分で重なる。
だから金原ひとみの書くものが好きなんだなと
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痛みや生きづらさが吐き出され、まるで小説のようなエッセイ。時に同感、時に理解できない筆者の精神状態に対し、私の考えをひたすら書いた。書かずにはいられなかった。
筆者は言う。「今、もはや私は悲しみに共感してくれる人を欲していないのだと。私の悲しみなど露知らず、自ら望んで修行に赴く人に救われているのだと。」
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落ち込み気味のときに読めて良かったな。鬱で沈み込むこともある。
生きてるだけで傷つき傷つけられるからこそ、生は輝く
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裏表紙にエッセイ集とあったけど、私小説だと思いました。読み終わってから、タイトルの意味が分かった様な気がしました。
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単行本も持っているけれど、平野啓一郎が解説ということと、持ち歩いていつでも手に取りたいと思って購入した。
ひとつひとつの言葉に込められた感情の豊かさに驚いて、何度読んでも面白い。
鬱になるような人は早起きして、掃除をして、武道と水行に勤しめば治ると思っている旦那さんには金原さん乃至は主人公の気持ちは100%理解できないのかもしれない。だからこそ言葉があって綴るのだろう。
私にとってこの本とこの言葉たちが本当に必要だと改めて思った。
辛いこと憂鬱であることをそのまま受け入れてくれるような言葉たちにまた救われた
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金原ひとみさんの初エッセイということで期待大で読み始めました。
金原さんの小説は全て「え?これ実話?主人公ってもしかして金原さん?」と思うような本が多く、今回のエッセイも、エッセイなのか実話なのか物語なのかいまいち掴めない。
いわゆる一般的な「エッセイ」とは大きく違って、「いつもの金原作品」のような本でした。
パリ在住のリアルな話が出てきて面白かった。
「カニキュル」
2003年の猛暑では熱中症で15,000人も死んだ際、
安置所に収容しきれず市場や冷凍トラックに遺体が安置されたこと。
フランスは建物が石造のためエアコンの設置が一般的でないこと。
寒い国の夏ってそんな感じなんだ〜と勉強になったり、
どこの国でもある男女差別だが、
フランスと日本でどう違うとか、
働く人のスタンスの違いとか、
フランスと日本の子供の違いとか、
毎日のように身近で起こるテロや爆発。
そんな命の危険がただの日常として受け止められていること。
住んでみないとわからない些細な文化や感覚の違いが書いてあってすごく楽しかった!
物語の中盤で日本に帰国し、内容が一転する。
あんなに辛い辛いと思って過ごしていたフランス生活だったが、
日本に帰国後、フランス生活で味わわなかった生きづらさに直面する。
日常的な男達からの気持ち悪い台詞で男女平等について深く考え始めたり、
まずい牡蠣しかないこと、
ワインが高いこと、
日本特有のおかしな親子関係、、
私も関西にしばらく移住していたので、
関西在住時のアウェイ感、
戻ってきてからの東京の真面目さ息苦しさ、
あー分かるな〜と思いながら読んでしまいました。
ないものにばかり目を向けてしまうこと。
ものすごくポジティブな気持ちになった1時間後に死にたいような気持ちになること。
外から見たら「全て手に入れてる人」に見えるけど、心の中は枯渇していること。いつも漠然と何か足りない。
金原さんにはいつも共感できるなぁ。
エッセイなこともあって
最後まとまった文章でも
なにか完結するわけでもなく
いきなり終わった感があったのですが
こうして感想をまとめてみると
すごく共感できるような本だったように思います。
それにしても金原さんの作品は毎回超トキメキ男子が出てくるのですが
今回はエッセイなので出てこない!!!!!
そこだけちょっと物足りないかな〜!!!笑
エッセイにはガッカリ男しか出ないというのは
ある意味リアルでよかったかも。
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死ぬことと生きていることを同じくらい肯定してくれている気がして安心する自分がいる。
寂しくて幸せで、怒っているのに満たされている。そんな曖昧でモザイクな生を、これからもきっと。
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蛇にピアスは衝撃的な作品だった。あれかれ20年近く経ち、その間の彼女の活躍は噂程度に知っているが、作品を手に取ることもなく、ただ、そういう作家さんがいる程度の認識だった。コロナ禍に書かれた作品をちらりと読み、この人の作品はいつかちゃんと読もうと思っていた。タイトルも書影も力強いこのエッセイ。エッセイなのかもしれないし、小説なのかもしれない。どこか他人事なのに内にもぐる生々しさ。こんなにも生きづらそうに、死と近しく、所在なげな存在なのに、彼女の綴る言葉たちは強いのだろうか。