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  3. あずきとぎさんのレビュー一覧

あずきとぎさんのレビュー一覧

投稿者:あずきとぎ

65 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本失踪日記 2 アル中病棟

2013/10/31 19:02

力作!

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

前作「失踪日記」で未完になっていた「アル中病棟」の続きであり、完結編。
表紙カバーに描かれた一枚絵を見るだけでも、本作に掛ける著者の意気込みが分かる。
病棟を斜め上から俯瞰した絵なのだが、実に細かく描き込まれている。
この熱量は、当然作品本編にも表れており、吾妻作品の中でも、一コマ一コマにここまで描き込んだものはあまりないだろう。
前作と比べると、人物の服装や髪のツヤ、背景の端から端まで実に細かく描かれている。
前作が四段組み(1ページを横に四分割してコマ割りをする)であったのを、本作は三段組みにしており、一コマが広くなった分より細部に渡って描き込まれていったようだ。
(これは、前作の描画が悪いとか手を抜いているということではない。前作の絵もまた味わいがあるのだ。)

また、豊富な登場人物の描き分けも、本作の見どころの一つだ。
当時、病棟には30人ほどが入院していたというが、洗面や食事のシーンに描かれている多数の人物、そのほとんどが「登場人物」としてストーリーに絡み、それぞれに別個のエピソードを持つ。
さらに、そこへ複数の医師や看護師が登場する。
これほど多くの人物を描き分け、キャラ付けしていくのは、大変なことだ。
著者の力量に、改めて感服するしかない。

読み進めていく中で、特に印象深いのは、大ゴマの挿入の仕方とその描写である。
ページの三分の二、あるいは1ページ丸々一コマという大ゴマに描かれた絵には、その時々の著者の心情――開放感や戸惑い、不安などが、読み手の心に迫ってくるように巧みに、それでいてどこかしら空虚感を伴って表現されている。
結尾の3ページは、何とも言えない読後感を与える。

内容(ストーリー)は、アルコール依存症の治療の経過を、病棟生活を中心に描いたもので、過度の飲酒が体に与える影響や依存症の症状、治療の進め方、病棟での生活スケジュールなども説明されているので、これらに関心のある人にはよい参考になるだろう。

アルコール依存症の治療過程の実態を描きつつ、それをエンターテインメントにまで仕上げている、著者入魂の一冊である。

(ちなみに、コマの端などに、魚や得体の知れない生き物が描かれているときがあるが、これは幻覚ではなく、吾妻作品ではよくあることなので、誤解なきよう。)

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紙の本カオスノート

2014/11/13 01:56

著者の代表作がまた一つ

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

書名が表しているように、およそ250ページの単行本一冊に不条理ギャグが溢れんばかりに詰め込まれている。
吾妻作品を構成する三要素――ギャグ(殊に不条理ギャグ)、SFマインド、美少女(美しいというよりは、かわいい)のうち、不条理ギャグを前面に押し出し、かわいい女の子を添え、時折SF色を交える。
「○月○日 ~をする(or した)」で始まる各エピソードが、一コマから数コマ、数ページと長さもまちまちに、次々と繰り出され、そのすべてがありふれた日常を離れた不条理な世界だ。
帯の推薦文で高橋留美子が「一人大喜利」と表現しているが、正にどれだけ不可思議な世界とギャグを生み出せるかという「一人ネタ出し合戦」といった印象。
例えば、「飛び出す絵本を読む」では、ページをめくる度に様々なものが飛び出してくる。
また、海上を漂流しているときには、続々と多種多様なものが姿を現す。
一コマだけのネタが、いくつも連続して繰り出されると、その非日常的なめくるめく不条理世界に取り込まれていくかのようだ。
ここで、その不条理性に「なんで」と問いかけてはいけない。
目の前に描かれているものは、見たままそのものでしかなく、「なんで」という問いは無粋でありナンセンスである。
ここは、この日常を離れた無秩序で不条理な混沌世界に身を委ね、存分にそれを楽しむのが正しい読み方というものだ。
実際、僕は、次はどんなネタが飛び出すかと、うきうきしながら楽しく読んだ。
帯の文句に「最高傑作」とあるが、著者の代表作の一つに加えるに十分な傑作だ。

ちなみに、本書後半から著者(の分身)が、胸に「SOBER」と書かれた黒いTシャツを着ているが、これは以前鬼束ちひろのHPで、販売されていたもの。
(sober…シラフの、酒・薬をやってない)

(カバー裏に、「著者判断によるボツ原稿」が掲載されている。本書がただ勢いだけで描き進められたのではないことの証左である)

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水木しげる妖怪学の集大成

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

水木しげるによる妖怪研究の集大成ともいえる書。
1ページに1項目(絵と解説)を載せ、全895項目(妖怪…764、あの世…19、神様…112)を網羅する。
これほどのページ数となると、文庫が立つ(!)。
内容は、著者の勝手な想像・創作などではなく、論拠を示しながらの解説・論考である。
資料としては、江戸時代の鳥山石燕が描いたいくつかの妖怪画集や、「和漢三才図会」を中心に、記紀や風土記から柳田國男の著作まで、古代から近代にまで及ぶ。
そこに、著者のフィールドワークの成果か、各地の伝承・習俗を加え、著者なりの見解を論じている。
改めて、この分野における水木しげるの偉大さを、思い知らされた。
妖怪だけでも764項目あるので、読み進めるのが大変に思えるかも知れないが、この手のものが好きな人にはまったく苦にはならないだろう。
大体20~30項目も読むと、始めの方の内容はあらかた忘れてしまう。
さすがに900近い項目を、頭に入れるのは難しい。
むしろ本書は、一読した後、時間が空いたときなどに書棚から取り出し、パラパラと適当なページを開いて数ページ読むことで時間を満たす、という読み方が相応しいのではないか。
妖怪などの名前と絵を見ていくだけでも、十分楽しい書だ。

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紙の本この世界の片隅に 前編

2013/12/25 01:28

戦争を知らない世代に奨める

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

本書の主人公は、浦野すずという少女である。
本編の前に、雑誌掲載時読み切りだった短編が三編あり、「プロローグ」的な役割を果たしている。
この三編では、すずの幼い頃などが描かれ、ここで、すずの家族構成・性格・絵が得意なことなどが提示され、本編の中でちゃんと回収されている。
すずの家は、広島の江波地区で海苔の養殖をしており、両親と兄、妹の五人家族だった。

彼女は、「第1回 18年12月」で嫁入りが決まり、「第2回 19年2月」で嫁ぎ先の呉へと移る。
以後、呉での生活が描かれていくが、非常に丁寧に詳しく、それでいて自然に分かりやすく描写されている。
作者こうの史代は、1968年生まれなので、当時の様子を知っている筈もないのだが、まるで見てきたかのように自然と生き生きと、描かれている。
その裏付けが、巻末に並ぶ「おもな参考文献」で、たくさんの書物・資料が載せられている。

さて、昭和19年といえば、もう戦争も末期に向かっている頃で、呉には(当時、東洋一と言われるほど)大きな軍港があり、当然軍事的要衝として標的になっていた。
やがて、空襲警報が鳴り響くようになり、本土への空爆が始まり、呉にも米軍機が来襲するようになる。
物資の窮乏もひどくなる中、どうしても暗くつらく厳しくならざるを得ない物語を、ささやかなユーモアで和らげつつ、戦時下の生活が描かれていく。

しかし、現代に生きる我々は知っている。
戦争は、昭和20年8月15日に終わるということを。
そして、その直前、広島と長崎に何が起きたのかを…。

終戦を迎え、すずと、呉の家族、広島の実家の家族の人たちは、それぞれ皆何かを失い、何かが残った。
そして、そのような状況からでも強かに生きていこうとする様が、描かれている。

僕のように、戦争を直接知らない広い世代の人たちに読んでもらいたい作品である。

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紙の本総員玉砕せよ!

2013/10/19 01:33

実体験をもとに描かれた戦場の悲惨さ

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

1973年発表の作品。
太平洋戦争の戦場を描いた作品として、あまりにも有名。
作中で玉砕する大隊に、水木しげる自身も所属していた。
しかし、前年に爆撃により左腕を失い、傷病兵としてラバウル近郊に下がっていたため、玉砕に巻き込まれることを免れたのである。
その為、各場面の描写はとても生々しい。
前半は、占領地バイエンでの日常が描かれる。
南方のジャングルの過酷な環境とアメリカ軍による断続的な攻撃に晒される日々は、正に生と死が隣り合わせである。
淡々と人の死が描き継がれていく。
後半は、アメリカ軍の反攻に遭い、追い詰められ、切り込みを決意し玉砕に至る過程が描かれる。
戦争の悲惨さ、非情で不合理な軍律を訴える物語に添い、その筆致はさらに熱がこもる。
画面は一層暗くなり、兵士たちの表情は険しく、人は無慈悲に殺され、ジャングルはより鬱蒼と繁る。
前半にいくつか見られたような作者特有のユーモアも全く見られなくなり、ひたすらハードでシリアスな場面が続く。
序盤、バイエン上陸前の場面で慰安婦と兵士によって歌われた「女郎の歌」が、クライマックスシーンで印象的に登場するのは、見事だ。
ラスト数ページの絵の放つ力は凄まじい。
あまりに惨い描写なのだが、目を背けることが出来ない。
そこに込められた水木しげるの熱い思いが、存分に伝わり、強く訴えかけてくる。
国民の多くが戦後生まれとなった現在、ぜひ一人でも多くの人に読んでもらいたい作品だ。

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セブンファン必携の書

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2012年刊。
シリーズ中最もSF色が強く、且つ深いドラマ性を持つ作品として、今も尚コアなファンに支持されている「ウルトラセブン」。
その誕生45周年に合わせて刊行された。
300ページ以上に渡り、豊富な資料・写真、出演者・スタッフへのインタビュー、そして作品解説などが、これでもかという程に掲載され、かなりの読み応えである。

撮影時の様子やメカニックのミニチュアを収めた貴重な写真は、それだけで本作品に掛けられたスタッフの情熱が伝わってくる。
出演者インタビューは、レギュラーメンバーはもちろん(故人を除く)、作品中に登場したヒロイン達までカバーしている。
スタッフインタビューは、さらに充実している。
監督、脚本家は言うに及ばず、特撮美術(怪獣・宇宙人のデザイン、メカやミニチュアセットの設計・製作など)や機電(ぬいぐるみに仕込むギミック…目が光る、角が回る、など)といった、円谷プロお得意の特撮シーンに欠かすことの出来ない重要なクリエイターや、シンフォニックな音楽で作品のクオリティーに多大な貢献をした冬木透、ナレーターの浦野光らの貴重な証言を読むことが出来る。
また、全エピソード各話について、解説と収録の裏話、台本の準備稿・決定稿と放映版との差異などが詳述されるという、豪華さである。
その他、ここに挙げきれないほど多くの資料と証言が、網羅されている。
これはもう、本作品を語るうえでの一級資料と言ってよい書であろう。

上述のように、とてもじゃないが初心者向けとは言えないほど深い内容である。
セブンファン必携の書だ。

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ローマ随一の博物学者を描く

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

雑誌「新潮45」に連載中のマンガ。
「テルマエ・ロマエ」で知られるヤマザキマリと、とり・みき(飛び抜けてメジャーな作品はないかも知れないが、僕の一番好きなマンガ家だ)の二人による合作である。
プリニウス――ガイウス・プリニウス・セクンドゥスは、一世紀の古代ローマに実在した人物で、政治家や軍人である上に博物学者でもあった。
彼は、膨大な量の書物と見聞を元に、百科全書『博物誌』を書き残した。
その内容は、天文・地理・鉱物・動植物・絵画・彫刻に至るまで、森羅万象すべてを網羅するかのように、多岐に渡った。
今日から見れば、誤りや空想(?)と言える記述も少なくないが、ヨーロッパでは中世まで「古典中の古典」として知識人を中心に読まれていたという。

物語は、プリニウスと彼の口頭記述係であるエウクレスの二人を中心に展開する。
第2話以降、二人はシチリアからローマへと旅をする。
旅の途中に遭遇する事物・現象について、プリニウスがその持てる知識を言葉にして披歴し、それをエウクレスが書きとめる。
この作品の魅力の一つは、毎回披露されるプリニウスの博識ぶりだ。
目にしたものについて、彼の脳から溢れ出してくる知識が、滔々と淀みない流れのように語られる。
前述のように中には誤った事柄も含まれているのだが、堂々と自信を持って語られる論理的な講説に、つい引き込まれ納得させられてしまう。
実は、この物語は、プリニウスの脳内を旅しているのかも知れない。

さて、時は皇帝ネロの治世。
1巻の終わりで、プリニウスは、彼の帰還を待っていたネロに出会う。
ローマにおいて、これからどのように物語が展開していくのか。
次巻が、楽しみだ。

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「労働」と「お金」の尊さ

4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

西原理恵子は、「毎日かあさん」などで有名なマンガ家だが、これは「字」の本。
この本での、サイバラは大マジメである。

中扉に、自身の二人の子供を描き、「子供に読んでほしくてかきました。」とある。
本文、すべての漢字に振り仮名が振ってあり、語調(文体)も、「…だよね」「…と思う?」などと、本当に自分の子供か、知り合いの子に話しかけているようである。
話の展開も、とても分かりやすい。

さて、内容だが、自らの生い立ちをなぞるようにして、「お金」についての話をあれこれと進めていく。
この本は、サイバラの自叙伝とも言える。
生まれる直前の両親の離婚、三歳での実父の死、再婚した母と義父の不仲といった家庭環境や、六歳まで過ごしたという高知県浦戸の港町と後に引っ越した県内の工業団地の町での社会環境。
それらから、本書は、まず貧困と家庭不和、貧困と非行について書き起こしていく。
あの頃は、町中が皆貧乏だったと回想する。
サイバラは、1964年生まれである。
だから、前述の家庭環境は、70年代頃の、高知県の一地方の状況である訳だが、今日児童虐待などで虐げられている子どもたちのニュースを思い浮かべると、全く違和感なくイメージが重なるのは、やはり「貧困」と「暴力」の結びつきについてのサイバラの見識が、今も普遍性を持っているということか。

その後、サイバラは上京し、美大受験のための予備校に通う。
この辺りの件が、僕は一番面白いと思った。
予備校で出された課題の結果が、成績順に貼り出され、自分が最下位であるのを見て青ざめたとあるが、その後の行動がすばらしい。
自分の目標は、「トップになること」ではなく、「東京で、絵を描いて食べていくこと」であると再確認し、まだ予備校生の頃から出版社周りを始めるのである。売り込み(営業)である。
少なく見積もって五十社、部署にしたら百カ所以上回ったという。
すごいバイタリティだ。
結果、カット描きから、仕事をスタートさせる。

本書でサイバラは、「働くこと」の大切さを何度も説く。
働いてお金を得ることで見えてくるもの、さらに得られるものについて、様々な面から丁寧に語り、「働きなさい」と勧める。
「労働」と「お金」の、本来の尊さに、改めて気付かされる。

本書では、他にギャンブルや投資の話、アジアの貧しい子どもたちやバングラデシュのグラミン銀行についてなどにも触れられていて、文字が大きく、やさしい文体ながらなかなか読み応えがある。

まずは、自分で読み、お子さんのいる方は、お子さんに読ませるのもアリかと思う。
(角川文庫にもなっている)

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震災支援とマンガ家の本気

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

東日本大震災の被災者支援のために、制作された本。
マンガ家・装丁者は全員無償で参加し、必要最小限の経費を除いた収益すべてを、岩手・宮崎・福島各県庁が主催する「震災遺児・孤児のための育英基金」に寄付されることになっている。
27名の漫画家が28本の読み切りを描き下ろした。
震災や東北に関連したもの、特に関わらないで描かれたもの、日常を描いたもの、ファンタジーに徹したもの…、各人各様で、本当にいろいろな作品を味わうことが出来た。
そして、どの作品もマンガ家の「本気」の思いが感じられて、すばらしかった。
特に印象深い作品は、ラストを飾るとり・みき「Mighty TOPIO」だ。
とり・みきお得意のパロディギャグで描き出され(超有名ロボットのパロディ)、わずか8ページの中に震災の被害も、復興も、希望や風刺も、そして将来への願いまでも詰め込んである。
それも、ごく自然な流れの中に。
最終コマを見て、何を感じるか。
読んだ者、それぞれが、それぞれに感慨にふけるだろう。
*電子書籍版もあり。

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紙の本ウドウロク

2017/04/27 08:56

有働さんをもっと好きになる

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

著者は、スポーツ番組やニュース番組の担当を経て、紅白歌合戦・情報番組「あさイチ」の司会で今や名実ともにNHKの顔の一人となったアナウンサーだ。
彼女初の著書は、エッセイ集。
過去から現在まで、仕事のこともプライベートも、NY赴任中のエピソードから恋愛に至るまで。
縦横無尽に書きつけられた文章が、各章立てによりテーマ別に分けられて収録されている。

書名の「ウドウロク」は「有働録」なのだが、反対から読むと「クロウドウ」になる。
「あさイチ」の放送後、プロデューサーに「出たね、今日もクロウドウ」と言われ始めたのがきっかけという。
本人には特に他意はなかった発言が、周囲には棘があったりちょっとした悪意が感じられたりするように受け取られ、「クロウドウ」と呼ばれるようになった。
ならばと、クロいと言われるような部分も、反面「シロい」と思っている内面も、すべて本音で書き連ねたのが本書である。
この一冊を読めば、彼女の人となりや人物史をよく知ることができ、より親しみが持てるようになるだろう。

彼女自身、「番組が調子いいからって、調子こいてエッセイかよ」と言われるのを承知の上で出版したという本書。
「もしよろしければ、四十半ばの女のひとりごと、読んでみてください」と殊勝な態度で書いてはいるが、そこは硬軟取り混ぜた様々な番組を経験してきたベテランアナウンサー、堅苦しい文章に止まるはずはない。
最初のエッセイが「わき汗」である辺り、読者の要求のツボを押さえ、エンタテインメントを熟知した「分かっている」アナウンサーなのだ。

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シリーズ完結

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「ブラック・ジャック」連載当時を中心に、手塚プロでの作品制作の実態やその周辺について、関係者の証言を元に描いてきたシリーズも、この5巻で完結となった。
全5話が収録されている。

第20話「ふたりのピノコ」
4巻では、手塚の長男眞が取材を受けていたが、ここでは長女るみ子、次女千以子の二人が登場。
それぞれの幼少期から手塚が病没するまで、父・手塚治虫と人気漫画家・手塚治虫について、二人各々の視点から語られる。

第21話「砂かけ男」
手塚が、しばしば締切り間際まで原稿が遅れてしまうことは、1~4巻でも描かれてきた。
だが、原稿が編集部に届いても、それだけでは雑誌は出来ない。
編集部(出版社)から印刷会社、製本会社、配送会社を経て、やっと全国の書店に雑誌が並ぶのだ。
ここでは、この雑誌作りにおける出版社と印刷会社とのぎりぎりの攻防を、秋田書店製作部の荒木を中心に据えて描く。

第22話「歯医者はどこだ!?」
歯学部在学中、一年だけ休学して手塚プロに入ったアシスタントによる思い出話(12ページの掌編)。

第23話「手塚治虫は困った人なのだ」
手塚をよく知る赤塚不二夫と、手塚・赤塚両者の担当を経験した編集者による証言。
当時の名物編集長カベさんも登場。
手塚の原稿が遅いと愚痴や悪態を口にする編集者たちを、赤塚は一喝する。
赤塚から語られる、手塚の思いとは。

最終話「最後のひとり」

手塚プロに17年アシスタントとして在籍していた伴俊男の証言による、執筆時の手塚の姿。
そして、最晩年のエピソード。
入院してしまった手塚の指示を待ち、一人手塚プロの仕事場で電話の前に座る伴。
ようやくかかってきた電話で、伴は手塚から激しく怒鳴られてしまう。

シリーズ完結。
ぜひ全五冊を読み通して、「天才」「漫画の神様」と呼ばれた手塚と、手塚プロスタッフ、編集者らの漫画に懸けた思いを、追体験していただきたい。

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手塚治虫晩年の傑作

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

雑誌「週刊文春」に1983年1月~1985年5月まで連載されたものを、加筆編集の上1985年に単行本4冊にまとめ刊行された作品。

これは、三人のアドルフを巡る物語。
一人は、かのヒトラー。
あとの二人は、日本の神戸に住む8歳の少年。
一人は、ドイツ総領事館員の父を持つカウフマン。
もう一人は、ユダヤ人のパン屋の息子カミル。
二人は、親友である。

物語は、1936(昭和11)年8月ナチスドイツ主催のベルリンオリンピックから始まる。
取材に訪れていた日本人記者峠草平は、当地に留学中の弟から電話を受ける。
ある文書――それが公表されれば、ヒトラーは失脚しナチスは崩壊する――を渡したい、と。
後日、峠が、弟のアパートに遅れてやってくると、弟は無惨にも殺されていた。
峠は、弟から何者かに渡った秘密文書の行方を追う。
しかし、文書を奪取せんとドイツのゲシュタポが、峠に共産主義者の嫌疑をかけた日本の特高警察が、彼を執拗に追い回す。
この峠による文書追跡のスリリングなドラマと、三人のアドルフの物語が、並行して描かれ、時に交わったりして絡み合いながら、戦争(第二次世界大戦)の推移と共にクライマックスへと収束していく。

前半、ややもたつく感じがあったが、後半から加速していくかのように一気に読ませられた。
特に、神戸の空襲場面は、手塚自身が大阪大空襲を経験しているだけあって、爆撃の様子や瓦解した建物、犠牲になった人々などの描写が、真に迫り説得力がある。

第二次世界大戦の時代を中心に据えた作品であるので、戦時下の生活、特高やゲシュタポの横暴・非道ぶり、ナチスによるユダヤ人への虐待・殺戮、度重なる爆撃により失われる生命とささやかな日常……こうしたものが描かれるのは当然のことだろう。
しかし、手塚はここまででは済ませていない。
これらを描いた作品は、他にもいくつもあるだろう。
だが、手塚はここより一歩深い部分にまで掘り下げて、読者の前に提示する。
「ヒューマニスト」と呼ばれることを嫌った手塚が描いた、終盤の展開。
ぜひ、最後まで読み通して、各々感じたり考えたりしていただきたい。
手塚治虫晩年の傑作の一つ!

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突如として現れた唯一無二の男は、どこへ行くのか

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

もし、芸人・タレントタモリについて、調べ、研究しようとするならば、本書はその第一級資料となるだろう。
2014年1月発行。
編集者によれば、出版の動機は、先に出された「タモリ論」(新潮新書)の内容への不満からだという。
「お笑いビッグ3」ばかり扱い、タモリに対して掘り下げが足りない、と。
そもそもタモリは、出身地福岡で山下洋輔らに見出され、東京に招かれた後、赤塚不二夫宅の居候を経てTVタレントになった、ということは、広く一般に知られている。
しかし、福岡での山下との出会いの詳細や、新宿のバーで見せていた芸の内容、赤塚の居候からTVタレントになっていく経緯といったことは、これまであまり知られていなかったのではないか。
本書は、山下と出会った1972年から「笑っていいとも!」放送開始の1982年頃までの、およそ十年にフォーカスを当て、当時のタモリについて書かれたエッセイやコラム、あるいは論考を再録し、さらにそれらの間を埋めるように岸川真(編集)や樫原辰郎がコラムを多数執筆している。
これだけでもかなりの量であるが、さらに本書刊行に際し、タモリゆかりの人物への直接インタビューを行っている。

筒井康隆、山下洋輔、大橋巨泉、団しんや、高信太郎、能町みね子。

タモリのデビュー前やTV・ラジオの番組の裏の顔などを知る、貴重な証言者たちである。
タモリを語るのに、この人に聞かずしてどうするという、このインタビュー対象者のリストアップに本書編集者の本気度が見て取れる。

初めに、本書はタモリ研究の一級資料だと書いた。
そう、これは資料集であって、論考・研究書ではない。
改めて、副題を見てみよう。
「芸能史上、永遠に謎の人物」
タモリについて調べれば調べるほど、かえって謎が深まっていくような感覚に捉われてしまう。
だが、それでいいのだろう。
「タモリとは何か」がよく分からなくとも、彼は我々を十分に楽しませてくれる。
この掴みどころのない謎の人物。
タモリは、どこから来て、どこへ行くのだろう。

終わりに、本書中の菊地成孔によるエッセイのタイトルを引く。

昼間から素っ裸のガールフレンドはブラウン管を見つめて「いつかタモリが死んだときにどんな気持ちになるのかしら?全然分かんない」と言った。

まったく同感だ。

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紙の本記憶はウソをつく

2013/10/19 02:02

記憶は変容し捏造される

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我々は、常日頃「記憶」というものは、自分が見聞きした(経験した)事物を、コピーするかのようにそのまま脳に収めていると思っている。
そしてそれは、経年や加齢によって多少ぼやけることはあっても、コピーの概要はそのままの形を保っているだろうと考える。
しかし、実際は記憶というのは、いとも簡単に変容し、あるいは捏造され(書き換えられ)、偽の記憶が植えつけられるものであり、そもそも自ら見聞きし記憶した内容が、事実とは異なっているかも知れないという。
このように、我々の常識的な認識を、徹底的に覆してくれるのが、本書である。

本書では、この「記憶」がいかに曖昧で不確かなものかを、幾つかの冤罪事件や数々の心理実験の結果を用いて分かりやすく解説している。
犯罪者を告発するその根拠となっている記憶は、本当に正しいのか。
嫌疑を掛けられ警察の取り調べを受けた冤罪者が、罪を認めてしまうプロセス。
犯人逮捕の決め手となる目撃証言の信憑性は、どれだけあるのか。
また、人と人とが話し合うことによって生じる記憶の変容と、それが意思決定(判断)に与える影響の危険性。

これらは、記憶の持つ様々な性質を説き明かしつつ、犯罪捜査がいかに慎重に行われねばならないか、また裁判員制度が孕む問題点などについての警鐘となっている。
出来れば、すべての警察関係者に読んでもらいたいものだ。

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判例で見る江戸時代の生活

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近世史の研究者である著者が、『捕物帳』や『御仕置裁許帳』といった当時の記録史料をもとに、江戸時代の刑事事件とその判決について紹介した書。
本書で扱われている事件は、旗本・下級武士・町人・奉公人と多様な階層にわたり、地域も、江戸を中心に会津・尾張・大坂・長崎など全国的に広くカバーされている。
江戸時代に実際に起こった事件の内容とその決着(判決)について調べていくことで、当時の罪悪の観念や人々の暮らしぶりがうかがい知れる。
当時は、どのような行為が罪(犯罪)とされ、それらの軽重(=刑罰の軽重)はどのように区別されていたのか。
また当時の人々、特に(将軍や大名などではなく)町中に住む町人や下層の武士たちの生活は、どのようなものであったのか。
こうした、歴史の教科書には出てこない「生の」江戸時代の様子が、事件の顛末の中から浮かび上がってくる。
個人的には、(当時は封建社会なので)「将軍―大名」、「大名―藩士」が主従関係なのは当然だが、町人においても「主人―奉公人」が主従関係に当たり、奉公人への処遇についての主人の裁量が広く認められ、奉公人の主人への殺傷には重い刑罰が課せられていたというのが、興味深かった。
また、妻へのDVや夫殺し、不倫(密通)といった男女関係にまつわる事件が多く取り上げられている辺り、当時も現在もやはり男女にトラブルは付き物なのかと感慨深いものがある。
適宜、原文や書き下し文が挿入され、当時の雰囲気も味わうことが出来る。
(現代語訳が付記されているので、これらに自信がない人でも心配ご無用)
歴史、特に江戸時代に興味のある方におすすめ。

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