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  3. かしこんさんのレビュー一覧

レビューアーランキング
先月(2017年4月)

かしこんさんのレビュー一覧

投稿者:かしこん

284 件中 1 件~ 15 件を表示

このサイズで読める至福

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

和田慎二傑作選ということで、書籍扱いコミックスですが、大きな版で読めるというのはとてもよろこばしいこと(その分、お値段も少々張るけどお金では代えられない)。

『銀色の髪の亜里沙』に出会ったのは小学生のとき。 それから何度繰り返し読んだかわからない。 しばらくぶりに読んで驚いたのは、「こんなにページ数が少なかったか?!」ということ。 特に地下洞窟の部分はもっと長かったような気がしていた(それだけ、思い入れが深かった)。
『大逃亡』はその当時古本屋さんでも手に入らなくて、でも『スケバン刑事』で沼さんの昔語りとして大筋は知っていたものの、全編読むのは初めて。 それでも初めて読んだ気がしないのは、<和田慎二フォーマット>がすでに出来上がっていたからだろう。

このサイズでいいので、昔のノンシリーズの傑作(『呪われた孤島』・『朱雀の紋章』などなど)も再版してほしい。 『パパ!』シリーズで一作もありかと。 お値段は多少高くてもかまいません!
そんな夢を見てしまいたいくらい、この本の発売はとてもうれしい驚きでした。

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『亜里沙とマリア』に引き続き、和田慎二傑作選(書籍扱いコミックス)の2冊目が登場!

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

最初はタイトルだけの告知だったので、「『愛と死の砂時計』と『オレンジは血の匂い』か」と予測・・・実際に本を手にしたら、帯に<神恭一郎VS西園寺京吾>の文字。
このふたりは昔の友人ではあるけれど、直接戦ったことはないはずだけど。
どうやら、神恭一郎作品の代表作ともいえる2編に、西園寺京吾の作品も収録されているから、という意味らしい・・・あぁ、びっくりした。

『愛と死の砂時計』は<和田慎二版・『幻の女』>。
でも今回改めて読み直してみて・・・まず視点が違う(『幻の女』他、身に覚えのない罪で投獄される男の側から描かれているけど、これでは男の内面描写はほとんどなく、彼の婚約者視点で物語が動く。 少女マンガだから、と言われるとそれまでですが)、そして中盤でもう犯人が読者にはわかってしまう! 探偵役が真相に近付くにつれ手掛かりを持つ人物が先んじて殺される、という展開だけで十分ハラハラものなのに、犯人が身内にいると早々にばらした上で一緒に犯人を追うのだからハラハラ度倍増! 元ネタを越えよう!、という気概を感じます。

『オレンジは血の匂い』も、和田慎二復讐シリーズ(?)の中で好きな作品の上位に食い込む作品(今は『深海魚は眠らない』がダントツの一位なのですが、それが現れるまではこれがほぼ一位だった。 『銀色の髪の亜里沙』は別格)。
カメオのつくりかたもこれで学んだ。 その当時小学生、以後、大学生ぐらいになるまで「カメオのつくりかた」が一般常識ではないことに気づかなかった!
この作品は細かな章立てが特徴で、結構めずらしいかなぁ(他には川原泉の『銀のロマンティック・・・わはは』ぐらいしか思いつかない)。
ヨーロッパ観光ツアーのように各地を転々とし、ヒロインは命の危機に瀕し、と今思うと二時間サスペンスドラマ要素てんこ盛りなのに、和田慎二世界においては一切がなんの違和感なく存在してしまうすごさ。

『パニック・イン・ワンダーランド』は<マンガ・ファンロード1号>に掲載されたお遊び原稿。 和田慎二レギュラーキャラクター勢揃い。 これだけ1985年のものですが(他の作品は1973年・74年)、人気マンガ家であるが故の企画モノ。

そして『バラの追跡』。
海堂美尾と西園寺京吾の出会いを描いたものですが・・・前半が私の記憶と全然違う!
でもラストは同じで、なんでだろうと思っていたら、和田作品で唯一のリメイク、『バラの追跡』を読者の対象年齢をあげてもう一度新たに描き直した『バラの迷路』があるとのこと。 自分が読んだのはそっちだ!
美尾さんはその後、神恭一郎探偵事務所の秘書として働くことになるので、彼女の人生は『スケバン刑事』でもやんわり語られますが・・・(そこで、西園寺京吾と神恭一郎の繋がりも判明)。
こうやって別作品の登場人物が繋がっていくのがまったく不自然にもやっつけにも感じられないのは、裏シナリオがきっちりつくられているからだろう。

あと、美内すずえロングインタビューと、いろんなマンガ家さんからのトリビュートイラスト集。
美内すずえロングインタビューはそれなりに読み応えあり。 全盛期の仕事のやり方等は勿論面白いし興味深いのだけれど、いちばん切なかったのは、訃報のあと、悲しみを紛らわしたくて和田作品を読みふけろうと思ったのに、自分のは書庫に仕舞っていてすぐに出せる状態じゃないからとマンガ中心の本屋に行ったのに、若い店員さんに“和田慎二”が通じなかった、というくだり。
「いつの間にこんなことになったんだろう・・・」、という言葉が、重い。
なので、更なる作品集の刊行を希望!

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今回の表紙はアンジュー公アンリ

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

『王妃マルゴ』もいつの間にやら4冊目。
一年に一冊出るかどうかのペースだから、1巻目が出てからもう3年ぐらいになるのか、ということに驚く。 作中では、もっと時間が流れているので特に違和感はないのですが。
“萩尾望都、初の歴史物!”、というふれこみで始まったこの物語、実際は「こんなにも自分が“女”であることに疑いをもたず、本能のままに行動するヒロインがこれまでの萩尾望都作品にいただろうか!」というほうが長年の読者としては驚きで、マルゴという人物をとてもハラハラしながら見てきたのですが、<運命の恋>に目覚めてからの彼女は一途な萩尾キャラらしくなり、しかし歴史の流れはその一途さを許さず、昔からのテーマである<母と娘>についてが際立って浮かび上がってくる仕掛け。

でもそのために“歴史”を背景としてただ借りてきたわけではなく、歴史の流れそのものもきっちりと過不足なく描き出す。 このバランス感覚、さすがです。
ちょうど『サラディナーサ』(これはスペインがメイン)で描かれていたほぼ同じ時代、フランスではどうだったのかがこれを読んでわかる!、というあたしのような世界史音痴にも大変ありがたい作品です。 カトリックとプロテスタントとの対立がだんだん明白になっていくところも非常に今日的というか。

マルゴをめぐる3人のアンリのうち、あたしはナヴァルのアンリが結構好きなんだけど・・・悲劇の予感で幕を閉じてしまった。
あぁ、早く続きを!

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事件記者の真骨頂をここに見る

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

犯罪ルポものを比較的読み漁っている身としては、筆者の前作『遺言-桶川ストーカー事件の深層』(文庫化に際してタイトルのメインとサブが逆になりましたが)は当然読んでいたので筆者のことは知っていたし、なにかのタイミングでかその当時の日本テレビでの特集(最初は『バンキシャ!』だったと思う)をリアルタイムで見ていた私にはなじみの内容である。
事件で自分は冤罪だと訴えていた方に無罪確定・釈放というのは勿論めでたいことだとが(何年・何十年も理不尽に閉じ込められた方に「めでたい」と表現するのは失礼だとは思うのだが、誤りが正されたという意味で「めでたい」という言葉を選んだ)、私がいつも感じるのは、「じゃあ、真犯人は誰なの?」ということ。 マスコミ報道は冤罪に至った過程を検証するけど、それも重要だけど、真犯人の存在について言及する例があまりに少ない、と常々思っていた。 だから、「あくまで真の目的は真犯人の検挙」という筆者の姿勢が好きなのです。 だから<足利事件>の冤罪証明は途中経過に過ぎない、という発想に同意。

なにしろテレビ報道をそのときは期待して見ていたので、「あ、あの部分は書かれてないんだな」といろんなことを思い出す(主に被害者家族の言葉が印象に残っていたのだが、あえてそちら方面にはあまり踏み込まないようにという気遣いかもしれない。 必要最小限かつ重要なことは記載されている)。
「真犯人らしき男について、実は特定している」という報道も見た記憶はあって、でもそのあとどうなったのかわからなかったのでこの本を読んでみたわけですが・・・そうか、もうちょっと、というところで3.11が来たのか・・・私の記憶も飛んでいるはずである(ただ、何故真犯人と目される男に筆者が辿りついたのかの説明がぼやかされていて、そこは少々イライラするところではある。 でも確たる証拠がないし警察も動いていない以上、プライバシーその他は守らねばならない)。

当時科警研が進めていたDNA型鑑定の弱点についてつっこまれて、それを証拠として有罪が確定した案件までもひっくり返されることを恐れる警察・検察・裁判所・法務省などひっくるめてこの事件に知らんぷりしたい・・・という組織側の姿勢を激しく糾弾しつつ、真犯人に対してもケンカ(?)を売っているのがこの本の骨子といってもいいかも。 「ジャーナリズムは公正中立」というお題目にとらわれず、自分が知りたい・やりたいようにやってしまう、だから結構私噴も丸出しで、第三者的視点から語るのではなく自分の言葉で突っ走ってる感じが、私は好きである。
スクープをつかんでも、すぐ発表したらどんな影響があるかわからないのでそれを確認してから、なんてのはある程度当然のことかと思いきや出来てる人、少ないよね~、と感じさせられたりした。

『バンキシャ!』出演時に<(桶川ストーカー事件の際に警察よりも先に犯人を特定した)伝説の記者>と紹介されたのに対し、心の中で「伝説ってなんだ、俺はまだ現役だ」と毒づくなど、私の好きな職人肌頑固おやじ的要素をこの人が持っていると感じられるから好きなのかもしれない。
事件を風化させないために雑誌にも連載し、それでも当局が踏み込まないのでこの本の刊行を決意した、とのこと。 一刻も早い解決を望んでやまない。 そして、他のすべての未解決事件についても。
刑事ドラマ全盛の世の中なのに、実際の警察組織がお粗末なのは恥ずかしいよ。
ハードカバー刊行時以降の動きについても触れられているが・・・解決までにはクリアすべきことがまだあるようです。続報を待つ。

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山岸涼子、ジャンヌ・ダルクを描く!

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

この表紙に、少女の目ヂカラに「おぉっ!」と心を打ち抜かれた気持ちに。
帯を見て、ジャンヌ・ダルクの物語だとわかって深く納得。
なにしろ私は高校では日本史選択だったので、ジャンヌ・ダルクのことは一般に流布するイメージ以上のことは知らない。 勿論、詳細な歴史的背景についても(基本、私はマンガで歴史を学んでおります)。
そして今作は、刑場に引き立てられていくジャンヌが、「どうしてこうなってしまったのか」と回想するシーンから始まる、という否応なく緊迫する構成で(途中でもたびたび<現在のジャンヌ>の内省が挟み込まれる)。

そこにあるのは“英雄”として軍の先頭に立った雄々しき姿ではなく、「神の啓示のもと、求められるままにここに来た」という<神と自分との対話>。
ついにキリスト教にまで切り込んできたか、という驚き(著者は相当資料を読みこみ、時代背景とともに完全に理解したうえでの覚悟の執筆、という感じがする)。
13歳のジャンヌはまだ文盲で、社会的に弱すぎる女性の立場についてもはっきり言及できるほど賢くはない。 むしろ、他者から「思い込みが激しい」と見られることもある信心深い愚かな少女がこの先どうなっていくのか、ということにすでにあたしは心をえぐられている。
まだ1巻、物語はまだ始まったばかり。 あぁ、続きが楽しみなマンガにまた出会えたぞ!

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山賊ダイアリー、一区切り。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

帯に<1st.シーズン最終巻>とあってびっくり。
これもずっと続くものだと思っていた・・・でも思い返せば「猟師という生き方・野生動物との向き合い方」について実は静かに考察を続けていた描写はあった。 ひとつ、結論が出たのかも。
ラストエピソードで、見開き2ページを使ってのカラスとの対峙の場面。
全7巻を通して描かれてきたテーマが凝縮されていたと思います。

帯の裏には<新シリーズ『山賊ダイアリーSS』、今冬連載スタート!>とあり・・・SSって何の略ですか!

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紙の本図書館の魔女 第4巻

2016/06/04 17:06

本好きの心の中にある大事な作品が次々と浮かび上がる

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

第45回メフィスト賞受賞作。
個人的にはメフィスト賞に別にこだわりはないのですが、年間ランキング時に翻訳家の大森望さんがこれを褒めていたような記憶が。 それにタイトル自体も何の変哲もないようでいて、微妙に気になる感じ。 しかも長い!

しかし読み始めてみると、山中の鍛冶の里の描写から。 タイトルからのイメージは、それこそ『ゲド戦記2 こわれた腕環』の巫女さんみたいな感じだったのですが、ハイファンタジーの世界とはいえ語り口がなんだか昔の日本っぽい(それは現在視点による地の文の語り手のせいでもあるのだが)。 なので荻原規子や上橋菜穂子作品が連想されたり。
メインキャラクターと思しき少年の名がキリヒトなので手塚治虫も浮かぶし、一の谷という国名・各地から集めた書物を保管する史上最古の図書館である“高い塔”の存在などは『指輪物語』のエルフのようだし、その図書館の管理者は古今東西の書物に通じ、あらゆる知識を網羅しているが故に“魔女”と呼ばれるが、その実態はまだ少女といってもいいほどの若さで、更に口がきけないとか、いろんな物語の要素が混ざっていますよ!、な感じ。

でもその<いろんな物語>は、読者によって、これまでどんな本を読んできたかによって感じ方が違うんだろうなぁ、と思わせるもので、決して不愉快ではない。 序盤からかなりの枚数を費やして「言葉とは、文字とは、いったいなんなのか」について語られるのは、ある意味<本読みの至福>と言ってもいいくらい。

では抽象論中心なのかといえばさにあらず、二巻目あたりで図書館の魔女・マツリカへの二人(二匹?)の刺客が出現してからは物語は一気に加速して怒涛の展開。 次なる刺客は暗示を利用する傀儡師(しかも名前は“双子座”!)だったりして江戸川乱歩や栗本薫を連想しますよ。 しかも双子座の正体についてはさりげなくヒントをばらまき、ミステリ的にもフェアであるという・・・。

才能はあるが口が悪い女子と、それをサポートする実直な男子、という組み合わせ的には遠藤淑子でもあるし、様々な立場の人々が集まって結果的に心を一つにしていくあたりは『南総里見八犬伝』にも通じるものが(そこまで人は死にませんけど)。 他にも思い出したものはいっぱいあるんですけどね、きりがないのと、やっぱり読んだ人によって思い出すものが違うと思うから。

国と国との戦い(内乱も含む)・資源の争いが物語の背景にはありますが、たとえば『氷と炎の歌』ほどハードでもドライでもなく、むしろ言葉や知恵の力で争い事を未然に防ごうとする話なので(登場人物が結構な怪我をする描写があるけど大概寝込んだ後は快方に向かう)、読者にも負担が少ないのはいいですね。
あー、面白かった。
めでたく10日ほどで読み終えました。

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18世紀・ロンドン・外科手術・解剖・・・以上の言葉に反応する人は読まないと損!

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

“Dilated To Meet You”というサブタイトルもついておりますが、もうこのタイトルだけで<18世紀・イギリス・外科手術・解剖>というキイワードが浮かび上がってくるではないですか。 にやにや。 あ、私は皆川博子さんの大ファンであります。

人体解剖で人体の仕組みを読み解こう、と使命に没頭する外科医ダニエルと、その若き五人の弟子たち。 それだけで十分面白くなりそうなのに、次から次へと死体がごろごろと出現・・・。
おまけに田舎からロンドンに出てきた若き(幼い?)詩人ネイサン・カレンが弟子たちの二人と仲良くなったことをきっかけに彼も絡んできて・・・ネイサンが体験したロンドンは、まるで『香水~ある人殺しの物語』の一部を髣髴とさせる描写もあり、読んでいて、ついついわくわく。

『ルパート王子の暖炉』をはじめとする時代的に正しいトリックや、盲目の治安判事サー・ジョン・フィールディングが目が見えない故に他の器官が鋭敏で、人が嘘を言っているかどうか・この匂いはこの場にふさわしいものなのかどうか、といったポイントから真実に迫っていくのも実にフェアプレイ。 時代ものでありながら、ミステリの王道。
さすがです!

なんだかんだと脇のキャラクターもまた魅力的。 中でも5人の弟子エド、ナイジェル、クラレンス、ベン、アルときたら・・・まったく年齢がわからない! 少なくとも全員18歳以上だろう、さすがに(ハタチ越えてそうな人もいるし)、と思っていたら<少年>と描写される人もいたりして・・・個人的に大混乱。 そりゃ、サー・ジョンも困惑するよな~。
 しかし彼らのどこかあけっぴろげというか、底なしの明るさめいた空気が、死体がごろごろ転がるこの物語をまったく陰惨なものにせず、むしろユーモラスで爽快ななにかまでも感じさせてしまう。 その反動でしょうか、最後の2ページでうっかり泣いてしまいました。

弟子に慕われるダニエルも、実は思っていたより若いのか? 実のところ弟子たちの存在感に押されて影が薄くなっていた個所もあるドクター・ダニエル・バートンですが、彼がもうちょっと研究バカでなければ、まわりにいる人の気持ちをもっと汲んであげていれば、と思う部分はあるけれど(本人も最後のほうでそう反省されてますが)、そうではないからこそ弟子たちはダニエルに心酔しているのかもな・・・と考えると非常に
皮肉で、かなしい。

しかし全体として素晴らしい。 読書という至福のヨロコビを思い出させてくれるに十分な作品で、もう、「大好き!」としか言いようがない。(2012年4月読了)

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紙の本アウシュヴィッツの図書係

2016/12/30 20:12

ディタにとって本の存在はまさに、「絶望に差し込む希望の光」。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

1994年、アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所には、いつ来るかわからない国際監視団の視察をごまかすためにつくられた子供たちの為の学校が存在した。 そこには青少年のリーダーであるフレディ・ヒルシュが尽力してつくり上げた蔵書8冊だけの秘密の図書館がある(のちに、「物語を語れる者」が「生きた本」として登録される)。
フレディに図書係を任命されたのは、14歳のチェコ人少女ディタ。
その仕事は、本の所持など禁じられている中、ナチスに見つからないよう日々隠し持ち授業の間に先生や子供たちに回し、一日の終わりには無事に“図書館”に戻すという危険なもの。 だが、ディタはその任務も、本を手近に扱えることも誇らしく、うれしかった。
これはそんなディタとその家族・仲間たちの(アウシュヴィッツにいるという<非日常>における)日々の記録と、日常化したナチスによる強制収容所の運用が淡々と同時進行で描かれている。 そんな、事実に基づく物語。

途中から、描かれるところの少女たちの姿が、ブラッドベリが描くところの少年のように思えてきた(少年のように描かれているのではなく、その本質に詩的に迫っているという意味において)。 少年にとって少女たちは永遠の謎で、何を考えているかわからない。 けれど少女たちは考えている、少年以上に少年とは違う次元で。 少年と少女は、夢見る世界の方向が違う、現実との折り合わせ方もまた違う。
そう感じたら、全体の文章もどこかブラッドベリぽく勝手に思えてきて・・・もしも彼がアウシュヴィッツを描いたならば(多分ありえないけど)、こうなった部分があるんじゃないか、という気さえした。
これは原文のせいなのか、翻訳者の技量故なのかわからないけれど、なんとなく・・・こちら側にフィットする何かがあったのだ。 とてつもない残酷なことをさらりと告げる一文の軽さのようなもの。 現実なのにどこか現実ではないような。
それを私は<詩的>と感じたのかもしれない。
たとえば、地の文で、

1944年3月8日の夜、B2b家族収容所にいた3792人の収容者がガス室に送られ、アウシュヴィッツ=ビルケナウの第3焼却炉で焼かれた。

と、この一文でその章をしめくくるように。
これは「事実を基にした物語」であるが故に、<著者あとがき>もまた本文に含まれる。
そこで語られる“現実の後日談”こそが読者をさらに打ちのめし(当時アウシュヴィッツの存在に懐疑的だったユダヤ人に対して真実を告発したハンガリー系ユダヤ人との軋轢が今尚残っているとか、結局同族内においても争いは消えない)、また(ディタのモデルになった女性がいまも生き続けていて、本に対する愛情を失わないでいることなどにも)勇気づけられる。

最近日本でまた<アウシュヴィッツ物>関連の映画が公開されるのが続く。
一時期、「いつまで“ユダヤ人は弱い被害者”像を描き続けるのか」という論争があったことが忘れられたかのように(勿論、近年の映画はかつてのものよりタッチが違っていることは確かだが)。
でもこの本の立ち位置は少し違う。
筆者がスペイン人だということもあるけれど、これは最後まであきらめなかった少女の物語であり、“本”や“物語”がいかに過酷な現実から救ってくれるものであるかという証明であり、アウシュヴィッツにおけるアンネ・フランク以外のアイコンの誕生でもある。
これは歴史、大きな歴史年表に埋もれてしまいそうな、けれど忘れてはいけない歴史のひとコマなのだ。
読んでよかった。 現在のイスラエルがしていることはどうなんだとかそういうことはまた別にして、そんな気がした。

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日本人にとって<お風呂(温泉)>とは?、を問う作品か。

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山口美由紀新作。
表紙だけ見て「三助さんの話?!」と某ドラマ『神の舌を持つ男』のことが一瞬頭をよぎったけど、いつも通りのハートフル日常ファンタジーでした。

“お風呂 = リラックスする場所 = 心が解放されるが故に不思議なことを自然に受け入れられる”、という日本人ならではの感覚というのでしょうか。

なんとなくトラブルメーカーっぽい女の子と、不器用で不愛想だけど実はいいやつという組み合わせも王道。 ほっこり楽しめる(けれどもそこには深い悲しみを受け入れるという重いテーマをさらりと含む)物語なので、続きを期待しています。

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そんなところで終わられても!

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作者お好きなオリエンタル時代劇(仮想歴史物)。
とはいえ、主人公の国は日本だなぁというのがまるわかり。
古代(仮想)アジアを舞台にしながら、<現在を描く>タイプの、なかなかのハード展開を一巻から予想させます。

しかもすごくいいところで終わった! 続きが気になる!(2015年11月読了)

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認知症という病とジェネレーションギャップ

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前作『おかあさんとごいっしょ』のあとがきで、「今回は娘視点だったので、次は母視点の物語を・・・」みたいなことが書いてあったので、新刊案内でこの本の存在を知ったとき、「ついに来たか!」と思い、ドキドキしながら開きましたら・・・認知症のお話でした。

75歳の母、最近どうも物忘れが激しいというかうっかりが多くなったなぁと思えば、突然彼女はハタチになって過去の思い出を現在形で話しだしたり、また元に戻ったり・・・それを息子視点で描くのがうまいなぁ、と思うわけです。 そして母の姿が絵としては精神年齢で表現される。
鏡に映る自分と、自分の中にいる自分とのずれは誰にでも多少はあることですが、それが言動に影響するとなれば話は別。
息子には妻子がいて、妻は「あぁ、これは」と認知症を早々に受け入れ、対策を考えるのですが、息子とその父(つまり夫)はつい、「これは一時的なちょっとしたうっかりで、すぐにまた元に戻るんじゃないか」と根拠のない希望に頼りがち。
勿論個人差はありますが、男の人ってだいたいそういうところあるよな~、と(私は健康診断でひっかかり、二次検査の予約を入れて待合室で待っている間、「もしなにかひどい病気だったらどうしよう」と考えたら怖くなって検査を受けずに帰ってきてしまった男性を知っている。 バカじゃないかと思いました)。 早く結果を知った方が早く対策が取れるし、そもそも病気なのかはっきりしてないのにもやもやしている方が非生産的というか、むしろほっといて手遅れになったらどうするのか、と考えてしまうほう。
なので今作の息子の妻、えらい!、と思ってしまいました(夫や義父の行動・態度に不満はあれど、その表現は最小限にしてサポートに徹するあたり)。

しかし現在75歳の方にとっての青春とはどんなものだったのか。
この話では映画『ローマの休日』とオードリー・ヘップバーンに象徴させてますが、想像がつかない・・・。 親の子供時代とかあまり考えたことないように、自分よりずっと年上の方の若き日って時代の違いも考慮にいれる必要もあるけれど、わからない。
そういう方々とそんな会話をする機会に恵まれなかったってことだな、自分・・・。

またしてもあとがきによれば、これは作者の義母の実体験からインスピレーションを受けたものとか。 その1ページに込められた言葉が深くて、あやうく泣きそうになった。

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紙の本現代思想の遭難者たち

2016/05/30 02:51

増補版、待望の文庫化!

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これの最初の単行本を持っているのですが、いつの間にか増補版が出ており、今回、その増補版での文庫化、ということで・・・確かに読んだことない章がある!
その第3章はギャグのキレがよりいつものいしいひさいち節で、思想家たちのキャラを自分のものにしてしまった強みを感じました。

もともとは<現代思想の冒険者たち>というシリーズ全集の月報に載っていた4コママンガ。 20代の私は図書館から順番関係なく一冊ずつ借り出してちびちび読んでいましたが、いつしか月報の4コママンガがいちばんの楽しみになり、そのギャグを理解したいがために本文を読んでいた、ような気がする(ギリシア~近代ぐらいまでなら結構親しみもあるのですが、現代哲学はユング以降さっぱりだったもんで)。

で、これだけ一冊にしてくれればいいのに、と思っていたので最初の単行本を持っているのです。 でも・・・遅ればせながら完全版を手に入れて、満足。
思想家のことは結構頭の中でごっちゃになっているので、これで復習できそうです。

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紙の本伯林蠟人形館

2016/04/16 17:40

耽美なる、退廃。

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読み始めたら勢いついてあっという間に読んでしまった。
あぁ、もったいない・・・もっと味わうべきだったか。

「狂乱へと向かう1920年代のドイツを舞台に、六人の男女が織りなす運命の輪舞」と
オビにあります。
では歴史ロマンなのか、といえばさにあらず。 1ページをめくっただけでその世界は反転し、記憶は虚構のかなたに舞い上がりつつまた地上に降り、誰かの願いが別の記憶を生み、「なにがほんとでほんとでないのか」について読者が考えるのをやめたころ、物語はその世界の仕掛けを明かす。

かなしくて美しい夢は、苦さの伴う事実に変わり、けれどそれでは説明のつかない部分も残る。
うわーっ、と読者を幻惑する物語(というか私自身が幻惑された読者)。

あー、もうこれは読まないと、わからない!
だって話の筋を話すとネタばれするもの!(2009年4月読了)

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紙の本倒立する塔の殺人

2016/04/16 17:25

現役の少女たちに是非読んでほしい作品

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個人的な好みとしては『薔薇密室』がドストライクなのですが、『倒立する塔の殺人』はまた別の意味で特別な作品。
「あぁ、これを何故小学5・6年生のときに読めなかったのだろう!」という(いえ、実際私がその年にはこの本はまだ書かれていないのですが)。
そういう、「そういう頃に読んでおきたかった!」という作品。
だから是非、そういう年代の人たちに読んでほしい。
ただし、影響受けすぎたら人生変わるかも。
中井英夫や佐々木丸美を読んでいなかったら多分今の私はいないように。

戦時下の日本にあるミッションスクールに通う女学生たち。 もうなんかそれだけでガツンとやられてしまう設定です。  他の皆川作品に比べて読後が軽めなのがよろしいかと(でもそれは手を抜いてるとか内容が重くないということではない。 メタフィクション構造でもあるし)。
こんなにも“少女の純粋なる残酷さ”を美しくもせつなく描かれてしまっているものはあるだろうか!、という意味で、萩尾望都作品にも通じる空気を文章で表現できてしまうのが素晴らしい。
まだまだ書き続けていただきたい方です。

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