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所謂“紀行”というような分野の文章になるのであろうか?本書はなかなかに面白い!
副題のように「鉄道と宗教と天皇と」というように掲げられている。鉄道沿線を動き回り、古いような新しいような、日本の歴史の中の様々な事柄を考えようという内容である。
古い時代の出来事や、伝えられている話しに想いを巡らせながら、何処かを訪ねるということが在るであろう。特定の地点を取上げる「点」という考え方も、そういう「点」を幾つも含む「面」という捉え方も在る。これらに対して「線」という考え方を打ち出すのが本書の各篇である。
「線」と言う場合、古くからの街道に沿った地域というようなことも在れば、それに概ね沿うように敷設された鉄道というモノ、古くからの街道と無関係に敷設された鉄道、かなり古い街道が廃れた後に敷設された鉄道が廃れた街道に概ね沿っているというようなモノ等、色々な事例が在り得る。本書は、そういう事例を拾い、沿線の様々な旧跡や現存する史跡を訪ねてみるという内容だ。
雑誌連載に供するべく、著者と雑誌編集者との小グループで各地を旅するという様子で、或る程度はその旅の雰囲気を伝える様子も織り込みながら綴られている。通読して「マダマダ、国内には少し思い付いて巡ってみる、興味深いコースが色々と在る」というように思った。
近くに行った経過が在る場所も、近くに行っていながら全然知らないという場所も、全く知らない場所も色々と在る紀行を大変に愉しく読んだ。鉄道沿線が基礎では在るが、タクシーやレンタカーで辺りを動くという展開も少し目立つ感では在った…
8つの篇が収められているが、旭川を巡る篇は秀逸だ。市内線、郊外線というかつての鉄道が廃されてしまった後、その跡を訪ねるというような主旨と、旭川周辺に皇室の離宮を設けるような構想も在ったということ等、豊富な話題が溢れている。これは殊更に面白かった。
恐らく、本書で取上げられた場所以外にも、色々な面白い「線」は各地に在るのだと思う。そういうモノを見出したいという気にさせてくれる一冊だ。
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<目次>
第1章 小田急江ノ島線とカトリック
第2章 二つの「常磐~「ときわ」と「じょうばん」の近現代
第3章 軍隊の消えた街~旭川の光と影
第4章 古代・中世・近代の交錯するJR阪和線
第5章 日蓮と「房総三浦環状線」
第6章 「裏」の山陽をゆく
第7章 神功皇后と継体天皇と北陸本線と
第8章 聖母=ショウモから聖母=セイボへ~神功皇后・マリアとJR筑肥線・松浦鉄道
<内容>
「小説新潮」連載の記事をまとめたもの(2020年)の文庫化。鉄オタの著者らしい視点である。「点」でも「面」でもなく、「線」だと。前書きにそれなりの論が書いてあるが、要するに鉄道を絡めたのである。しかし、天皇論が専門だけあって、皇室とキリスト教の関係とか、知らないことが目白押しである。興味深かった。
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ハードカバーが出た時から気にはなってたんやけど、文庫持ってる版元で原武史であればそのうちやろ、と文庫落ち待ち。
鉄道と皇室、時々カトリック、原武史の持ち駒全投入で楽しい。
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歴史ある面を鉄道という線で結んでいるところが新鮮で勉強になった。天皇の記述が多いが、所詮日本の歴史は天皇の歴史になってしまうのは、文書に残っているのはそれしかないのだから仕方がない。
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ただの偶然だが今住んでいる近くが舞台の、
「古代・中世・近代が交差するJR阪和線」
の他にも、多少なりとも縁のある地域を取り上げた、
「二つの「常磐」-「ときわ」と「じょうばん」の近現代」
「「裏」の山陽をゆく」
「神功皇后と継体天皇と北陸本線と」
があり興味深く読み進んだ。特に継体天皇は最も関心のある天皇とも言えるので、いつかまとまった研究を読んでみたい。
所で著者は還暦を迎えた。そろそろ天皇史から一歩踏み出た鉄道史を語る頃合いだとめ思うのだが…
谷島屋書店本店にて購入。
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忘れてた…。
鉄道という文字につられて
手に取ってしまったけれど
この著者さん、鉄道からひっぱってって
他をメインで語る人だった。
まぁ、鉄道による輸送が
地域の盛衰に関係しているのは確かで
沿線に宗教施設が林立した経緯も
興味深く読みましたが。
テツ的におもしろかったのは
「裏山陽線」の章かな。
新幹線でピューっと行き来しちゃうけど
それぞれの土地の歴史を知ると
また印象が違ってきますね。
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宗教と天皇に関する知識が凄い…そこに鉄道を絡める必然性は一部疑問ではあるが、旭川の部分については鉄道との関連性がとても理解できた。