元校長による、防衛大学校のイロハが分かる1冊です。
2022/09/15 11:26
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投稿者:広島の中日ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者は2020年度まで、防衛大学校の学長を務めています。当書は防衛大学校の知られざる姿を、ふんだんに紹介した1冊です。
防衛大学校という組織の意味から、学習内容、寄宿舎生活、厳しいけどそれだから見出せる同校生活の楽しい所など、防衛大学校のイロハが分かります。
私の高校時代の同級生が多数同校に進学したので、どんな組織なのか知りたくて、購読しました。学ぶ課程、受験の仕方にも言及しているので、同校の受験を考えている方々に、パンフレットとして、当書を読むことを強くお勧めします。
防衛大学校という、知られざる組織の内側を紹介する1冊
2024/10/15 17:37
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投稿者:YK - この投稿者のレビュー一覧を見る
防衛大学校と言われて、その名前を聞いたことはあっても、その内情を知っている人はほとんどいないのではないでしょうか。本書は第9代防衛大学校長であった著者による、防衛大学校の日常や教育カリキュラム、その生い立ちなどを詳細に紹介した1冊です。
本書に紹介されている防衛大学校の一面をいくつか挙げると
・1学年の定員は480名、そのうち約8割が理系学部。女子の定員はそのうち約70名
・防大生は特別国家公務員という位置づけで、学費は無料で、毎月11万7千円が支給され、ボーナスもある
・防大は文科省の管轄でないため、正確には「大学」ではなく「大学校」となり、卒業しても学位がもらえなかったが、1991年に学位授与機構という組織から学位授与ができるようになった
・第1学年は全体として授業/訓練を実施するが、第2学年から陸、海、空にそれぞれ配属が決まり、これが卒業後の自衛隊の配属に直結する
・カッター(漕艇)、水泳、クロスカントリー、持久走などの体力系、演劇、隊歌コンクールなどの共同作業などを年間を通じて競う11種競技というものがある
・学年を縦割りで4つの大隊(グループ)に分け、上記の11種競技の成績を競い、1位には最優秀大隊等の表彰がある
・11種競技の中でも特異なのは「棒倒し」という競技で、1チーム150人で対戦する。陽動、防御、囮などの戦術を練り、また事前練習を偵察したり、情報収集して相手の施術を研究したりする
・海外の士官学校は、陸/海/空の各軍が士官学校を持っているが、自衛隊は一つにまとめられている。これは太平洋戦争時に陸軍、海軍の勢力争いがあって十分な協力体制が気づけなかった反省から
・設立当時は理系学部のみ。これは太平洋戦争時の無理な精神主義、非科学的な意思決定を反省し、科学的、論理的な思考と決断を重視しようとした防大設立時の吉田茂首相の意向を尊重したため
等々、挙げだしたらキリがないほど、興味深い防大生の日々や防大の内情が紹介されています。ただ、時々情報番組等で自衛隊や防大が紹介されるのとの大きな違いは、著者が圧倒的に防大に惚れ込んでいて、「こんな素晴らし学校に、こんな素晴らしい学生がいる」という防大愛が行間から伝わってくる点です。
災害や警察では対応できない非常時に、常に国民の期待を裏切らない活動をしてきた自衛隊。その幹部を養成する防衛大学校とはいかなる組織なのかが良く伝わってくるノンフィクションです。
防衛大学校という、知られざる組織の内側を紹介する1冊
2024/02/15 17:50
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投稿者:YK - この投稿者のレビュー一覧を見る
防衛大学校と言われて、その名前を聞いたことはあっても、その内情を知っている人はほとんどいないのではないでしょうか。本書は第9代防衛大学校長であった著者による、防衛大学校の日常や教育カリキュラム、その生い立ちなどを詳細に紹介した1冊です。
本書に紹介されている防衛大学校の一面をいくつか挙げると
・1学年の定員は480名、そのうち約8割が理系学部。女子の定員はそのうち約70名
・防大生は特別国家公務員という位置づけで、学費は無料で、毎月11万7千円が支給され、ボーナスもある
・防大は文科省の管轄でないため、正確には「大学」ではなく「大学校」となり、卒業しても学位がもらえなかったが、1991年に学位授与機構という組織から学位授与ができるようになった
・第1学年は全体として授業/訓練を実施するが、第2学年から陸、海、空にそれぞれ配属が決まり、これが卒業後の自衛隊の配属に直結する
・カッター(漕艇)、水泳、クロスカントリー、持久走などの体力系、演劇、隊歌コンクールなどの共同作業などを年間を通じて競う11種競技というものがある
・学年を縦割りで4つの大隊(グループ)に分け、上記の11種競技の成績を競い、1位には最優秀大隊等の表彰がある
・11種競技の中でも特異なのは「棒倒し」という競技で、1チーム150人で対戦する。陽動、防御、囮などの戦術を練り、また事前練習を偵察したり、情報収集して相手の施術を研究したりする
・海外の士官学校は、陸/海/空の各軍が士官学校を持っているが、自衛隊は一つにまとめられている。これは太平洋戦争時に陸軍、海軍の勢力争いがあって十分な協力体制が気づけなかった反省から
・設立当時は理系学部のみ。これは太平洋戦争時の無理な精神主義、非科学的な意思決定を反省し、科学的、論理的な思考と決断を重視しようとした防大設立時の吉田茂首相の意向を尊重したため
等々、挙げだしたらキリがないほど、興味深い防大生の日々や防大の内情が紹介されています。ただ、時々情報番組等で自衛隊や防大が紹介されるのとの大きな違いは、著者が圧倒的に防大に惚れ込んでいて、「こんな素晴らし学校に、こんな素晴らしい学生がいる」という防大愛が行間から伝わってくる点です。
災害や警察では対応できない非常時に、常に国民の期待を裏切らない活動をしてきた自衛隊。その幹部を養成する防衛大学校とはいかなる組織なのかが良く伝わってくるノンフィクションです。
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2019年日経の世論調査:日本で最も信頼できるのは、自衛隊(60%)、裁判所(47)、警察(43)。信頼できないのは、国会議員(56)、マスコミ(42)。同年読売新聞では、信頼できるのは、自衛隊(78)、裁判所・病院(67)。三浦朱門氏の防衛大学校卒業式祝辞:戦い好まば国亡び、戦い忘れなば国危うし。多くの防衛大学校卒業生は、生まれ変わっても防大に入りたい、と口をそろえる。他者のために生きるプライドを秘めた人材を育成する学び舎を校長として奉職した国分良成が語りつくした書「防衛大学校」、2022.8発行。
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氏の防衛大学学長就任当時(2012年4月)は、中国による尖閣海域への侵犯行為がケタ違いに活発化したころと前後しており、日本の安全保障が大いに脅かされていた。故に、中国とのパイプを有し、中国問題の専門家である著者が任命されたのだろうと勝手に憶測していた。
が、そうした内容は一切語られてはいない。
むしろ、慶應大学法学部学長だったことから、防衛大学校の創設に当時かかわった小泉信三慶応大学学長および、初代学長槇智雄という福沢門下生の流れのほうが色濃かったのかと本書を読んで思った。もちろん、慶應閥でありながら、中国現代政治の専門家である著者は、その時期およびその後の東アジア情勢を鑑みベストの選択だったのだろうかと拝察する。
また、2011年の東日本大震災や、その後の異常気候による自然災害頻発のご時世に、各地で活躍する自衛隊の復興支援が国民に広く支持される傾向にあったころに、この防衛大学長の役を引き当てた著者の強運も思わざるを得ない。
と、まぁ大学時代の恩師の著作なだけに、防衛大学校そのものを語る内容よりも、その内実に触れる著者の立場、その思いや行動に興味がいってしまってしょうがなかったが、非常に面白く読めた。
給料が支給されながら学べるとか、全寮制で卒業するまで外出はほとんど出来ない等の話しは、自分の学生時代もそのも後もよく聞いた話ではあるが、それだけではない、学生生活や防大の実態がより実感の伴うかたちで紹介されていた。また、卒業後の彼らの職場となる自衛隊についても、改めて、そうなのか?なるほど!と思わされる記述も多かった。
「防大はもともと理工系しか存在せず、文系が導入されたのは1974年(昭和49年)である。現在でも学生の8割弱が理系」
「陸軍士官学校は3度の戦争を行ったが、戦後の自衛隊は一貫して平和を守り続けた。これは誇りであり、防大は陸軍士官学校を超えたと思う」(同じ61年間の歴史の中で、という話)
「彼らは街に出る前に、あるいは新幹線や航空機に乗る前に必ず私服に着替えており、そのための時間と場所を確保するのが副官たちの重要な仕事の一つ」
「まだに自衛官は医療関係者、役所職員、警察官、消防士などのように「エッセンシャルワーカー」として認定されておらず、コロナ対応の仕事の現場でも自衛官のワクチン接種は後回し」
「2023年度(令和5年度)には、480名中女子の募集予定が70名から一挙に100名になる予定で、21%にはね上がる」
などなど。閉ざされた学び舎の中での話ではあるが、一般の大学より、よほど時代の波、世相に晒されているような気もする。
比較的、明るく前向きな話に終始しており(著者の為人がそうなので)、いわゆるイジメや上級生と下級生の関係性などには深くは立ちいっては行かない。そこはあくまで学長としての立場、高所大所から見た防衛大学の姿ということで、スマートに描かれている印象は受けた(そこが物足りない、実態は伏せられていると指摘する向きもあろうかとは思う)。
防衛大学入門書としては、極めてよく書けており、非常に読みやすく、あら��ることがストンと腹落ちする見事な一冊だった。
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『#防衛大学校』
ほぼ日書評 Day625
"防大(防衛大)"の正式名称は"防衛大学"だと記憶・認識してはいないか? 正しくは"防衛大学校"。末尾に「校」の字が付くのだ。
この1文字があるかないかで、大変な違いがあるのだが、それ程に、我々の多くは、同校のことを知らない。
昨今、かつての災害救助等のみならず、国家"自衛"という本来の枠割においても、期待と存在感を増す自衛隊の精鋭・幹部を送り出す機関であるのにだ。
著者は2021年まで9年にわたって同校の学校長を務めた経歴を持ついわば中の人。多くの人にとって「謎の学校」である"防大"の歴史と今、他国や戦前の士官学校等との違いや目指すところがよくわかる1冊だ。
冒頭でも触れた「校」の一文字。実は"防大"は大学ではなく、各種学校の位置付け。1991年までは、"防大"卒は、なんと高卒扱いだったという。その後の「修士」を得る過程についても「研究科」と位置付けられ、「大学院」と名乗った場合、10万円以下の罰金を支払う必要がある。
そんなこんなの、「なるほど!」や「へえー」が満載の同校であるが、実質的な創設者である吉田茂首相の、防衛大第1期生にかけた言葉が、半世紀を優に超えて、いまだ「現役」なのが何とも哀しいものがある。
「君たちは自衛隊在職中、決して国民から感謝されたり、歓迎されることなく自衛隊を終わるかもしれない。きっと非難とか誹謗ばかりの一生かもしれない。ご苦労なことだと思う。しかし、自衛隊が国民から歓迎され、ちやほやされる事態とは、外国から攻撃されて、国家存亡の時とか、災害派遣の時とか(…)君たちが日陰者であるときの方が、国民や日本は幸せなのだ。耐えてもらいたい。一生ご苦労なことだと思うが(…)」
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防大関係の本は何冊か読んだことはあるが、これは、元学校長自らが記したもの。
学生が、学生の目線から、学生生活を描いたものとはちょっと違う感じだった。
まさに、世界最高の士官学校を目指す防大とは何か、設立に関与した人物たちの強い思いや先見、思いなどが今に至る。
意外に、慶應義塾との関わりが強いことにも驚いた。
若干、親父的なウザさはある記述だが、背筋は伸びる。
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National Defense Academy of Japan
https://www.chuko.co.jp/tanko/2022/08/005557.html
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防衛大というと、自衛隊幹部になる人が行くところかな、と、ぼんやりとしたイメージしかない。
新聞書評で見かけ、そういえば防衛大ってどんなところなんだろうか、という興味で手に取ってみた。
著者は第9代防衛大学校長を務めた人物。自身は慶応出身で、防衛大のたたき上げではない。
防衛大の特殊性や三大行事、教育・訓練、日常生活、成立と歴史、大学校長の仕事などについて述べられる。
まず驚くのが、防衛大学校が各種学校であって大学ではないこと。だからトップも学長ではなく、学校長なのだ。
大学と名乗るには文科省の所管である必要があるが、防衛大は防衛省所管であるため、大学とは認定されない。1991年までは4年間教育を受けても学位は与えられなかった。現在では学位授与機構が出来たため、ここを通じて学位は授与されるようになった。大学院にあたる研究科を修了すれば修士号や博士号も得られる。
防衛大は大学としての側面と士官学校としての側面がある。
1952年に保安大学校が設置され、54年に防衛大学校となったのが、防衛大の始まりである。ちなみに防衛医大は防衛大の医学部ではなく、別組織であり、所在地も異なる。
大学校というが、扱いは公務員であり、給与も出る。したがって入学試験に相当するものは、採用試験と呼ばれる。
世界各国の士官学校は陸・海・空それぞれに分かれた形になっているところが多いが、日本の場合は1つに統合されている。
防衛省の人事教育局の管理下にあるため、自衛隊との直接の結びつきは弱い。
歴代学校長はすべて文官であるが、これは戦前の軍国主義への反省から来ているものだろう。が、世界的には士官学校の校長が軍人でないというのはかなり珍しい。
世界各国から来る留学生がかなり多いのも日本の防衛大の特色である。
学生は寮生活を送る。規律が求められるため、上下関係はかなり厳しく、門限や外出規制等規則も厳しい。だがそうでありながら(いや、そうであるから、かもしれないが)、学生同士の結びつきは強く、生まれ変わってもまた防大で学びたいと思う者も多いらしい。
防衛大の学校長の毎日はかなり忙しいようで、全国各地で行われる防大生の訓練を視察したり、潜水艦や護衛艦に乗ったり、世界の士官学校を訪れ、親交を結んだり、盛りだくさんな日々である。外部との折衝が仕事の大きな部分を占めている印象を受けた。
欲を言えば、学生の日常生活や実際の授業内容(特に防衛学)がもう少し知りたかったようにも思うが、著者自身は防衛大の出身者でもなく、また機密にあたる事項も多いのだろうから、これはないものねだりかもしれない。
全体に、なかなか興味深く読んだ。