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ytniigataさんのレビュー一覧

投稿者:ytniigata

「使命」とは「命を使う」と書く

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

あの日、千年に一度という大地震と大津波を、私たちは報道で知った。
あの日、安全神話が崩れ、日本中を不安に陥れた原発の真の姿を、私たちは見た。
ヘリコプターから撮影された津波の映像は、田畑が呑まれ、街が失われ、人々の命が奪われていく「今」を伝えていた。その「今」のなかで、人の命を救うために「人としての使命」を果たし、自らの命を落とした記者がいた。反対に、迫りくる濁流を前に、今まさに呑みこまれゆく老人と幼子を助けることができず、自らは生き延び、震災から3年、「記者としての使命」を果たしながら、葛藤し続ける記者がいた。
人命か。報道か。
使命とは何か。
本書の中で、紅蓮の炎をあげる街を写した記者は語っている。「自分の身の安全が二の次になっていました。(中略)新聞記者というのは、危険なところへ一歩でも前へと突き進む」
『記者たちは海に向かった』──本書には、津波に向かった記者たちの、放射能のただ中に向かった記者たちの、ジャーナリストという「宿命」、大震災という「運命」、そしてそれぞれの報道人として、人としての「使命」 が克明に記されている。その様は「人は宿命に生まれ、運命に挑み、使命に燃ゆ」の言葉さながらの真実だ。
奇しくも、この本が出る前に父を亡くした。
大腸癌、肺癌、咽頭癌を経てもなお、生きる希望を持ち続け、誤嚥でつぶれた肺で最後の最後まで呼吸をし続けた父は、モルヒネ投与後に自らの力で起き上がり、「遺言」を私の掌にしたためた。深い眠りに着いた父の顔は安らかだった。そこには、文字通り命を使いきり、「使命」を果たし終えた父親としての顔があった。
今、私たちは「mission」という言葉をあまりにも安易に使ってはいないだろうか。使命より任務の意で、この重い言葉をあまりにもたやすく多用している。そのかたわらで、津波に襲われ、放射能に汚染され、放置され、見捨てられ、腐敗していく多くの屍がまだ発見されず、無念の声なき声を発しているのも事実だ。多くの死のなかに、命がけで「人としての使命」をまっとうした崇高な生がある。
「使命」とは「命を使う」と書く。
記者の使命とは何か?
「そのとき」人として何ができるのか。
「そのとき」人としてどうするか。
福島の「そのとき」と、新聞人たちの「真実を報道しよう」とする姿に胸揺さぶられる一冊だ。

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