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先月(2017年5月)

能登さんのレビュー一覧

投稿者:能登

3 件中 1 件~ 3 件を表示

表題と内容にスレ違いがある

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

大内氏の手による一連の「商船シリーズ」にして、小型木造船をテーマにした1冊。 
 主題は、特設哨戒艇をメインとするであろう事は多少なりとこの手の話題が好きな人には容易に想像がつくものの、題名と違って「小型(木造)船」を漁船という名に集約してしまっているがために、少し詳しく調べたい人には違和感が先に来る書でしょう。
 同時に、機帆船を同じ本で取り上げているものの、「船体だけ」から似たようなものとしてみなしているため、その特性を生かした徴用というものが本書からは見えにくく、それが一貫性のない記述となっているように見えるのが全体を通して残念な点です。

 一例をあげれば、機帆船は日本沿岸の港間、都市間を結ぶ小型船舶ではあるが、その乗組員は1週間程度の航行に必要な最低限の人数、法的な制約を無視して見た場合、航海に2名+機関1名+補助2名程度の人数で運航できなくはなく、500トン程度の大型船でも10名程度であり、同時にこの人数を半月生活させる程度の内装しかなされていない。(特に清水倉・食糧庫関係は荷役時の補給を前提とするため貧弱となる)
 一方、遠洋漁船は明治後期の機力化に伴う外海進出と遭難の頻発化により主機のディーゼル化(清水消費の極限による延伸化)や遠洋漁船の鋼船化、無線通信系の整備といった技術革新があり、同時に漁場(船団だけでなく、母港や造船所を共有する集団)ごとに船体や艤装が規格化されつつある点が沿岸用漁船との相違点とできるでしょう。

 こうしてみると、陸軍が機帆船を、海軍が遠洋漁船を徴用したという著者の記述は適当ではなく、艦隊に配属可能(特に無線関係の保有)な遠洋漁船は海軍が当初から囲い込みをしており、陸軍は輸送部隊で引率するため臨時に配属するトラック(管理部門は軍の兵站機関がうけもつ)としてみなすため、手つかずであった機帆船を徴用したと見るべきでしょう。

 また、遠洋漁船と区分するものの、後半に英国漁船の項で、沿岸・近海・遠洋と図示して分類する一方で、国内のソレに関して言及が無いため、どの種類の漁船(これば行動日数=作戦海域として理解するためにも)がいかなる作業をこなす能力を持つとみなされていたかが判らなくなっており、特設艦艇ごとによる徴用の傾向などが分かりにくい点、捕鯨船を初めとする大型漁船へ海軍が注視している点や、特務艇に漁船形式を取り入れ新造した状況などに触れていない点がが惜しまれます。

 最後になりますが、どうしてもメカ、船体に偏重するためか機関や艤装には記述が少なく、乗組員の損耗死傷者には触れても人員構成や徴用経緯といったソフト面には触れていないため、この種の徴用関係を調べたい人には物足りないかもしれません。

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入門としてはお勧めではあるが

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

これまでの大内シリーズを通読している人には極端に珍しい内容ではないですが、同シリーズの傾向として日英米を5:2.5:2.5ぐらいに比較して手堅くまとめている感じで、軽く流れを抑えるにはよい読み物だと思います。

 ただし、といっては何ですが、視野が設計中心になっているため所々怪しい記述があるのも事実です
 大きなところを言えば、日本の戦標船が実質的に戦時設計に切り替わったのは二次からであり、実質的に稼働し始めたのは昭和17年半ばからだという要点のまとめ方も、間違ってはいないのですが、これを関係各所の見通しの甘さと書いてしまう辺りには注意が必要でしょう。
 大陸での戦火が激しくなってくるにつれ、特設艦船への改造工事や、徴用船舶の傭船開始前の点検補修が激増しおり、こういった軍官工事は予算的な話もあり期日厳守で作業が行われます。当然、そのしわ寄せは納期に余裕のある民間船にくるわけですが、戦前の段階で艦艇は3月末に進水・竣工&引き渡しし、4月は中だるみとなり、5月に商船の進水が(ry な傾向がみられます。対米英戦を企図し、出師準備が発動された昭和16年半ばよりの1年間は実際問題手持ち工事の処理に追われ、続行船と戦標船を問わず着手できなかっただろう事は想像に難くなく、海務院と艦政本部商船班がある程度の権限を確保して建造予定船と修理船を切り捨て、線表を白紙にできたのが開戦半年後の17年半ばだったという事でしょう。
 
 他にも溶接の問題も、技能工だけの問題ではなくて溶接棒の材質や、鋼板規格の切り下げに伴う工作の再確認が必要になったとの視点は触れられておらず、設計を裏付けする「現場工作」からの視点や、舶用鋼材のうちの特殊鋼の不足が船尾機関船の採用を促したといった点にも触れられていません。

 また、改E量産用の4造船所(三菱若松、播磨松浦、石川島東京、川南浦崎)で学徒の勤労奉仕や囚人・俘虜の使役について触れる一方、工場レイアウト以上の母体造船所とのリンクや、各々が異なるレイアウトを採用した経緯は省略されているため、船台と内業工場が増えた以外の生産効率の確保といった面での意味合いがつかめず、結果として別小節にある被曳航油槽やコンクリート船、または三菱広島の新設造船所(A型量産用)といった戦標船トータルの量産にまで話が繋がっていきません。
 同時に、鋼材では艦艇優先で商船用が逼迫したものの、木造船も海軍の特務艇建造へリソースが食われて新設造船所や集約工場を作る必要が出てきたといった面へリンクするに至っていません。

 あくまで「入門」を冠しているので、刊行された内容以上のものを書き込もうとするとウラの取れないところが中心になるのでしょうが、業界全体で量産させるために艤装図や工作図(ノウハウ)を吐き出させたり、人員を交流させたりといった物品以外の部分や、期日厳守にばかり追われて残工事を担当船会社の手配で修繕用造船所で辻褄合わせ足りといった辺の部分も少しでよいので整理できれば、「戦時標準船」が意味する「量産」がもう少し纏まって理解できるのでは無いかなと思います。

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タイトル設定に振り回された感のある

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

一連の大内氏の商船戦記シリーズ(とコメント主は仮定します)の1冊。

 著者の独壇場の感のある徴用商船のうち、正規軍艦に準ずる特設巡洋艦をテーマに、日英独の同級艦船のエピローグを軸に解説を試みており、入門書として読むにはすんなりと読める本でしょう。

 一方、特設巡洋艦という日本海軍の用語で無理やり文中を統一しており、かつ英独の同級船の(遠距離)船団護衛艦、通商破壊任務艦に言及しているため、1冊にまとめていながら中身がバラバラという違和感がぬぐえません。

 そもそも、日本海軍の分類した特設巡洋艦とは何か。英独の補助巡洋艦(代用巡洋艦)、通商破壊艦とは何か。
 これは既刊の特設艦船入門とラップするのですが、各国海軍が戦時に数的に補う必要のあったものは、外洋を長期間行動できる「巡洋」艦なのか、後方部隊・戦隊の旗艦を務められる巡洋「艦」なのか、後方部隊ではなく戦闘部隊で戦隊を構成できる特設「巡洋艦」なのかといった需要を説明できていないために、日本は通商破壊戦に無頓着、英国は船団護衛で活躍、ドイツは貨客船に変装しやすい船を徴用したという解説に落ち着いています。
 日本海軍の、特設潜水母艦を配備することによって平時に潜水戦隊旗艦であった5500トンを前線に抽出したといった、巡洋艦の任務を代行するといった運用面での評価は触れられておらず、同時に米国が同級の艦船を配備しなかった(決して巡洋艦が足りていたわけではない)面には一切触れられてはいません。

 当然、初心者に読みやすくする入門書である以上、取捨選択は必要であり、混乱しないように用語もある程度揃える必要があるのは判るものの、タイトル設定に失敗したと思われる点と、既刊との差別化がなされていない面から厳しい評価となります。
 また、特設砲艦を特設巡洋艦の小型版として紹介していますが、二次大戦期の巡洋艦が海軍軍縮条約により数的に制約されかつ質的に特異な発展を遂げた事を勘案すれば、軍艦というものの本質は小型の特設砲艦こそが軍艦の最低限のとしての能力を抑えたものであり、その中で「巡洋艦」という一段格上に昇華した(させるべき)ものはなんだったのかという視点があればこのテーマでより面白く言及できたのではないかと思います。

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