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レビューアーランキング
先月(2017年6月)

une femmeさんのレビュー一覧

投稿者:une femme

38 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本二都物語 下

2017/06/24 03:23

不朽の名作

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

フランス革命時という舞台で、その時代の様子と、個人的な苦悩や葛藤の物語が、どちらかに偏ることなく、巧く描かれ、飽くことなく読み進められる。その一時代の、個人と社会の問題に物語性を持たせて、面白く読むことのできる作品。

それぞれの個人の出自や家族のストーリーを軸にしながら、反面、客観的な視点で、世の不条理が、示される。ダイナミックな舞台設定と、個人的な情が、巧妙にバランス良く織り交ざることで、ごく自然に、しかし、映画のように、読むことができる。

読んでいる中で、何度も、ユーゴの『レ・ミゼラブル』を思い出した。しかし、舞台がロンドンとパリを行き来する二都であることと、革命によって弾劾される側に関しても、平等ともいえるまなざしを当て、人間味ある描き方している。

 とにもかくにも、練りに練られた構成のもと、物語が絡まり合いながら、次第に繋がり収束していく様は、見事としか言いようがない。

(格調を損なわないが、理解しやすい翻訳が、物語の面白さを伝えてくれたことで、読書がすすんだように思う。また、解説が、興味深く、ディケンズの生い立ちなども書かれ、作品との関連性なども、解りやすかった。)

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紙の本聖火

2017/05/15 05:42

時代を感じさせないテーマ

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無駄のないストーリーが、わずか三日の出来事を、一日に一幕を当てて、展開される。推理小説仕立てであることも手伝い、一気に読んでしまった。ただ、犯人を探して落着するのではなく、最後の場面は、感動を呼ぶ。

また、短い時間のなかに詰め込まれたテーマは、この時代の作品だとは思えない。今もって、ここに描かれているテーマを考えることは、まったく、時代錯誤ではないことに、驚く。

これまでに読んだモームの作品の中で、これほど、自由な、女性像や男女の関係が、描かれているのを読んだことがなく、その思想に、意外さと驚きと、興味と敬意を抱いた。

(解説にもあるが、戯曲として、舞台で演じるのを見るよりも、もしかしたら、文字を目で追う形で、読む方が、楽しめるのかもしれない。)

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紙の本わたしたちのすべての昨日

2016/04/12 18:04

おススメしたくなる一冊

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イタリアのある家族の物語。隣人や友人との交流や迫り来る戦争のなかで、一家族とその子供たちの成長が描かれている。読んでいると、端的な言葉を綴っているのに、情景や人物の人となりが、広がるように想像できる。イタリアの雰囲気も伝わるのはもちろんのこと、単に、本を読むことの面白ささえ、思い起こさせてくれる、そんな素朴さもある。

 物語に流れる時を追うように、読み進むうちに、「これは小説なのか、作者の物語なのか」という疑問が、何度も浮かんだ。解説によると、自らの人生を投影した人物(主人公のアンナとその夫)なのは明らかだが、そのほかの設定は、作者が創ったという。解説には、本書の後に書かれた『ある家族の会話』についても書かれている。どちらの作品も、飾り気がないのに、品があり、(『ある家族の会話』は、ユーモアもあり)とても、素敵な作家だと思う。

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紙の本小さな美徳

2017/08/18 19:54

強さに包まれた哀しみと切なさ

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ギンズブルグの著作のなかで、最も彼女の人生や私生活、彼女の想いや気持ちがストレートに描かれていように思う。

友人でもあった作家パヴェーゼのことが描かれるなど、それぞれの章に青春、友愛、家族、郷愁、望郷などが、詰まっている素敵な本。

「アブルッツォの冬」の章の終りに書かれた言葉、「夢はけっしてかなわず、私たちはそれが砕けるのを見たとき不意に、自分たちの生活の最大の喜びは現実の外にあるのだと理解する。それらが砕けるのを見たとき、それらが自分のなかで燃えていたときへの郷愁に苛まれる。私たちの運命はこのような希望と郷愁の連続のうちに過ぎゆく。」を読んだとき、共感と感動で、胸がいっぱいになった。

解説でも指摘されていたが、どの章にも、どんなことが起ころうと、どんな気持ちになろうと、当然のように、前を向いているような強さが感じられた。その強さの中で、小さくなったかのような、哀しみや切なさに、胸がじんとなる。

折あるごとに、読み返したいと思った。

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人生の悲哀

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読みごたえのある、内容の詰まった短編集。

それぞれの物語において、登場人物らが、生き生きと描かれ(とてもリアルに想像することができ)、浮ついたところのない、落ち着いた物語の運び方で、人生の悲哀を、ずっしりと伝えてくる。

現実をしっかり見つめたいときには、とても、心に響くように思う。

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紙の本処女たち

2017/04/26 09:41

人生の業

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短編集だが、物語それぞれが、異なる色を持ち、それぞれの世界に入り込み楽しめた。

家族や、血族、プライドや何かへの執着や偏りなど、人にとって、コントロールすることできないが、常に曖昧に付き纏う問題を、題材にしている。人間のさが、業、といったものが、とても自然に描かれていると思う。

そして、それぞれの物語の終わり方が素晴らしい。続きの気になるように余韻を残す作品や、すっと完結してはいるものの、物語の時間は終わることがない作品というように・・・。突き放すような描き方、そして終わり方ゆえにか、どこか、さりげない語りに、文学における静謐な知性を感じる。

作品のテーマも、描き方も、技術も、秀逸だと思う。

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紙の本船出 上

2017/02/17 19:24

興味深い

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敬愛する作家、ヴァージニア・ウルフのデヴュー作とのこと。

 人間や現実に対する鋭く厳しいまなざし、言葉にならない、どうしようもないような憂鬱、情景の個人的な印象の描写、それらは、やはり独特のものだと思わされる。とても個人的な内面を、外側から描いているような…。

 イギリス(ロンドン)の街の情景や空気感も感じられ、面白い。 そして、船旅が始まると、大海原の船という閉鎖空間で、限られた登場人物らの交わす会話と変化する心理が面白く描かれていく。

 現実と非現実(理想のようなもの)を揺れ動くような、いわば、ウルフらしい視点が、船上で過ごす時間に、あまりに巧く練りこまれ、溶け込んですらいるように思えた。引き込まれ、一緒に船旅をしているように読み進んでいくのが、とても楽しい。

 下巻に付くであろう解説を読み、考察の参照にしたい。

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紙の本迷子たちの街

2016/10/30 06:18

理由の付けられない大切さ

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とりとめのない時間のなかで、日々、起こる出来事がある。それらを大切に思う過去として振り返ってみても、やはり、そのような過去の日々は、とりとめがなく、纏めることはできないだろう。そんな、時の流れからあふれてしまう、日々を、あふれる形のまま、描き取ったような物語。
 そうして描かれる過去は、孤独であり、現在の時間の流れでは、主人公に大きな変化が起こらないために、とても静かだ。また、気取らない文体や表現が、軽やかな切なさをそっと呼び、静かに心に響いてくる。
 ある時期の<過去>が、わけもなく大切で、一つの理屈や形で説明できない時間であることを思い出させてくれる小説だと思った。

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紙の本舞姫 改版

2016/10/28 09:56

感情の揺らぎの美しさ

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感情に揺れながら、常識という枠から出ることにためらう人たちと、それを見ている者、その様子に、はっきりとした反発も賛同もできない子供たち。戦後という時代、そして、戦争の予兆のような空気。そのような、<曖昧さ>のなかにいる人たちの姿を、巧みに映しとっていると思う。そして、そのような、人の心に在る<あいまいさ>に、何か、非常に共感する。

 物語を通して、特に、女性たちの感情の揺らぎが、美しく描かれていると思う。バレエの練習や、その稽古場での小さな出来事、バレエ鑑賞を中心にした日々のなかで、また、戦後の空気のなか、主人公の波子と娘の品子、物語中盤まで登場する、バレエ稽古場のアシスタントの友子の、揺れる心が、とても繊細に描かれている。一方、男性の登人物らは、傍観者でありつつ、なにかしらうろたえながらも、それを隠しながら、それぞれに思うことを、その時々の行動に移す。しかし、それは、自らの意思というよりは、流れに乗るようにして、または、流れに逆らわないように。それは、揺らぎであり、迷いであるだろう。

 何か、その時代の、また、その家庭の、あるいは、個人の宿命のようなものが、登場人物らにはある。そして、そこには、やはり<哀しみ>がある。川端氏の作品は、人生の哀しみを、儚く物語っているように思う。

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紙の本町へゆく道

2016/10/13 07:07

生き続けること

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一貫して、ふわふわとした印象がなく、地に足をつけて、場面(現実)を見ている主人公、または、作者がいる。どの物語も、身近な誰かの死や老いや幻滅などを経て、生き延びた者が、これまでの自身の生を通した現在(いま)を印象付ける形で、終わる。

 とても現実的な、それらの物語は、生き続けるということを考えるときや、生きることを重く考えるときなど、寄り添うように力をくれると感じた。

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紙の本時は老いをいそぐ

2016/06/09 04:16

さらりとした哀しさ

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どの短編も、唐突に始まるためか、なかなか読みにいと思うこともあったが、他に類のない、現実的なのに隠喩的ともいうような、さらりとしているのに深い味わいのある物語が並ぶ短編集だと思った。さすがは、タブッキの作品だと思う。なんというか、完璧に纏まっている。

 尚、訳者の先生の解説が、巧みに、作品の理解を深めてくれた。
 つまり、<望郷>と 、<時>が、これらの作品のテーマとなっていて、特に、私にとって深かったのは、「<時>との葛藤のほかならない<書くこと>が背負う逆説を<時が伝える>逆説に重ねることから滲む思い」が描かれているという解説だった。

 全体を通して、主人公たちは時に心を砕き、時を追いかけ、時を見失い、そして、紛れもなく時は過ぎる。

 本編も、きっちりと書かれた解説も、完璧な形の作品だと思った。

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紙の本虹いくたび 改版

2016/05/13 05:21

美しい日本語

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以前にも、一度読んだことがあったが、やはり、日本語の美しさと、その世界観の綺麗さには、溜息が出る。改めて読んでみると、他者との距離感が、現代とは異なるように感じた。

なかでも、女性のしぐさや振る舞いが現代とは異なり、一見すると、しおらしさだけが、目につくようだが、凛とした強さが見え隠れする。登場する女性、それぞれが、底にある強さやしなやかさ、したたかさ、プライド、そのようなものを、心に抱え、支えられ、突き動かされているようだ。その様子が、日本人らしく慎ましやかで、美しい。
 
 このような美しい日本語と、日本人にしかないような<間>が、美しく存在した世界が、眩しいような、羨ましいような、切ないような、また、懐かしいような気持ちになる。

 折につけて、何度も読み直したいと思った。

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紙の本血の熱

2016/04/26 07:14

生の逞しさと品格...

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主人公の老人と、暮らす村や、親戚らの話。現在の出来事から、次第に過去の出来事の記憶が語られることになる。

 生きていくことの逞しさが、根底にずっと流れているように思った。それゆえにか、描かれる人の醜さや卑怯さ狡猾さに、嫌味がなく、嫌悪感を抱くことがない。美化することなく、そのような面を持つのが人なのだと、強く肯定しているようでもある。そこに、逞しさと同時に、品の良さを感じた。

 謎解きのような展開ゆえ、(一人称の語りということもあり)、先へ先へと引き込まれるように読んだ。

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作品を読むきっかけに

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編者も言うように、この本を読み、トルストイと大作『戦争と平和』を読むきっかけになると思う。あまりにも偉大で、また長編ともあり、これまで手付かずだった私も、この本の、編者による物語の大胆とも言えるダイジェストを読むことで、是非、作品を、丁寧に呼んでみたい気持ちになった。
 このダイジェストを読んだ印象は、当世の貴族の生活と、戦争により変化した生活が、人の生死という普遍的なテーマと相まって、三人称による冷静な物語運びと、登場人物らの細かな心理描写により語られ、戦争を題材にした小説の、まさに「お手本」のようだと思った。例えば、イレーヌ・ネミロフスキーなども影響を受けテ執筆したのだろうか...。
 
 その他、トルストイの短編も、いくつか監修されており、面白い本だと思う。

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紙の本無関心な人びと 上

2015/09/22 08:23

まるで映画を見ているかのよう

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登場人物らの描写が、それぞれ細かく、その個性が、なかなか興味深い。その描写は、外見や服装、表情のみならず、それぞれの人物の内面の動きや動作まで、細かく描かれている。舞台となる場所はほぼ同じであり、登場人物も増えることはないが、その世界のなかでの彼らの心の動きが、丹念に描かれている。彼らの目に映る部屋の様子や、街や庭、また、彼らの背景にある景色などを辿るのは、まるで映画を見ているようだ。途中、退屈に思うこともあったが、小説の世界はやはり面白く、また、話の展開の先が気になる。

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